2021/06/26(土) - 12:38
世界最高峰のスプリンターたちが競い合う緑色のマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)。第108回ツール・ド・フランスに集結する注目のトップスプリンターたちを紹介しよう。
昨年マイヨヴェールを着用したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)は不在 photo:CorVos
グリーンジャージを意味するマイヨヴェールはポイント賞ランキングトップの選手に与えられる特別賞ジャージ。ツール開催50周年を記念して1953年より導入されてからいままで守られてきた緑の伝統は(1968年は除く)、今年もチェコの自動車メーカーで大会のオフィシャルカーサプライヤーでもあるシュコダがスポンサーを務める。
「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4つに分類された全21ステージは、それぞれ異なるポイント配分が設定。2015年以降は平坦ステージにより高い配点がされたため、ポイントを狙うスプリンターたちによって争われる。
マイヨヴェール獲得に重要なのはステージ中盤に配置される中間スプリントポイント。たとえ平坦ステージで優勝ができなかったとしても、未勝利ながらグリーンジャージを獲得した2015年のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のように、確実に上位でフィニッシュし、逃げに乗ったりメイン集団から飛び出しスプリントポイントを加算することが受賞に近づく。
ポイント配分(いずれも上位15名に付与)
平坦ステージ(第1,2,3,4,6,10,12,13,19,21ステージ)
・優勝者50pts、以下30、20、18、16、14、12、10、8、7、6、5、4、3、2pts
中級山岳ステージ(第7,14,16ステージ)
・優勝者30pts、以下25、22、19、17、15、13、11、9、7、6、5、4、3、2pts
上級山岳ステージ&個人TT(第5,8,9,11,15,17,18,20ステージ)
・優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
スプリントポイント
・先頭通過者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
本命サガンにユアンやファンデルプール、ファンアールトらが競演
2020年はマイヨヴェールを逃したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Makoto.AYANO
今大会のマイヨヴェール最右翼は8度目の獲得に挑むサガンだろう。昨年奪われたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が膝の故障により不出場のため、ジロ・デ・イタリアでマリアチクラミーノを獲得した勢いをそのままに自身の持つ最多記録の更新が期待される。
かつての圧倒的な強さに陰りは見えるサガンだが、平坦ステージでピュアスプリンターたちと競り合い、丘陵ステージで優勝を、そして山岳ステージではスプリントポイントを着実に加算する走りでマイヨヴェールを狙う。
その対抗として挙げられるのが直近のイタリア選手権で優勝したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)だ。前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネではステージ1勝(2位が3回)とポイント賞を獲得し、キャリアを通しても際立った調子とサガン同様に登りに強い脚質を武器にポイントを狙いに行く可能性は高い。
平坦ステージを狙うピュアスプリンターで注目なのが、今年3大グランツールでの勝利を目指すカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。ジロ・デ・イタリアでステージ2勝を挙げるとツールのため早々に離脱しコンディションは万全。ロジャー・クルーゲ(ドイツ)とジャスパー・デブイスト(ベルギー)が敷く最強トレインが、ミラノ〜サンレモのため登坂力を鍛えたユアンを導けば手がつけられない。
今年3大グランツールでの勝利を願うカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:CorVos
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでグリーンジャージを獲得したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) (c)Équipe Cycliste Groupama-FDJ
スプリンターの中で今季最多の7勝を挙げているアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)にも忘れてはならず、母国のツールには3年振りの登場だが、昨年ジロではステージ4勝とマリアチクラミーノを獲得し快走を見せた。そして今大会、ある意味最もスプリント勝利が期待されるのがマーク・カヴェンディッシュ(イギリス・ドゥクーニンク・クイックステップ)だろう。6年振りに古巣チームへ復帰すると、4月のツアー・オブ・ターキーで3日連続の勝利(区間4勝)、6月のベルギーツアーでも区間1勝を挙げ復活を印象付けた。出場の叶わなかったベネットに代わり、30勝まで積み重ねた現役最多ツール区間勝利数の更新を目指す。
マイヨヴェールに食指は動かないものの、平坦でも丘陵ステージでも勝利を狙えるのがシクロクロスからやってきたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の2人だ。昨年は総合エースのアシストをしながら集団スプリントで2勝と異次元の走りを見せたファンアールトは、開幕前の記者会見で「ステージを狙う自由が与えられた」とコメントしている。またグランツール初出場となるファンデルプールは東京五輪出場のため途中リタイアが濃厚だが、時にはクライマーをも退ける登坂力を武器に全方位で勝利を狙ってくるだろう。
