2021/06/25(金) - 12:17
2021年6月26日、第108回ツール・ド・フランスがフランス北西部のブルターニュ地方で開幕する。パンチャー向きの3級山岳フィニッシュに始まり、ピュアスプリンター向きの平坦ステージや個人タイムトライアルを経てアルプスの難関山岳に向かう大会前半のステージを紹介します。
6月26日(土)第1ステージ
ブレスト〜ランデルノー 197.8km
第108回ツール・ド・フランスは「地の果て」を意味するフィニステール県で開幕する。大西洋に突き出たブルターニュ半島の西端に位置するブレストが映えある開幕地に。ブルターニュ地方でツールが開幕するのはこれが7回目で、ブレストがグランデパールを迎えるのは2008年大会(バルベルデが初日を制し、サストレが総合優勝)以来13年ぶり4回目となる。
個人タイムトライアルで開幕しないため、スプリンターに貴重なマイヨジョーヌ着用のチャンスが巡ってくるかと言うと、決してそうではない。ブレストからランデルノーまでの200km弱のコースは細かいアップダウンの連続で、実に6つのカテゴリー山岳が詰め込まれている。逃げに乗って山岳ポイントを量産すれば翌日にマイヨアポワを着ることができるため、特にワイルドカード枠のUCIプロチームがスタート直後からアタックを連発することになるだろう。
さながらアルデンヌクラシックのようなコースはずばりパンチャー向き。モンダレ山塊に吹く風に注意しながら無数のアップダウンをこなした先に待つのが、直訳すると「狼たちの穴」を意味する3級山岳フォス・オ・ルー(全長3km・平均5.7%)の登りフィニッシュだ。登りはじめてしばらくは最大14%の勾配が続き、フィニッシュに向かって徐々に勾配が緩む。最初のマイヨジョーヌ着用者を決めるこの登りは、言うならば13年前に勝利したバルベルデ向きのレイアウト。もちろん「狼たち」の一員、アラフィリップ向きであるとも言える。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
8.6km地点 4級山岳トレバオラン峠(全長900m・平均5.1%)
27.2km地点 4級山岳ロスノエン峠(全長3km・平均4%)
61.5km地点 3級山岳ロクロナン峠(全長900m・平均9.3%)
115km地点 4級山岳スタン・アル・ギャロン峠(全長2km・平均3.4%)
135.1km地点 スプリントポイント
150.7km地点 4級山岳サンリヴォアル峠(全長2.5km・平均3.9%)
197.8km地点 3級山岳フォス・オ・ルー(全長3km・平均5.7%・最大14%)
6月27日(日)第2ステージ
ペロス=ギレック〜ミュール=ド=ブルターニュ ゲルレダン 183.5km
開幕から2日連続の3級山岳フィニッシュ。ブルターニュ地方を走る第2ステージは引き続きパンチャー向きだ。海沿いのペロス=ギレックをスタート後、美しきグラニット・ローズ海岸を横目にレースは東に向かう。海岸線近くを走るステージ前半100kmは、北東から吹き付ける海風に注意したい。
3つ目の4級山岳サンブリユー峠を過ぎるとコースは内陸に向かい、3年ぶりの登場となる3級山岳ミュール=ド=ブルターニュ(全長2km・平均6.9%)を目指す。15.3km地点で一旦通過するフィニッシュラインは、3級山岳の山頂であると同時にボーナスポイントでもある。コースマップ&高低図に「B」で示されているこのボーナスポイントでは上位通過者3名に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが与えられる。まだまだ総合タイム差10秒以内に大勢の選手がひしめく接戦状態のため、ここで抜け出してマイヨジョーヌを奪いにくる選手も出てくるだろう。
3級山岳ミュール=ド=ブルターニュは前日の3級山岳フォス・オ・ルーと比べると距離は短く、勾配はきつい。前半にかけて10%の勾配が続くものの、ラ・フレーシュ・ワロンヌの「ユイの壁」のような壁感はない。パンチャーのために誂えられたレイアウトだが、登坂時間が4分に満たない短時間決戦のため、過去には軽量なスプリンターも勝負に残っている。平均6.9%の登りを平均スピード30km/hオーバーで駆け上がった小集団がスプリントバトルを繰り広げることになりそう。なお、平坦ステージではないため「3kmルール」が適応されない。登り口に向けた位置取り中に落車やメカトラに見舞われると思わぬタイムを失う可能性も。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
