2020/09/14(月) - 07:54
過酷なアップダウンコースで、序盤の逃げグループに加わったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が劇的な勝利。総合順位に大変動は起こらず、Sイェーツがマイカに対して16秒、トーマスに対して39秒リードで距離10kmの最終個人タイムトライアルに挑むこととなった。
翌日に最終個人タイムトライアルを控え、登坂でリードを稼ぎたい総合勢や、逃げ切りを狙う選手たちにとっては最後のチャンスとなったティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)第7ステージ。
マルケ州のピエーヴェ・トリーナから同州のロレートにフィニッシュする181kmコースは中盤以降短いアップダウンの連続で、主催者の言葉を借りればその様は「ロッククライミング」。特に後半の周回コース(x3周)内にはGPMロレート(距離2.6km/平均4.5%)など1周あたり3箇所の登坂区間が用意されており、フィニッシュラインは距離1km/平均13%の激坂上に引かれている。
この日長いアタック合戦の末に先頭グループを形成したのは、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)を筆頭にした14名。総合首位のサイモン・イェーツ(イギリス)率いるミッチェルトン・スコットではなく、逃げにメンバーを乗せられなかったアスタナがコントロールする集団から4分程度の差を付けてエスケープした。
逃げグループを形成した14名
シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼル)
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
クリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
マッテオ・ファッブロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ウィリアム・バルタ(アメリカ、CCCチーム)
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、コフィディス)
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)
セルジオ・サミティエル(スペイン、モビスター)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)
マーティン・トゥスフェルト(オランダ、サンウェブ)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)
ファンデルプールはもちろん、アワーレコードホルダーのカンペナールツ、集団スプリントで2度トップ10しているバッレリーニ、ここまで何度も何度も逃げてきたディリエやトネッリ、ベルナール、そしてヴィスコンティを含む強力な逃げグループ。まさにジェットコースターのようなロレート周回コースに入るとアスタナがメイン集団のテンポを早めたため、タイム差は35km以上を残して1分半を割り込んだ。
合計3回登るGPMロレートの2回目(残り35km地点)の手前で集団とメイン集団双方に動きが生じる。先頭ではゲレイロが加速し、ファンデルプールとファッブロが反応して調子の良さを見せつける。メイン集団からはベルト・ファンレルベルフ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)などによる断続的な抜け出しが発生したものの、総合上位勢のアタックを誘発させることはなかった。
先頭グループではゲレイロがアタックを繰り出し、20km以上を残してファッブロが独走に持ち込む。「この先のコースがかなりタフなのでチャンスだと思った」と言うファッブロが、ファンデルプール、ゲレイロ、サミティエル、トゥスフェルト、ヴィスコンティという追走グループに対して27秒リードを稼ぎ、プロ初勝利を目指した。
残り10km地点での構図は、先頭ファッブロの15秒後方にファンデルプールグループ、ファッブロから45秒後方にメイン集団からブリッジを試みたヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)とバンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)、マシュー・ホルムズ(イギリス、ロット・スーダル)という3名。そしてファッブロから1分50秒後方にミッチェルトン・スコット率いるメイン集団。ファッブロは最後のGPMロレートも快調なペースで駆け上がり、25秒差を維持したまま残り3km地点を通過した。
プロ初勝利を掴んだかに思えたファッブロだったが、フィニッシュに続く距離1km/平均13%の最終登坂で徐々にスピードを失ってしまう。ファッブロから活性化するメイン集団までの距離が急激に縮まる中、追走グループからタイミングを見極めたファンデルポールが猛加速。ゲレイロを振り落とし、力なくダンシングするファッブロを追い抜きフィニッシュへ。アルデンヌクラシックにも似た「壁」ステージでオランダ王者が鮮烈な勝利を挙げた。
「信じられないくらい厳しいステージで、僕らは序盤から全力疾走状態だった。逃げは予定にはなかったけれど、1時間のアタック合戦の末に強力な選手たちが逃げようとしているのを見て飛びついた。コースは予想よりもずっとハードで急勾配の坂の連続。それでも逃げに乗ったクリース・デボントと一緒に完璧な仕事ができたと思う。この大会の序盤は体調が優れなかったぶん今回の勝利は格別だ。ステージを走るごとに調子が上向いたし、昨日のティム・メルリエの勝利でチーム全体の士気が上がったんだ」と語るファンデルポールにとって、ナショナル選手権を除けばロードレースでの勝利は昨年のツアー・オブ・ブリテン(ステージ3勝+総合優勝)に続く1年ぶり。フィニッシュ後はコース脇に座り込みチームメイトと抱き合った。
