2021/07/14(水) - 01:50
大会3週目の初日は冷たい雨が降る1日に。ピレネー山脈の峠道を繋いだツール・ド・フランス第16ステージで独走に持ち込んだパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が自身初のステージ優勝を果たした。
7月13日(火)第16ステージ
パス・ダ・ラ・カザ〜サン=ゴーダンス
距離:169km
獲得標高差:2,800m
天候:雨時々曇り
気温:8〜18度
休息日を過ごしたアンドラからツールはフランスに戻る。ツール史上最も標高のあるスタート地点(標高2,080m)を離れ、全長19kmにおよぶ長いニュートラル区間で高低差1,000mほどを降ってからレースはスタート。ピレネー山脈の4つの峠道を繋いだ169kmコースは再び逃げ切りを狙うアタッカー向きだ。
2級山岳ポール峠(全長11.4km・平均5.1%)と1級山岳ラ・コール峠(全長13.1km・平均6.6%)、そして2級山岳ポルテ・ダスペ峠(全長5.4km・平均7.1%)をこなし、残り7km地点で4級山岳アスプレ・サラ(全長800m・平均8.4%)をクリア。獲得標高差2,800mの中級山岳ステージは冷たい雨との戦いにもなった。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
54km地点 2級山岳ポール峠(全長11.4km・平均5.1%)
84.7km地点 スプリントポイント
101.1km地点 1級山岳ラ・コール峠(全長13.1km・平均6.6%)
136.5km地点 2級山岳ポルテ・ダスペ峠(全長5.4km・平均7.1%)
162km地点 4級山岳アスプレ・サラ(全長800m・平均8.4%)
2時間のアタック合戦の末に勝ち逃げが決まる
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)とアムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、バイクエクスチェンジ)を欠き、145名まで人数を減らしたメイン集団がアンドラを離れてフランスへ。多くの選手が0km地点を前に立ち止まり、ニュートラル区間で着込んでいたレインジャケットを脱いでから正式スタートを迎える。カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が単独で飛び出したまま最初の2級山岳ポール峠に差し掛かると、後方では断続的なカウンターアタックが繰り広げられた。
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)やマティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭アスグリーンに追いついたものの、フィニッシュまで100kmを残してメイン集団は再び一つに(グルペットを形成したカヴェンディッシュらを除く)。続いてジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、総合ジャンプアップを狙うウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)、ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)もアタックに加わったが決まらない。
総合に関係しないヤン・バークランツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)とファビアン・ドゥべ(フランス、トタルエネルジー)、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、バイクエクスチェンジ)の3名が飛び出し、ポイント賞2位マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)や同賞4位ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)を含む11名が追走グループを形成したところでメイン集団はペースを緩めた。スプリントポイントではマシューズが13ポイント、コルブレッリが11ポイントを稼いでいる。
1級山岳ラ・コール峠で追走グループから飛び出し、一人で先頭トリオまでブリッジに成功したのはパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)。この日の最高地点である標高1,395mの1級山岳ラ・コール峠で先頭はコンラッド、バークランツ、ドゥべの3名に絞られ、コルブレッリらが10秒遅れで続くもののタイム差を詰め切ることができない。
数々の峠の中でツール登場回数が5番目に多い2級山岳ポルテ・ダスペ峠に突入すると、頂上まで4kmを残して、フィニッシュまで36kmを残してオーストラリアンチャンピオンジャージを着るコンラッドが鋭いアタックを決める。独走に持ち込んだコンラッドが、バークランツやドゥべ代わって追走デュオを形成したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)とコルブレッリに20秒差をつけて頂上をクリアした。
時折突風のような向かい風が吹くステージ終盤をコンラッドが力強く独走した。追走していたゴデュとコルブレッリにはマシューズら9名が追いついたものの、最後の4級山岳アスプレ・サラを前にタイム差は1分に。最後まで独走を貫き、「地獄のように辛かった」というフィニッシュ手前の登りをこなし、コンラッドが勝利した。コルブレッリがステージ2位、マシューズがステージ3位に入っている。
15分遅れで4級山岳アスプレ・サラに差し掛かったメイン集団ではギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が動きを見せたものの、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が危機に陥ることなくこれらをカバー。メイン集団は13分49秒遅れでフィニッシュし、ポガチャルがマイヨジョーヌを守っている。
「ワールドツアーレースでの初勝利が世界最大のレースでやってくるなんて」と、ラスト40kmを平均スピード40.1km/hで駆け抜け勝利したコンラッドは語る。ボーラ・ハンスグローエは第12ステージのニルス・ポリッツ(ドイツ)に続く今大会ステージ2勝目。コンラッドにとってグランツール初勝利。
ジロ・デ・イタリアで2度総合トップ10フィニッシュしている29歳のオールラウンダーは、今大会第7ステージ7位、そして第14ステージ2位。3度目の正直で独走勝利を飾ってみせた。「この勝利を夢見てずっと戦ってきた。オーストリアンチャンピオンを着ている時に勝ててよかったよ。今大会すでに3回逃げているけど、いつも終盤まで仕掛けるのを待ってしまっていた。早めに仕掛けるモホリッチの背中を見送って、バウケの時も同じだった。だから今度は自分の番だと思ったんだ」。