72.8km地点 4級山岳サントバルブ峠(全長900m・平均6.6%)
85km地点 スプリントポイント
103.2km地点 4級山岳ポルディック峠(全長2.1km・平均3.2%)
115.2km地点 4級山岳サンブリュー峠(全長1km・平均8%)
165.2km地点 4級山岳ヴィラージュ・ド・ミュール=ド=ブルターニュ(全長1.6km・平均4.1%)
168.2km地点 ボーナス/3級山岳ミュール=ド=ブルターニュ(全長2km・平均6.9%)
183.5km地点 3級山岳ミュール=ド=ブルターニュ(全長2km・平均6.9%)
6月28日(月)第3ステージ
ロリアン〜ポンティヴィー 182.9km
2日間パンチャーたちの姿を後ろから見守るしかなかったピュアスプリンターたちの出番だ。セーリングシティとして知られる港町ロリアンをスタート後、最初の1時間は海沿いの平坦路。そこから内陸部に進路を取り、2つの4級山岳を含むブルターニュ地方らしい細かいアップダウンを繰り返しながらダヴィド・ラパルティアンUCI会長の故郷ポンティヴィーを目指す。
決して真っ平らなコースレイアウトではないが、まだまだ充電満タンのスプリンターチームは力づくで大集団スプリントに持ち込むだろう。残り2.3km地点でブラヴェ川を跨ぐカルティエ橋を渡り(直角コーナーが2つ連続)、残り1.4km地点の最終コーナーを曲がると、ポンティヴィーが誇るロアン城のすぐ横に引かれたフィニッシュライン目掛けてまっしぐら。スプリントトレインを駆使した高速バトルが繰り広げられることになる。
ステージ優勝者には最大50ポイントが与えられ、ここからマイヨヴェール争いも本格化する。しかし3級山岳フィニッシュが設定されていた第1ステージ&第2ステージでも最大50ポイントが獲得可能なため、ピュアスプリンターにマイヨヴェールが移るのは翌日に持ち越しになりそうだ。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
91.1km地点 4級山岳カドゥーダル峠(全長1.7m・平均6.3%)
118.3km地点 スプリントポイント
148.6km地点 4級山岳プリュメリオー峠(全長2.2km・平均3.1%)
6月29日(火)第4ステージ
ルドン〜フジェール 150.4km
ブルターニュ最終日の第4ステージはルドンからフジェールまでの150.4km。距離は短めで、しかも今大会唯一の山岳ポイントが全く登場しない平坦コースで、しかも翌日にはマイヨジョーヌ争いにおいて重要な個人タイムトライアルが控えている。強風による集団粉砕が発生しない限り、2日連続で大集団スプリントに持ち込まれるはずだ。
フジェールの街がツールのフィニッシュを迎え入れるのは6年ぶり。2015年大会第7ステージを制したのはカヴェンディッシュだった。今回も同じフィニッシュレイアウトが採用されており、残り800mで最後のロンポワン(ラウンドアバウト)を通過するとフィニッシュラインまでは1%ほどの登り緩斜面となる。
最終的なマイヨヴェール獲得を目指すピュアスプリンターは残り36km地点のスプリントポイントでもポイント獲得を狙ってくる。つまりスプリンターは1日に2回のスプリントをこなさなければならない。逆に、パリまで走り切ることを想定していない(マイヨヴェールに興味を示さない)スプリンターは、ステージ優勝に専念するために1回目のスプリントをパスしてくるだろう。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
114.4km地点 スプリントポイント
6月30日(水)第5ステージ
シャンジェ〜ラヴァル・エスパス・マイエンヌ 27.2km(個人TT)
ここ数年間、ツールは個人TTの距離を短めに設定し、山岳の比重を上げる傾向にあった。しかし第108回大会には2つの個人TTが設定されており、その合計距離は58kmに達する。これは過去8年間で最も長い距離であり、しかもコースは2ステージともクライマーではなくTTスペシャリスト向き。大会1週目に30km近い距離の個人TTが登場するのは、今年と同じブレストで開幕した2008年大会以来となる。
