2020/12/09(水) - 17:13
ブレーキで知られるTRPがシフターとディレイラーを開発。ダウンヒルのワールドカップを走るアーロン・グインとともに作り上げたDH用7速モデル"DH-7"、エンデューロ向け12速モデル"TR-12"を、ベテランDHレーサーの阿藤寛がインプレッションする。
レースシーンで人気のブレーキシステムを送り出してきたTRPとDHワールドカップライダーのアーロン・グインが共同開発。昨年販売が開始されたダウンヒル用7段変速システムのDH-7。このDH-7に続いて今年エンデューロ向けに開発された12速モデルがTR-12だ。
DH-7はトップ側7速のみ、と完全なるダウンヒル専用機として設計された、TRPとして初となる変速システム。それ故にいったいどのような仕上がりになっているのか?
また、最新のエンデューロシーンに向けて投入されたTR-12のポテンシャルも気になるところ。KENDAタイヤレビューに引き続き、ダウンヒルレーサーとして活躍する阿藤寛選手に実際に2つのディレイラーセットを使ってもらい、その機能、使用感について話を伺った。
阿藤:DH-7はSRAMやe-thirteenから7速用のカセットが出ているので、それらを使用します。
Q:インストールにあたって、ポイントや注意する点などはありますか?
阿藤:ディレイラーを組み付ける時にはホールロックとクラッチ、この2つのレバーをオフにするこが必須です。あとは普通のディレイラーと感覚は同じですね。面白い機能としてチェーンレングスインジケーターが本体にマーキングされています。このマークを基準にチェーンの長さを決めて下さい。ちょっとしたアイデアですが、このマークはとても便利です。
Q:実際に組んでみて、最初の印象はどうでした?
阿藤:なんと言ってもシフターのポジションですね。自由度がすごく高いです。僕は2本指ブレーキで、ツーフィンガーのレバーを使っていますが、他社のシフターだとシフターの位置が内側に追い込まれてしまって、シフトレバーが遠くなりがちです。ここの調整はとても難しく、どこか妥協しないと決まらない事が多い。しかし、TRPはシフター本体と取付けバンドとの位置関係が一般的なシフターと逆になっています。これによって、レバーを手元に近くセットすることが可能になります。
過去にシフターのポジションに困った事のあるライダーならば、ぜひ試してほしいです。これでポジションが出せないライダーはいないのではないか?と思うぐらい秀逸な作りになっています。正直これには驚きました。これは凄い、と。
Q:シフターの操作性はどうですか?
阿藤:シフトダウン(軽くする)方向には2段階動くように、シフトアップ(重くする)方向には1段階動くようにできています。ダウンヒル専用という意味でこれはとても重要で、シフトアップ時に押しすぎて一度に2段変わってしまうというミスが絶対に起こりません。そしてシフトアップのレバーは極めて短いストロークで、押した時の感触もクリック感が素晴らしく、加速に合わせて確実なシフト操作が可能です。
また、その動き方がまさしく指の動く方向に支点中心の円運動ではなくスライドするように動きます。これが独特の押しやすさに繋がっていると思います。ダウンヒルバイクでシフトアップしていく状況というのは、フルパワーでペダリングしている時が多く、ラフな路面で振動が激しいような場合でも確実に狙ったところで狙った段数をシフトしていく事ができます。このシフトアップの感覚は変速レバーというより、変速ボタンと言った方がニュアンスは近いかもしれません。感動的なフィーリングです。
Q:ディレイラー本体についても聞かせてください。
阿藤:まずはすごく静かな印象ですね。ガチャガチャしません。シフトフィールとしては、全体的にカチッとしてはいるけれどヌメっとした質感もあり滑らかさを感じます。
Q:DH-7とTR-12について。この二つ、基本的な構造は同じですか?
阿藤:システム的には基本的に同じです。TR-12の方はワイドレンジに対応していて変速数が12段ですが、DH-7とTR-12を乗り換えてもまったく違和感が無い。しかもハンドル周りのセッティングも全く同じに組むことができます。コースに合わせてダウンヒルバイクとエンデューロバイクをシームレスに運用できると思います。
Q:TR12のセッティングでは12段用のカセットとチェーンで使用可能ですか?
阿藤:はい、各社の12段用カセットスプロケットとチェーンで大丈夫です。TR-12はリアカセット最大50Tまで対応となっています。
Q:この変速システム、どのようなユーザーにお勧めしたいですか?
