2010/05/30(日) - 15:32
標高2618mのガヴィア峠は雪景色。路面は完全に乾いた状態だが、沿道にはまだ数メートルの積雪が残る。頂上で待つこと約4時間、ラストランのジルベルト・シモーニ(イタリア、ランプレ)から僅か6分遅れで新城幸也(Bboxブイグテレコム)がやって来た。
ガヴィア峠・標高2618m・積雪多め
悪天候や地滑りの場合を考慮して、3つの代替案を用意した主催者。「結局ガヴィア峠はコースに組み込まれるのか?」ボルミオのスタート地点は朝からその話題で持ち切りだ。
予定されていた10時30分になっても正式なアナウンスは無く、刻々とスタート時間が迫る。クルマで移動して撮影する自分としては、早く撮影場所を決めて動き始めたいというのに。
大会スタッフや観客に聞いても違う答えが返ってくる。「頂上付近の天気が悪いからガヴィア峠は無しだ」「90%ガヴィア峠を通る」「もう大勢のサイクリストが頂上にいるらしいぞ?」「とりあえずヴィラッジョで無料ビールでも飲もうぜ」「そんなことより今度甥っ子が日本に行くんだがおすすめの観光地はどこだ?」etc。
スタート1時間半前になってようやくプレス担当者のマッテーオが登場したので聞いてみる。「コースは今のところ変更無し。ガヴィア峠は有り。というか、今すぐ上り始めないと通行は保証出来ない。今すぐ発て」。そう言われたのでスタートの撮影もせず、ユキヤの出走サインも撮影せず、ガヴィア峠に向かってクルマを走らせた。
選手たちはボルミオをスタート後、スイスを経由して1級山岳フォルコラ・ディ・リヴィーニョを越え、ボルミオを一度通過する。そこからチーマコッピのガヴィア峠がようやく始まる。つまり、選手たちがガヴィア峠に突入するのはスタートの約4時間後。スタート前にクルマでガヴィア峠を上り始めると、頂上でかなりの時間待ち続けることになる。しかしこればかりは仕方が無い。
標高1200mのボルミオを離れ、徐々に標高を上げて行く。勾配はそれほどキツくないが、とりあえず頂上までの距離が長い。
標高2000mを超えると沿道には雪が残り始め、標高2300mで辺りは雪景色に。遠くに見える尾根に向かって、舗装路がグネグネと伸びている。本当にここをレースが通過するのか??
頂上付近には早くもチームカーがスタンバイしている。彼らの邪魔にならない場所に駐車し、そこでレースの到着を待つことにした。
頂上は自走で上って来たサイクリストで溢れ、峠の横にあるカフェは大盛況。空模様は山の天気そのもので、晴れていると思ったら、黒い雲に覆われて降雨。気温が10度近くまであるので幸い雪にはならない。
この日はラジオコルサ(競技無線)の調子が悪く、上手くレース展開が把握出来なかった。時々雑音とともに聞こえて来たのは、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がアタックしていることと、ジルベルト・シモーニ(イタリア、ランプレ)が先頭にいること、そしてリクイガスが集団をコントロールしていること。
寒さに震えるサイクリストを横目に待ち続けること4時間(昼寝1時間)、中継ヘリを引き連れて、雪山を登る選手たちがやってきた。それにしても、ヘリコプターに向かって観客が手を振る姿は、雪山遭難救助そのものだ。
シモーニとヨハン・チョップ(スイス、Bboxブイグテレコム)が先頭でガヴィア峠の頂上にやってきた。少し意外な組み合わせ。引退するシモーニに最後の花道を飾ってほしい気もするし、ブイグの選手にも勝って欲しい気もする。雪山の向こうに消えていく2人を見つめていると、追走グループ、そしてメイン集団がやってきた。
メイン集団を牽くのはマリアローザを着るイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)。しかしチームカラーのジャケットを羽織っていたので「くそう!バッソがどこにいるのか分からなかった!」という観客もいた。
