2020/09/03(木) - 01:31
逃げが生まれない平穏なツール・ド・フランス第5ステージは強風区間を切り抜けた集団によるスプリントに。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がスプリント勝利し、規則違反の補給を行ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が20秒のペナルティでマイヨジョーヌを失った。
9月2日(水)第5ステージ
ギャップ〜プリヴァ
距離:183km
獲得標高差:1,400m
天候:晴れ
気温:19〜23度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
47.5km地点 スプリントポイント
130km地点 4級山岳セールコロン峠(距離4.1km・平均3.7%)
167km地点 4級山岳サンヴァンサン=ド=バレ(距離2.7km・平均4.2%)
アタックも逃げも生まれない特殊なステージに
大会最初の山頂フィニッシュを終えた選手たちは、ギャップの街から渓谷に沿ってアルプス山脈を脱出。緩やかに標高を下げながら、そして2つの4級山岳をこなしながらローヌ渓谷を横断し、アルデッシュ県の県庁所在地プリヴァを目指す。残り10km地点から勾配2%ほどの緩斜面が続くものの、距離183km/獲得標高差1,400mのステージはピュアスプリンター向きであると見られた。
ステージ中盤以降、特にローヌ川を渡る残り40km地点付近に吹く『ミストラル』に注意が必要なこの日、レースは予想外の展開を見せる。1ポイントしか獲得できない4級山岳が2つしか設定されていないということもあって、山岳賞狙いの選手は動かない。さらに47.5km地点に設定されたスプリントポイントまでスプリンターチームがレースをコントロールすると見られたため、スタートアタックを仕掛ける選手も現れない。総合リーダーチームのカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)による意外な飛び出しをトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が捕まえると、そこから長い長い集団巡航が始まった。
シーズン再開後に5日以上のステージレースを走っていないことも影響してか、山岳ステージに挟まれたこの日を選手たちはリカバリーに充てた。集団一つのまま突入したスプリントポイントではサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が最大ポイントを獲得して単独ポイント賞トップに。それ以降、メイン集団から動きを見せる選手は現れなかった。
終盤にかけて風が吹くも、最後は集団スプリントへ
1995年ツール第16ステージでは前日に亡くなったファビオ・カザルテッリに捧げるパレード走行が行われ、1998年ツール第17ステージでも選手のストライキによってパレード走行となったが、逃げによる広告効果が大きなツールにおいて、10km以上の逃げが生まれない日は極めて稀(最終日パリステージを除く)。ドゥクーニンク・クイックステップに限らず様々なチームの集団先頭に立って、40km/h前後のペースでメイン集団は緩やかなアップダウンをこなしていく。
2つの4級山岳ではマイヨアポワを着るブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)がしっかりと合計2ポイントを獲得。ローヌ川が作り出した平野部に出ると北から南に向かって『ミストラル』が吹いたものの、メイン集団を粉砕するような勢いは無かった。
残り25kmを切ったところでにわかに集団の緊張感が増し、イネオス・グレナディアーズやユンボ・ヴィスマをはじめとする総合系チームが集団先頭へ。一時的に遅れたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)もチームメイトに守られて集団に復帰している。
残り10kmからの登り勾配が始まるとエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)やアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)らが脱落したものの、多くのスプリンターが集団内にひしめき合いながらの高速走行が続く。イネオス・グレナディアーズやユンボ・ヴィスマのペースアップによって約70名に絞られた集団がプリヴァのフィニッシュ地点にやってきた。
第3ステージと同様に4名でトレインを組み、先頭でフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過したのはサンウェブ。アシストが一人一人仕事を終えていく教科書通りのリードアウトを見せたサンウェブが残り200mでケース・ボル(オランダ)を発射したが、その後ろからワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が加速した。
ボルに並ぶとともに、後続のサガンやベネットを一気に引き離したファンアールト。トップスピード67.5km/hをマークしたファンアールトがボルとのハンドル投げを制し、大きく両手を広げた。
ファンアールトの勝利と、アラフィリップのペナルティ
前日の1級山岳ではクライマー顔負けの登坂力でプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)の勝利をお膳立てするとともに、ユンボ・ヴィスマにステージ2連勝をもたらしたファンアールト。「昨年のツールでの落車負傷からここまで早くこのレベルまで戻れるとは思っていなかった。8月のシーズン再開後、レースを走るごとに調子が上がっている」と、ストラーデビアンケとミラノ〜サンレモ、クリテリウム・デュ・ドーフィネ第1ステージ、そしてベルギー選手権個人タイムトライアルに続く今シーズン5勝目を飾ったファンアールトは語る。
スプリントポイント1位&ステージ3位のベネットがマイヨヴェールを獲得。逃げが生まれない特殊な1日の最後に、肋骨を骨折しながら走り続けているワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)がステージ敢闘賞を獲得している。
