2020/10/01(木) - 13:30
コロナ禍により多くのサイクリングイベントが中止に追い込まれるなか無事に開催された「走ってみっぺ南会津2020」。ウイルス感染対策を徹底しながら、南会津の名所やグルメが今年も迎えてくれた。
晴れてしまえばほぼ成功、なんて言われることもある屋外イベント。毎年雨に祟られるイベントもあれば、雨とは無縁の大会もある。走ってみっぺ南会津は、初回以来8回連続、雨予報をも覆し晴れ続けてきた100%の晴れ大会。まさに勝利が約束されたイベントであるが、今年ばかりは違う暗雲が垂れ込めていた。
それは言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大によるイベント自粛の波。東京マラソンの一般参加枠の中止を皮切りに、スポーツイベントも軒並み中止に追い込まれた。例年盛夏に開かれる走ってみっぺ南会津も例外ではなかったが、先が見えない情勢の中、それでも開催できると信じて準備を重ねた主催者の方々の努力、過去8回にわたって積み重ねてきた地域の方との良好な関係性もあったのだろう。秋以降のイベントでも中止の報が続々と届く中、走ってみっぺ南会津は無事に開催されるという吉報を手に、東北道を北上した。
とはいえ、例年通りの規模での開催とはならず、感染症対策として最も大きな変更点となったのが、前夜祭が中止となったことだろう。毎年南会津の郷土料理と地酒がたんまりと振る舞われ、参加者同士の交流の場となっていた前夜祭がキャンセルとなったのはやむを得ないこととはいえ、残念。走ってみっぺの前夜祭はいいぞ!と言っていたセンパイの話を聞いていただけに、コロナ禍が終息し前夜祭が復活する日が今から待ち遠しいほど。
さて、大会当日の朝、ホテルの部屋から外を見てみると曇り空が広がっている。とはいえ、コロナ禍という大きな嵐を耐えて開催される走ってみっぺなのだから、きっとそのうち晴れるはず。それでも「お願いだから晴れてくれ!」と念じつつ朝食を手短に済ませ会場となる会津アストリアロッジへ。
スタート会場に到着すると今年もたくさんの参加者が車から自転車を降ろし、着々と準備を進めていた。例年とは違うのは新型コロナウイルス対策。参加者の皆さんはマスクを着用しているし、受付にはサーマルカメラが設置され、検温を行っている。37.5℃以下であることが確認され次第、アルコール消毒をした後にゼッケンを受け取るシステムになっていた。
ゲストライダーのブースに顔を出してみると、宇都宮ブリッツェンの選手がサインや写真撮影に応じるなどファンサービスも行っていた。もちろんこちらもソーシャルディスタンスはしっかり保った対応だ。開会式が始まる時間になると参加者が続々とステージそばに集まってきた。
開会式のMCを務めるのは棚橋麻衣さんと絹代さん。ゲストライダーである宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、ブリッツェンラバーズ、あずささん、水間有紀さんが大階段を降りて登場する様は、まるで宝塚歌劇のよう。
今大会では、新型コロナウイルスの感染者を出さないために多くの注意事項があり、分かりやすく宇都宮ブリッツェンの廣瀬GM、那須ブラーゼンの若杉GMと絹代さんが1つ1つ丁寧に説明してくれた。そのあとは、毎年恒例となる集合写真の撮影タイム。今年は密にならないように参加者同士の間隔をあけ、マスクを着用してハイ!チーズ!カメラのファインダーを覗くと「あれ!?」雲の切れ間から太陽さんがこんにちは。
曇り予報を覆し、スタート前には見事に晴れた「走ってみっぺ南会津」。これで9回連続雨に降られず、100%の晴れ大会は今年も継続。スタートゲートにゲストライダーが、その後ろにライド参加者が並び、愛車も一緒に集合写真を撮影。掛け声はもちろん「走ってみっぺ南会津!」と笑顔でガッツポーズをして、スタートの時を今か今かと待ちわびている様子であった。
今大会ではスタートはゼッケン番号順に10名ずつスタートラインに並び、3分間隔でスタートしていく。走っている時は一列で走り、参加者の間隔は約2メートル空けて、ソーシャルディスタンスを保ちながら走るルールとなっている。
