2020/10/22(木) - 15:11
エシュロン発生で次々と有力候補が遅れていく爆風と雨のAGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌ。レースを掌握したドゥクーニンク・クイックステップがイヴ・ランパールト(ベルギー)を勝利に導いた一方、道端の溝に落下したロンド覇者マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が脳震盪に見舞われる事態となった。
ロレーナ・ウィーブス(オランダ、サンウェブ)が勝利した女子レースの翌日、ウェスト=フランデレン州の州都ブルージュを出発点としたUCIワールドツアーのワンデーレース最終戦、AGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌ男子レースが開催された。
前日よりも遥かに強い風が吹き荒れる天候の下、ブルージュのスタート地点に集まったのは8のUCIプロチームを含む合計245チーム。ロンド・ファン・フラーンデレンで劇的な勝利を遂げたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)を筆頭に、3位アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、リベンジに燃えるドゥクーニンク・クイックステップ勢やマッテーオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)など屈強なクラシックハンターをはじめ、シュヘルデプライスを制したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)といったスプリンター勢、そして今季最終レースと目されるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)も顔を揃えた。
色づき始めた木々が雨に濡れるブルージュを出発し、デパンヌの街並みを目指して南下すると、すぐさま北海から吹き付ける風が集団を破壊した。逃げが決まる間も無く幾つものエシュロン(横風隊列)が出来上がる混沌とした状況で、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)やセップ・ファンマルク(ベルギー、EFプロサイクリング)、ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)たちが落車してしまう。ロンドでもトラブルに見舞われたファンマルク、ナーセン、クフィアトコフスキたちは再乗車したものの、各エシュロンが全速力で追走劇を繰り広げる状況では復帰には一縷の望みもなかった。
ファンデルプールやジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)、カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)を含む12名の先頭グループと、トレンティンやマキシミリアン・ワルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)を含む10名の追走グループは爆風の中30秒差でチェイスを続け、レース開始後1時間で51.7kmを消化してしまう。有力候補が多数揃った第1、第2グループ以下は徐々にスピードを失い、やがて脱落。この日は最終完走人数49名という超サバイバルレースが展開された。
砂のシクロクロスレースで有名なコクサイデを通過する46kmの周回コース(3周半)に入ると第1、第2グループは合流し、24名の優勝争いグループが出来上がる。クリストフたちが入った2番手グループを引き離して突き進んだメンバーは以下の通り。
ロレーナ・ウィーブス(オランダ、サンウェブ)が勝利した女子レースの翌日、ウェスト=フランデレン州の州都ブルージュを出発点としたUCIワールドツアーのワンデーレース最終戦、AGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌ男子レースが開催された。
前日よりも遥かに強い風が吹き荒れる天候の下、ブルージュのスタート地点に集まったのは8のUCIプロチームを含む合計245チーム。ロンド・ファン・フラーンデレンで劇的な勝利を遂げたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)を筆頭に、3位アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、リベンジに燃えるドゥクーニンク・クイックステップ勢やマッテーオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)など屈強なクラシックハンターをはじめ、シュヘルデプライスを制したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)といったスプリンター勢、そして今季最終レースと目されるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)も顔を揃えた。
色づき始めた木々が雨に濡れるブルージュを出発し、デパンヌの街並みを目指して南下すると、すぐさま北海から吹き付ける風が集団を破壊した。逃げが決まる間も無く幾つものエシュロン(横風隊列)が出来上がる混沌とした状況で、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)やセップ・ファンマルク(ベルギー、EFプロサイクリング)、ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)たちが落車してしまう。ロンドでもトラブルに見舞われたファンマルク、ナーセン、クフィアトコフスキたちは再乗車したものの、各エシュロンが全速力で追走劇を繰り広げる状況では復帰には一縷の望みもなかった。
ファンデルプールやジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)、カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)を含む12名の先頭グループと、トレンティンやマキシミリアン・ワルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)を含む10名の追走グループは爆風の中30秒差でチェイスを続け、レース開始後1時間で51.7kmを消化してしまう。有力候補が多数揃った第1、第2グループ以下は徐々にスピードを失い、やがて脱落。この日は最終完走人数49名という超サバイバルレースが展開された。
砂のシクロクロスレースで有名なコクサイデを通過する46kmの周回コース(3周半)に入ると第1、第2グループは合流し、24名の優勝争いグループが出来上がる。クリストフたちが入った2番手グループを引き離して突き進んだメンバーは以下の通り。
先頭グループを形成した24名
カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
ベルト・ファンレルベルフ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、ボーラ・ハンスグローエ) |
トム・スクーリー(ニュージーランド、EFプロサイクリング) |
ユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) |
マッテーオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) |
ギヨーム・ファンケイルスブルク(ベルギー、CCCチーム) |
ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル) |
ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル) |
フレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・スーダル) |
マキシミリアン・ワルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング) |
スヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) |
シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) |
クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス) |
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) |
ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) |
アレクサンダー・クリーガー(ドイツ、アルペシン・フェニックス) |
ジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス) |
