2021/07/05(月) - 06:13
気温7度の冷雨が降る標高2,107mのティーニュにたどり着いた172名のうち、完走扱いは165名。獲得標高差4,500mという厳しさに悪天候がプラスされ、リタイア者が続出したツール・ド・フランス第9ステージ。過酷なアルプス最終日を制したベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン)が総合2位に浮上した。
7月4日(日)第9ステージ
クリューズ〜ティーニュ
距離:144.9km
獲得標高差:4,500m
天候:雨
気温:7〜16度
アルプス2日目、そして長い長い大会1週目の最終日に、選手たちを待ち受けた獲得標高差4,500mの難関山岳ステージ。距離は144.9kmと短いが、前半から2級山岳ドマンシー峠と1級山岳セジー峠をこなさなければならず、後半にかけて超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)と2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)、そして最後は1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)を駆け上がる。
1級山岳の頂上通過後、ティーニュ湖畔の平坦路を1.9km走ってフィニッシュを迎えるため厳密には山頂フィニッシュではないが、ステージ全体の破壊力は抜群で、そこにアルプス山脈全体を覆う雨雲が追い討ちをかけた。前日に引き続きこの日もスタートからフィニッシュまで雨が降り続ける過酷なコンディションに。前日よりも雨脚は強く、全体的に標高も高い。ステージ優勝争い、マイヨジョーヌ争い、そして完走をかけたタイムリミットとの戦いが濡れたアルプスの山道で繰り広げられた。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
19.6km地点 2級山岳ドマンシー峠(全長2.5km・平均9.4%)
32.7km地点 スプリントポイント
49.4km地点 1級山岳セジー峠(全長9.4km・平均6.2%)
80.9km地点 超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)
93.3km地点 2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)
143km地点 1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)
ログリッチとファンデルプールのいないプロトンが動き出す
スタート地点クリューズに飛び込んできたのは、前日に6日間着用したマイヨジョーヌを失ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と、前日に35分遅れでフィニッシュしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)のリタイアのニュースだった。
雨が降る中、スタート地点で30分以上にわたって各国メディアのインタビューに応じたファンデルプールは東京五輪MTBクロスカントリーに照準を合わす。ログリッチにとってこの日のフィニッシュ地点ティーニュは高地トレーニングの場として慣れ親しんだ場所だが、休息日を待たずしてレースを去ることに。ログリッチも東京五輪ロードレースの準備に入る。
ファーストアタッカーたちを飲み込んだメイン集団からは、最初の2級山岳ドマンシー峠でジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)やピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)が仕掛けるも決まらない。40名ほどが飛び出した状態で迎えたスプリントポイントでは、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)を下したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が最大ポイントを手にしている。
アラフィリップやラトゥール、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)を含む43名が先行した状態で1級山岳セジー峠に突入すると、その中からマイヨアポワを着るワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)がアタックした。
遅れてマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)やナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)、セルヒオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)、ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)、ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)が追走グループを形成し、1級山岳セジー峠の頂上手前で先頭プールスをキャッチする。頂上通過後に単独飛び出したキンタナに再び4名が追いつき、続く超級山岳プレ峠へと入っていく。
10%前後の勾配が延々と続く超級山岳プレ峠でプールスが脱落すると、先頭では非ヨーロッパ出身選手5名(コロンビア2名、オーストラリア2名、カナダ1名)が先行した状態に。「今年はマイヨアポワ獲得がチームの目標」だと明言するキンタナが頂上まで2kmを残して再び加速。超級山岳プレ峠を制したキンタナがこの時点で山岳賞ランキング首位に躍り出た。
コロンビア勢を振り切ったオコーナーの独走
下り区間でキンタナに追いついたのはオコーナーとイギータだけ。キンタナが2級山岳ロズラン峠で山岳賞のリードを広げると、追走グループのウッズらに2分25秒差をつけて「アルプスで最もトリッキーな下り」と呼ばれるロズラン峠の下りへ。ここでオコーナーはイギータとキンタナから35秒ものタイムロスを被ったものの、その後の平坦区間で再び先頭に追いついている。
2級山岳ロズラン峠を下りきり、フィニッシュまで25kmを残した時点で先頭トリオとUAEチームエミレーツ率いるメイン集団のタイム差は9分を超えた。第8ステージを終えた時点でオコーナーは8分13秒遅れの総合14位。つまりオコーナーが暫定マイヨジョーヌの状態で最後の1級山岳モンテ・ド・ティーニュを迎えることに。
ステージ優勝をかけた戦いから最初に脱落したのは暫定マイヨアポワのキンタナ。フィニッシュまで22kmを残してキンタナが遅れると、続いて残り17km地点でイギータが脱落する。UAEチームエミレーツがメイン集団のペースを上げたため暫定マイヨジョーヌの座はタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に戻ったが、それでも大幅な総合ジャンプアップとステージ優勝に向けてオコーナーは先頭を走り続けた。
後続に2分以上のタイム差をつけて迎えた残り10km地点でメイン集団とのタイム差は7分45秒。長時間にわたって追走グループ内で走行していたマティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)がペースを上げて2番手イギータと3番手キンタナをパスしたものの、ペースの落ちない先頭オコーナーとの5分差を埋めるのは不可能だった。
1級山岳モンテ・ド・ティーニュを先頭で登り切ったオコーナーが独走のままフィニッシュ。カッタネオが5分07秒差のステージ2位に入り、ステージ3位にはなんとコルブレッリが入っている。