シャンジェをスタートする27.2kmのコースは基本的に幹線道路を繋いでいくが、緩いアップダウンといくつものロンポワン、街中のコーナーによってリズムを掴みにくい。終盤にかけて小刻みに進路を変えながらラヴァルの街を駆け抜け、完成したばかりの複合施設エスパス・マイエンヌの前でフィニッシュを迎える。
ステージ優勝の想定タイムは30分強で、いつも体重の軽さを生かして山岳を飛ぶように走るクライマーはタイムを失うことになるだろう。ここで生まれたタイム差が最終的なマイヨジョーヌ争いに響くのは間違いない。まだまだ大きなタイム差がついていない大会序盤のため、ステージ優勝を争うTTスペシャリストがマイヨジョーヌを着用する可能性が高い。今大会はパンチャーからスプリンター、ルーラー、TTスペシャリストまで様々な脚質の選手にマイヨジョーヌ着用のチャンスがある。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
設定無し
7月1日(木)第6ステージ
トゥール〜シャトールー 160.6km
第108回ツールのコースレイアウトは、近年のグランツールにありがちな、開幕後すぐに本格山岳が登場するような奇抜なものではない。比較的難易度の低い平坦&丘陵&個人TTが1週目の前半を占めるオーソドックスな、伝統的なレイアウト。サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏のトゥールからシャトールーまで南下する160.6kmコースには大きな起伏が登場しない。今大会3回目の大集団スプリントに注目のステージだ。
ブルターニュからアルプス山脈まで国土を斜めに横断する道中にプロトンはロワール渓谷を通過する。4級山岳が一つだけ設定された平坦ステージだが、やはりここでも平野を吹き抜ける風には注意が必要だ。フィニッシュ地点シャトールーまで約45kmにわたって続く直線平坦路では思わぬ脱落者が出る可能性も。
残り1.6km地点の最終コーナーを曲がると、フラムルージュ(残り1kmアーチ)までは勾配2%ほどの緩斜面。2008年大会の第5ステージでカヴェンディッシュが記念すべきステージ1勝目(現在ステージ通算30勝)を飾ったシャトールーで、ピュアスプリンターが大会1週目最後のバトルを繰り広げることになる。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
72.6km地点 4級山岳サンテニャン(全長2.1km・平均2.9%)
104.3km地点 スプリントポイント
7月2日(金)第7ステージ
ヴィエルゾン〜ル・クルーゾ 249.1km
開幕から1週間が経とうかと言うこの日、21世紀に入ってから最も長い249.1kmというマラソンステージが用意された。距離が長いだけではなく、獲得標高差が3,000mを超えるアップダウンコース。その起伏の大半は後半100kmに詰め込まれており、合計5つのカテゴリー山岳が選手たちを待ち受ける。
中でも注目は最後から2つ目の2級山岳シニアル・デュション(全長5.7km・平均5.7%)だ。ツール初登場となるこの2級山岳は、勾配6%前後の前半区間と短い下り区間を挟み、頂上手前の1.8kmで高低差180mを駆け上がる。つまり後半区間の平均勾配は10%に達し、最大勾配は18%をマーク。フィニッシュまで18kmを残したこの激坂の頂上にはボーナスポイント(8秒、5秒、2秒)が設定されているため、逃げ切り&ボーナスタイム獲得を狙うマイヨジョーヌ候補が早めに動いてくるかもしれない。
残り8km地点で最後の4級山岳をクリアするとル・クルーゾまでダウンヒル。残り1.6km地点の最終コーナーから勾配3%ほどの緩斜面を駆け上がってフィニッシュを迎える。レース時間が6時間を超える丘陵ステージを締めくくるのは、単独や複数人の逃げ切りか、それとも小集団によるスプリントか。総合成績の変動も必至だ。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
115.4km地点 スプリントポイント
161.5km地点 3級山岳シャトーシノン(全長3.2km・平均5.3%)
178.2km地点 4級山岳グリューアングレンヌ(全長2.6km・平均4.2%)
