2020/07/25(土) - 15:51
ミラノ郊外クザーノ・ミラニーニョに拠点を構えるデローザ。イタリア最大のデザインカンパニーであるピニンファリーナとのコラボレーションで生まれたエアロロード「SK Pininfarina」がモデルチェンジされている。細かいディティール変更が行われたイタリアンエアロをインプレッションした。
2019年の夏、新しいロゴを掲げたイタリアのチクリ「デローザ」。イタリックの古き良き時代を感じさせる書体から現代的な書体に変更し、日本国内でも小さくない衝撃を与えた。ブランドの顔とも言えるロゴを変更した際、現代表クリスティアーノ・デローザは「新しいロゴは新しいバイクとのマリアージュだ」と語った。
本来の主役である自転車自体にフォーカスを当てて欲しいというクリスティアーノの想いは、2020年モデルのラインアップに表れている。往年の名車MERAKの名を冠したクライミングロードバイクを登場させ、エアロロードのSK Pininfarinaと定番モデルとして多くの人に愛されているIDOLはモデルチェンジ。新しいロゴとともに新しい車体が、次の時代への一歩を踏み出している。
デローザの新時代を語る上でピニンファリーナの存在は切り離せない。コラボレーションは2015年にリリースしたSK Pininfarinaから始まり、先鋭的なアーバンバイクMetamorphosisと続き、新ロゴも担当。ピニンファリーナはクリスティアーノが考えるレトロフューチャーという考え方を近くで汲み取り、具現化してきた存在と言えよう。新ロゴとのマリアージュを実現させるために、SK Pininfarinaの新型もピニンファリーナによるものだ。
「エアロで速く、エレガントなバイク」というフィロソフィーのもとデザインが行われたSK Pininfarina。新型でもそのコンセプトを踏襲、アップデートを行いながら、軽量化と高剛性化にフォーカスが当てられているという。また、新型はディスクブレーキ専用フレームとして生み出されていることも前作からの大きな変更点だ。
エアロダイナミクス面でのアップデートはケーブルのフル内装に対応し、トップチューブを扁平形状へと変更した点だ。ケーブルによる空気の乱れを抑え、スムースに空気を流すような作りとなっている。フェラーリのスーパーカーを手掛けてきたピニンファリーナデザインであること、ピニンファリーナが所有する欧州最大の風洞実験設備で確認が行われていることを考えると、エアロダイナミクスについても期待を持てるだろう。
ケーブル内装システムはFSAのACR(Aerodynamic Cable Routing)を採用。ACRシステムでのフロントブレーキホースは、切り欠きが設けられたプレッシャーアンカーを通過し、コラム&フォーク内部へと配線される。残りのケーブル類は切り欠きが設けられたコンプレッションリングを通過し、フレーム内部へと導かれる。今回の試乗車には、FSAのNS ACR STEMがアセンブルされていた。他にもヴィジョンのMETRON 5Dなどに対応している。
軽量化と高剛性化についてはカーボン素材とチューブ形状からアプローチが行われ、重量950gという軽量級のフレームを実現している。フォークは370g。素材については前作よりもグレードの高いカーボンを使用することで、軽量性と剛性のアップデートに貢献しているという。
チューブ形状の目立つ変更点はリアトライアングルだ。前作では扁平形状とされていたシートステーを始めとする各チューブのボリュームを増し、直線的なデザインとすることで、プロ選手のペダリングパワーを効率よく推進力に変換できる剛性を獲得している。
一方で、シートチューブのタイヤを覆うデザインは前作よりも20%控えめな形状とされた。エアロダイナミクスに影響を与える部分ではあるものの、新型においてこの部分は軽量性と空力のバランスが考慮されたという。シートポスト形状も前作より前後に扁平した形状となっている。
新型SK Pininfarinaは電動と機械式コンポーネントどちらにも対応している。ラインアップにはシマノULTEGRA R8000グレードの機械式ドライブトレインで組み上げられた完成車(585,000円)と、フレームセット(450,000円)の2種類が用意されている。サイズは46、48、50、52、54、56という6種類。