ちなみにイタリア人の観客は案外選手のことを知らない。コフィディスの赤ジャージを見つけて「行けー!ガルゼッリー!」と叫んだり、「今日は誰が勝つ?」の質問に「今の選手はあまり知らない。キャプッチが出ていれば勝つだろう」と答えたり。しかしみんな共通しているのはロードレースが好きだ、ということ。
有力選手たちを撮り終え、アングルを変えるために早足で移動していると、Bboxブイグテレコムのジャージが一人やってきた。「まさか??」と思ってカメラを向ける。ハンドルから手を離し、下山に向けて身支度を整えているのは紛れも無い新城幸也。グルペットで頑張っていると思いきや、何とメイン集団から5分遅れでガヴィア峠の頂上にやってきた。
結局ユキヤはその後もペースを崩さずに難関山岳コースを走り切った。多くの選手が37分54秒遅れのグルペットで何とか生還する中、ユキヤは先頭から19分12秒遅れのステージ49位でフィニッシュ。「完走」どころか、山岳ステージでも魅せる走り。総合でも93位まで順位を上げた。
全選手の通過後、急いでガヴィア峠を離れてゴールに向かう。眼下に広がる雄大な景色に目を奪われていると、危うくヘアピンカーブでコースアウトしそうになる。雲の切れ間からこぼれる太陽の光、雪山特有の荒れたアスファルト。雪と岩のコントラストが美しい。下りで撮影しても良かったと後悔した。
ゴール地点に到着した頃には辺りは薄暗くなり、表彰台やフェンスの撤収作業が始まっていた。Bboxブイグテレコムのチームバスに向かったが間に合わず、ユキヤのコメントは取れず。選手たちはトナーレ峠から3時間かけてヴェローナに移動する。最終個人タイムトライアルを残すのみとなったので、きっとバスの中はお祭り騒ぎになっていることだろう。
ジロも残り一日。アムステルダムをスタートしたのが遠い昔のように感じる。しかし、やはりレースの終わりはいつも寂しい。
text&photo:Kei Tsuji
ガヴィア峠・標高2618m・積雪多め
悪天候や地滑りの場合を考慮して、3つの代替案を用意した主催者。「結局ガヴィア峠はコースに組み込まれるのか?」ボルミオのスタート地点は朝からその話題で持ち切りだ。
予定されていた10時30分になっても正式なアナウンスは無く、刻々とスタート時間が迫る。クルマで移動して撮影する自分としては、早く撮影場所を決めて動き始めたいというのに。
大会スタッフや観客に聞いても違う答えが返ってくる。「頂上付近の天気が悪いからガヴィア峠は無しだ」「90%ガヴィア峠を通る」「もう大勢のサイクリストが頂上にいるらしいぞ?」「とりあえずヴィラッジョで無料ビールでも飲もうぜ」「そんなことより今度甥っ子が日本に行くんだがおすすめの観光地はどこだ?」etc。
スタート1時間半前になってようやくプレス担当者のマッテーオが登場したので聞いてみる。「コースは今のところ変更無し。ガヴィア峠は有り。というか、今すぐ上り始めないと通行は保証出来ない。今すぐ発て」。そう言われたのでスタートの撮影もせず、ユキヤの出走サインも撮影せず、ガヴィア峠に向かってクルマを走らせた。
選手たちはボルミオをスタート後、スイスを経由して1級山岳フォルコラ・ディ・リヴィーニョを越え、ボルミオを一度通過する。そこからチーマコッピのガヴィア峠がようやく始まる。つまり、選手たちがガヴィア峠に突入するのはスタートの約4時間後。スタート前にクルマでガヴィア峠を上り始めると、頂上でかなりの時間待ち続けることになる。しかしこればかりは仕方が無い。
標高1200mのボルミオを離れ、徐々に標高を上げて行く。勾配はそれほどキツくないが、とりあえず頂上までの距離が長い。
標高2000mを超えると沿道には雪が残り始め、標高2300mで辺りは雪景色に。遠くに見える尾根に向かって、舗装路がグネグネと伸びている。本当にここをレースが通過するのか??
