2021/07/09(金) - 04:40
チームリーダーのペテル・サガンのリタイアに伴い、逃げ切りに作戦を変更したボーラ・ハンスグローエ。ツール・ド・フランス第12ステージの終盤12kmを独走したニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が自身初のステージ優勝を飾った。
7月8日(木)第12ステージ
サン=ポール=トロワ=シャトー〜ニーム
距離:159.4km
獲得標高差:1,700m
天候:晴れ
気温:26度
ピレネー山脈に向かうトランジション(移動)が始まった。サン=ポール=トロワ=シャトーをスタートする第12ステージは、序盤から細かいアップダウンと小刻みなワインディングを繰り返すアルデッシュ峡谷を通過。中盤にかけて3級山岳も設定された獲得標高差1,700mのアップダウンコースだが、スプリンターに残された数少ないチャンスでもある。
ニームに向かう道のりはカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が勝利した2019年大会第16ステージとほぼ同じで、サルバドールアジェンデ通りのフィニッシュラインも同じ。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がエディ・メルクスの記録ステージ34勝に並ぶことができるかに注目が集まったものの、前日に過酷なモンヴァントゥー二重登坂のタイムリミットと戦って疲弊した多くのスプリンターチームは作戦Bを実行した。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
83.7km地点 3級山岳タロー峠(全長4.4km・平均4.6%)
132.7km地点 スプリントポイント
アラフィリップら13名がアルデッシュ峡谷を逃げる
朝から強い北風がローヌ渓谷を吹き抜けた。ニームに向かって南下するレースは概ね追い風の中を走ることになる。レースの高速化が予想されるため主催者はスタート時間を10分間遅らせた。
第3ステージで落車した際にチェーンリングで負傷した膝が完治せず、調子を落としていたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はスタート地点のインタビューでDNSを宣言。8度目のマイヨヴェール獲得を逃したばかりか、2012年から続いていたツール完走記録が9で途絶えたサガンを除く155名がサン=ポール=トロワ=シャトーをスタートする。
案の定、ローヌ川をわたってすぐの平坦区間でレースは超高速化した。60km/hを超えるハイスピードで進行したメイン集団の後方ではエシュロンが発生。ピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)やゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)らが後方に取り残されたものの、アルデッシュ峡谷のアップダウンが始まると風は弱まり、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら13名が飛び出したところでメイン集団はペースを落とした。
逃げグループを形成した13名
アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
イマノル・エルビティ(スペイン、モビスター)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ハリー・スウェニー(オーストラリア、ロット・スーダル)
シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)
シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)
コナー・スウィフト(イギリス、アルケア・サムシック)
ブレント・ファンムール(ベルギー、ロット・スーダル)
ルカ・メズゲッツ(スロベニア、バイクエクスチェンジ)
セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・ネクストハッシュ)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタルエネルジー)
ドゥクーニンク・クイックステップをはじめとするスプリンターチームも逃げに選手を乗せ、グライペルやトゥーンス、ボアッソンハーゲンといった自ら集団スプリントを狙えるスピード自慢もエスケープ。スプリンターを擁するアルペシン・フェニックスやバーレーン・ヴィクトリアス、ユンボ・ヴィスマ、コフィディス、チームDSMが集団牽引に興味を示さなかったため、ステージ序盤の時点で先頭13名の逃げ切りはほぼ確定する。逃げに乗った総合22位エナオは50分57秒遅れ。UAEチームエミレーツにも逃げグループを懸命に追いかける理由がなく、フィニッシュまで90kmを残してタイム差は10分を超えた。
この日唯一のカテゴリー山岳である3級山岳タロー峠を越えた時点でタイム差は11分50秒。タイム差が12分45秒を超えた残り50km地点で逃げグループの中からステージ優勝争いが始まる。ポリッツのアタックをきっかけに協調体制は崩れ、残り40km地点でキュング、エルビティ、スウェニー、ポリッツの4名が抜け出して先頭グループを形成する。
まだステージ優勝経験のない4名の先行。追走グループではアラフィリップがカウンターアタックを仕掛けたものの、先頭とのタイム差30秒を詰めることができずに引き戻される。すると、スプリントポイントを先頭通過したポリッツが残り12km地点の短い登りを利用して飛び出した。
カチューシャ・アルペシン時代の2019年パリ〜ルーベで2位に入った大柄なルーラーがニームまで独走した。追走したエルビティとスウェニーとのタイム差を広げながらポリッツが独走フィニッシュ。追い風が吹いていたこともあり、独走開始からフィニッシュラインまでの平均スピードは57.2km/hだった。
2018年ドイツツアーでステージ優勝を飾っているポリッツが6年間のプロキャリアの中で2勝目。サガンがリタイアしたこの日、ボーラ・ハンスグローエに念願のステージ1勝目をもたらしたポリッツは、フィニッシュ後にバイクを高く掲げて喜んだ。「ペテル・サガンのリタイアは残念だったけど、ここ数日間調子の良さを感じていたので逃げに乗ることにした。逃げグループにはスプリンターが揃っていたので、ハードな展開に持ち込んで早めにアタックすることにしたんだ。全開でアタックして、独走でステージ優勝するなんて夢のようだ」。
メイン集団はマイヨヴェールを着るカヴェンディッシュを先頭に15分53秒遅れでフィニッシュ。マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は平穏に集団内で第12ステージを終えている。
7月8日(木)第12ステージ
サン=ポール=トロワ=シャトー〜ニーム
距離:159.4km
獲得標高差:1,700m
天候:晴れ
気温:26度
ピレネー山脈に向かうトランジション(移動)が始まった。サン=ポール=トロワ=シャトーをスタートする第12ステージは、序盤から細かいアップダウンと小刻みなワインディングを繰り返すアルデッシュ峡谷を通過。中盤にかけて3級山岳も設定された獲得標高差1,700mのアップダウンコースだが、スプリンターに残された数少ないチャンスでもある。
ニームに向かう道のりはカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が勝利した2019年大会第16ステージとほぼ同じで、サルバドールアジェンデ通りのフィニッシュラインも同じ。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がエディ・メルクスの記録ステージ34勝に並ぶことができるかに注目が集まったものの、前日に過酷なモンヴァントゥー二重登坂のタイムリミットと戦って疲弊した多くのスプリンターチームは作戦Bを実行した。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
83.7km地点 3級山岳タロー峠(全長4.4km・平均4.6%)
132.7km地点 スプリントポイント
アラフィリップら13名がアルデッシュ峡谷を逃げる
朝から強い北風がローヌ渓谷を吹き抜けた。ニームに向かって南下するレースは概ね追い風の中を走ることになる。レースの高速化が予想されるため主催者はスタート時間を10分間遅らせた。
第3ステージで落車した際にチェーンリングで負傷した膝が完治せず、調子を落としていたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はスタート地点のインタビューでDNSを宣言。8度目のマイヨヴェール獲得を逃したばかりか、2012年から続いていたツール完走記録が9で途絶えたサガンを除く155名がサン=ポール=トロワ=シャトーをスタートする。
