2021/06/20(日) - 09:17
日本初開催となった本格的グラベルライドイベント JEROBOAMに挑んだ参加者たちのバイクと装備を紹介する。 2日間で300kmという過酷な道のりを走りきるグラベルバイクと装備の工夫とは?
根本悠司さん ジェイミスRENEGADE
レースではないJEROBOAMだが、2日間ともぶっちぎりでトップを走った実力者、根本悠司さんのバイクはジェイミスRENEGADE。シマノ105やALIVIOで組まれた廉価なアルミモデルで、フロントをシングル化し、ケーブル引きのSTIレバーにTRPの機械式ディスクブレーキを使うのが特徴的。しかしタイヤは悪コンディションに対応するIRC BOKEN DOUBLE CROSSをチョイスするあたりは抜かり無い。補給食を仕込むバッグはトップチューブ下に装着するR250製だ。
岡野広樹さん CORNER
両日とも余裕ある好走を見せた岡野広樹さんの愛車は大阪・堺のハンドメイド工房「ソウカワガレージ」がプロデュースするCORNER(コーナー)だ。クロモリでハンドメイドされたCX&グラベルバイクはフロントシングル仕様でクランクにデュラエース9100+Wolftoothのナローワイドのギア板、スプロケットは11〜46Tの11Sの組み合わせ。GRXのDI2シフターにXTR M9050 DI2ディレイラーを組み合わせる。タイヤはマキシスRAMBLER、APIDURAのトップチューブバッグに補給食等を収容する。
唐見実世子さん フェルト FX
女子プロロード選手&トップシクロクロッサーの唐見実世子選手(弱虫ペダルサイクリングチーム)の愛車はフェルト FX。フロントシングル×リア13速のカンパニョーロEKARコンポで組んだシクロクロスのレースバイクがベース。ホイールはグラベル対応のカンパ・シャマルカーボン、タイヤは軽い転がりのヴィットリアのTERRENO DRYを前後に履かせる。CXバイクのためタイヤクリアランスには限界があり、最大限の太さの38Cをチョイスした。
荷物はオーストリッチ製のバイクパッキングシリーズの中型サドルバッグをメインに、すぐ取り出したいものはトップチューブバッグとハンドル周りにセットしたポーチに入れて対応した。参加レポートでも触れたとおり、グラベルイベントにはCXレーサーよりも安定性に優れたグラベルバイクが必要とのことで、FELTから新しくリリースされるカーボンバイクを駆って海外のグラベルレースも走ってみたいと夢を膨らませている唐見さんだった。
吉川大地さん サンタクルズSTIGMATA
2日間とも2位相当の順位で好走した吉川大地さん(Rapha CycleClub)のバイクは徹底的に軽装だ。バイクはサンタクルズのシクロクロス&グラベルモデルのSTIGMATA。ひと世代前のモデルで40Cのタイヤを装着するにはクリアランスが足りないが、それを逆手に取ってパナレーサーGRAVELKING 31Cのグラベルタイヤで軽量化を図り、軽さで快走する作戦に出た。ホイールはASTUTOのカーボンディープチューブレスホイール。
「グラベル路面が激しくガレていないことを見越してのギャンブルでした。でも雨が降って過酷になり、パンクのリスクもあったのですが、舗装の登りで軽く走れたことはメリットでした。でもちょっと人にはススメられないかも」。シクロクロッサーでありMTBのXCレーサーでもあり、先日の武尊グラベルミーティングでも優勝した吉川さんならではの飛び道具的チョイスだ。
ケイトリン・フォードさん サンタクルズSTIGMATA
武尊グラベルミーティングでも女子トップで走ったケイトリン・フォードさん。普段から埼玉の奥武蔵周辺でグラベルライドを楽しみ、300kmジェロボームクラスも両日とも余裕で完走してしまうエキスパートだ。愛車はサンタクルズのSTIGMATA。上の吉川大地さんと同じ世代のモデルで、基本設計がシクロクロスバイクだったためリアタイヤが38Cまでしか使用できないのがネック。しかしイベント前日に路面に合わせたピレリのグラベルタイヤ CINTURATO GRAVEL Mをチョイスして交換して対応。補給食はハンドルポーチに入れて取り出しやすさを重視している。
小川正樹さん リドレーKANZO SPEED
サイクルアパレルを扱うTokyoLifeでアソスのバイヤーをつとめる小川正樹さんは購入したばかりのリドレーKANZO SPEEDで150kmマグナムへの出場。ベルジャンブルーの美しいフレームはシクロクロスとグラベルレースの両方を走れるモデルとして選んだ。