休息日を前にUAEチームエミレーツに一矢報いようと1級山岳モンテ・ド・ティーニュでイネオス・グレナディアーズが集団ペースアップを図り、ジョナタン・カストロビエホ(スペイン)とゲラント・トーマス(イギリス)に牽引されたリチャル・カラパス(エクアドル)残り5kmを切ったところでアタックしたが、マイヨジョーヌのポガチャルは悠々と反応し、逆にカウンターアタックでライバルたちを振り切った。
ポガチャルは総合4位リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)や総合5位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)、総合6位カラパス、総合8位エンリク・マス(スペイン、モビスター)に32秒差をつけてステージ6位でフィニッシュ。そこからさらに1分以上遅れたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)が総合3位から8位にダウンした一方で、逃げ切り勝利を飾ったオコーナーは総合14位から2位まで大きくジャンプアップした。
「ツールに出場するだけでも夢のようなのに、そこでステージ優勝するなんて。フィニッシュした時、涙をこらえることができなかった。これまで支えてくれた人々、そして信頼を寄せてくれているチームに感謝したい」。オーストラリア・パース出身で、2017年にディメンションデータでプロ入りした25歳は初出場のツールで手にした初のステージ優勝を心から喜ぶ。
オコーナーは2020年には獲得標高差5,300mのジロ・デ・イタリア第17ステージで優勝しており、今年アージェードゥーゼール・シトロエンに移籍した。フランスチームでエースを担うオーストラリア人は「もともと逃げに乗る作戦ではなかったけど、あるところで総合ジャンプアップとステージ優勝の可能性を感じた。下りでは遅れてしまったけど、ペースを崩さずに、脚をつることなく走り続ければ勝てると思っていた」とコメント。4時間半にわたって平均317Wを出力し、5,195kcalを消費したオコーナーが総合争いに割って入った。
「昨日よりも天気が悪かったので、多くの選手が苦しんだと思う。自分は今日のような寒い日よりも暑い日の方が心配だ」と語るのはマイヨジョーヌを守ったポガチャル。オコーナーとの総合タイム差は2分01秒まで縮まったが、その他のライバルたちとの総合タイム差は5分以上に広がった。「休息日を前にマイヨジョーヌを失ってしまうんじゃないかと心配になったけど、守り切ることができてよかったよ」。
あまりの過酷なコンディションにスプリンターたちは苦しい走りを強いられた。この日のタイムリミットは37分20秒遅れ(ステージ優勝者+14%)。31分37秒遅れでフィニッシュした最も大きなグルペットにビッグスプリンターたちの姿はなく、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)は35分33秒遅れ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は35分49秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。「最も恐れていたステージを乗り越えることができて感情的になっている。レースに残ることができてよかった・・・」とマイヨヴェールを受け取ったカヴェンディッシュは語っている。
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・ネクストハッシュ)を含むグループはタイミリミットまで5秒を残してフィニッシュに滑り込んだが、40分11秒遅れたブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・KTM)や41分38秒遅れたアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)はタイムオーバーで失格扱いに。単独で1時間24分01秒遅れでフィニッシュまで走り切ったニコラス・ドラミニ(南アフリカ、クベカ・ネクストハッシュ)を含めて7名がタイムオーバーとなった。
この日は他にも第3ステージの優勝者ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)やナンス・ペテルス(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)、ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)が途中リタイア。DNSを含めて12名がレースを去っている。
7月4日(日)第9ステージ
クリューズ〜ティーニュ
距離:144.9km
獲得標高差:4,500m
天候:雨
気温:7〜16度
アルプス2日目、そして長い長い大会1週目の最終日に、選手たちを待ち受けた獲得標高差4,500mの難関山岳ステージ。距離は144.9kmと短いが、前半から2級山岳ドマンシー峠と1級山岳セジー峠をこなさなければならず、後半にかけて超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)と2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)、そして最後は1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)を駆け上がる。
1級山岳の頂上通過後、ティーニュ湖畔の平坦路を1.9km走ってフィニッシュを迎えるため厳密には山頂フィニッシュではないが、ステージ全体の破壊力は抜群で、そこにアルプス山脈全体を覆う雨雲が追い討ちをかけた。前日に引き続きこの日もスタートからフィニッシュまで雨が降り続ける過酷なコンディションに。前日よりも雨脚は強く、全体的に標高も高い。ステージ優勝争い、マイヨジョーヌ争い、そして完走をかけたタイムリミットとの戦いが濡れたアルプスの山道で繰り広げられた。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
19.6km地点 2級山岳ドマンシー峠(全長2.5km・平均9.4%)
32.7km地点 スプリントポイント
49.4km地点 1級山岳セジー峠(全長9.4km・平均6.2%)
80.9km地点 超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)
93.3km地点 2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)
143km地点 1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)
ログリッチとファンデルプールのいないプロトンが動き出す
スタート地点クリューズに飛び込んできたのは、前日に6日間着用したマイヨジョーヌを失ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と、前日に35分遅れでフィニッシュしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)のリタイアのニュースだった。
雨が降る中、スタート地点で30分以上にわたって各国メディアのインタビューに応じたファンデルプールは東京五輪MTBクロスカントリーに照準を合わす。ログリッチにとってこの日のフィニッシュ地点ティーニュは高地トレーニングの場として慣れ親しんだ場所だが、休息日を待たずしてレースを去ることに。ログリッチも東京五輪ロードレースの準備に入る。
ファーストアタッカーたちを飲み込んだメイン集団からは、最初の2級山岳ドマンシー峠でジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)やピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)が仕掛けるも決まらない。40名ほどが飛び出した状態で迎えたスプリントポイントでは、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)を下したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が最大ポイントを手にしている。