2018年以来3年ぶりのツール復帰となるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto AYANO
東京五輪のマウンテンバイクを今年最大の目標と宣言しているマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
ファンデルプールのチームメイトである元ベルギー王者ティム・メルリールもマイヨヴェールの有力候補だ。今年のジロで区間1勝し、トップスプリンターの仲間入りした28歳を「現役最速」と呼ぶ声も多く、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー)とのコンビネーションにも注目される。
トレック・セガフレードからは元世界王者マッズ・ピーダスン(デンマーク)、今年のミラノ〜サンレモを制したヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)、エドワード・トゥーンス(ベルギー)の3人が今年も揃い波状攻撃を見せるか。また最終日パリに愛されるベテランのアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタル・ディレクトエネルジー)、2017年にマイヨヴェールを獲得し古巣に復帰したマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)も忘れてはならない。
他にも母国フランスでの勝利が欲しいナセル・ブアニ(アルケア・サムシック)とブライアン・コカール(B&Bホテルズ KTM)や、昨年ツールで勝利に一歩届かなかった194cmの長身ケース・ボル(オランダ、チームDSM)、兄ボーイと共に出場するダニー・ファンポッペル(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)らがフィニッシュ前の争いに絡んでくるだろう。
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グリーンジャージを意味するマイヨヴェールはポイント賞ランキングトップの選手に与えられる特別賞ジャージ。ツール開催50周年を記念して1953年より導入されてからいままで守られてきた緑の伝統は(1968年は除く)、今年もチェコの自動車メーカーで大会のオフィシャルカーサプライヤーでもあるシュコダがスポンサーを務める。
「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4つに分類された全21ステージは、それぞれ異なるポイント配分が設定。2015年以降は平坦ステージにより高い配点がされたため、ポイントを狙うスプリンターたちによって争われる。
マイヨヴェール獲得に重要なのはステージ中盤に配置される中間スプリントポイント。たとえ平坦ステージで優勝ができなかったとしても、未勝利ながらグリーンジャージを獲得した2015年のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のように、確実に上位でフィニッシュし、逃げに乗ったりメイン集団から飛び出しスプリントポイントを加算することが受賞に近づく。
ポイント配分(いずれも上位15名に付与)
平坦ステージ(第1,2,3,4,6,10,12,13,19,21ステージ)
・優勝者50pts、以下30、20、18、16、14、12、10、8、7、6、5、4、3、2pts
中級山岳ステージ(第7,14,16ステージ)
・優勝者30pts、以下25、22、19、17、15、13、11、9、7、6、5、4、3、2pts
上級山岳ステージ&個人TT(第5,8,9,11,15,17,18,20ステージ)
・優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
スプリントポイント
・先頭通過者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
本命サガンにユアンやファンデルプール、ファンアールトらが競演
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今大会のマイヨヴェール最右翼は8度目の獲得に挑むサガンだろう。昨年奪われたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が膝の故障により不出場のため、ジロ・デ・イタリアでマリアチクラミーノを獲得した勢いをそのままに自身の持つ最多記録の更新が期待される。
かつての圧倒的な強さに陰りは見えるサガンだが、平坦ステージでピュアスプリンターたちと競り合い、丘陵ステージで優勝を、そして山岳ステージではスプリントポイントを着実に加算する走りでマイヨヴェールを狙う。
その対抗として挙げられるのが直近のイタリア選手権で優勝したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)だ。前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネではステージ1勝(2位が3回)とポイント賞を獲得し、キャリアを通しても際立った調子とサガン同様に登りに強い脚質を武器にポイントを狙いに行く可能性は高い。
平坦ステージを狙うピュアスプリンターで注目なのが、今年3大グランツールでの勝利を目指すカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。ジロ・デ・イタリアでステージ2勝を挙げるとツールのため早々に離脱しコンディションは万全。ロジャー・クルーゲ(ドイツ)とジャスパー・デブイスト(ベルギー)が敷く最強トレインが、ミラノ〜サンレモのため登坂力を鍛えたユアンを導けば手がつけられない。
