逃げが生まれず超スローペースで進んだ1日。今大会最後のスプリンターステージで、絶好のリードアウトから解き放たれたサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が勝利した。



サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)	を先頭にスタートを待つサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) を先頭にスタートを待つ
パリ〜ニース2021第5ステージ コースプロフィールパリ〜ニース2021第5ステージ コースプロフィール (c)A.S.O.いよいよ南フランスに近づくパリ〜ニース(UCIワールドツアー)第5ステージ。ビエンヌからひたすら南下してボレーヌを目指す200.2kmコースはものの見事に平坦だが、残り50kmで3級山岳とスプリントポイントがそれぞれ設定された2つの丘を越える。この後は山岳ステージが続くため、ピュアスプリンターにとっては最後のチャンスとなる。

アップダウンの激しいボジョレーステージを終え、翌日に中級山岳ステージを控える中日。さらに逃げ切りのチャンスが限りなくゼロに近いこの日、リアルスタートが切られても積極的に逃げようとする動きは生まれない。逃げが一切生まれないまま、平均スピード33km/hという、グランツール最終日のようなスローペースでゆっくりと距離をこなしていくこととなる。

アタックが生まれず、30km/hほどのスローペースで進むアタックが生まれず、30km/hほどのスローペースで進む
53km地点の第一中間スプリントでは35秒遅れの総合2位につけるマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が2位通過してボーナスタイム2秒を獲得。その後もひたすらスローペースが続き、フィニッシュまで70km以上を残したタイミングで、ようやくオリヴェル・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)がアタックを放った。

猛然とペースアップするナーセンに同調したのは、ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)といった、屈強なベルギー勢のみで構成された11名。一時決まりかけたものの、メンバーを送り損ねたEFエデュケーションNIPPOやボーラ・ハンスグローエの追走によって吸収されている。

談笑するティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)たち談笑するティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)たち プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)

フィニッシュに向け、徐々に集団がペースを上げていくフィニッシュに向け、徐々に集団がペースを上げていく
落車し、肘を骨折したトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)はリタイアに(写真は落車前)落車し、肘を骨折したトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)はリタイアに(写真は落車前)
再び逃げようとする動きは生まれず、サム・ベネット(アイルランド)の2勝目を狙うドゥクーニンク・クイックステップがコントロールを担って残り35kmを通過。すると集団後方ではマイヨジョーヌのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を含め、ユンボ・ヴィズマ勢が路面に投げ出された。

無傷のログリッチはすぐさまレースに戻ったものの、激しく身体を打ち付けたトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)はリタイアに。チーム発表によれば、病院で肘骨折という診断を受けたマルティンは、4月のイツリア・バスクカントリーをキャンセルして療養するという。

184km地点の第2中間スプリントでは総合5位ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)が1位通過、そしてシャフマンが再び2位通過してボーナスタイムを確保する。最後の下りをこなしたプロトンは、スプリンターチームが前方に集結した状態で勝負への準備を整えていった。

トレック・セガフレードやアルペシン・フェニックス、グルパマFDJなどがポジション争いを続けたが、フラムルージュ(残り1kmバナー)を通過すると同時にベネットを従えたドゥクーニンク・クイックステップトレインが満を持して動き出す。70km/hに迫るペースで残り300mまでをフロリアン・セネシャル(フランス)が牽き、最終発射台役のミケル・モルコフ(デンマーク)がアルケア・サムシックを封じ込めながらリードアウト。200mを切ると、ログリッチの繰り下がりでマイヨヴェールを着るベネットが加速した。

フィニッシュライン前でサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が勝利を確信フィニッシュライン前でサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が勝利を確信
今大会2勝目を掴んだサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)今大会2勝目を掴んだサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)
絶好のリードアウトを得たべネットは、スリップストリームについたナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)の追い上げを許すことなく先着。フィニッシュライン手前で脚を緩める余裕のスプリントで今大会2勝目、そしてワールドツアーレースで30勝目を挙げた。

「信じられないくらい完璧なリードアウトだったよ。そのリードを最後まで保ちきれたことが嬉しい。ミケルはいつだって正しい場所に僕を連れていってくれるんだ。僕の勝利の多くは彼のおかげ。彼の後ろに付けさえすれば、そこに留まって慌てる必要がないと理解している。大好きなこのパリ〜ニースでもう一度勝ててハッピーだ」と語るベネット。

「(5位に甘んじた)第2ステージは残念な結果に終わっていたので、スプリンターにとって最後のチャンスだった今日に取り戻すことができた。(ティレーノ〜アドリアティコと合わせて)チームが2勝したことは素晴らしい。ジュリアンと、レースや状況に関係なくチーム力を発揮できるウルフパックのスピリットを誇りに思う」と加えている。

マイヨヴェールを得たサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)マイヨヴェールを得たサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)
アタックのきっかけを作ったオリヴェル・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)が敢闘賞にアタックのきっかけを作ったオリヴェル・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)が敢闘賞に
いよいよ南フランスの沿岸部に到達する翌第6ステージは、中盤に標高1000m級の山岳を越える1日。生粋のアタッカー向きの1日に、誰がどのように動いてくるか注目したい。

パリ〜ニース2021第5ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 5:16:01
2位 ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)
3位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)
5位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)
6位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
7位 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ KTM)
8位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
9位 ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)
10位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
74位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 18:42:41
2位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:31
3位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 0:37
4位 ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック) 0:40
5位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) 0:41
6位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター) 0:58
7位 ティシュ・ベノート(ベルギー、チームDSM) 1:04
8位 ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) 1:08
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック) 1:11
10位 ピエール・ラトゥール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) 1:12
その他の特別賞
ポイント賞 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)
山岳賞 アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)
ヤングライダー賞 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)
チーム総合成績 アスタナ・プレミアテック
text:So Isobe

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