2021/05/31(月) - 06:14
30kmに及ぶ最終TTを制したのはフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)。慎重な走りを貫いたエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)が自身初のジロ・デ・イタリア総合優勝を掴み取った。
5月30日(日)第21ステージ
セナーゴ〜ミラノ 30.3km(個人TT)★★★
第104回ジロ・デ・イタリアを締めくくるのは、お馴染みミラノ中心部のドゥオーモ前にフィニッシュする個人タイムトライアル。2019年の17km、2020年の15.7kmと比べてほぼ倍、30.3kmのコースはものの見事に真っ平らで、市街地の鋭角コーナーこそあれど、各選手の独走力がモノを言う。
2年連続ステージ優勝の期待が掛かるTT世界チャンピオンのフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)や、1分59秒リードを守るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)。ここまで20日間走り続けてきた全選手たちの背中を、沿道に詰めかけた観客の声援が後押しした。
晴天に恵まれたミラノのコースを平均スピード53.787km/hでカッ飛ばしたのは、アルカンシエルを着るガンナだった。僅かスタート後10分強で区間10位に入ったイーリョ・ケイセ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)を、そしてベアトヤン・リンデマン(オランダ、クベカ・アソス)を、フィリッポ・タリアーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ・シデルメク)をそしてダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)を次々と追い抜いた”トップガンナ”。
ガンナは後輪パンクによって残り1.5km地点でバイク交換を強いられるも、チームカーからの素早いアシストを受け、最小限のタイムロスで猛然とフィニッシュを目指す。バイク交換中に先行されたチモライを追い抜かさんばかりの勢いで飛び込んだタイムは暫定首位を奪う33分48秒だった。
ガンナの2人後ろを走っていたアッフィニは13秒届かず、「クレルモン=フェランのTGV」ことTTフランス王者のレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は鋭角コーナーでの突っ込み過ぎ前転落車が悔やまれる12秒遅れ。前走車に進路を塞がれたマッテオ・ソブレロ(イタリア、アスタナ・プレミアテック)は14秒遅れ。その後スタートした総合上位勢もガンナのタイムには敵わなかった。
世界最速の証アルカンシエルを着て走ったガンナが、2021年ジロの開幕日と閉幕日の個人TTを制覇した。ここまで長距離集団牽引に力を使ってきたガンナだが、出場した2020年と2021年のジロ個人TTステージで5戦5勝、ステージ通算6勝目という無敵ぶりを誇っている。
後半スタート組の総合上位勢の中、目覚ましい走りを披露したのは総合8位からのジャンプアップを狙うジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。ガンナから僅か27秒遅れにまとめた22歳は、ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・NIPPO)とロマン・バルデ(フランス、チームDSM)を抜き、総合6位への浮上を叶えている。
集中した表情でスタートを切った総合2位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)は好走し、反対に総合3位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)は徐々にタイムを失っていく。そつなくペースを刻んだエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)はカルーゾに差を削られながらも、最後まで崩れることはなかった。
こうしてイェーツが、カルーゾがそれぞれ区間51位と区間17位でフィニッシュし、マリアローザに身を包んで走ったベルナルは区間24位でステージを走り終えた。大歓声に応えるようにDHバーを握っていた両手を広げ、フィニッシュラインを越えてから雄叫びをあげる。昨年ツールで敗北を喫した24歳が、そのリベンジとして臨んだ第104回ジロ・デ・イタリアでの総合優勝を、フィニッシュで待ち構えていたガールフレンドと硬い抱擁で喜び合った。
2014年のナイロ・キンタナ(現アルケア・サムシック)以来となるコロンビア人選手によるジロ・デ・イタリア制覇を成し遂げたベルナル。「自分の走りに集中していた。ただただミスはできない、一つのコーナーでジロを失いたくないと考えていたんだ。プッシュできる場所ではプッシュしたけれど、コーナーでは少しのリスクも負いたくなかった。いつも個人TTでは苦しめられるけれど、今日は無線で会話するコーチとともに特別な1戦を楽しむことができた。最高だったよ」と、35分41秒の最終ステージを振り返る。