平穏なステージを安全に走り切ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨジョーヌを守ったと思われたが、レース終了後に事態は急変する。残り17km地点で沿道のチームスタッフからボトルを受け取ったとしてアラフィリップにペナルティが課せられることが判明。「ステージレースで残り20kmを切ってから補給を受け取った選手に200スイスフランと20秒のペナルティが与えられる」というUCIルールにより、アラフィリップが予想外の形でマイヨジョーヌを失うことが決まった。
「今日のことは忘れて、明日挽回してみせる」というアラフィリップに対し、「最初は何が起こったのかわからなかった」と語るのは、チームバスでのシャワー後に表彰台に呼び戻され、マイヨジョーヌに初めて袖を通したアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)。「こんな形でマイヨジョーヌを受け取りたくなかったけど、明日からは総合リードを守るために走る。明日のモン・エグアルは激しい戦いになるだろう」。
「平穏」から「波乱」に急展開した第5ステージを終えて、Aイェーツがプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)から3秒、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)から7秒のリード。翌日は1級山岳ラ・リュゼット峠と標高1,560mモン・エグアルの山頂フィニッシュが登場する。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
9月2日(水)第5ステージ
ギャップ〜プリヴァ
距離:183km
獲得標高差:1,400m
天候:晴れ
気温:19〜23度
カテゴリー山岳とスプリントポイント
47.5km地点 スプリントポイント
130km地点 4級山岳セールコロン峠(距離4.1km・平均3.7%)
167km地点 4級山岳サンヴァンサン=ド=バレ(距離2.7km・平均4.2%)
アタックも逃げも生まれない特殊なステージに
大会最初の山頂フィニッシュを終えた選手たちは、ギャップの街から渓谷に沿ってアルプス山脈を脱出。緩やかに標高を下げながら、そして2つの4級山岳をこなしながらローヌ渓谷を横断し、アルデッシュ県の県庁所在地プリヴァを目指す。残り10km地点から勾配2%ほどの緩斜面が続くものの、距離183km/獲得標高差1,400mのステージはピュアスプリンター向きであると見られた。
ステージ中盤以降、特にローヌ川を渡る残り40km地点付近に吹く『ミストラル』に注意が必要なこの日、レースは予想外の展開を見せる。1ポイントしか獲得できない4級山岳が2つしか設定されていないということもあって、山岳賞狙いの選手は動かない。さらに47.5km地点に設定されたスプリントポイントまでスプリンターチームがレースをコントロールすると見られたため、スタートアタックを仕掛ける選手も現れない。総合リーダーチームのカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)による意外な飛び出しをトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が捕まえると、そこから長い長い集団巡航が始まった。
シーズン再開後に5日以上のステージレースを走っていないことも影響してか、山岳ステージに挟まれたこの日を選手たちはリカバリーに充てた。集団一つのまま突入したスプリントポイントではサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が最大ポイントを獲得して単独ポイント賞トップに。それ以降、メイン集団から動きを見せる選手は現れなかった。
終盤にかけて風が吹くも、最後は集団スプリントへ
1995年ツール第16ステージでは前日に亡くなったファビオ・カザルテッリに捧げるパレード走行が行われ、1998年ツール第17ステージでも選手のストライキによってパレード走行となったが、逃げによる広告効果が大きなツールにおいて、10km以上の逃げが生まれない日は極めて稀(最終日パリステージを除く)。ドゥクーニンク・クイックステップに限らず様々なチームの集団先頭に立って、40km/h前後のペースでメイン集団は緩やかなアップダウンをこなしていく。
2つの4級山岳ではマイヨアポワを着るブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール)がしっかりと合計2ポイントを獲得。ローヌ川が作り出した平野部に出ると北から南に向かって『ミストラル』が吹いたものの、メイン集団を粉砕するような勢いは無かった。
残り25kmを切ったところでにわかに集団の緊張感が増し、イネオス・グレナディアーズやユンボ・ヴィスマをはじめとする総合系チームが集団先頭へ。一時的に遅れたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)もチームメイトに守られて集団に復帰している。
残り10kmからの登り勾配が始まるとエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)やアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)らが脱落したものの、多くのスプリンターが集団内にひしめき合いながらの高速走行が続く。イネオス・グレナディアーズやユンボ・ヴィスマのペースアップによって約70名に絞られた集団がプリヴァのフィニッシュ地点にやってきた。
第3ステージと同様に4名でトレインを組み、先頭でフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過したのはサンウェブ。アシストが一人一人仕事を終えていく教科書通りのリードアウトを見せたサンウェブが残り200mでケース・ボル(オランダ)を発射したが、その後ろからワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が加速した。
ボルに並ぶとともに、後続のサガンやベネットを一気に引き離したファンアールト。トップスピード67.5km/hをマークしたファンアールトがボルとのハンドル投げを制し、大きく両手を広げた。
ファンアールトの勝利と、アラフィリップのペナルティ