ベンジャミン・デクレルク(ベルギー、アルケア・サムシック) |
ピョートル・ハヴィック(オランダ、リワル・レディーネス サイクリングチーム) |
まだ先のフィニッシュラインに向けて突き進む先頭グループ内ですら、木々を揺らす強風によって安全とは言えなかった。フレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・スーダル)が、続いてピョートル・ハヴィック(オランダ、リワル・レディーネス サイクリングチーム)が落車によってレースを去ってしまう。
残り35km地点でのハヴィックの落車は分断を呼び起こし、あおりを喰らったセネシャルやスヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が千切れたほか、力を使い果たしたマキシミリアン・ワルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)たちも脱落。右に左に向きを変えるコース、つまり風向きが右に左に変わる状況で、先頭グループ内でも接触であわや落車という光景が繰り返される。地獄絵図のような過酷極まりない展開の中、不運はファンデルプールにも襲いかかった。
強力にローテーションを回し好調ぶりを見せていたファンデルプールだったが、吹きさらし区間でドゥクーニンク・クイックステップが更なるペースアップで絞り込もうとしたラスト17km地点で、集団内の動きの余波を受けて道端の深い溝に転落してしまう。救助が来るまで動けなかったファンデルプールは脳震盪に見舞われたものの、助けを借りて歩いてチームカーに乗り込む。ファンデルプールのロードシーズンは落車リタイアで終幕することとなってしまった。
ファンデルプールの落車に構わず攻撃を続けたドゥクーニンク・クイックステップは先頭集団を7名まで絞り込み、そのうち4名が自チーム(アスグリーン、ファンレルベルフ、デクレルク、ランパールト)という圧倒的優位の状況を作り出すことに成功する。エースの脱落を受けたアルペシン・フェニックスはジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス)を復帰させることに成功したが、時を同じくしてランパールトのアタックが炸裂した。
ペースメーカー不在の第2グループからすぐさま20秒差を得たランパールト。しばらくして個人TT欧州王者のシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)やジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、ボーラ・ハンスグローエ)が第2グループに追いついたが、振り払うようにドゥクーニンクが加速する。完璧に機能するウルフパックの後押しを受けて、ランパールトが落ち葉舞うフィニッシュラインに飛び込んだ。
「僕たちはワンダフルで、自分たち自身を誇りに思えるほどの仕事を成し遂げた。チームは序盤からレースを掌握し、その最後に暴風に負けずフィニッシュすることができた。クレイジーな天候だったけれど、僕たちの大好物でもある。集中力を切らさず、全てを投げ打って射止めた勝利だ」と喜ぶランパールト。後続集団では"トラクター"ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がロングスパートで2位に入り、後方ではスプリント力の抜きん出たティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が3位。ロンドで惨敗したドゥクーニンクはトップ10に4人を送り込む会心の勝利でリベンジを達成した。
「こうしてシーズンを締めくくることができてハッピーだ。それに加えて誰もがチームのために働くハードワーカーと認めるティムとポディウムを分け合えたことも本当に嬉しい。これから思いっきりフリッツ(ポテト)を食べてシーズン終了を祝うことにするよ」と、ランパールトは締めくくっている。
残り35km地点でのハヴィックの落車は分断を呼び起こし、あおりを喰らったセネシャルやスヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が千切れたほか、力を使い果たしたマキシミリアン・ワルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング)たちも脱落。右に左に向きを変えるコース、つまり風向きが右に左に変わる状況で、先頭グループ内でも接触であわや落車という光景が繰り返される。地獄絵図のような過酷極まりない展開の中、不運はファンデルプールにも襲いかかった。
強力にローテーションを回し好調ぶりを見せていたファンデルプールだったが、吹きさらし区間でドゥクーニンク・クイックステップが更なるペースアップで絞り込もうとしたラスト17km地点で、集団内の動きの余波を受けて道端の深い溝に転落してしまう。救助が来るまで動けなかったファンデルプールは脳震盪に見舞われたものの、助けを借りて歩いてチームカーに乗り込む。ファンデルプールのロードシーズンは落車リタイアで終幕することとなってしまった。
ファンデルプールの落車に構わず攻撃を続けたドゥクーニンク・クイックステップは先頭集団を7名まで絞り込み、そのうち4名が自チーム(アスグリーン、ファンレルベルフ、デクレルク、ランパールト)という圧倒的優位の状況を作り出すことに成功する。エースの脱落を受けたアルペシン・フェニックスはジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス)を復帰させることに成功したが、時を同じくしてランパールトのアタックが炸裂した。
ペースメーカー不在の第2グループからすぐさま20秒差を得たランパールト。しばらくして個人TT欧州王者のシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)やジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、ボーラ・ハンスグローエ)が第2グループに追いついたが、振り払うようにドゥクーニンクが加速する。完璧に機能するウルフパックの後押しを受けて、ランパールトが落ち葉舞うフィニッシュラインに飛び込んだ。
「僕たちはワンダフルで、自分たち自身を誇りに思えるほどの仕事を成し遂げた。チームは序盤からレースを掌握し、その最後に暴風に負けずフィニッシュすることができた。クレイジーな天候だったけれど、僕たちの大好物でもある。集中力を切らさず、全てを投げ打って射止めた勝利だ」と喜ぶランパールト。後続集団では"トラクター"ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がロングスパートで2位に入り、後方ではスプリント力の抜きん出たティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が3位。ロンドで惨敗したドゥクーニンクはトップ10に4人を送り込む会心の勝利でリベンジを達成した。
「こうしてシーズンを締めくくることができてハッピーだ。それに加えて誰もがチームのために働くハードワーカーと認めるティムとポディウムを分け合えたことも本当に嬉しい。これから思いっきりフリッツ(ポテト)を食べてシーズン終了を祝うことにするよ」と、ランパールトは締めくくっている。
AGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌ2020
1位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 3:57:12 |
2位 | ティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:21 |
3位 | ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 0:22 |
4位 | ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル) | |
5位 | ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | マッテーオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) | |
7位 | ベルト・ファンレルベルフ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
8位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | |
9位 | カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
10位 | ジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 0:28 |
text:So Isobe
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