序盤の逃げグループから生き残ったのはファンデルプールとゲレイロ、ファッブロの3名で、猛ペースで最終登坂を駆け上がったメイン集団はウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)を先頭に9秒遅れでフィニッシュ。Sイェーツやマラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)といった総合上位陣がまとまってフィニッシュしたことで大きな総合順位変動は起こらず。誰もが「思っていたよりもずっと厳しかった」と口を揃える7日目を終え、Sイェーツがマイカに対して16秒、トーマスに対して39秒リードで距離10kmの最終個人タイムトライアルに挑むこととなった。
「とても速くコントロールが難しいレースだった。もっとイージーに進んだならステージ優勝を狙うつもりだったけれど、あまりにもハイペースでカオスな展開だったのでマリアアッズーラを守る戦略に切り替えたんだ。マイカとトーマスに16秒と39秒リードで最終ステージに臨むことになる。彼らはTTに強くコンディションも良いのでもう少しリードが欲しかったけれど、実際どうなるかは分からない。すごく接戦の戦いになるだろう。ティレーノ〜アドリアティコで勝つためにベストを尽くしたい」とSイェーツは語っている。
翌日に最終個人タイムトライアルを控え、登坂でリードを稼ぎたい総合勢や、逃げ切りを狙う選手たちにとっては最後のチャンスとなったティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)第7ステージ。
マルケ州のピエーヴェ・トリーナから同州のロレートにフィニッシュする181kmコースは中盤以降短いアップダウンの連続で、主催者の言葉を借りればその様は「ロッククライミング」。特に後半の周回コース(x3周)内にはGPMロレート(距離2.6km/平均4.5%)など1周あたり3箇所の登坂区間が用意されており、フィニッシュラインは距離1km/平均13%の激坂上に引かれている。
この日長いアタック合戦の末に先頭グループを形成したのは、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)を筆頭にした14名。総合首位のサイモン・イェーツ(イギリス)率いるミッチェルトン・スコットではなく、逃げにメンバーを乗せられなかったアスタナがコントロールする集団から4分程度の差を付けてエスケープした。
逃げグループを形成した14名
シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼル)
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
クリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
マッテオ・ファッブロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ウィリアム・バルタ(アメリカ、CCCチーム)
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、コフィディス)
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング)
セルジオ・サミティエル(スペイン、モビスター)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)
マーティン・トゥスフェルト(オランダ、サンウェブ)
ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)
ファンデルプールはもちろん、アワーレコードホルダーのカンペナールツ、集団スプリントで2度トップ10しているバッレリーニ、ここまで何度も何度も逃げてきたディリエやトネッリ、ベルナール、そしてヴィスコンティを含む強力な逃げグループ。まさにジェットコースターのようなロレート周回コースに入るとアスタナがメイン集団のテンポを早めたため、タイム差は35km以上を残して1分半を割り込んだ。
合計3回登るGPMロレートの2回目(残り35km地点)の手前で集団とメイン集団双方に動きが生じる。先頭ではゲレイロが加速し、ファンデルプールとファッブロが反応して調子の良さを見せつける。メイン集団からはベルト・ファンレルベルフ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)などによる断続的な抜け出しが発生したものの、総合上位勢のアタックを誘発させることはなかった。
先頭グループではゲレイロがアタックを繰り出し、20km以上を残してファッブロが独走に持ち込む。「この先のコースがかなりタフなのでチャンスだと思った」と言うファッブロが、ファンデルプール、ゲレイロ、サミティエル、トゥスフェルト、ヴィスコンティという追走グループに対して27秒リードを稼ぎ、プロ初勝利を目指した。
残り10km地点での構図は、先頭ファッブロの15秒後方にファンデルプールグループ、ファッブロから45秒後方にメイン集団からブリッジを試みたヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)とバンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)、マシュー・ホルムズ(イギリス、ロット・スーダル)という3名。そしてファッブロから1分50秒後方にミッチェルトン・スコット率いるメイン集団。ファッブロは最後のGPMロレートも快調なペースで駆け上がり、25秒差を維持したまま残り3km地点を通過した。