阿藤:僕は特にシフターの操作性、セッティングの自由度を評価しています。ライダーの好みブレーキとの相性など、あらゆる問題をクリアしているシステムで、これを嫌いな人はいないのではないかと思っています。DH-7に関しては完全にダウンヒル向きの7段変速なので、ユーザー層は限られますがシフトミスを無くし、走りに集中できるのでベストなドライブトレインだと言えると思います。
シフターとリアディレイラーのセットを前提にTRPがリリースする新しいドライブトレイン。細分化するライディングスタイルに合わせた専用設計のディレイラーでひとつ上のレベルへユーザーを導いてくれるだろう。
ディレイラーハンガーに固定するメインピボットボルトをロックアウトするためのHALL ROCK、ラチェット式のディレイラークラッチは、アーロン・グインと彼のメカニックであるジョン・ホールのフィードバックで生まれたシステム。チェーン落ちを防ぐカーボン製大型ディレイラーケージなども備えられており、グラビティ系マウンテンバイカーは恩恵を受けられるはずだ。
シフターはグインと煮詰めた独自のレバーの動き方を採用。加えてレバー自体が大型であることや、エンボス加工が施され、レバー向きの角度もそれぞれ計算されているされているため、シフト操作が行いやすいはずだ。また、シフトダウン用のレバーはホームポジションより±20°の範囲内で、レバー角度の調整を行えるようになっている。
ラインアップは7速用、12速用いずれもブラック、ゴールド、シルバーという3色が展開されている。世界のトップレースで活躍するアーロン・グインとの共同開発で生まれたシフト系コンポーネント。ダウンヒル向けDH-7は35,000円(税抜)、エンデューロ向けTR-12は38,000円(税抜)だ。
TRP DH−7
セット内容:右シフトレバー、リアディレーラーセット
材質:アルミ/カーボン
変速段数:7速
カラー:ブラック、ゴールド、シルバー
価格:35,000円(税抜)
TRP TR−12
セット内容:右シフトレバー、リアディレーラーセット
材質:アルミ/カーボン
変速段数:12速
カラー:ブラック、ゴールド、シルバー
価格:38,000円(税抜)
text&photo:Hiroyuki Nakagawa
レースシーンで人気のブレーキシステムを送り出してきたTRPとDHワールドカップライダーのアーロン・グインが共同開発。昨年販売が開始されたダウンヒル用7段変速システムのDH-7。このDH-7に続いて今年エンデューロ向けに開発された12速モデルがTR-12だ。
DH-7はトップ側7速のみ、と完全なるダウンヒル専用機として設計された、TRPとして初となる変速システム。それ故にいったいどのような仕上がりになっているのか?
また、最新のエンデューロシーンに向けて投入されたTR-12のポテンシャルも気になるところ。KENDAタイヤレビューに引き続き、ダウンヒルレーサーとして活躍する阿藤寛選手に実際に2つのディレイラーセットを使ってもらい、その機能、使用感について話を伺った。
インプレッションby阿藤寛
Q:まずDH用のDH-7ですが、気になるカセットやチェーンのセットアップについて教えて下さい。阿藤:DH-7はSRAMやe-thirteenから7速用のカセットが出ているので、それらを使用します。
Q:インストールにあたって、ポイントや注意する点などはありますか?
阿藤:ディレイラーを組み付ける時にはホールロックとクラッチ、この2つのレバーをオフにするこが必須です。あとは普通のディレイラーと感覚は同じですね。面白い機能としてチェーンレングスインジケーターが本体にマーキングされています。このマークを基準にチェーンの長さを決めて下さい。ちょっとしたアイデアですが、このマークはとても便利です。
Q:実際に組んでみて、最初の印象はどうでした?
阿藤:なんと言ってもシフターのポジションですね。自由度がすごく高いです。僕は2本指ブレーキで、ツーフィンガーのレバーを使っていますが、他社のシフターだとシフターの位置が内側に追い込まれてしまって、シフトレバーが遠くなりがちです。ここの調整はとても難しく、どこか妥協しないと決まらない事が多い。しかし、TRPはシフター本体と取付けバンドとの位置関係が一般的なシフターと逆になっています。これによって、レバーを手元に近くセットすることが可能になります。
過去にシフターのポジションに困った事のあるライダーならば、ぜひ試してほしいです。これでポジションが出せないライダーはいないのではないか?と思うぐらい秀逸な作りになっています。正直これには驚きました。これは凄い、と。
Q:シフターの操作性はどうですか?