アラフィリップやラトゥール、ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)を含む43名が先行した状態で1級山岳セジー峠に突入すると、その中からマイヨアポワを着るワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)がアタックした。
遅れてマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)やナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)、セルヒオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)、ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)、ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)が追走グループを形成し、1級山岳セジー峠の頂上手前で先頭プールスをキャッチする。頂上通過後に単独飛び出したキンタナに再び4名が追いつき、続く超級山岳プレ峠へと入っていく。
10%前後の勾配が延々と続く超級山岳プレ峠でプールスが脱落すると、先頭では非ヨーロッパ出身選手5名(コロンビア2名、オーストラリア2名、カナダ1名)が先行した状態に。「今年はマイヨアポワ獲得がチームの目標」だと明言するキンタナが頂上まで2kmを残して再び加速。超級山岳プレ峠を制したキンタナがこの時点で山岳賞ランキング首位に躍り出た。
コロンビア勢を振り切ったオコーナーの独走
下り区間でキンタナに追いついたのはオコーナーとイギータだけ。キンタナが2級山岳ロズラン峠で山岳賞のリードを広げると、追走グループのウッズらに2分25秒差をつけて「アルプスで最もトリッキーな下り」と呼ばれるロズラン峠の下りへ。ここでオコーナーはイギータとキンタナから35秒ものタイムロスを被ったものの、その後の平坦区間で再び先頭に追いついている。
2級山岳ロズラン峠を下りきり、フィニッシュまで25kmを残した時点で先頭トリオとUAEチームエミレーツ率いるメイン集団のタイム差は9分を超えた。第8ステージを終えた時点でオコーナーは8分13秒遅れの総合14位。つまりオコーナーが暫定マイヨジョーヌの状態で最後の1級山岳モンテ・ド・ティーニュを迎えることに。
ステージ優勝をかけた戦いから最初に脱落したのは暫定マイヨアポワのキンタナ。フィニッシュまで22kmを残してキンタナが遅れると、続いて残り17km地点でイギータが脱落する。UAEチームエミレーツがメイン集団のペースを上げたため暫定マイヨジョーヌの座はタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に戻ったが、それでも大幅な総合ジャンプアップとステージ優勝に向けてオコーナーは先頭を走り続けた。
後続に2分以上のタイム差をつけて迎えた残り10km地点でメイン集団とのタイム差は7分45秒。長時間にわたって追走グループ内で走行していたマティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)がペースを上げて2番手イギータと3番手キンタナをパスしたものの、ペースの落ちない先頭オコーナーとの5分差を埋めるのは不可能だった。
1級山岳モンテ・ド・ティーニュを先頭で登り切ったオコーナーが独走のままフィニッシュ。カッタネオが5分07秒差のステージ2位に入り、ステージ3位にはなんとコルブレッリが入っている。
休息日を前にUAEチームエミレーツに一矢報いようと1級山岳モンテ・ド・ティーニュでイネオス・グレナディアーズが集団ペースアップを図り、ジョナタン・カストロビエホ(スペイン)とゲラント・トーマス(イギリス)に牽引されたリチャル・カラパス(エクアドル)残り5kmを切ったところでアタックしたが、マイヨジョーヌのポガチャルは悠々と反応し、逆にカウンターアタックでライバルたちを振り切った。
ポガチャルは総合4位リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO)や総合5位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)、総合6位カラパス、総合8位エンリク・マス(スペイン、モビスター)に32秒差をつけてステージ6位でフィニッシュ。そこからさらに1分以上遅れたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)が総合3位から8位にダウンした一方で、逃げ切り勝利を飾ったオコーナーは総合14位から2位まで大きくジャンプアップした。
「ツールに出場するだけでも夢のようなのに、そこでステージ優勝するなんて。フィニッシュした時、涙をこらえることができなかった。これまで支えてくれた人々、そして信頼を寄せてくれているチームに感謝したい」。オーストラリア・パース出身で、2017年にディメンションデータでプロ入りした25歳は初出場のツールで手にした初のステージ優勝を心から喜ぶ。
オコーナーは2020年には獲得標高差5,300mのジロ・デ・イタリア第17ステージで優勝しており、今年アージェードゥーゼール・シトロエンに移籍した。フランスチームでエースを担うオーストラリア人は「もともと逃げに乗る作戦ではなかったけど、あるところで総合ジャンプアップとステージ優勝の可能性を感じた。下りでは遅れてしまったけど、ペースを崩さずに、脚をつることなく走り続ければ勝てると思っていた」とコメント。4時間半にわたって平均317Wを出力し、5,195kcalを消費したオコーナーが総合争いに割って入った。
「昨日よりも天気が悪かったので、多くの選手が苦しんだと思う。自分は今日のような寒い日よりも暑い日の方が心配だ」と語るのはマイヨジョーヌを守ったポガチャル。オコーナーとの総合タイム差は2分01秒まで縮まったが、その他のライバルたちとの総合タイム差は5分以上に広がった。「休息日を前にマイヨジョーヌを失ってしまうんじゃないかと心配になったけど、守り切ることができてよかったよ」。
あまりの過酷なコンディションにスプリンターたちは苦しい走りを強いられた。この日のタイムリミットは37分20秒遅れ(ステージ優勝者+14%)。31分37秒遅れでフィニッシュした最も大きなグルペットにビッグスプリンターたちの姿はなく、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)は35分33秒遅れ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は35分49秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。「最も恐れていたステージを乗り越えることができて感情的になっている。レースに残ることができてよかった・・・」とマイヨヴェールを受け取ったカヴェンディッシュは語っている。
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・ネクストハッシュ)を含むグループはタイミリミットまで5秒を残してフィニッシュに滑り込んだが、40分11秒遅れたブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・KTM)や41分38秒遅れたアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)はタイムオーバーで失格扱いに。単独で1時間24分01秒遅れでフィニッシュまで走り切ったニコラス・ドラミニ(南アフリカ、クベカ・ネクストハッシュ)を含めて7名がタイムオーバーとなった。
