赤い水玉模様が特徴のマイヨブラン・ア・ポワ・ルージュ(マイヨアポワ)はツール・ド・フランスにおける山岳最強クライマーを示している。合計29カ所のカテゴリー山岳でポイントを量産し、山岳王の栄冠を手にするのはピュアクライマーか、それとも総合争いから脱落したオールラウンダーか?



赤い水玉模様のマイヨブラン・ア・ポワ・ルージュ

全身水玉ジャージで走るロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)全身水玉ジャージで走るロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Makoto Ayano
他の3賞ジャージが単色であるのに対して、マイヨアポワはホワイトジャージに赤い水玉を配した奇抜なデザインであり、プロトンの中でも判別は容易だ。ジャージスポンサーはフランスの大手スーパーチェーンのルクレール社。

カテゴリーの低い山岳での獲得ポイントが引き下げられているのが近年のツールの傾向であると言える。例えば4級山岳を20回先頭通過するのと、超級山岳1回先頭通過が同じポイント。つまり、マイヨアポワを狙うためには、こつこつと4級山岳でポイントを積み重ねるのではなく、難易度の高いカテゴリー山岳でポイントを稼がなければならない。中級山岳ステージで逃げてポイントを加算するのではなく、アルプスやピレネーの難関山岳でポイントを量産する真のクライマーがマイヨアポワの候補に挙がる。

初代大会ディレクターの名前を冠したアンリ・デグランジュ賞が設定された第17ステージに登場する今大会最高地点の超級山岳メリベル/ラ・ロズ峠では最大40ポイント獲得可能。マイヨジョーヌ候補がステージ優勝を狙うことが予想されるため、必然的に総合上位の選手たちも山岳賞ランキングの上位に絡んでくるだろう。

マイヨアポワを獲得したロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)マイヨアポワを獲得したロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Luca Bettini
カテゴリー山岳のポイント配分
ラ・ロズ峠 40pts, 30pts, 24pts, 20pts, 16pts, 12pts, 8pts, 4pts
超級山岳 20pts, 15pts, 12pts, 10pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts
1級山岳 10pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
2級山岳 5pts, 3pts, 2pts, 1pt
3級山岳 2pts, 1pt
4級山岳 1pt
ピュアクライマーや逃げ屋が山岳王のタイトルを狙う

マイヨヴェール以上に総合争いが影響するため予想がつきにくいマイヨアポワ争い。登坂力自慢のアシスト選手も、当然チームリーダーのマイヨジョーヌ獲得のために走らなければならない。そして総合争いから脱落したオールラウンダーや、その山岳アシストたちが目標をマイヨアポワにスイッチすることも考えられる。

ジャージを狙う上では難関山岳の上位通過が重要となるジャージを狙う上では難関山岳の上位通過が重要となる photo:Kei Tsuji
2019年ツールでは、前半から総合タイムを失ったロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)が後半ステージで山岳ポイントを量産。総合優勝したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)と8ポイント差でマイヨアポワを獲得した。今年も当然総合成績が最優先だが、状況によっては2年連続山岳賞を狙うことも考えられる。

2018年に山岳賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)2018年に山岳賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
ステージ狙いを公言するアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)のマイヨアポワ狙いはあるかステージ狙いを公言するアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)のマイヨアポワ狙いはあるか photo:LaPresse
エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji昨年ブエルタで山岳賞を獲得したトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)昨年ブエルタで山岳賞を獲得したトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji


2018年の受賞者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)や2017年のワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)も候補の一角。調整不足により総合成績よりもステージ成績にフォーカスするというアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は山岳賞争いにおけるダークホースだ。

比較的自由な動きが許されると見られるエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)やドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)といったピュアクライマーの他、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)といった『逃げ屋』も山岳賞の上位に入ってくるはずだ。
歴代のマイヨアポワ受賞者
2019年 ロマン・バルデ(フランス)
2018年 ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
2017年 ワレン・バルギル(フランス)
2016年 ラファウ・マイカ(ポーランド)
2015年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2014年 ラファウ・マイカ(ポーランド)
2013年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2012年 トマ・ヴォクレール(フランス)
2011年 サムエル・サンチェス(スペイン)
2010年 アントニー・シャルトー(フランス)
2009年 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)※ドーピング違反により失格
2008年 ベルンハート・コール(オーストリア)※ドーピング違反により失格
2007年 マウリシオ・ソレール(コロンビア)
2006年 ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)
2005年 ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)
2004年 リシャール・ヴィランク(フランス)
2003年 リシャール・ヴィランク(フランス)
2002年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2001年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2000年 サンティアゴ・ボテーロ(コロンビア)
1999年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1998年 クリストフ・リネロ(フランス)
1997年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1996年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1995年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1994年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1993年 トニー・ロミンガー(スイス)
1992年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1991年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1990年 ティエリー・クラヴェロラ(フランス)
text:Kei Tsuji in Nice, France

最新ニュース(全ジャンル)