ゲストライダーは総勢20名がランダムでグループに参加するため、どのゲストが参加するかはサプライズ。第一グループに加わるゲストライダーは宇都宮ブリッツェンのアベタカさん。笑顔満点でポーズも決めてくれた。スタート直後の下り区間は道も荒れているが、ゲストライダーが走る立哨員となって安全なペースでリードしてくれるため、安心して下れる。
約2kmの下り区間を終えるとT字路にたどり着く。左に行くと30kmコースだが、今回、私が取材の担当をするのが60kmなので右折していく。ちらりと見えた道路の電光掲示板には20℃と表示されていて、改めて涼しく快適な環境下で走っているんだなと実感させられた。ついこの間まで猛暑日だったのが、すごく昔のよう。リピーターの参加者の方であれば、夏から秋に変更となった季節の違いをより強く感じていただろう。
右折してから第1エイドステーションの舘岩物産館までは舘岩川沿いを緩やかに下りながら、気持ちよく走れる。あっという間に第1エイドに到着すると、横断幕を持った家族連れの姿が。お話をすると「知り合いが参加していてその応援に来ました!」とのこと。地元の方も楽しみにしているサイクルイベントであり、地域に応援されているからこそ、開催できたのだろうと実感する。
エイドに到着すると参加者は入場時に手をアルコールで消毒、そしてマスクを着用する。スタッフの方々はフェイスシールドとマスク、手袋を着用し、提供されるドリンクもスタッフが紙コップに注ぎ参加者が各自取っていくスタイルで、コロナ対策は万全の体制。
この第1エイドでは地元のお土産としても人気だという「会津ミルククッキー」と「ピーチパイ」が用意されていた。個包装されているため、サイクルジャージのポケットやバッグに入れて、持ち運びの補給食として食べられるように考えられているのだろう。ゲストライダーの棚橋さんと水間さんもとても美味しそうに食べていた。
さて、撮影のために少し休んでから第2エイドへ向けてスタート。途中、名所となる前沢曲屋集落があるが、折り返してきたときに立ち寄ることに。第2エイドまでの道中は自然豊かな山間を抜けるコースで、ほんの少しアップダウンがあるがなんなくクリアできる。川沿いを走る区間もあり、川の近くはマイナスイオンたっぷりで涼し気な風を感じられる。普段、トレーニングやレースばかり走っている私は、初心に帰って自転車の楽しさを実感するのであった。
第2エイドの内川では甘味噌が塗られた「ばんでい餅」と冷やしきゅうりが振る舞われていた。お餅は腹持ちもよくサイクリングにピッタリの食べ物で絶妙なチョイスと言える。瑞々しいきゅうりで口の中をさっぱりさせ、ついでに水分補給もバッチリ!
そして次の第3エイドの高畑スキー場には「走ってみっぺ南会津!」のメインディッシュのマトン丼が待っている!このマトン丼を食べるためにこの走ってみっぺに参加していると言っても過言ではないサイクリストも多いだろう。しかし、そのマトンを食べるにはこの先待ち受けている登りをクリアしなければならない。登りが苦手な人にとっては正念場。このコロナ自粛期間に一大ムーブメントとなった「あつまれどうぶつの森」をやっている人なら伝わると思うが、マトンといえば大人気キャラクターの「ちゃちゃまる」。まさに「ぴえん」と泣き出しそうな状況である。
第3エイドまではまた景色が変わり、トンネル区間が何度も登場。厳密には、雪除けの「スノーシェッド」であり、川沿いから等間隔に光が差し込むとても幻想的な空間。思わず登っていることすら忘れてしまうほどであった。
そして、ついに第3エイドの高畑スキー場に到着!バイクをスタンドにかけて早速マトン丼の列に並ぶ。ふと視線を感じ、振り返ると、そこにはゲストライダーの小坂さん、廣瀬さん、堀さん、樋口さんらが並んでいる。圧に負け(笑)、この後皆さんとご一緒にマトン丼を美味しく頂くことに。
マトン丼を食べ、お腹いっぱいになってしまうとそのまま折り返したい気持ちになるが、名物を食べた後は名所を訪れるのが真っ当なサイクリングの作法というもの。下って帰りたい気持ちを押し殺し、折り返し地点となる屏風岩へと登っていくことに。過去の大会レポートを読んで、一度はあの見てみたいと思ったあの絶景を見ないで帰るなんて、絶対に後悔する!!