コンポはGRXの油圧&ケーブルシフト仕様でホイールは700C。タイヤはWTB byway34Cとちょっと細めの選択だが、サスペンションステムを使用して振動吸収性能をカバー。GPSサイコンはワフーelement ROAMとガーミンedge530のダブル装着でナビゲーションミスを防ぐ万全ぶりだ。
石山幸風さん キャニオンGrail CF SLX
キャニオンジャパン代表の石山幸風さんが駆るのは2階建てハンドルが特徴的なグラベルバイク、Grail CF SLXだ。GRXのDI2コンポにクランクはROTORのパワーメーターつきクランクのIN POWERの組み合わせ。ラファのトップチューブバッグがデッドスペースにうまくマッチしている。
ホイールはENVEのXCカーボンホイールセット「M525」にピレリのグラベルタイヤ CINTURATO GRAVEL Hをセットと、さすがの完璧なセッティング。Stravaのルートとプロフィールマップをプリントアウトし、ラミネートしてハンドル周りに貼り込むアイデアも手が込んでいる。
マイケル・ライスさん Chapter2 AO
マグナム150kmクラスを実質トップで走り抜けたマイケル・ライスさん(chapter2)。バイクはChapter2のグラベルモデルAO(アオ)をフロントシングルで組み、ギア比はロー最小で38T×32Tというもの。タイヤはフロントがMTB用の29×2.0サイズ、リアがシクロクロスタイヤの700Cの33Cと、軽く・速く走るために前・後輪でかなり役割を割り切ったチョイスだ。軽量化のためケーブル引きのディスクブレーキがお気に入りで、全体重量は7.2kgに抑えている。
綾野 真 コルナゴG3X
CW編集部の綾野はコルナゴのグラベルバイクG3Xで150kmマグナムに参加。コンポはGRX DI2仕様でギアはダブルで48・31T×11〜34Tの組み合わせ。CXやグラベルはシングル化する人が増えているけれど、やはりワイドでレシオが細かく選べるフロントダブルがおすすめだ。
ホイールはマヴィックALLROAD SにIRC BOKEN 40Cタイヤの組み合わせ。しなやかでボリュームのあるチューブレスタイヤ&ホイールはグラベルライドの最適解だと思う。ストレージはオルトリーブのサドルバッグに補給食入れのポーチ、ハンドル脇にもジェルやバー用ポーチを装着した。150kmで試した新機材のコルナゴG3XとマヴィックALLROAD Sホイールは後日インプレ記事としても紹介します。
高橋正明さん フォーカスMARES
1日目はDNF、2日目は最終走者でジェロボームクラスを走りきった地元加美町に住む高橋さん。仙台のベルエキップでアッセンブルしてもらったフォーカスMARESのシクロクロスバイクをベースに、ブラックバーン製バイクパッキングシリーズのフレームバッグをメインに使う。
フルフレームバッグはフレーム前三角を完全に占有するが中にはハイドレーションバッグを仕込み、ホースで給水する。初めてのイベントに備えて慎重になりすぎ、ウェアや装備品を持ちすぎたということで次回はもっと軽装で参加することの必要性を痛感した。「ギアレシオも1×1以下にできるグラベルバイクの購入を考えています」とのこと。
藤巻忠秀さん PROJECT-M
故・忌野清志郎さんをトリビュートしたオレンジのバイクに乗る藤巻忠秀さん。バイクの製作はもちろんキヨシローさんのORANGE号と同じく筑波のスポーツバイクつくばマツナガ。同じカラーの一体型エアロハンドル、あちこちにORANGEのロゴをあしらったディスクブレーキ仕様のオールロードだ。
タイヤクリアランスの少なさからシクロクロス用タイヤのIRC SERAC CXを使用。ギア比もワイドでないぶんライドは苦労したようだが、見事2日間300kmを完走にこぎつけた。
以上、ピックアップさせてもらった人にもよるが、まだグラベル黎明期の日本ではJEROBOAM300参加者でさえグラベルバイクを導入している人が全てではなく、シクロクロス用のバイクを流用して走るケースが多いようだ。
バイクに取り付けるバッグ類などの装備はバイクパッキング用品からうまく流用して使用するアイデアが面白いが、今回の大会ではルート上に2回のエイドが設けられ、そこで自分が用意した補給食やボトルを受け取れたことがバッグ類の選択と装着品を選ぶ判断基準になった。もしエイドがなかったら、当然もっと多くの水や食料等の荷物を積載する必要が出てくる。イベントや普段のグラベルライドによっていくつもの選択肢を用意して使い慣れておくことが大切になってくるだろう。