前日の1級山岳ではクライマー顔負けの登坂力でプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)の勝利をお膳立てするとともに、ユンボ・ヴィスマにステージ2連勝をもたらしたファンアールト。「昨年のツールでの落車負傷からここまで早くこのレベルまで戻れるとは思っていなかった。8月のシーズン再開後、レースを走るごとに調子が上がっている」と、ストラーデビアンケとミラノ〜サンレモ、クリテリウム・デュ・ドーフィネ第1ステージ、そしてベルギー選手権個人タイムトライアルに続く今シーズン5勝目を飾ったファンアールトは語る。
スプリントポイント1位&ステージ3位のベネットがマイヨヴェールを獲得。逃げが生まれない特殊な1日の最後に、肋骨を骨折しながら走り続けているワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)がステージ敢闘賞を獲得している。
平穏なステージを安全に走り切ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨジョーヌを守ったと思われたが、レース終了後に事態は急変する。残り17km地点で沿道のチームスタッフからボトルを受け取ったとしてアラフィリップにペナルティが課せられることが判明。「ステージレースで残り20kmを切ってから補給を受け取った選手に200スイスフランと20秒のペナルティが与えられる」というUCIルールにより、アラフィリップが予想外の形でマイヨジョーヌを失うことが決まった。
「今日のことは忘れて、明日挽回してみせる」というアラフィリップに対し、「最初は何が起こったのかわからなかった」と語るのは、チームバスでのシャワー後に表彰台に呼び戻され、マイヨジョーヌに初めて袖を通したアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)。「こんな形でマイヨジョーヌを受け取りたくなかったけど、明日からは総合リードを守るために走る。明日のモン・エグアルは激しい戦いになるだろう」。
「平穏」から「波乱」に急展開した第5ステージを終えて、Aイェーツがプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)から3秒、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)から7秒のリード。翌日は1級山岳ラ・リュゼット峠と標高1,560mモン・エグアルの山頂フィニッシュが登場する。
デイリーハイライト: J SPORTSでツール・ド・フランス全21ステージ独占生中継
ツール・ド・フランス2020 第5ステージ結果
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 4:07:47 |
2位 | ケース・ボル(オランダ、サンウェブ) | |
3位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
4位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
6位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット) | |
7位 | ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | |
8位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
9位 | クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
10位 | ユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 22:28:30 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:00:03 |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:07 |
4位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:00:09 |
5位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:13 |
6位 | トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
7位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | |
8位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | |
9位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | |
10位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 123pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 114pts |
3位 | アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) | 93pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ブノワ・コヌフロワ(フランス、アージェードゥーゼール) | 23pts |
2位 | ミヒャエル・ゴグル(オーストリア、NTTプロサイクリング) | 12pts |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 10pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 22:28:37 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:00:06 |
3位 | ルイス・マス(スペイン、モビスター) | 0:00:15 |
チーム総合成績
1位 | EFプロサイクリング | 67:26:52 |
2位 | トレック・セガフレード | 0:00:32 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:00:40 |
text:Kei Tsuji
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