2020/10/07(水) - 07:50
シチリア島最終日のジロ・デ・イタリア第4ステージは3級山岳を生き残ったスプリンターたちの戦いに。接戦スプリントでペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を数センチ差で下したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が勝利した。
140kmの今大会最短コース(個人TTを除く)が設定されたシチリア島最終日の第4ステージ。シチリア島南東部のカターニアから観光地タオルミーナをかすめて内陸に舵を取り、標高1,125mの3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長14.4km・平均5.5%)を越えて北海岸に出る。残り40kmは概ねフラット。3級山岳を集団内で越えたピュアスプリンターたちがヴィッラフランカティレーナでスプリントバトルを繰り広げると予想された。
カターニアの街をスタートしたのは、第3ステージの落車で骨盤を骨折したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を除く172名。すぐさま総合に関係しない3名の逃げが決まり、気温20度ほどのシチリア島東岸を北上するうちにタイム差は最大4分20秒まで広がった。
逃げグループを形成した3名
総合115位 シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)25分42秒遅れ
総合123位 マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)27分48秒遅れ
総合128位 カミル・グラデク(ポーランド、CCCチーム)28分32秒遅れ
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)は第1スプリント(55km地点)を集団先頭通過したものの、その後の3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィでライバルチームに苦しめられることに。ステージ前半からメイン集団を牽引したグルパマFDJやコフィディス、UAEチームエミレーツ、イスラエル・スタートアップネイションに代わって、標高1,125mの峠を目指す登りが始まるとボーラ・ハンスグローエがペースアップを開始。ここでガビリアやエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、そしてステージ前半の落車の影響でベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団から遅れた。
タイム差を失いつつあった先頭ではコロンビア在住のスイス人ペローが独走を開始した。雨が降り始め、霧が立ち込めた3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ頂上を先頭通過したペローは、メイン集団から1分25秒、ガビリアを含むグルペットから約4分のリードを得てテクニカルな下りに突入した。
3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長14.4km・平均5.5%)登坂データ
先頭ペロー:平均スピード24.0km/h、登坂時間35分50秒、VAM1,330
メイン集団:平均スピード25.8km/h、登坂時間33分24秒、VAM1,430
グルペット:平均スピード23.6km/h、登坂時間36分21秒、VAM1,310
雨に濡れ、見るからに滑りやすい下り区間でペローは先行を続けたが、平坦区間に入るとそのリードは瞬く間に縮小する。ボーナスタイムが設定された第2スプリント(114km地点)が近づくと、先頭ペローに続く2番手通過(ボーナスタイム2秒)を狙うドゥクーニンク・クイックステップとEFプロサイクリングがペースアップ。0秒差で総合2位につけるヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング)が果敢にマリアローザ奪回を狙ったが、ここは総合首位ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がしっかりと集団先頭通過。リードアウト役を担ったダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)が3番手通過(ボーナスタイム1秒)したため、アルメイダとカイセドの総合タイム差は2秒に広がった。
3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィで遅れたライバルたちの集団復帰を阻止したいボーラ・ハンスグローエやグルパマFDJがメイン集団のスピードを上げ続けたため、先頭ペローはすぐさま吸収される。ヴィヴィアーニは集団復帰を果たしたものの、ガビリアを含むグルペットは遅れたまま。2つの集団のタイム差は30秒前後で推移したが、計算上、経験上、追いつけないと判断したグルペットは残り7km地点でペースを緩めた。最終的にメイン集団には約130名が残った。
平坦基調のラスト40kmを平均スピード53.3km/hで駆け抜けたメイン集団が、ヴィッラフランカティレーナにやってきた。ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)の集団前方ポジションキープに尽力した新城幸也は残り2kmアーチ通過後に離脱。そこからスプリンターチームが発進したものの、コーナーが連続したこともあり完全に主導権を握るチームは現れない。
残り1kmアーチ通過とともに急加速して先頭に立ったのはグルパマFDJ。残り850mの最終コーナーで一人抜け出す形となったマイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマFDJ)がそのままスパートする。ヴィヴィアーニのリードアウト役を担うシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)が追走せざるを得ない状況となり、残り400mでスコットソンが捕らえられると今度はジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)のリードアウトがスタート。見事な連携でスプリントに持ち込んだグルパマFDJに対し、デマールの横からサガンが先に仕掛けた。
デマールとサガン、そしてここにバッレリーニも絡む横並びスプリント。いずれの選手も完全に抜け出すには至らず、横並びのままハンドルを投げ込む。あまりの僅差に誰も手をあげることができず、数分間の時間を要した写真判定の結果、デマールが数センチ差でサガンを下していることが判明した。上位フィニッシャーたちのラスト1kmの平均スピードは62.1km/hに達している。