text&photo:Makoto AYANO
根本悠司さん ジェイミスRENEGADE
レースではないJEROBOAMだが、2日間ともぶっちぎりでトップを走った実力者、根本悠司さんのバイクはジェイミスRENEGADE。シマノ105やALIVIOで組まれた廉価なアルミモデルで、フロントをシングル化し、ケーブル引きのSTIレバーにTRPの機械式ディスクブレーキを使うのが特徴的。しかしタイヤは悪コンディションに対応するIRC BOKEN DOUBLE CROSSをチョイスするあたりは抜かり無い。補給食を仕込むバッグはトップチューブ下に装着するR250製だ。
岡野広樹さん CORNER
両日とも余裕ある好走を見せた岡野広樹さんの愛車は大阪・堺のハンドメイド工房「ソウカワガレージ」がプロデュースするCORNER(コーナー)だ。クロモリでハンドメイドされたCX&グラベルバイクはフロントシングル仕様でクランクにデュラエース9100+Wolftoothのナローワイドのギア板、スプロケットは11〜46Tの11Sの組み合わせ。GRXのDI2シフターにXTR M9050 DI2ディレイラーを組み合わせる。タイヤはマキシスRAMBLER、APIDURAのトップチューブバッグに補給食等を収容する。
唐見実世子さん フェルト FX
女子プロロード選手&トップシクロクロッサーの唐見実世子選手(弱虫ペダルサイクリングチーム)の愛車はフェルト FX。フロントシングル×リア13速のカンパニョーロEKARコンポで組んだシクロクロスのレースバイクがベース。ホイールはグラベル対応のカンパ・シャマルカーボン、タイヤは軽い転がりのヴィットリアのTERRENO DRYを前後に履かせる。CXバイクのためタイヤクリアランスには限界があり、最大限の太さの38Cをチョイスした。
荷物はオーストリッチ製のバイクパッキングシリーズの中型サドルバッグをメインに、すぐ取り出したいものはトップチューブバッグとハンドル周りにセットしたポーチに入れて対応した。参加レポートでも触れたとおり、グラベルイベントにはCXレーサーよりも安定性に優れたグラベルバイクが必要とのことで、FELTから新しくリリースされるカーボンバイクを駆って海外のグラベルレースも走ってみたいと夢を膨らませている唐見さんだった。
吉川大地さん サンタクルズSTIGMATA
2日間とも2位相当の順位で好走した吉川大地さん(Rapha CycleClub)のバイクは徹底的に軽装だ。バイクはサンタクルズのシクロクロス&グラベルモデルのSTIGMATA。ひと世代前のモデルで40Cのタイヤを装着するにはクリアランスが足りないが、それを逆手に取ってパナレーサーGRAVELKING 31Cのグラベルタイヤで軽量化を図り、軽さで快走する作戦に出た。ホイールはASTUTOのカーボンディープチューブレスホイール。
「グラベル路面が激しくガレていないことを見越してのギャンブルでした。でも雨が降って過酷になり、パンクのリスクもあったのですが、舗装の登りで軽く走れたことはメリットでした。でもちょっと人にはススメられないかも」。シクロクロッサーでありMTBのXCレーサーでもあり、先日の武尊グラベルミーティングでも優勝した吉川さんならではの飛び道具的チョイスだ。
ケイトリン・フォードさん サンタクルズSTIGMATA
武尊グラベルミーティングでも女子トップで走ったケイトリン・フォードさん。普段から埼玉の奥武蔵周辺でグラベルライドを楽しみ、300kmジェロボームクラスも両日とも余裕で完走してしまうエキスパートだ。愛車はサンタクルズのSTIGMATA。上の吉川大地さんと同じ世代のモデルで、基本設計がシクロクロスバイクだったためリアタイヤが38Cまでしか使用できないのがネック。しかしイベント前日に路面に合わせたピレリのグラベルタイヤ CINTURATO GRAVEL Mをチョイスして交換して対応。補給食はハンドルポーチに入れて取り出しやすさを重視している。
小川正樹さん リドレーKANZO SPEED
サイクルアパレルを扱うTokyoLifeでアソスのバイヤーをつとめる小川正樹さんは購入したばかりのリドレーKANZO SPEEDで150kmマグナムへの出場。ベルジャンブルーの美しいフレームはシクロクロスとグラベルレースの両方を走れるモデルとして選んだ。
コンポはGRXの油圧&ケーブルシフト仕様でホイールは700C。タイヤはWTB byway34Cとちょっと細めの選択だが、サスペンションステムを使用して振動吸収性能をカバー。GPSサイコンはワフーelement ROAMとガーミンedge530のダブル装着でナビゲーションミスを防ぐ万全ぶりだ。