「特別だった。沿道のあちこちでコロンビア国旗を目にしたし、ファンが僕のことを応援してくれたんだ。フィニッシュに辿り着いて勝ったんだと分かったとき、信じられない気分だった。僕の心境を言葉にすることができないよ」と話す若き王者。鉄壁の走りでレースを支配したイネオス・グレナディアーズにとってはテイオ・ゲイガンハート(イギリス)に続く2年連続のマリアローザ獲得であり、ガンナによる2年連続の開幕&最終ステージ優勝。チーム総合成績でも優勝と、最強イギリスチームが今一度その力を見せつけることとなった。
ベルナルには敗れたものの、リタイアしたミケル・ランダとペリョ・ビルバオ(共にスペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)の代わりにエースを務めたカルーゾは、自身でも驚く初のグランツール表彰台を確保。3位に甘んじたイェーツは休養を挟み、ルーカス・ハミルトン(オーストラリア)たちと共に1ヶ月後のツール・ド・フランスに出場する予定だ。
アルメイダは総合8位から総合6位に上げ、山岳ステージで連日ベルナルを助けたダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)も総合6位から5位へのジャンプアップに成功。一方バルデは総合5位から総合7位へ、カーシーは総合7位から総合8位へと順位を落としている。
最終日の個人タイムトライアルを100位で終えた新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス)は自身14回目(14回連続完走)のグランツールを総合77位でフィニッシュ。バーレーン・ヴィクトリアスは罰金が最も少なかったチームを表彰するフェアプレー賞に輝いたことで、新城はカルーゾたちと共にミラノの表彰台で大きな笑顔を輝かせた。
選手たちのコメントは別記事で紹介します。
5月30日(日)第21ステージ
セナーゴ〜ミラノ 30.3km(個人TT)★★★
第104回ジロ・デ・イタリアを締めくくるのは、お馴染みミラノ中心部のドゥオーモ前にフィニッシュする個人タイムトライアル。2019年の17km、2020年の15.7kmと比べてほぼ倍、30.3kmのコースはものの見事に真っ平らで、市街地の鋭角コーナーこそあれど、各選手の独走力がモノを言う。
2年連続ステージ優勝の期待が掛かるTT世界チャンピオンのフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)や、1分59秒リードを守るエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)。ここまで20日間走り続けてきた全選手たちの背中を、沿道に詰めかけた観客の声援が後押しした。
晴天に恵まれたミラノのコースを平均スピード53.787km/hでカッ飛ばしたのは、アルカンシエルを着るガンナだった。僅かスタート後10分強で区間10位に入ったイーリョ・ケイセ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)を、そしてベアトヤン・リンデマン(オランダ、クベカ・アソス)を、フィリッポ・タリアーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ・シデルメク)をそしてダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)を次々と追い抜いた”トップガンナ”。
ガンナは後輪パンクによって残り1.5km地点でバイク交換を強いられるも、チームカーからの素早いアシストを受け、最小限のタイムロスで猛然とフィニッシュを目指す。バイク交換中に先行されたチモライを追い抜かさんばかりの勢いで飛び込んだタイムは暫定首位を奪う33分48秒だった。
ガンナの2人後ろを走っていたアッフィニは13秒届かず、「クレルモン=フェランのTGV」ことTTフランス王者のレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は鋭角コーナーでの突っ込み過ぎ前転落車が悔やまれる12秒遅れ。前走車に進路を塞がれたマッテオ・ソブレロ(イタリア、アスタナ・プレミアテック)は14秒遅れ。その後スタートした総合上位勢もガンナのタイムには敵わなかった。
世界最速の証アルカンシエルを着て走ったガンナが、2021年ジロの開幕日と閉幕日の個人TTを制覇した。ここまで長距離集団牽引に力を使ってきたガンナだが、出場した2020年と2021年のジロ個人TTステージで5戦5勝、ステージ通算6勝目という無敵ぶりを誇っている。
後半スタート組の総合上位勢の中、目覚ましい走りを披露したのは総合8位からのジャンプアップを狙うジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。ガンナから僅か27秒遅れにまとめた22歳は、ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・NIPPO)とロマン・バルデ(フランス、チームDSM)を抜き、総合6位への浮上を叶えている。