阿藤:シフトダウン(軽くする)方向には2段階動くように、シフトアップ(重くする)方向には1段階動くようにできています。ダウンヒル専用という意味でこれはとても重要で、シフトアップ時に押しすぎて一度に2段変わってしまうというミスが絶対に起こりません。そしてシフトアップのレバーは極めて短いストロークで、押した時の感触もクリック感が素晴らしく、加速に合わせて確実なシフト操作が可能です。
また、その動き方がまさしく指の動く方向に支点中心の円運動ではなくスライドするように動きます。これが独特の押しやすさに繋がっていると思います。ダウンヒルバイクでシフトアップしていく状況というのは、フルパワーでペダリングしている時が多く、ラフな路面で振動が激しいような場合でも確実に狙ったところで狙った段数をシフトしていく事ができます。このシフトアップの感覚は変速レバーというより、変速ボタンと言った方がニュアンスは近いかもしれません。感動的なフィーリングです。
Q:ディレイラー本体についても聞かせてください。
阿藤:まずはすごく静かな印象ですね。ガチャガチャしません。シフトフィールとしては、全体的にカチッとしてはいるけれどヌメっとした質感もあり滑らかさを感じます。
Q:DH-7とTR-12について。この二つ、基本的な構造は同じですか?
阿藤:システム的には基本的に同じです。TR-12の方はワイドレンジに対応していて変速数が12段ですが、DH-7とTR-12を乗り換えてもまったく違和感が無い。しかもハンドル周りのセッティングも全く同じに組むことができます。コースに合わせてダウンヒルバイクとエンデューロバイクをシームレスに運用できると思います。
Q:TR12のセッティングでは12段用のカセットとチェーンで使用可能ですか?
阿藤:はい、各社の12段用カセットスプロケットとチェーンで大丈夫です。TR-12はリアカセット最大50Tまで対応となっています。
Q:この変速システム、どのようなユーザーにお勧めしたいですか?
阿藤:僕は特にシフターの操作性、セッティングの自由度を評価しています。ライダーの好みブレーキとの相性など、あらゆる問題をクリアしているシステムで、これを嫌いな人はいないのではないかと思っています。DH-7に関しては完全にダウンヒル向きの7段変速なので、ユーザー層は限られますがシフトミスを無くし、走りに集中できるのでベストなドライブトレインだと言えると思います。
シフターとリアディレイラーのセットを前提にTRPがリリースする新しいドライブトレイン。細分化するライディングスタイルに合わせた専用設計のディレイラーでひとつ上のレベルへユーザーを導いてくれるだろう。
ディレイラーハンガーに固定するメインピボットボルトをロックアウトするためのHALL ROCK、ラチェット式のディレイラークラッチは、アーロン・グインと彼のメカニックであるジョン・ホールのフィードバックで生まれたシステム。チェーン落ちを防ぐカーボン製大型ディレイラーケージなども備えられており、グラビティ系マウンテンバイカーは恩恵を受けられるはずだ。
シフターはグインと煮詰めた独自のレバーの動き方を採用。加えてレバー自体が大型であることや、エンボス加工が施され、レバー向きの角度もそれぞれ計算されているされているため、シフト操作が行いやすいはずだ。また、シフトダウン用のレバーはホームポジションより±20°の範囲内で、レバー角度の調整を行えるようになっている。
ラインアップは7速用、12速用いずれもブラック、ゴールド、シルバーという3色が展開されている。世界のトップレースで活躍するアーロン・グインとの共同開発で生まれたシフト系コンポーネント。ダウンヒル向けDH-7は35,000円(税抜)、エンデューロ向けTR-12は38,000円(税抜)だ。
TRP DH−7
セット内容:右シフトレバー、リアディレーラーセット
材質:アルミ/カーボン
変速段数:7速
カラー:ブラック、ゴールド、シルバー
価格:35,000円(税抜)
TRP TR−12
セット内容:右シフトレバー、リアディレーラーセット
材質:アルミ/カーボン
変速段数:12速
カラー:ブラック、ゴールド、シルバー
価格:38,000円(税抜)
text&photo:Hiroyuki Nakagawa
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