石山幸風さん キャニオンGrail CF SLX
キャニオンジャパン代表の石山幸風さんが駆るのは2階建てハンドルが特徴的なグラベルバイク、Grail CF SLXだ。GRXのDI2コンポにクランクはROTORのパワーメーターつきクランクのIN POWERの組み合わせ。ラファのトップチューブバッグがデッドスペースにうまくマッチしている。
ホイールはENVEのXCカーボンホイールセット「M525」にピレリのグラベルタイヤ CINTURATO GRAVEL Hをセットと、さすがの完璧なセッティング。Stravaのルートとプロフィールマップをプリントアウトし、ラミネートしてハンドル周りに貼り込むアイデアも手が込んでいる。
マイケル・ライスさん Chapter2 AO
マグナム150kmクラスを実質トップで走り抜けたマイケル・ライスさん(chapter2)。バイクはChapter2のグラベルモデルAO(アオ)をフロントシングルで組み、ギア比はロー最小で38T×32Tというもの。タイヤはフロントがMTB用の29×2.0サイズ、リアがシクロクロスタイヤの700Cの33Cと、軽く・速く走るために前・後輪でかなり役割を割り切ったチョイスだ。軽量化のためケーブル引きのディスクブレーキがお気に入りで、全体重量は7.2kgに抑えている。
綾野 真 コルナゴG3X
CW編集部の綾野はコルナゴのグラベルバイクG3Xで150kmマグナムに参加。コンポはGRX DI2仕様でギアはダブルで48・31T×11〜34Tの組み合わせ。CXやグラベルはシングル化する人が増えているけれど、やはりワイドでレシオが細かく選べるフロントダブルがおすすめだ。
ホイールはマヴィックALLROAD SにIRC BOKEN 40Cタイヤの組み合わせ。しなやかでボリュームのあるチューブレスタイヤ&ホイールはグラベルライドの最適解だと思う。ストレージはオルトリーブのサドルバッグに補給食入れのポーチ、ハンドル脇にもジェルやバー用ポーチを装着した。150kmで試した新機材のコルナゴG3XとマヴィックALLROAD Sホイールは後日インプレ記事としても紹介します。
高橋正明さん フォーカスMARES
1日目はDNF、2日目は最終走者でジェロボームクラスを走りきった地元加美町に住む高橋さん。仙台のベルエキップでアッセンブルしてもらったフォーカスMARESのシクロクロスバイクをベースに、ブラックバーン製バイクパッキングシリーズのフレームバッグをメインに使う。
フルフレームバッグはフレーム前三角を完全に占有するが中にはハイドレーションバッグを仕込み、ホースで給水する。初めてのイベントに備えて慎重になりすぎ、ウェアや装備品を持ちすぎたということで次回はもっと軽装で参加することの必要性を痛感した。「ギアレシオも1×1以下にできるグラベルバイクの購入を考えています」とのこと。
藤巻忠秀さん PROJECT-M
故・忌野清志郎さんをトリビュートしたオレンジのバイクに乗る藤巻忠秀さん。バイクの製作はもちろんキヨシローさんのORANGE号と同じく筑波のスポーツバイクつくばマツナガ。同じカラーの一体型エアロハンドル、あちこちにORANGEのロゴをあしらったディスクブレーキ仕様のオールロードだ。
タイヤクリアランスの少なさからシクロクロス用タイヤのIRC SERAC CXを使用。ギア比もワイドでないぶんライドは苦労したようだが、見事2日間300kmを完走にこぎつけた。
以上、ピックアップさせてもらった人にもよるが、まだグラベル黎明期の日本ではJEROBOAM300参加者でさえグラベルバイクを導入している人が全てではなく、シクロクロス用のバイクを流用して走るケースが多いようだ。
バイクに取り付けるバッグ類などの装備はバイクパッキング用品からうまく流用して使用するアイデアが面白いが、今回の大会ではルート上に2回のエイドが設けられ、そこで自分が用意した補給食やボトルを受け取れたことがバッグ類の選択と装着品を選ぶ判断基準になった。もしエイドがなかったら、当然もっと多くの水や食料等の荷物を積載する必要が出てくる。イベントや普段のグラベルライドによっていくつもの選択肢を用意して使い慣れておくことが大切になってくるだろう。
text&photo:Makoto AYANO
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