213.8km地点 3級山岳ラ・クロワ・ド・ラ・リベラシオン(全長4.6km・平均5.3%)
231km地点 ボーナス/2級山岳シニアル・デュション(全長5.7km・平均5.7%・最大18%)
241.2km地点 4級山岳ラ・グルロワ峠(全長2.4km・平均5.3%)
7月3日(土)第8ステージ
オヨナ〜ル・グラン=ボルナン 150.8km
ブルターニュから1週間かけてツールはアルプス山脈に到着。オヨナからジュラ山脈を横目に東に向かい、3級山岳と4級山岳で足慣らしをした一行がアルプス山脈に突入していく。44.8km地点という早いタイミングでスプリントポイントが登場するため、逃げ切りを狙うクライマーだけでなくスプリンターも逃げ形成のアタックに加わるだろう。
フィニッシュまで50kmを切ると、選手たちの向かう先には登りと下りしかない。まずは1級山岳モン・サクソネ峠(全長5.7km・平均8.3%)をクリアして一旦渓谷の底まで下ると、そこから1級山岳ロム峠(全長8.8km・平均8.9%)と1級山岳ラ・コロンビエール峠(全長7.5km・平均8.5%)の定番セットが姿を現す。前半から10%前後の勾配を刻むロム峠を越えると、リカバリーする時間もないままラ・コロンビエール峠へ。標高1,618mの名峰に向かう登りは、後半にかけてコンスタントに勾配表示が10%を超える。
ボーナスポイント(8秒、5秒、2秒)でもある1級山岳の頂上は残り14.7km地点。つまり山頂フィニッシュではなく、ル・グラン=ボルナンまでのハイスピードダウンヒルをこなさなければならない。>2018年大会第10ステージ
カテゴリー山岳とスプリントポイント
44.8km地点 スプリントポイント
61.9km地点 3級山岳コポネ峠(全長6.5km・平均4.4%)
72.5km地点 4級山岳モントネックス=アン=ボルヌ(全長2.7km・平均4.9%)
104km地点 1級山岳モン・サクソネ峠(全長5.7km・平均8.3%)
122.1km地点 1級山岳ロム峠(全長8.8km・平均8.9%)
136.1km地点 ボーナス/1級山岳ラ・コロンビエール峠(全長7.5km・平均8.5%)
7月4日(日)第9ステージ
クリューズ〜ティーニュ 144.9km
アルプス2日目、そして長い長い大会1週目の最終日に、選手たちは獲得標高差4,000mの難関山岳ステージに挑む。フィニッシュ地点は2019年大会第19ステージと同じティーニュ。だがしかし2年前は積雹と土砂崩れによって急遽ステージが短縮されたため、選手たちはティーニュにたどり着くことができなかった(表彰式はティーニュで執り行われた)。
ティーニュへの道のりは厳しい。前半から2級山岳ドマンシー峠と1級山岳セジー峠をこなさなければならず、後半はさらに超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)と2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)が立て続けに登場。勾配10%オーバーが連発するプレ峠や、ロズラン峠の長い下り区間でレースをかき乱す動きが見られるかもしれない。
そして最後は1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)が待ち構える。決して急勾配ではないがとにかく長い。道が細くなって勾配が増す残り8km〜6km地点が仕掛けどころ。1級山岳の頂上通過後、ティーニュ湖畔の平坦路を1.9km走ってフィニッシュを迎えるため厳密には山頂フィニッシュではないが、ステージ全体の破壊力は抜群だ。近年高地トレーニングの合宿所として利用されることの多い標高2,107mのティーニュでツールは最初の休息日を迎える。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
19.6km地点 2級山岳ドマンシー峠(全長2.5km・平均9.4%)
32.7km地点 スプリントポイント
49.4km地点 1級山岳セジー峠(全長9.4km・平均6.2%)
80.9km地点 超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)
93.3km地点 2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)