伊南川を沿って登りをしばらく行くと屏風岩の駐車場が見えてきた。折り返し地点の看板が用意されており、そのままUターンする人もいたが、参加者の大多数が駐車場のバイクラックに愛車をかけて、川へと降りていく小路へと歩いていった。
駐車場から階段を下るとそこには幻想的な景色が広がっていた。伊南川の急流によって長い歳月をかけて削られ、形づくられた怪岩がそそり立つ屏風岩。大自然の偉大さを感じ、時間を忘れて長居したくなってしまった。高い岩場でカメラを構えていると参加者の皆さんが続々と集まってくれたので、そのまま記念撮影タイムに。
夢中で写真を撮っていたら60kmコースを走る人の中で最後尾になってしまった。この後は来た道を折り返すだけ。しかし、撮影するためには前の集団に復帰しなくてはいけないので、カメラ2台をバックパックにしまい、エアロポジションで個人タイムトライアルモードに。なんとか第4エイド手前までにだいぶ遅れを取り戻すことができた。
第4エイドに到着直前の交差点でゲストライダーの絹代さんを発見。絹代さんのバイクの後ろにはお子さん2人が乗ったチャイルドトレーラーが取り付けられていた。2人のお子さんが乗ったリヤカーを引っ張りながら完璧な笑顔で走る絹代さんは凄いなと思わず感動してしまう。このエイドではバナナとプチシュークリームが振る舞われTTで消耗したぶんの糖分を補給。そして、最後の第5エイドに向かうのであった。
そうそう。行きの第1エイドと第2エイドの間にある前沢曲家集落をパスしていたんだった。ということで、第5エイドに向かう前に前沢曲家集落を見学していくことに。古き良き日本の風情を感じる囲炉裏や山仕事に必要な道具などが展示されており、とても良い経験が出来た!
最後となる第5エイドに到着し、手をしっかり消毒し、マスクをして受け取ったのは南会津産のトマトと笹だんご、そしてきのこ蕎麦。どれもとても美味しく、最後のエイドまでフードメニューのレパートリーの多さに感動。最後の登りに向けてエネルギーと塩分を補給完了。
そして、「走ってみっぺ南会津」60㎞コースの食後のデザートとして登場するのが、約2km、いや実は2.8kmの距離がある登り。平均勾配6.8%とヒルクライマーにはたまらないが、50km走ってきた後に登るとなると全参加者がきついと感じる難所である。最後の力を振り絞って登る参加者の姿を応援しつつフィルムに焼き付けていく。
ゴールの会津アストリアロッジ手前の最終コーナーでは、なんと悪魔おじさんが参加者の皆さんを応援中!きつく苦しい時でも、応援されるとなんだか力が湧いてくる。悪魔おじさん!グッドジョブ!ゴール手前でも、ブリッツェンラバーズの皆さんが応援してくれ、さらに頑張ることができた。最後の力を振り絞り、参加者の方と一緒にゴールゲートを通過した。
ゴールを通過すると、スタッフの方から走ってみっぺの完走証とスポーツドリンクを手渡される。そのスポーツドリンクを一気に飲み干し、完走証を見て目をつぶった瞬間、スタートしてから景色や一緒に走った方が次々に思い出され、「今日は凄く楽しかった!頑張ったな!」とじんわり実感。
ゴールでカメラを構えていると、レースで優勝したようなガッツポーズでゴールする人、そろって喜びを分かち合いながらゴールする夫婦などなど、喜びに満ち溢れながらゴールする人が多かった。そのゴールシーンを撮りながら、改めて参加者に愛されているサイクリングイベントなんだなと実感した。
今回は毎年大人気のコーナーである、ゴール後の大あみだくじ大会が開催されなかった代わりに、ゴール時に参加者が付けているゼッケン番号で抽選し、豪華な商品がプレゼントされるようになっていた。ちなみにゴールシーンを撮っていたご夫婦にはなんとスーツケースが当たっていたようで、完走した達成感と当選の喜びで幸せのダブルパンチである。
さて、終わってみれば例年通り笑顔が溢れた走ってみっぺ南会津。しかし、異例づくめとなった第9回の開催に際し、実際どのような苦労があったのか。運営スタッフとなる堀部さんにお話を伺った。
運営スタッフ 堀部俊夫さんのコメント
■今回の開催に当たって尽力されたことはありますか?