案の定、ローヌ川をわたってすぐの平坦区間でレースは超高速化した。60km/hを超えるハイスピードで進行したメイン集団の後方ではエシュロンが発生。ピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)やゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)らが後方に取り残されたものの、アルデッシュ峡谷のアップダウンが始まると風は弱まり、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら13名が飛び出したところでメイン集団はペースを落とした。
逃げグループを形成した13名
アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
イマノル・エルビティ(スペイン、モビスター)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ハリー・スウェニー(オーストラリア、ロット・スーダル)
シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)
シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)
コナー・スウィフト(イギリス、アルケア・サムシック)
ブレント・ファンムール(ベルギー、ロット・スーダル)
ルカ・メズゲッツ(スロベニア、バイクエクスチェンジ)
セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・ネクストハッシュ)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタルエネルジー)
ドゥクーニンク・クイックステップをはじめとするスプリンターチームも逃げに選手を乗せ、グライペルやトゥーンス、ボアッソンハーゲンといった自ら集団スプリントを狙えるスピード自慢もエスケープ。スプリンターを擁するアルペシン・フェニックスやバーレーン・ヴィクトリアス、ユンボ・ヴィスマ、コフィディス、チームDSMが集団牽引に興味を示さなかったため、ステージ序盤の時点で先頭13名の逃げ切りはほぼ確定する。逃げに乗った総合22位エナオは50分57秒遅れ。UAEチームエミレーツにも逃げグループを懸命に追いかける理由がなく、フィニッシュまで90kmを残してタイム差は10分を超えた。
この日唯一のカテゴリー山岳である3級山岳タロー峠を越えた時点でタイム差は11分50秒。タイム差が12分45秒を超えた残り50km地点で逃げグループの中からステージ優勝争いが始まる。ポリッツのアタックをきっかけに協調体制は崩れ、残り40km地点でキュング、エルビティ、スウェニー、ポリッツの4名が抜け出して先頭グループを形成する。
まだステージ優勝経験のない4名の先行。追走グループではアラフィリップがカウンターアタックを仕掛けたものの、先頭とのタイム差30秒を詰めることができずに引き戻される。すると、スプリントポイントを先頭通過したポリッツが残り12km地点の短い登りを利用して飛び出した。
カチューシャ・アルペシン時代の2019年パリ〜ルーベで2位に入った大柄なルーラーがニームまで独走した。追走したエルビティとスウェニーとのタイム差を広げながらポリッツが独走フィニッシュ。追い風が吹いていたこともあり、独走開始からフィニッシュラインまでの平均スピードは57.2km/hだった。
2018年ドイツツアーでステージ優勝を飾っているポリッツが6年間のプロキャリアの中で2勝目。サガンがリタイアしたこの日、ボーラ・ハンスグローエに念願のステージ1勝目をもたらしたポリッツは、フィニッシュ後にバイクを高く掲げて喜んだ。「ペテル・サガンのリタイアは残念だったけど、ここ数日間調子の良さを感じていたので逃げに乗ることにした。逃げグループにはスプリンターが揃っていたので、ハードな展開に持ち込んで早めにアタックすることにしたんだ。全開でアタックして、独走でステージ優勝するなんて夢のようだ」。
メイン集団はマイヨヴェールを着るカヴェンディッシュを先頭に15分53秒遅れでフィニッシュ。マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は平穏に集団内で第12ステージを終えている。
ツール・ド・フランス2021第12ステージ結果
1位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:22:12 |
2位 | イマノル・エルビティ(スペイン、モビスター) | 0:00:31 |
3位 | ハリー・スウェニー(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
4位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | 0:01:58 |
5位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、バイクエクスチェンジ) | 0:02:06 |
6位 | アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
7位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
8位 | ブレント・ファンムール(ベルギー、ロット・スーダル) | |
9位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
10位 | セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・ネクストハッシュ) | |
DNS | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 47:22:43 |
2位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | 0:05:18 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:32 |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:05:33 |
5位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 0:05:58 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:06:16 |
7位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック) | 0:06:30 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:07:11 |
9位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:09:29 |
10位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:10:28 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 221pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | 162pts |
3位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 142pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 50pts |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 44pts |
3位 | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) | 42pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 47:22:43 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:32 |
3位 | オレリアン・パレパントル(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 0:24:44 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 143:03:26 |
2位 | アージェードゥーゼール・シトロエン | 0:10:01 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:12:47 |
text:Kei Tsuji in Nîmes, France
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