143km地点 1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)
7月5日(月)休息日
text:Kei Tsuji in Paris, France
6月26日(土)第1ステージ
ブレスト〜ランデルノー 197.8km
第108回ツール・ド・フランスは「地の果て」を意味するフィニステール県で開幕する。大西洋に突き出たブルターニュ半島の西端に位置するブレストが映えある開幕地に。ブルターニュ地方でツールが開幕するのはこれが7回目で、ブレストがグランデパールを迎えるのは2008年大会(バルベルデが初日を制し、サストレが総合優勝)以来13年ぶり4回目となる。
個人タイムトライアルで開幕しないため、スプリンターに貴重なマイヨジョーヌ着用のチャンスが巡ってくるかと言うと、決してそうではない。ブレストからランデルノーまでの200km弱のコースは細かいアップダウンの連続で、実に6つのカテゴリー山岳が詰め込まれている。逃げに乗って山岳ポイントを量産すれば翌日にマイヨアポワを着ることができるため、特にワイルドカード枠のUCIプロチームがスタート直後からアタックを連発することになるだろう。
さながらアルデンヌクラシックのようなコースはずばりパンチャー向き。モンダレ山塊に吹く風に注意しながら無数のアップダウンをこなした先に待つのが、直訳すると「狼たちの穴」を意味する3級山岳フォス・オ・ルー(全長3km・平均5.7%)の登りフィニッシュだ。登りはじめてしばらくは最大14%の勾配が続き、フィニッシュに向かって徐々に勾配が緩む。最初のマイヨジョーヌ着用者を決めるこの登りは、言うならば13年前に勝利したバルベルデ向きのレイアウト。もちろん「狼たち」の一員、アラフィリップ向きであるとも言える。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
8.6km地点 4級山岳トレバオラン峠(全長900m・平均5.1%)
27.2km地点 4級山岳ロスノエン峠(全長3km・平均4%)
61.5km地点 3級山岳ロクロナン峠(全長900m・平均9.3%)
115km地点 4級山岳スタン・アル・ギャロン峠(全長2km・平均3.4%)
135.1km地点 スプリントポイント
150.7km地点 4級山岳サンリヴォアル峠(全長2.5km・平均3.9%)
197.8km地点 3級山岳フォス・オ・ルー(全長3km・平均5.7%・最大14%)
6月27日(日)第2ステージ
ペロス=ギレック〜ミュール=ド=ブルターニュ ゲルレダン 183.5km
開幕から2日連続の3級山岳フィニッシュ。ブルターニュ地方を走る第2ステージは引き続きパンチャー向きだ。海沿いのペロス=ギレックをスタート後、美しきグラニット・ローズ海岸を横目にレースは東に向かう。海岸線近くを走るステージ前半100kmは、北東から吹き付ける海風に注意したい。
3つ目の4級山岳サンブリユー峠を過ぎるとコースは内陸に向かい、3年ぶりの登場となる3級山岳ミュール=ド=ブルターニュ(全長2km・平均6.9%)を目指す。15.3km地点で一旦通過するフィニッシュラインは、3級山岳の山頂であると同時にボーナスポイントでもある。コースマップ&高低図に「B」で示されているこのボーナスポイントでは上位通過者3名に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが与えられる。まだまだ総合タイム差10秒以内に大勢の選手がひしめく接戦状態のため、ここで抜け出してマイヨジョーヌを奪いにくる選手も出てくるだろう。
3級山岳ミュール=ド=ブルターニュは前日の3級山岳フォス・オ・ルーと比べると距離は短く、勾配はきつい。前半にかけて10%の勾配が続くものの、ラ・フレーシュ・ワロンヌの「ユイの壁」のような壁感はない。パンチャーのために誂えられたレイアウトだが、登坂時間が4分に満たない短時間決戦のため、過去には軽量なスプリンターも勝負に残っている。平均6.9%の登りを平均スピード30km/hオーバーで駆け上がった小集団がスプリントバトルを繰り広げることになりそう。なお、平坦ステージではないため「3kmルール」が適応されない。登り口に向けた位置取り中に落車やメカトラに見舞われると思わぬタイムを失う可能性も。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