2020年よりワールドチームであるコフィディスのサプライヤーとなったデローザが送るSK Pininfarina。世界屈指のスプリンター、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)も駆るエアロロードの真髄は如何に。
― インプレッション
「レースバイクに相応しい剛性を備えた一台」藤野智一(なるしまフレンド)
今回のインプレッションではIDOLと同時にSK Pininfarinaの試乗を行ったのですが、SKとIDOLで基本的な乗り味は通じる所があるようです。その上でSKはレースバイクらしい剛性感を備えており、IDOLが妹だとしたらSKはお兄さん。デローザのラインアップを見通してみると、どれもデローザらしい走行感に各モデルの特徴が加えられているように感じます。PROTOSやKINGはSKよりも高い剛性を備えた兄たちというようなイメージです。
SKはレースバイクらしいイメージですし、それに相応しい剛性を備えているのですが、エアロロードと聞いてイメージするような高剛性感ではなく、ペダルの踏切りやすさを身に着けていると思います。最近のバイクは剛性が過剰であったり、不足していたりすることが少なく優等生的な物が多いんですけど、その中でもSKはペダルを高回転での回しやすさ、ハイパワーで踏んだ時の気持ちよさは高いレベルにあると思います。あえてチェーンステーをストレートにしないという設計から来ているんでしょうね。
もしチェーンステーがしなり過ぎてしまったら、前後輪の挙動が一致せずに推進力が無くなってしまうし、その影響を受けて車輪自体がしなってしまうとスプリントの時に前荷重気味になってしまうんですよ。そうすると後輪が遊んでしまい、トラクションがかかりません。SKの場合は前後輪共に地面に吸い付くような感じで加速していくため、プロが選ぶバイクかなと感じられます。
エアロな見た目をしていますが、登坂性能も想像以上の物を持っています。高ケイデンスでも良いですし、トルクフルな走り方でも気持ちよく進んでくれます。例えば、頂上付近で斜度が緩んだところでダンシングに切り替えてギュッと踏んであげると敏感に反応してくれます。レースではそのような場面が必ずあると思うので、SKはレースにこそマッチしていると思います。
ハンドリングに関してもコーナーではシャープに切れ込んでいけるレーシーな味付けです。一方で車体が安定しており狙った通りにバイクを進ませられるので、路面状況が良く無い場所、道幅が狭い場所でもナーバスになることは少ないと思います。
また。昔のバイクのように横風を受けたら、ハンドルの落ち着きがなくなることはありませんね。視線を進行方向を向き、風を体で受けていれば、バイクは自然とまっすぐ進んでいきます。シビアなハンドリングだと、路肩ギリギリを走るシチュエーションでは疲れてしまいますが、このバイクの場合は問題ありません。
リムハイトが高いホイールの場合は、ライダーのコントロールが必要なこともあるので、ロングライドでゆっくりと走りたい、快適に走りたいという方は、40mmハイト以下のホイールを使用した方が扱いやすさを感じられると思います。
ただレーススペックとはいえ、振動が体に伝わりすぎるバイクだとプロも嫌だと思うんですよね。SKの場合はそれを意識してか、衝撃を受けてもストレスになりにくいように作られているように感じます。具体的にはコンフォートバイクのように衝撃を吸収するタイプではありませんが、振動の収束が速いという印象です。次々と振動がきてもすぐに収まるので、路面がよく無い状況でも安心して乗れますね。
競技者が乗ることで活かされるバイクかなと思うんですけど、このデザインが好みだからという理由で選んでも満足できると思います。一昔前であればエアロ系のロードバイクは性能が特化していましたが、今はあらゆる性能が高い次元で実現されています。だから、ロングライドを快適に走りたい人にとっても良い選択肢となる1台でしょう。
「圧倒的な剛性感のピュアレーサー」川原建太郎(ワイズロード東大和)
完全にピュアレーサーですね。最近はあらゆる性能に優れていて、扱いやすいバイクが多い中、SKはキャラクターがはっきりしているバイクです。パワーをかければかけるほどスピードが乗っていき、車体の限界は遥か彼方にあるようなイメージを受けました。自分では引き出しきれないほどのポテンシャルを持っています。