マイヨジョーヌのポガチャルは「最初の2時間はひたすら全開だった。逃げが先行してから少しは落ち着いたけど、終盤は再び高速な展開に。フィニッシュの登りでは、ライバルたちの動きに反応しているうちにスプリントしていた。明日に向けての良いウォームアップになったよ」と、得意の雨のステージを振り返る。「明日は今大会最も厳しいステージ。試走は済ませているし、何も心配していない。ハードな戦いになることだけは確かだ」。
マイヨヴェールのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はこの日もしっかりチームメイトに守られてフィニッシュしたが、マシューズが35ポイントを、コルブレッリが36ポイントを獲得したためポイント賞のリードが縮小。マシューズが37ポイント差にまで迫っている。
7月13日(火)第16ステージ
パス・ダ・ラ・カザ〜サン=ゴーダンス
距離:169km
獲得標高差:2,800m
天候:雨時々曇り
気温:8〜18度
休息日を過ごしたアンドラからツールはフランスに戻る。ツール史上最も標高のあるスタート地点(標高2,080m)を離れ、全長19kmにおよぶ長いニュートラル区間で高低差1,000mほどを降ってからレースはスタート。ピレネー山脈の4つの峠道を繋いだ169kmコースは再び逃げ切りを狙うアタッカー向きだ。
2級山岳ポール峠(全長11.4km・平均5.1%)と1級山岳ラ・コール峠(全長13.1km・平均6.6%)、そして2級山岳ポルテ・ダスペ峠(全長5.4km・平均7.1%)をこなし、残り7km地点で4級山岳アスプレ・サラ(全長800m・平均8.4%)をクリア。獲得標高差2,800mの中級山岳ステージは冷たい雨との戦いにもなった。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
54km地点 2級山岳ポール峠(全長11.4km・平均5.1%)
84.7km地点 スプリントポイント
101.1km地点 1級山岳ラ・コール峠(全長13.1km・平均6.6%)
136.5km地点 2級山岳ポルテ・ダスペ峠(全長5.4km・平均7.1%)
162km地点 4級山岳アスプレ・サラ(全長800m・平均8.4%)
2時間のアタック合戦の末に勝ち逃げが決まる
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)とアムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、バイクエクスチェンジ)を欠き、145名まで人数を減らしたメイン集団がアンドラを離れてフランスへ。多くの選手が0km地点を前に立ち止まり、ニュートラル区間で着込んでいたレインジャケットを脱いでから正式スタートを迎える。カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が単独で飛び出したまま最初の2級山岳ポール峠に差し掛かると、後方では断続的なカウンターアタックが繰り広げられた。
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)やマティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭アスグリーンに追いついたものの、フィニッシュまで100kmを残してメイン集団は再び一つに(グルペットを形成したカヴェンディッシュらを除く)。続いてジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)や、総合ジャンプアップを狙うウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)、ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)もアタックに加わったが決まらない。
総合に関係しないヤン・バークランツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)とファビアン・ドゥべ(フランス、トタルエネルジー)、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、バイクエクスチェンジ)の3名が飛び出し、ポイント賞2位マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)や同賞4位ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)を含む11名が追走グループを形成したところでメイン集団はペースを緩めた。スプリントポイントではマシューズが13ポイント、コルブレッリが11ポイントを稼いでいる。
1級山岳ラ・コール峠で追走グループから飛び出し、一人で先頭トリオまでブリッジに成功したのはパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)。この日の最高地点である標高1,395mの1級山岳ラ・コール峠で先頭はコンラッド、バークランツ、ドゥべの3名に絞られ、コルブレッリらが10秒遅れで続くもののタイム差を詰め切ることができない。
数々の峠の中でツール登場回数が5番目に多い2級山岳ポルテ・ダスペ峠に突入すると、頂上まで4kmを残して、フィニッシュまで36kmを残してオーストラリアンチャンピオンジャージを着るコンラッドが鋭いアタックを決める。独走に持ち込んだコンラッドが、バークランツやドゥべ代わって追走デュオを形成したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)とコルブレッリに20秒差をつけて頂上をクリアした。
時折突風のような向かい風が吹くステージ終盤をコンラッドが力強く独走した。追走していたゴデュとコルブレッリにはマシューズら9名が追いついたものの、最後の4級山岳アスプレ・サラを前にタイム差は1分に。最後まで独走を貫き、「地獄のように辛かった」というフィニッシュ手前の登りをこなし、コンラッドが勝利した。コルブレッリがステージ2位、マシューズがステージ3位に入っている。
15分遅れで4級山岳アスプレ・サラに差し掛かったメイン集団ではギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が動きを見せたものの、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が危機に陥ることなくこれらをカバー。メイン集団は13分49秒遅れでフィニッシュし、ポガチャルがマイヨジョーヌを守っている。