72.8km地点 4級山岳サントバルブ峠(全長900m・平均6.6%)
85km地点 スプリントポイント
103.2km地点 4級山岳ポルディック峠(全長2.1km・平均3.2%)
115.2km地点 4級山岳サンブリュー峠(全長1km・平均8%)
165.2km地点 4級山岳ヴィラージュ・ド・ミュール=ド=ブルターニュ(全長1.6km・平均4.1%)
168.2km地点 ボーナス/3級山岳ミュール=ド=ブルターニュ(全長2km・平均6.9%)
183.5km地点 3級山岳ミュール=ド=ブルターニュ(全長2km・平均6.9%)
6月28日(月)第3ステージ
ロリアン〜ポンティヴィー 182.9km
2日間パンチャーたちの姿を後ろから見守るしかなかったピュアスプリンターたちの出番だ。セーリングシティとして知られる港町ロリアンをスタート後、最初の1時間は海沿いの平坦路。そこから内陸部に進路を取り、2つの4級山岳を含むブルターニュ地方らしい細かいアップダウンを繰り返しながらダヴィド・ラパルティアンUCI会長の故郷ポンティヴィーを目指す。
決して真っ平らなコースレイアウトではないが、まだまだ充電満タンのスプリンターチームは力づくで大集団スプリントに持ち込むだろう。残り2.3km地点でブラヴェ川を跨ぐカルティエ橋を渡り(直角コーナーが2つ連続)、残り1.4km地点の最終コーナーを曲がると、ポンティヴィーが誇るロアン城のすぐ横に引かれたフィニッシュライン目掛けてまっしぐら。スプリントトレインを駆使した高速バトルが繰り広げられることになる。
ステージ優勝者には最大50ポイントが与えられ、ここからマイヨヴェール争いも本格化する。しかし3級山岳フィニッシュが設定されていた第1ステージ&第2ステージでも最大50ポイントが獲得可能なため、ピュアスプリンターにマイヨヴェールが移るのは翌日に持ち越しになりそうだ。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
91.1km地点 4級山岳カドゥーダル峠(全長1.7m・平均6.3%)
118.3km地点 スプリントポイント
148.6km地点 4級山岳プリュメリオー峠(全長2.2km・平均3.1%)
6月29日(火)第4ステージ
ルドン〜フジェール 150.4km
ブルターニュ最終日の第4ステージはルドンからフジェールまでの150.4km。距離は短めで、しかも今大会唯一の山岳ポイントが全く登場しない平坦コースで、しかも翌日にはマイヨジョーヌ争いにおいて重要な個人タイムトライアルが控えている。強風による集団粉砕が発生しない限り、2日連続で大集団スプリントに持ち込まれるはずだ。
フジェールの街がツールのフィニッシュを迎え入れるのは6年ぶり。2015年大会第7ステージを制したのはカヴェンディッシュだった。今回も同じフィニッシュレイアウトが採用されており、残り800mで最後のロンポワン(ラウンドアバウト)を通過するとフィニッシュラインまでは1%ほどの登り緩斜面となる。
最終的なマイヨヴェール獲得を目指すピュアスプリンターは残り36km地点のスプリントポイントでもポイント獲得を狙ってくる。つまりスプリンターは1日に2回のスプリントをこなさなければならない。逆に、パリまで走り切ることを想定していない(マイヨヴェールに興味を示さない)スプリンターは、ステージ優勝に専念するために1回目のスプリントをパスしてくるだろう。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
114.4km地点 スプリントポイント
6月30日(水)第5ステージ
シャンジェ〜ラヴァル・エスパス・マイエンヌ 27.2km(個人TT)
ここ数年間、ツールは個人TTの距離を短めに設定し、山岳の比重を上げる傾向にあった。しかし第108回大会には2つの個人TTが設定されており、その合計距離は58kmに達する。これは過去8年間で最も長い距離であり、しかもコースは2ステージともクライマーではなくTTスペシャリスト向き。大会1週目に30km近い距離の個人TTが登場するのは、今年と同じブレストで開幕した2008年大会以来となる。