集中した表情でスタートを切った総合2位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)は好走し、反対に総合3位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)は徐々にタイムを失っていく。そつなくペースを刻んだエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)はカルーゾに差を削られながらも、最後まで崩れることはなかった。
こうしてイェーツが、カルーゾがそれぞれ区間51位と区間17位でフィニッシュし、マリアローザに身を包んで走ったベルナルは区間24位でステージを走り終えた。大歓声に応えるようにDHバーを握っていた両手を広げ、フィニッシュラインを越えてから雄叫びをあげる。昨年ツールで敗北を喫した24歳が、そのリベンジとして臨んだ第104回ジロ・デ・イタリアでの総合優勝を、フィニッシュで待ち構えていたガールフレンドと硬い抱擁で喜び合った。
2014年のナイロ・キンタナ(現アルケア・サムシック)以来となるコロンビア人選手によるジロ・デ・イタリア制覇を成し遂げたベルナル。「自分の走りに集中していた。ただただミスはできない、一つのコーナーでジロを失いたくないと考えていたんだ。プッシュできる場所ではプッシュしたけれど、コーナーでは少しのリスクも負いたくなかった。いつも個人TTでは苦しめられるけれど、今日は無線で会話するコーチとともに特別な1戦を楽しむことができた。最高だったよ」と、35分41秒の最終ステージを振り返る。
「特別だった。沿道のあちこちでコロンビア国旗を目にしたし、ファンが僕のことを応援してくれたんだ。フィニッシュに辿り着いて勝ったんだと分かったとき、信じられない気分だった。僕の心境を言葉にすることができないよ」と話す若き王者。鉄壁の走りでレースを支配したイネオス・グレナディアーズにとってはテイオ・ゲイガンハート(イギリス)に続く2年連続のマリアローザ獲得であり、ガンナによる2年連続の開幕&最終ステージ優勝。チーム総合成績でも優勝と、最強イギリスチームが今一度その力を見せつけることとなった。
ベルナルには敗れたものの、リタイアしたミケル・ランダとペリョ・ビルバオ(共にスペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)の代わりにエースを務めたカルーゾは、自身でも驚く初のグランツール表彰台を確保。3位に甘んじたイェーツは休養を挟み、ルーカス・ハミルトン(オーストラリア)たちと共に1ヶ月後のツール・ド・フランスに出場する予定だ。
アルメイダは総合8位から総合6位に上げ、山岳ステージで連日ベルナルを助けたダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)も総合6位から5位へのジャンプアップに成功。一方バルデは総合5位から総合7位へ、カーシーは総合7位から総合8位へと順位を落としている。
最終日の個人タイムトライアルを100位で終えた新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス)は自身14回目(14回連続完走)のグランツールを総合77位でフィニッシュ。バーレーン・ヴィクトリアスは罰金が最も少なかったチームを表彰するフェアプレー賞に輝いたことで、新城はカルーゾたちと共にミラノの表彰台で大きな笑顔を輝かせた。
選手たちのコメントは別記事で紹介します。
ジロ・デ・イタリア2021第21ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 118pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 116pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 184pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 140pts |
3位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 99pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 259:30:31 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | 259:30:31 |
3位 | チームDSM | 29:09 |
text:So Isobe
photo:CorVos, LaPresse
photo:CorVos, LaPresse
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