プロ初勝利を掴んだかに思えたファッブロだったが、フィニッシュに続く距離1km/平均13%の最終登坂で徐々にスピードを失ってしまう。ファッブロから活性化するメイン集団までの距離が急激に縮まる中、追走グループからタイミングを見極めたファンデルポールが猛加速。ゲレイロを振り落とし、力なくダンシングするファッブロを追い抜きフィニッシュへ。アルデンヌクラシックにも似た「壁」ステージでオランダ王者が鮮烈な勝利を挙げた。
「信じられないくらい厳しいステージで、僕らは序盤から全力疾走状態だった。逃げは予定にはなかったけれど、1時間のアタック合戦の末に強力な選手たちが逃げようとしているのを見て飛びついた。コースは予想よりもずっとハードで急勾配の坂の連続。それでも逃げに乗ったクリース・デボントと一緒に完璧な仕事ができたと思う。この大会の序盤は体調が優れなかったぶん今回の勝利は格別だ。ステージを走るごとに調子が上向いたし、昨日のティム・メルリエの勝利でチーム全体の士気が上がったんだ」と語るファンデルポールにとって、ナショナル選手権を除けばロードレースでの勝利は昨年のツアー・オブ・ブリテン(ステージ3勝+総合優勝)に続く1年ぶり。フィニッシュ後はコース脇に座り込みチームメイトと抱き合った。
序盤の逃げグループから生き残ったのはファンデルプールとゲレイロ、ファッブロの3名で、猛ペースで最終登坂を駆け上がったメイン集団はウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)を先頭に9秒遅れでフィニッシュ。Sイェーツやマラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)といった総合上位陣がまとまってフィニッシュしたことで大きな総合順位変動は起こらず。誰もが「思っていたよりもずっと厳しかった」と口を揃える7日目を終え、Sイェーツがマイカに対して16秒、トーマスに対して39秒リードで距離10kmの最終個人タイムトライアルに挑むこととなった。
「とても速くコントロールが難しいレースだった。もっとイージーに進んだならステージ優勝を狙うつもりだったけれど、あまりにもハイペースでカオスな展開だったのでマリアアッズーラを守る戦略に切り替えたんだ。マイカとトーマスに16秒と39秒リードで最終ステージに臨むことになる。彼らはTTに強くコンディションも良いのでもう少しリードが欲しかったけれど、実際どうなるかは分からない。すごく接戦の戦いになるだろう。ティレーノ〜アドリアティコで勝つためにベストを尽くしたい」とSイェーツは語っている。
ティレーノ〜アドリアティコ2020第7ステージ結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 4:19:23 |
2位 | ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFプロサイクリング) | 0:04 |
3位 | マッテオ・ファッブロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
4位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:09 |
5位 | アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ) | 0:10 |
6位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
7位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) | |
8位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | |
10位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) |
個人総合成績
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 31:56:02 |
2位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:16 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 0:39 |
4位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 0:49 |
5位 | ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:57 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:59 |
7位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) | 1:22 |
8位 | ジェームズ・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 1:26 |
9位 | ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) | 2:33 |
10位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) | 2:47 |
その他の特別賞
ポイント賞 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) |
山岳賞 | エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター) |
ヤングライダー賞 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) |
チーム総合成績 | サンウェブ |
text:So.Isobe
photo:CorVos,RCS Sport
photo:CorVos,RCS Sport
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