頂上付近には早くもチームカーがスタンバイしている。彼らの邪魔にならない場所に駐車し、そこでレースの到着を待つことにした。
頂上は自走で上って来たサイクリストで溢れ、峠の横にあるカフェは大盛況。空模様は山の天気そのもので、晴れていると思ったら、黒い雲に覆われて降雨。気温が10度近くまであるので幸い雪にはならない。
この日はラジオコルサ(競技無線)の調子が悪く、上手くレース展開が把握出来なかった。時々雑音とともに聞こえて来たのは、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がアタックしていることと、ジルベルト・シモーニ(イタリア、ランプレ)が先頭にいること、そしてリクイガスが集団をコントロールしていること。
寒さに震えるサイクリストを横目に待ち続けること4時間(昼寝1時間)、中継ヘリを引き連れて、雪山を登る選手たちがやってきた。それにしても、ヘリコプターに向かって観客が手を振る姿は、雪山遭難救助そのものだ。
シモーニとヨハン・チョップ(スイス、Bboxブイグテレコム)が先頭でガヴィア峠の頂上にやってきた。少し意外な組み合わせ。引退するシモーニに最後の花道を飾ってほしい気もするし、ブイグの選手にも勝って欲しい気もする。雪山の向こうに消えていく2人を見つめていると、追走グループ、そしてメイン集団がやってきた。
メイン集団を牽くのはマリアローザを着るイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)。しかしチームカラーのジャケットを羽織っていたので「くそう!バッソがどこにいるのか分からなかった!」という観客もいた。
ちなみにイタリア人の観客は案外選手のことを知らない。コフィディスの赤ジャージを見つけて「行けー!ガルゼッリー!」と叫んだり、「今日は誰が勝つ?」の質問に「今の選手はあまり知らない。キャプッチが出ていれば勝つだろう」と答えたり。しかしみんな共通しているのはロードレースが好きだ、ということ。
有力選手たちを撮り終え、アングルを変えるために早足で移動していると、Bboxブイグテレコムのジャージが一人やってきた。「まさか??」と思ってカメラを向ける。ハンドルから手を離し、下山に向けて身支度を整えているのは紛れも無い新城幸也。グルペットで頑張っていると思いきや、何とメイン集団から5分遅れでガヴィア峠の頂上にやってきた。
結局ユキヤはその後もペースを崩さずに難関山岳コースを走り切った。多くの選手が37分54秒遅れのグルペットで何とか生還する中、ユキヤは先頭から19分12秒遅れのステージ49位でフィニッシュ。「完走」どころか、山岳ステージでも魅せる走り。総合でも93位まで順位を上げた。
全選手の通過後、急いでガヴィア峠を離れてゴールに向かう。眼下に広がる雄大な景色に目を奪われていると、危うくヘアピンカーブでコースアウトしそうになる。雲の切れ間からこぼれる太陽の光、雪山特有の荒れたアスファルト。雪と岩のコントラストが美しい。下りで撮影しても良かったと後悔した。
ゴール地点に到着した頃には辺りは薄暗くなり、表彰台やフェンスの撤収作業が始まっていた。Bboxブイグテレコムのチームバスに向かったが間に合わず、ユキヤのコメントは取れず。選手たちはトナーレ峠から3時間かけてヴェローナに移動する。最終個人タイムトライアルを残すのみとなったので、きっとバスの中はお祭り騒ぎになっていることだろう。
ジロも残り一日。アムステルダムをスタートしたのが遠い昔のように感じる。しかし、やはりレースの終わりはいつも寂しい。
text&photo:Kei Tsuji
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