「ワールドツアーレースでの初勝利が世界最大のレースでやってくるなんて」と、ラスト40kmを平均スピード40.1km/hで駆け抜け勝利したコンラッドは語る。ボーラ・ハンスグローエは第12ステージのニルス・ポリッツ(ドイツ)に続く今大会ステージ2勝目。コンラッドにとってグランツール初勝利。
ジロ・デ・イタリアで2度総合トップ10フィニッシュしている29歳のオールラウンダーは、今大会第7ステージ7位、そして第14ステージ2位。3度目の正直で独走勝利を飾ってみせた。「この勝利を夢見てずっと戦ってきた。オーストリアンチャンピオンを着ている時に勝ててよかったよ。今大会すでに3回逃げているけど、いつも終盤まで仕掛けるのを待ってしまっていた。早めに仕掛けるモホリッチの背中を見送って、バウケの時も同じだった。だから今度は自分の番だと思ったんだ」。
マイヨジョーヌのポガチャルは「最初の2時間はひたすら全開だった。逃げが先行してから少しは落ち着いたけど、終盤は再び高速な展開に。フィニッシュの登りでは、ライバルたちの動きに反応しているうちにスプリントしていた。明日に向けての良いウォームアップになったよ」と、得意の雨のステージを振り返る。「明日は今大会最も厳しいステージ。試走は済ませているし、何も心配していない。ハードな戦いになることだけは確かだ」。
マイヨヴェールのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はこの日もしっかりチームメイトに守られてフィニッシュしたが、マシューズが35ポイントを、コルブレッリが36ポイントを獲得したためポイント賞のリードが縮小。マシューズが37ポイント差にまで迫っている。
ツール・ド・フランス2021第16ステージ結果
1位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 4:01:59 |
2位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:00:42 |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | |
4位 | ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス) | |
5位 | フランク・ボナムール(フランス、B&Bホテルズ・KTM) | |
6位 | アレクサンデル・アランブル(スペイン、アスタナ・プレミアテック) | |
7位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) | 0:00:45 |
8位 | ヤン・バークランツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
9位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:47 |
10位 | ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 0:01:03 |
14位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:13:49 |
DNS | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
DNS | アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、バイクエクスチェンジ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 66:23:06 |
2位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | 0:05:18 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:32 |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:05:33 |
5位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 0:05:58 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:06:16 |
7位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック) | 0:07:01 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:07:11 |
9位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:07:58 |
10位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:10:59 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 279pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | 242pts |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 195pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | 74pts |
2位 | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) | 66pts |
3位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 64pts |
4位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 64pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 66:23:06 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:32 |
3位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:14:13 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 199:35:14 |
2位 | EFエデュケーション・NIPPO | 0:35:42 |
3位 | アージェードゥーゼール・シトロエン | 0:50:26 |
text:Kei Tsuji in Saint-Gaudens, France
フォトギャラリー
Amazon.co.jp