「フィニッシュラインを駆け抜けてからも、勝ったかどうかわからなかった。(3位の)バッレリーニがガッツポーズしたので、正式な結果を知らされるまで2位だと思っていた」と、僅差の勝利を収めたフランスチャンピオン。ジロでのデマールのステージ優勝は2019年大会第10ステージに続く2度目。今シーズンの勝利数を世界最多となる11勝まで伸ばしている。「ガビリアを含む集団が常に25〜30秒後方にいたので、チームは常にメイン集団を牽引し続けた。最後はマイルズ・スコットソンがそのスピードを生かして独走。コフィディスが追走したので、スプリントに向けて脚をためることができた。今日は調子が良かったし、運も味方についていた」。
サガンは僅差で敗れたが、第2ステージに続く2位の成績によりマリアチクラミーノを手にしている。なお、これまでグランツール(ジロとツールとブエルタ)でステージ通算16勝を飾っているサガンにとってステージ2位はこれが30回目。「勝つ時もあれば負ける時もある。今日は3級山岳で厳しい展開に持ち込む作戦で、チームは素晴らしい働きをしてくれた。まだマリアチクラミーノのリードは少ないので、これからもポイントを狙っていく」とサガンはコメントしている。
結局ガビリアを含むグルペットは2分43秒遅れでフィニッシュ。その後方を走行していたヴィーニザブKTMのルーカ・ワッケルマン(イタリア)とエティエンヌ・ファンエンペル(オランダ)は、ヘリコプターの風圧でコース上に吹き飛ばされたフェンスと絡んで落車。最終コーナーを抜けたところで発生したこの事故により、ファンエンペルは自力でフィニッシュしたものの、脳震盪と鼻骨の骨折を負ったワッケルマンは救急車で病院へと搬送されている(リザルト上は完走扱いになっている)。
140kmの今大会最短コース(個人TTを除く)が設定されたシチリア島最終日の第4ステージ。シチリア島南東部のカターニアから観光地タオルミーナをかすめて内陸に舵を取り、標高1,125mの3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長14.4km・平均5.5%)を越えて北海岸に出る。残り40kmは概ねフラット。3級山岳を集団内で越えたピュアスプリンターたちがヴィッラフランカティレーナでスプリントバトルを繰り広げると予想された。
カターニアの街をスタートしたのは、第3ステージの落車で骨盤を骨折したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を除く172名。すぐさま総合に関係しない3名の逃げが決まり、気温20度ほどのシチリア島東岸を北上するうちにタイム差は最大4分20秒まで広がった。
逃げグループを形成した3名
総合115位 シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)25分42秒遅れ
総合123位 マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)27分48秒遅れ
総合128位 カミル・グラデク(ポーランド、CCCチーム)28分32秒遅れ
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)は第1スプリント(55km地点)を集団先頭通過したものの、その後の3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィでライバルチームに苦しめられることに。ステージ前半からメイン集団を牽引したグルパマFDJやコフィディス、UAEチームエミレーツ、イスラエル・スタートアップネイションに代わって、標高1,125mの峠を目指す登りが始まるとボーラ・ハンスグローエがペースアップを開始。ここでガビリアやエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、そしてステージ前半の落車の影響でベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団から遅れた。
タイム差を失いつつあった先頭ではコロンビア在住のスイス人ペローが独走を開始した。雨が降り始め、霧が立ち込めた3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ頂上を先頭通過したペローは、メイン集団から1分25秒、ガビリアを含むグルペットから約4分のリードを得てテクニカルな下りに突入した。
3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長14.4km・平均5.5%)登坂データ
先頭ペロー:平均スピード24.0km/h、登坂時間35分50秒、VAM1,330
メイン集団:平均スピード25.8km/h、登坂時間33分24秒、VAM1,430
グルペット:平均スピード23.6km/h、登坂時間36分21秒、VAM1,310
雨に濡れ、見るからに滑りやすい下り区間でペローは先行を続けたが、平坦区間に入るとそのリードは瞬く間に縮小する。ボーナスタイムが設定された第2スプリント(114km地点)が近づくと、先頭ペローに続く2番手通過(ボーナスタイム2秒)を狙うドゥクーニンク・クイックステップとEFプロサイクリングがペースアップ。0秒差で総合2位につけるヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング)が果敢にマリアローザ奪回を狙ったが、ここは総合首位ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)がしっかりと集団先頭通過。リードアウト役を担ったダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)が3番手通過(ボーナスタイム1秒)したため、アルメイダとカイセドの総合タイム差は2秒に広がった。
3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィで遅れたライバルたちの集団復帰を阻止したいボーラ・ハンスグローエやグルパマFDJがメイン集団のスピードを上げ続けたため、先頭ペローはすぐさま吸収される。ヴィヴィアーニは集団復帰を果たしたものの、ガビリアを含むグルペットは遅れたまま。2つの集団のタイム差は30秒前後で推移したが、計算上、経験上、追いつけないと判断したグルペットは残り7km地点でペースを緩めた。最終的にメイン集団には約130名が残った。
平坦基調のラスト40kmを平均スピード53.3km/hで駆け抜けたメイン集団が、ヴィッラフランカティレーナにやってきた。ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)の集団前方ポジションキープに尽力した新城幸也は残り2kmアーチ通過後に離脱。そこからスプリンターチームが発進したものの、コーナーが連続したこともあり完全に主導権を握るチームは現れない。
残り1kmアーチ通過とともに急加速して先頭に立ったのはグルパマFDJ。残り850mの最終コーナーで一人抜け出す形となったマイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマFDJ)がそのままスパートする。ヴィヴィアーニのリードアウト役を担うシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)が追走せざるを得ない状況となり、残り400mでスコットソンが捕らえられると今度はジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)のリードアウトがスタート。見事な連携でスプリントに持ち込んだグルパマFDJに対し、デマールの横からサガンが先に仕掛けた。