前作に乗った時は剛性感に物足りなさがあったのですが、新型では剛性感がブラッシュアップされています。特にボトムブラケット付近、ヘッド周りどちらも剛性が非常に高く、ハイパワーを出せるライダーにもってこいな硬さです。とは言え硬すぎるということはなく、しなりは感じる部分もあるので、剛性感が洗練されたという感じでしょうか。
真価を発揮するのはレースの最終局面でペースが上がった時、FTPよりも高いパワー領域、L5くらいで踏んだ時です。頑張らないといけない場面でスピードを見せてくれるので、ライダーとしては言い訳ができませんよね。バイクが狙っている巡航スピードも高いレベルに設定されている感覚があるので、タラタラと走るのではなく、ある程度のスピードは維持したいです。このバイクを乗りこなすために鍛えるというのもありでしょう。
振動に関してはある程度伝えてくるのですが、乗りにくさを感じるほどではありません。レーシングバイクとして必要な情報をライダーに伝達する程度です。振動についてはホイールなどの性能にも左右されますよね。それを加味すると今回試乗用に用意されていたスコープのホイールは硬すぎない剛性感だったので、フレーム自体が硬いSKとの相性がよかったのだと思います。
総じてレーサー向きの走行性能ではありますが、バイクの作りもレーサー向けであると読み解けると思います。例えば、短めのヘッドは深い前傾姿勢のエアロポジションを取る人に向いていますし、ジオメトリーもレース向けといっていいでしょう。専用シートポストはセットバックが設けられているため、ステージレースや長距離のレースに向けた仕様かと思います。
トップチューブやリアバックの造形は現代のエアロロードという印象を持ちますが、ダウンチューブに関しては空力性能にフォーカスしすぎていないと感じます。テスト中は横風が強く車体が煽りを受けるかと想像していましたが、実際の影響は少なかったですよ。
エアロダイナミクスの点ではハンドル周りのケーブル類が完全に内装されていることが良いと思います。メンテナンス性については様々な意見がありますが、ポジションが決まっているレーサーでエアロを求めるのであれば、ケーブルフル内装はアドバンテージとなるはずです。
ステムとハンドル一体型の専用システムではない点も素晴らしいですよね。スプリンターはハンドルには剛性、形状、サイズなどのこだわりがあるので、カスタマイズの余地があるのは嬉しいです。試乗車には一般的な形状のハンドルがアセンブルされていましたが、エアロ形状で剛性感のあるハンドルに交換したら、さらにレーシーな乗り味にできると思いますよ。
ダウンチューブの形状を考えても40mmハイトくらいのホイールでも似合うでしょう。エアロすぎない方向性でカスタマイズするのも楽しいでしょうし、バイクの見た目が好みというところから入っても良いと思いますね。
デローザ SK Pininfarina
フレーム素材:60T、40T、30T
コンポーネント:シマノ ULTEGRA R8000
ホイール:シマノ WH-RS170
ハンドル/ステム:FSA ACR STEM
サイズ:46、48、50、52、54、56
カラー:White Glossy、Blue Glossy、Stealth Matt、Champagne(フレーム販売のみ)
価 格:585,000円(税別)、フレームセット450,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
川原建太郎(ワイズロード東大和)
ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。
ワイズロード東大和
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:カステリ
text:Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
2019年の夏、新しいロゴを掲げたイタリアのチクリ「デローザ」。イタリックの古き良き時代を感じさせる書体から現代的な書体に変更し、日本国内でも小さくない衝撃を与えた。ブランドの顔とも言えるロゴを変更した際、現代表クリスティアーノ・デローザは「新しいロゴは新しいバイクとのマリアージュだ」と語った。
本来の主役である自転車自体にフォーカスを当てて欲しいというクリスティアーノの想いは、2020年モデルのラインアップに表れている。往年の名車MERAKの名を冠したクライミングロードバイクを登場させ、エアロロードのSK Pininfarinaと定番モデルとして多くの人に愛されているIDOLはモデルチェンジ。新しいロゴとともに新しい車体が、次の時代への一歩を踏み出している。