コロナ禍において公道を使ったロングライドイベントの前例がなかったので大変でしたね。「走ってみっぺ」というのはとにかく緩さがポイントです。みんなでこの大自然の中をのんびり走る。ただそれだけに尽力して、笑いの絶えないイベントを目指してきたのに、そこに非常に難しい難題を突き付けられたようでした。
絹代さんにガイドラインの作成を依頼して、何度もチェックして頂いて、なんとか指標ができた。その指標の中でいかに楽しんでもらえるか考えていました。主催者にとっては厳しいハードルがありましたが、参加者の皆さんには例年同様にゆるく楽しんでもらえるようにはできたかなと思います。
■開催にあたって、立ちふさがったハードルなどありましたか?
例年と時期が異なることによる気温差ですね。雨が降るとかなり冷え込んでしまうこともあるので、そこは心配でした。また、日々コロナの状況が変わっていく中での開催判断は難しかったですね。エントリーが始まった途端、首都圏を中心にイベント自粛ムードが再び高まってきたんです。
その結果として、参加者数が伸び悩んでしまいましたね。エントリー開始の段階では「待ちに待っていました!」とばかりに励ましの声をいただき、「これはいける!」と思ったのですが、そこからの伸びが例年より少なかった。周りのイベントもどんどん中止になって、参加者の皆さんには「みっぺ」も中止になるんじゃないかという不安があったのだと思います。
堀部さんのコメントにあったよう、走ってみっぺ南会津はみんなでこの大自然の中をのんびり走り、ゆるく楽しむのが醍醐味。来年こそは、前夜祭と100㎞コースも復活した本来の「走ってみっぺ南会津」を楽しめたら良いなと思っている。
来年はあなたも、一緒に走ってみっぺ!?
text&photo:Michinari TAKAGI
晴れてしまえばほぼ成功、なんて言われることもある屋外イベント。毎年雨に祟られるイベントもあれば、雨とは無縁の大会もある。走ってみっぺ南会津は、初回以来8回連続、雨予報をも覆し晴れ続けてきた100%の晴れ大会。まさに勝利が約束されたイベントであるが、今年ばかりは違う暗雲が垂れ込めていた。
それは言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大によるイベント自粛の波。東京マラソンの一般参加枠の中止を皮切りに、スポーツイベントも軒並み中止に追い込まれた。例年盛夏に開かれる走ってみっぺ南会津も例外ではなかったが、先が見えない情勢の中、それでも開催できると信じて準備を重ねた主催者の方々の努力、過去8回にわたって積み重ねてきた地域の方との良好な関係性もあったのだろう。秋以降のイベントでも中止の報が続々と届く中、走ってみっぺ南会津は無事に開催されるという吉報を手に、東北道を北上した。
とはいえ、例年通りの規模での開催とはならず、感染症対策として最も大きな変更点となったのが、前夜祭が中止となったことだろう。毎年南会津の郷土料理と地酒がたんまりと振る舞われ、参加者同士の交流の場となっていた前夜祭がキャンセルとなったのはやむを得ないこととはいえ、残念。走ってみっぺの前夜祭はいいぞ!と言っていたセンパイの話を聞いていただけに、コロナ禍が終息し前夜祭が復活する日が今から待ち遠しいほど。
さて、大会当日の朝、ホテルの部屋から外を見てみると曇り空が広がっている。とはいえ、コロナ禍という大きな嵐を耐えて開催される走ってみっぺなのだから、きっとそのうち晴れるはず。それでも「お願いだから晴れてくれ!」と念じつつ朝食を手短に済ませ会場となる会津アストリアロッジへ。
スタート会場に到着すると今年もたくさんの参加者が車から自転車を降ろし、着々と準備を進めていた。例年とは違うのは新型コロナウイルス対策。参加者の皆さんはマスクを着用しているし、受付にはサーマルカメラが設置され、検温を行っている。37.5℃以下であることが確認され次第、アルコール消毒をした後にゼッケンを受け取るシステムになっていた。
ゲストライダーのブースに顔を出してみると、宇都宮ブリッツェンの選手がサインや写真撮影に応じるなどファンサービスも行っていた。もちろんこちらもソーシャルディスタンスはしっかり保った対応だ。開会式が始まる時間になると参加者が続々とステージそばに集まってきた。