シャンジェをスタートする27.2kmのコースは基本的に幹線道路を繋いでいくが、緩いアップダウンといくつものロンポワン、街中のコーナーによってリズムを掴みにくい。終盤にかけて小刻みに進路を変えながらラヴァルの街を駆け抜け、完成したばかりの複合施設エスパス・マイエンヌの前でフィニッシュを迎える。
ステージ優勝の想定タイムは30分強で、いつも体重の軽さを生かして山岳を飛ぶように走るクライマーはタイムを失うことになるだろう。ここで生まれたタイム差が最終的なマイヨジョーヌ争いに響くのは間違いない。まだまだ大きなタイム差がついていない大会序盤のため、ステージ優勝を争うTTスペシャリストがマイヨジョーヌを着用する可能性が高い。今大会はパンチャーからスプリンター、ルーラー、TTスペシャリストまで様々な脚質の選手にマイヨジョーヌ着用のチャンスがある。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
設定無し
7月1日(木)第6ステージ
トゥール〜シャトールー 160.6km
第108回ツールのコースレイアウトは、近年のグランツールにありがちな、開幕後すぐに本格山岳が登場するような奇抜なものではない。比較的難易度の低い平坦&丘陵&個人TTが1週目の前半を占めるオーソドックスな、伝統的なレイアウト。サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏のトゥールからシャトールーまで南下する160.6kmコースには大きな起伏が登場しない。今大会3回目の大集団スプリントに注目のステージだ。
ブルターニュからアルプス山脈まで国土を斜めに横断する道中にプロトンはロワール渓谷を通過する。4級山岳が一つだけ設定された平坦ステージだが、やはりここでも平野を吹き抜ける風には注意が必要だ。フィニッシュ地点シャトールーまで約45kmにわたって続く直線平坦路では思わぬ脱落者が出る可能性も。
残り1.6km地点の最終コーナーを曲がると、フラムルージュ(残り1kmアーチ)までは勾配2%ほどの緩斜面。2008年大会の第5ステージでカヴェンディッシュが記念すべきステージ1勝目(現在ステージ通算30勝)を飾ったシャトールーで、ピュアスプリンターが大会1週目最後のバトルを繰り広げることになる。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
72.6km地点 4級山岳サンテニャン(全長2.1km・平均2.9%)
104.3km地点 スプリントポイント
7月2日(金)第7ステージ
ヴィエルゾン〜ル・クルーゾ 249.1km
開幕から1週間が経とうかと言うこの日、21世紀に入ってから最も長い249.1kmというマラソンステージが用意された。距離が長いだけではなく、獲得標高差が3,000mを超えるアップダウンコース。その起伏の大半は後半100kmに詰め込まれており、合計5つのカテゴリー山岳が選手たちを待ち受ける。
中でも注目は最後から2つ目の2級山岳シニアル・デュション(全長5.7km・平均5.7%)だ。ツール初登場となるこの2級山岳は、勾配6%前後の前半区間と短い下り区間を挟み、頂上手前の1.8kmで高低差180mを駆け上がる。つまり後半区間の平均勾配は10%に達し、最大勾配は18%をマーク。フィニッシュまで18kmを残したこの激坂の頂上にはボーナスポイント(8秒、5秒、2秒)が設定されているため、逃げ切り&ボーナスタイム獲得を狙うマイヨジョーヌ候補が早めに動いてくるかもしれない。
残り8km地点で最後の4級山岳をクリアするとル・クルーゾまでダウンヒル。残り1.6km地点の最終コーナーから勾配3%ほどの緩斜面を駆け上がってフィニッシュを迎える。レース時間が6時間を超える丘陵ステージを締めくくるのは、単独や複数人の逃げ切りか、それとも小集団によるスプリントか。総合成績の変動も必至だ。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
115.4km地点 スプリントポイント
161.5km地点 3級山岳シャトーシノン(全長3.2km・平均5.3%)
178.2km地点 4級山岳グリューアングレンヌ(全長2.6km・平均4.2%)
213.8km地点 3級山岳ラ・クロワ・ド・ラ・リベラシオン(全長4.6km・平均5.3%)