この日は他にも第3ステージの優勝者ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)やナンス・ペテルス(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)、ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)が途中リタイア。DNSを含めて12名がレースを去っている。
ツール・ド・フランス2021第9ステージ結果
1位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 4:26:43 |
2位 | マティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:05:07 |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:05:34 |
4位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:05:36 |
5位 | フランク・ボナムール(フランス、B&Bホテルズ・KTM) | 0:06:02 |
6位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
7位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:06:34 |
8位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | |
9位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
10位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | |
11位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 0:06:38 |
12位 | ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・NIPPO) | 0:06:47 |
13位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
14位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:07:32 |
15位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック) | 0:07:36 |
16位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
17位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:07:59 |
86位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 0:31:37 |
DNF | ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | |
DNF | ナンス・ペテルス(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | |
DNF | ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル) | |
OTL | ステファン・デボッド(南アフリカ、アスタナ・プレミアテック) | |
OTL | ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・KTM) | |
OTL | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | |
OTL | ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
OTL | アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック) | |
OTL | ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ) | |
OTL | ニコラス・ドラミニ(南アフリカ、クベカ・ネクストハッシュ) | |
DNS | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
DNS | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 34:11:10 |
2位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 0:02:01 |
3位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO) | 0:05:18 |
4位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:32 |
5位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:05:33 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:05:47 |
7位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:05:58 |
8位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック) | 0:06:12 |
9位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:07:02 |
10位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:07:22 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 168pts |
2位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | 130pts |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 121pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 50pts |
2位 | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) | 42pts |
3位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | 39pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 34:11:10 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 0:05:32 |
3位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:07:22 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 102:51:07 |
2位 | アージェードゥーゼール・シトロエン | 0:18:04 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:27:33 |
text:Kei Tsuji in Tignes, France
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