デマールとサガン、そしてここにバッレリーニも絡む横並びスプリント。いずれの選手も完全に抜け出すには至らず、横並びのままハンドルを投げ込む。あまりの僅差に誰も手をあげることができず、数分間の時間を要した写真判定の結果、デマールが数センチ差でサガンを下していることが判明した。上位フィニッシャーたちのラスト1kmの平均スピードは62.1km/hに達している。
「フィニッシュラインを駆け抜けてからも、勝ったかどうかわからなかった。(3位の)バッレリーニがガッツポーズしたので、正式な結果を知らされるまで2位だと思っていた」と、僅差の勝利を収めたフランスチャンピオン。ジロでのデマールのステージ優勝は2019年大会第10ステージに続く2度目。今シーズンの勝利数を世界最多となる11勝まで伸ばしている。「ガビリアを含む集団が常に25〜30秒後方にいたので、チームは常にメイン集団を牽引し続けた。最後はマイルズ・スコットソンがそのスピードを生かして独走。コフィディスが追走したので、スプリントに向けて脚をためることができた。今日は調子が良かったし、運も味方についていた」。
サガンは僅差で敗れたが、第2ステージに続く2位の成績によりマリアチクラミーノを手にしている。なお、これまでグランツール(ジロとツールとブエルタ)でステージ通算16勝を飾っているサガンにとってステージ2位はこれが30回目。「勝つ時もあれば負ける時もある。今日は3級山岳で厳しい展開に持ち込む作戦で、チームは素晴らしい働きをしてくれた。まだマリアチクラミーノのリードは少ないので、これからもポイントを狙っていく」とサガンはコメントしている。
結局ガビリアを含むグルペットは2分43秒遅れでフィニッシュ。その後方を走行していたヴィーニザブKTMのルーカ・ワッケルマン(イタリア)とエティエンヌ・ファンエンペル(オランダ)は、ヘリコプターの風圧でコース上に吹き飛ばされたフェンスと絡んで落車。最終コーナーを抜けたところで発生したこの事故により、ファンエンペルは自力でフィニッシュしたものの、脳震盪と鼻骨の骨折を負ったワッケルマンは救急車で病院へと搬送されている(リザルト上は完走扱いになっている)。
ジロ・デ・イタリア2020第4ステージ結果
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 3:22:13 |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
4位 | クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
5位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | |
6位 | ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル) | |
7位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | |
8位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
9位 | フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、バルディアーニCSF)。 | |
10位 | エンリコ・バッタリーン(イタリア、バーレーン・マクラーレン) | |
71位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) | |
DNS | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 11:06:36 |
2位 | ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング) | 0:00:02 |
3位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:39 |
4位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:44 |
5位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:55 |
6位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:00:57 |
7位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 0:01:01 |
8位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) | 0:01:13 |
9位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ) | 0:01:15 |
10位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:01:17 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 57pts |
2位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 52pts |
3位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 27pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング) | 40pts |
2位 | ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブKTM) | 18pts |
3位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 12pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 11:06:36 |
2位 | ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:55 |
3位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) | 0:01:13 |
チーム総合成績
1位 | ドゥクーニンク・クイックステップ | 23:15:40 |
2位 | サンウェブ | 0:03:02 |
3位 | トレック・セガフレード | 0:04:38 |
text:Kei Tsuji
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