開会式のMCを務めるのは棚橋麻衣さんと絹代さん。ゲストライダーである宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、ブリッツェンラバーズ、あずささん、水間有紀さんが大階段を降りて登場する様は、まるで宝塚歌劇のよう。
今大会では、新型コロナウイルスの感染者を出さないために多くの注意事項があり、分かりやすく宇都宮ブリッツェンの廣瀬GM、那須ブラーゼンの若杉GMと絹代さんが1つ1つ丁寧に説明してくれた。そのあとは、毎年恒例となる集合写真の撮影タイム。今年は密にならないように参加者同士の間隔をあけ、マスクを着用してハイ!チーズ!カメラのファインダーを覗くと「あれ!?」雲の切れ間から太陽さんがこんにちは。
曇り予報を覆し、スタート前には見事に晴れた「走ってみっぺ南会津」。これで9回連続雨に降られず、100%の晴れ大会は今年も継続。スタートゲートにゲストライダーが、その後ろにライド参加者が並び、愛車も一緒に集合写真を撮影。掛け声はもちろん「走ってみっぺ南会津!」と笑顔でガッツポーズをして、スタートの時を今か今かと待ちわびている様子であった。
今大会ではスタートはゼッケン番号順に10名ずつスタートラインに並び、3分間隔でスタートしていく。走っている時は一列で走り、参加者の間隔は約2メートル空けて、ソーシャルディスタンスを保ちながら走るルールとなっている。
ゲストライダーは総勢20名がランダムでグループに参加するため、どのゲストが参加するかはサプライズ。第一グループに加わるゲストライダーは宇都宮ブリッツェンのアベタカさん。笑顔満点でポーズも決めてくれた。スタート直後の下り区間は道も荒れているが、ゲストライダーが走る立哨員となって安全なペースでリードしてくれるため、安心して下れる。
約2kmの下り区間を終えるとT字路にたどり着く。左に行くと30kmコースだが、今回、私が取材の担当をするのが60kmなので右折していく。ちらりと見えた道路の電光掲示板には20℃と表示されていて、改めて涼しく快適な環境下で走っているんだなと実感させられた。ついこの間まで猛暑日だったのが、すごく昔のよう。リピーターの参加者の方であれば、夏から秋に変更となった季節の違いをより強く感じていただろう。
右折してから第1エイドステーションの舘岩物産館までは舘岩川沿いを緩やかに下りながら、気持ちよく走れる。あっという間に第1エイドに到着すると、横断幕を持った家族連れの姿が。お話をすると「知り合いが参加していてその応援に来ました!」とのこと。地元の方も楽しみにしているサイクルイベントであり、地域に応援されているからこそ、開催できたのだろうと実感する。
エイドに到着すると参加者は入場時に手をアルコールで消毒、そしてマスクを着用する。スタッフの方々はフェイスシールドとマスク、手袋を着用し、提供されるドリンクもスタッフが紙コップに注ぎ参加者が各自取っていくスタイルで、コロナ対策は万全の体制。
この第1エイドでは地元のお土産としても人気だという「会津ミルククッキー」と「ピーチパイ」が用意されていた。個包装されているため、サイクルジャージのポケットやバッグに入れて、持ち運びの補給食として食べられるように考えられているのだろう。ゲストライダーの棚橋さんと水間さんもとても美味しそうに食べていた。
さて、撮影のために少し休んでから第2エイドへ向けてスタート。途中、名所となる前沢曲屋集落があるが、折り返してきたときに立ち寄ることに。第2エイドまでの道中は自然豊かな山間を抜けるコースで、ほんの少しアップダウンがあるがなんなくクリアできる。川沿いを走る区間もあり、川の近くはマイナスイオンたっぷりで涼し気な風を感じられる。普段、トレーニングやレースばかり走っている私は、初心に帰って自転車の楽しさを実感するのであった。
第2エイドの内川では甘味噌が塗られた「ばんでい餅」と冷やしきゅうりが振る舞われていた。お餅は腹持ちもよくサイクリングにピッタリの食べ物で絶妙なチョイスと言える。瑞々しいきゅうりで口の中をさっぱりさせ、ついでに水分補給もバッチリ!