231km地点 ボーナス/2級山岳シニアル・デュション(全長5.7km・平均5.7%・最大18%)
241.2km地点 4級山岳ラ・グルロワ峠(全長2.4km・平均5.3%)
7月3日(土)第8ステージ
オヨナ〜ル・グラン=ボルナン 150.8km
ブルターニュから1週間かけてツールはアルプス山脈に到着。オヨナからジュラ山脈を横目に東に向かい、3級山岳と4級山岳で足慣らしをした一行がアルプス山脈に突入していく。44.8km地点という早いタイミングでスプリントポイントが登場するため、逃げ切りを狙うクライマーだけでなくスプリンターも逃げ形成のアタックに加わるだろう。
フィニッシュまで50kmを切ると、選手たちの向かう先には登りと下りしかない。まずは1級山岳モン・サクソネ峠(全長5.7km・平均8.3%)をクリアして一旦渓谷の底まで下ると、そこから1級山岳ロム峠(全長8.8km・平均8.9%)と1級山岳ラ・コロンビエール峠(全長7.5km・平均8.5%)の定番セットが姿を現す。前半から10%前後の勾配を刻むロム峠を越えると、リカバリーする時間もないままラ・コロンビエール峠へ。標高1,618mの名峰に向かう登りは、後半にかけてコンスタントに勾配表示が10%を超える。
ボーナスポイント(8秒、5秒、2秒)でもある1級山岳の頂上は残り14.7km地点。つまり山頂フィニッシュではなく、ル・グラン=ボルナンまでのハイスピードダウンヒルをこなさなければならない。>2018年大会第10ステージ
カテゴリー山岳とスプリントポイント
44.8km地点 スプリントポイント
61.9km地点 3級山岳コポネ峠(全長6.5km・平均4.4%)
72.5km地点 4級山岳モントネックス=アン=ボルヌ(全長2.7km・平均4.9%)
104km地点 1級山岳モン・サクソネ峠(全長5.7km・平均8.3%)
122.1km地点 1級山岳ロム峠(全長8.8km・平均8.9%)
136.1km地点 ボーナス/1級山岳ラ・コロンビエール峠(全長7.5km・平均8.5%)
7月4日(日)第9ステージ
クリューズ〜ティーニュ 144.9km
アルプス2日目、そして長い長い大会1週目の最終日に、選手たちは獲得標高差4,000mの難関山岳ステージに挑む。フィニッシュ地点は2019年大会第19ステージと同じティーニュ。だがしかし2年前は積雹と土砂崩れによって急遽ステージが短縮されたため、選手たちはティーニュにたどり着くことができなかった(表彰式はティーニュで執り行われた)。
ティーニュへの道のりは厳しい。前半から2級山岳ドマンシー峠と1級山岳セジー峠をこなさなければならず、後半はさらに超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)と2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)が立て続けに登場。勾配10%オーバーが連発するプレ峠や、ロズラン峠の長い下り区間でレースをかき乱す動きが見られるかもしれない。
そして最後は1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)が待ち構える。決して急勾配ではないがとにかく長い。道が細くなって勾配が増す残り8km〜6km地点が仕掛けどころ。1級山岳の頂上通過後、ティーニュ湖畔の平坦路を1.9km走ってフィニッシュを迎えるため厳密には山頂フィニッシュではないが、ステージ全体の破壊力は抜群だ。近年高地トレーニングの合宿所として利用されることの多い標高2,107mのティーニュでツールは最初の休息日を迎える。
カテゴリー山岳とスプリントポイント
19.6km地点 2級山岳ドマンシー峠(全長2.5km・平均9.4%)
32.7km地点 スプリントポイント
49.4km地点 1級山岳セジー峠(全長9.4km・平均6.2%)
80.9km地点 超級山岳プレ峠(全長12.6km・平均7.7%)
93.3km地点 2級山岳ロズラン峠(全長5.7km・平均6.5%)
143km地点 1級山岳モンテ・ド・ティーニュ(全長21km・平均5.6%)
7月5日(月)休息日
text:Kei Tsuji in Paris, France
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