凍結路面のX2Oトロフェー最終戦でトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)とセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)が勝利。ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が世界選手権と3大シリーズ総合ランキングを全て射止める「グランドスラム」を達成した。



男子エリートレースがスタート。クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム)が好ダッシュ男子エリートレースがスタート。クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム)が好ダッシュ (c)CorVos
X2Oトロフェーの最終戦であり、そして今季シクロクロス3大シリーズの最終戦である第8戦は、ベルギーオン首都ブリュッセルにある1834年設立の歴史ある名門校、ブリュッセル自由大学のキャンパス内を使った都市型シクロクロスレースだ。

もとよりキャンバーや細かい切り返しを配置したコースは十分にテクニカルだが、この日のコンディションは雪と凍結。抜きどころの少ないコース上では、序盤にクィンティン・ヘルマンス(ベルギー)とコルネ・ファンケッセル(オランダ)のトルマンスシクロクロスチームコンビがリードを奪った。

レースをリードするクィンティン・ヘルマンス(ベルギー)とコルネ・ファンケッセル(オランダ)のトルマンスシクロクロスチームコンビレースをリードするクィンティン・ヘルマンス(ベルギー)とコルネ・ファンケッセル(オランダ)のトルマンスシクロクロスチームコンビ (c)CorVos
ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)はエリート選手を相手に3位に食い込んだニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)はエリート選手を相手に3位に食い込んだ (c)CorVos凍ったキャンバーに手を焼くケヴィン・クーン(スイス、トルマンスシクロクロスチーム)やローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)凍ったキャンバーに手を焼くケヴィン・クーン(スイス、トルマンスシクロクロスチーム)やローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) (c)CorVos


トルマンスの二人にはやがてトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が追いつき、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の兄デーヴィッドやラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)、ヨーロッパチャンピオンのエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)たちがその後ろ。マチューとワウト・ファンアールト(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)の二人は不在ながら、それゆえ実力拮抗のメンバー同士によるレースが展開された。

「レースが始まってすぐ調子がいいと分かった」と振り返るアールツは独走に持ち込んだものの、レース中盤にパンクでペースを落としヘルマンスの合流を許してしまう。しかしプロ通算20勝目が掛かった元ベルギー/元ヨーロッパチャンピオンは、冷静にヘルマンスとランデブーすることを選択。そして全8周回中の6周目後半にアタック一発で再び独走態勢に持ち込んだ。

先頭グループを組むトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)とクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム)先頭グループを組むトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)とクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム) (c)CorVosキャリア通算20勝目を挙げたトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)キャリア通算20勝目を挙げたトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) (c)CorVos

2位ヘルマンス、1位アールツ、3位ファンデプッテ2位ヘルマンス、1位アールツ、3位ファンデプッテ (c)CorVos
シリーズ総合表彰。2位アールツ、1位イゼルビッド、3位ファントーレンハウトシリーズ総合表彰。2位アールツ、1位イゼルビッド、3位ファントーレンハウト (c)CorVos
ヘルマンスのペダルに雪が詰まりペースを上げられない隙に、アールツは危なげなく、しかし力強い走りでリードを積み重ねる。最終周回で15秒の差を20秒まで広げたアールツが昨年10月以来となる待望の勝利を挙げた。

「パンクするまでは良いリズムで走れていたけれど、クィンティンが追いついてきてからは一緒に走り、彼の走りを後ろから観察していたんだ。キャンバー区間では僕の方が少し上手く走れていたね。ようやくプロキャリア20勝目に手が届いたよ」と、安堵の表情を浮かべたアールツ。各レースの合計フィニッシュタイムの累積で争われるシリーズランキングでは、この日6位イゼルビッドがリードを守り優勝を決めている。



トップ選手がフルメンバーで顔を揃えた女子レースはエヴァ・リヒナー(イタリア)とアンナ・カイ(イギリス)のスターカジノCXチーム勢がリードして幕開ける。軽やかな走りで飛ばしたカイにはやがて全世界チャンピオンのセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)とデニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が合流し先頭グループを形成した。

やがて実力の抜きん出たアルバラードが独走態勢に持ち込み、アルカンシエルを纏うルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)は一足遅れて2番手グループに合流してアルバラードとベッツィマの追撃を試みる。前週のX2Oトロフェー第7戦と同じ展開から優勝争いに持ち込みたかったブラントだが、この日はそれぞれ1位と2位を行く二人のテクニックが上回った。

危なげない走りで勝利したセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)危なげない走りで勝利したセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
嵌らないペダルに苛立ちを表現しながらフィニッシュしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)嵌らないペダルに苛立ちを表現しながらフィニッシュしたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) (c)CorVos
アルバラードは最終盤一気に差を埋めたベッツィマを振り切り、フィニッシュ。追い上げ届かなかったベッツィマが2位、マノン・バッカー(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ)が3位表彰台を射止め、4位は19歳のU23世界王者フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)。5位ブラントはリードを失いながらもX2Oトロフェーの総合ランキング制覇を遂げた。

「最終周回、ペダルに氷が詰まってタイムを失ってしまった。総合ランキングも逃してしまったかと思ったけれど、それでもなんとか達成できて本当に嬉しい」と語るブラントは、先に閉幕したUCIワールドカップ、そしてスーパープレスティージュと共に、シクロクロス3大シリーズの全ランキングで総合制覇を達成。ここに世界選手権制覇を加えた「グランドスラム」達成という、シクロクロス史に残る快挙達成に成功している。

2位ベッツィマ、1位アルバラード、3位バッカー2位ベッツィマ、1位アルバラード、3位バッカー (c)CorVos
シリーズ総合表彰。2位ベッツィマ、1位ブラント、3位アルバラードシリーズ総合表彰。2位ベッツィマ、1位ブラント、3位アルバラード (c)CorVos
欧州シクロクロスシーズンのビッグレースはこれにて終了。シクロクロス専業選手たちは残るレースをこなしつつ、春先のクラシックシーズンを走りながら緩やかにオフシーズンに。ブラントたちロード兼業組は短い休息とオフトレーニング期間に入る予定だ。
X2Oトロフェー2020-2021第8戦男子エリート結果
1位 トーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 57:44
2位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム) 0:20
3位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 0:36
4位 イェンス・アダムス(ベルギー) 0:43
5位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:48
6位 エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 1:01
7位 ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 1:18
8位 ケヴィン・クーン(スイス、トルマンスシクロクロスチーム) 1:29
9位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 1:38
10位 ティモ・キーリッヒ(ベルギー、クレディショップ・フリスタッズ) 1:43
X2Oトロフェー2020-2021第8戦女子エリート結果
1位 セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) 40:46
2位 デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:06
3位 マノン・バッカー(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) 0:20
4位 フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:35
5位 ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 0:37
6位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) 0:44
7位 アンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム) 0:59
8位 アニック・ファンアルフェン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) 1:14
9位 サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン) 1:23
10位 マリオン・ノーブルリブロール(フランス、スターカジノCXチーム) 1:53
text:So Isobe
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