そして次の第3エイドの高畑スキー場には「走ってみっぺ南会津!」のメインディッシュのマトン丼が待っている!このマトン丼を食べるためにこの走ってみっぺに参加していると言っても過言ではないサイクリストも多いだろう。しかし、そのマトンを食べるにはこの先待ち受けている登りをクリアしなければならない。登りが苦手な人にとっては正念場。このコロナ自粛期間に一大ムーブメントとなった「あつまれどうぶつの森」をやっている人なら伝わると思うが、マトンといえば大人気キャラクターの「ちゃちゃまる」。まさに「ぴえん」と泣き出しそうな状況である。
第3エイドまではまた景色が変わり、トンネル区間が何度も登場。厳密には、雪除けの「スノーシェッド」であり、川沿いから等間隔に光が差し込むとても幻想的な空間。思わず登っていることすら忘れてしまうほどであった。
そして、ついに第3エイドの高畑スキー場に到着!バイクをスタンドにかけて早速マトン丼の列に並ぶ。ふと視線を感じ、振り返ると、そこにはゲストライダーの小坂さん、廣瀬さん、堀さん、樋口さんらが並んでいる。圧に負け(笑)、この後皆さんとご一緒にマトン丼を美味しく頂くことに。
マトン丼を食べ、お腹いっぱいになってしまうとそのまま折り返したい気持ちになるが、名物を食べた後は名所を訪れるのが真っ当なサイクリングの作法というもの。下って帰りたい気持ちを押し殺し、折り返し地点となる屏風岩へと登っていくことに。過去の大会レポートを読んで、一度はあの見てみたいと思ったあの絶景を見ないで帰るなんて、絶対に後悔する!!
伊南川を沿って登りをしばらく行くと屏風岩の駐車場が見えてきた。折り返し地点の看板が用意されており、そのままUターンする人もいたが、参加者の大多数が駐車場のバイクラックに愛車をかけて、川へと降りていく小路へと歩いていった。
駐車場から階段を下るとそこには幻想的な景色が広がっていた。伊南川の急流によって長い歳月をかけて削られ、形づくられた怪岩がそそり立つ屏風岩。大自然の偉大さを感じ、時間を忘れて長居したくなってしまった。高い岩場でカメラを構えていると参加者の皆さんが続々と集まってくれたので、そのまま記念撮影タイムに。
夢中で写真を撮っていたら60kmコースを走る人の中で最後尾になってしまった。この後は来た道を折り返すだけ。しかし、撮影するためには前の集団に復帰しなくてはいけないので、カメラ2台をバックパックにしまい、エアロポジションで個人タイムトライアルモードに。なんとか第4エイド手前までにだいぶ遅れを取り戻すことができた。
第4エイドに到着直前の交差点でゲストライダーの絹代さんを発見。絹代さんのバイクの後ろにはお子さん2人が乗ったチャイルドトレーラーが取り付けられていた。2人のお子さんが乗ったリヤカーを引っ張りながら完璧な笑顔で走る絹代さんは凄いなと思わず感動してしまう。このエイドではバナナとプチシュークリームが振る舞われTTで消耗したぶんの糖分を補給。そして、最後の第5エイドに向かうのであった。
そうそう。行きの第1エイドと第2エイドの間にある前沢曲家集落をパスしていたんだった。ということで、第5エイドに向かう前に前沢曲家集落を見学していくことに。古き良き日本の風情を感じる囲炉裏や山仕事に必要な道具などが展示されており、とても良い経験が出来た!