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スプリンターの中で今季最多の7勝を挙げているアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)にも忘れてはならず、母国のツールには3年振りの登場だが、昨年ジロではステージ4勝とマリアチクラミーノを獲得し快走を見せた。そして今大会、ある意味最もスプリント勝利が期待されるのがマーク・カヴェンディッシュ(イギリス・ドゥクーニンク・クイックステップ)だろう。6年振りに古巣チームへ復帰すると、4月のツアー・オブ・ターキーで3日連続の勝利(区間4勝)、6月のベルギーツアーでも区間1勝を挙げ復活を印象付けた。出場の叶わなかったベネットに代わり、30勝まで積み重ねた現役最多ツール区間勝利数の更新を目指す。
マイヨヴェールに食指は動かないものの、平坦でも丘陵ステージでも勝利を狙えるのがシクロクロスからやってきたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の2人だ。昨年は総合エースのアシストをしながら集団スプリントで2勝と異次元の走りを見せたファンアールトは、開幕前の記者会見で「ステージを狙う自由が与えられた」とコメントしている。またグランツール初出場となるファンデルプールは東京五輪出場のため途中リタイアが濃厚だが、時にはクライマーをも退ける登坂力を武器に全方位で勝利を狙ってくるだろう。
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ファンデルプールのチームメイトである元ベルギー王者ティム・メルリールもマイヨヴェールの有力候補だ。今年のジロで区間1勝し、トップスプリンターの仲間入りした28歳を「現役最速」と呼ぶ声も多く、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー)とのコンビネーションにも注目される。
トレック・セガフレードからは元世界王者マッズ・ピーダスン(デンマーク)、今年のミラノ〜サンレモを制したヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)、エドワード・トゥーンス(ベルギー)の3人が今年も揃い波状攻撃を見せるか。また最終日パリに愛されるベテランのアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、トタル・ディレクトエネルジー)、2017年にマイヨヴェールを獲得し古巣に復帰したマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)も忘れてはならない。
他にも母国フランスでの勝利が欲しいナセル・ブアニ(アルケア・サムシック)とブライアン・コカール(B&Bホテルズ KTM)や、昨年ツールで勝利に一歩届かなかった194cmの長身ケース・ボル(オランダ、チームDSM)、兄ボーイと共に出場するダニー・ファンポッペル(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)らがフィニッシュ前の争いに絡んでくるだろう。
歴代マイヨヴェール受賞者
2020年 | サム・ベネット(アイルランド) |
2019年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2018年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2017年 | マイケル・マシューズ(オーストラリア) |
2016年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2015年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2014年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2013年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2012年 | ペテル・サガン(スロバキア) |
2011年 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス) |
2010年 | アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア) |
2009年 | トル・フースホフト(ノルウェー) |
2008年 | オスカル・フレイレ(スペイン) |
2007年 | トム・ボーネン(ベルギー) |
2006年 | ロビー・マキュアン(オーストラリア) |
2005年 | トル・フースホフト(ノルウェー) |
2004年 | ロビー・マキュアン(オーストラリア) |
2003年 | バーデン・クック(オーストラリア) |
2002年 | ロビー・マキュアン(オーストラリア) |
2001年 | エリック・ツァベル(ドイツ) |
2000年 | エリック・ツァベル(ドイツ) |
1999年 | エリック・ツァベル(ドイツ) |
1998年 | エリック・ツァベル(ドイツ) |
1997年 | エリック・ツァベル(ドイツ) |
1996年 | エリック・ツァベル(ドイツ) |
1995年 | ローラン・ジャラベール(フランス) |
1994年 | ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン) |
1993年 | ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン) |
1992年 | ローラン・ジャラベール(フランス) |
1991年 | ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン) |
1990年 | オラフ・ルードヴィッヒ(ドイツ) |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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