最後となる第5エイドに到着し、手をしっかり消毒し、マスクをして受け取ったのは南会津産のトマトと笹だんご、そしてきのこ蕎麦。どれもとても美味しく、最後のエイドまでフードメニューのレパートリーの多さに感動。最後の登りに向けてエネルギーと塩分を補給完了。
そして、「走ってみっぺ南会津」60㎞コースの食後のデザートとして登場するのが、約2km、いや実は2.8kmの距離がある登り。平均勾配6.8%とヒルクライマーにはたまらないが、50km走ってきた後に登るとなると全参加者がきついと感じる難所である。最後の力を振り絞って登る参加者の姿を応援しつつフィルムに焼き付けていく。
ゴールの会津アストリアロッジ手前の最終コーナーでは、なんと悪魔おじさんが参加者の皆さんを応援中!きつく苦しい時でも、応援されるとなんだか力が湧いてくる。悪魔おじさん!グッドジョブ!ゴール手前でも、ブリッツェンラバーズの皆さんが応援してくれ、さらに頑張ることができた。最後の力を振り絞り、参加者の方と一緒にゴールゲートを通過した。
ゴールを通過すると、スタッフの方から走ってみっぺの完走証とスポーツドリンクを手渡される。そのスポーツドリンクを一気に飲み干し、完走証を見て目をつぶった瞬間、スタートしてから景色や一緒に走った方が次々に思い出され、「今日は凄く楽しかった!頑張ったな!」とじんわり実感。
ゴールでカメラを構えていると、レースで優勝したようなガッツポーズでゴールする人、そろって喜びを分かち合いながらゴールする夫婦などなど、喜びに満ち溢れながらゴールする人が多かった。そのゴールシーンを撮りながら、改めて参加者に愛されているサイクリングイベントなんだなと実感した。
今回は毎年大人気のコーナーである、ゴール後の大あみだくじ大会が開催されなかった代わりに、ゴール時に参加者が付けているゼッケン番号で抽選し、豪華な商品がプレゼントされるようになっていた。ちなみにゴールシーンを撮っていたご夫婦にはなんとスーツケースが当たっていたようで、完走した達成感と当選の喜びで幸せのダブルパンチである。
さて、終わってみれば例年通り笑顔が溢れた走ってみっぺ南会津。しかし、異例づくめとなった第9回の開催に際し、実際どのような苦労があったのか。運営スタッフとなる堀部さんにお話を伺った。
運営スタッフ 堀部俊夫さんのコメント
■今回の開催に当たって尽力されたことはありますか?
コロナ禍において公道を使ったロングライドイベントの前例がなかったので大変でしたね。「走ってみっぺ」というのはとにかく緩さがポイントです。みんなでこの大自然の中をのんびり走る。ただそれだけに尽力して、笑いの絶えないイベントを目指してきたのに、そこに非常に難しい難題を突き付けられたようでした。
絹代さんにガイドラインの作成を依頼して、何度もチェックして頂いて、なんとか指標ができた。その指標の中でいかに楽しんでもらえるか考えていました。主催者にとっては厳しいハードルがありましたが、参加者の皆さんには例年同様にゆるく楽しんでもらえるようにはできたかなと思います。
■開催にあたって、立ちふさがったハードルなどありましたか?
例年と時期が異なることによる気温差ですね。雨が降るとかなり冷え込んでしまうこともあるので、そこは心配でした。また、日々コロナの状況が変わっていく中での開催判断は難しかったですね。エントリーが始まった途端、首都圏を中心にイベント自粛ムードが再び高まってきたんです。
その結果として、参加者数が伸び悩んでしまいましたね。エントリー開始の段階では「待ちに待っていました!」とばかりに励ましの声をいただき、「これはいける!」と思ったのですが、そこからの伸びが例年より少なかった。周りのイベントもどんどん中止になって、参加者の皆さんには「みっぺ」も中止になるんじゃないかという不安があったのだと思います。
堀部さんのコメントにあったよう、走ってみっぺ南会津はみんなでこの大自然の中をのんびり走り、ゆるく楽しむのが醍醐味。来年こそは、前夜祭と100㎞コースも復活した本来の「走ってみっぺ南会津」を楽しめたら良いなと思っている。
来年はあなたも、一緒に走ってみっぺ!?
text&photo:Michinari TAKAGI
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