デローザの新時代を語る上でピニンファリーナの存在は切り離せない。コラボレーションは2015年にリリースしたSK Pininfarinaから始まり、先鋭的なアーバンバイクMetamorphosisと続き、新ロゴも担当。ピニンファリーナはクリスティアーノが考えるレトロフューチャーという考え方を近くで汲み取り、具現化してきた存在と言えよう。新ロゴとのマリアージュを実現させるために、SK Pininfarinaの新型もピニンファリーナによるものだ。
「エアロで速く、エレガントなバイク」というフィロソフィーのもとデザインが行われたSK Pininfarina。新型でもそのコンセプトを踏襲、アップデートを行いながら、軽量化と高剛性化にフォーカスが当てられているという。また、新型はディスクブレーキ専用フレームとして生み出されていることも前作からの大きな変更点だ。
エアロダイナミクス面でのアップデートはケーブルのフル内装に対応し、トップチューブを扁平形状へと変更した点だ。ケーブルによる空気の乱れを抑え、スムースに空気を流すような作りとなっている。フェラーリのスーパーカーを手掛けてきたピニンファリーナデザインであること、ピニンファリーナが所有する欧州最大の風洞実験設備で確認が行われていることを考えると、エアロダイナミクスについても期待を持てるだろう。
ケーブル内装システムはFSAのACR(Aerodynamic Cable Routing)を採用。ACRシステムでのフロントブレーキホースは、切り欠きが設けられたプレッシャーアンカーを通過し、コラム&フォーク内部へと配線される。残りのケーブル類は切り欠きが設けられたコンプレッションリングを通過し、フレーム内部へと導かれる。今回の試乗車には、FSAのNS ACR STEMがアセンブルされていた。他にもヴィジョンのMETRON 5Dなどに対応している。
軽量化と高剛性化についてはカーボン素材とチューブ形状からアプローチが行われ、重量950gという軽量級のフレームを実現している。フォークは370g。素材については前作よりもグレードの高いカーボンを使用することで、軽量性と剛性のアップデートに貢献しているという。
チューブ形状の目立つ変更点はリアトライアングルだ。前作では扁平形状とされていたシートステーを始めとする各チューブのボリュームを増し、直線的なデザインとすることで、プロ選手のペダリングパワーを効率よく推進力に変換できる剛性を獲得している。
一方で、シートチューブのタイヤを覆うデザインは前作よりも20%控えめな形状とされた。エアロダイナミクスに影響を与える部分ではあるものの、新型においてこの部分は軽量性と空力のバランスが考慮されたという。シートポスト形状も前作より前後に扁平した形状となっている。
新型SK Pininfarinaは電動と機械式コンポーネントどちらにも対応している。ラインアップにはシマノULTEGRA R8000グレードの機械式ドライブトレインで組み上げられた完成車(585,000円)と、フレームセット(450,000円)の2種類が用意されている。サイズは46、48、50、52、54、56という6種類。
2020年よりワールドチームであるコフィディスのサプライヤーとなったデローザが送るSK Pininfarina。世界屈指のスプリンター、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)も駆るエアロロードの真髄は如何に。
― インプレッション
「レースバイクに相応しい剛性を備えた一台」藤野智一(なるしまフレンド)
今回のインプレッションではIDOLと同時にSK Pininfarinaの試乗を行ったのですが、SKとIDOLで基本的な乗り味は通じる所があるようです。その上でSKはレースバイクらしい剛性感を備えており、IDOLが妹だとしたらSKはお兄さん。デローザのラインアップを見通してみると、どれもデローザらしい走行感に各モデルの特徴が加えられているように感じます。PROTOSやKINGはSKよりも高い剛性を備えた兄たちというようなイメージです。
SKはレースバイクらしいイメージですし、それに相応しい剛性を備えているのですが、エアロロードと聞いてイメージするような高剛性感ではなく、ペダルの踏切りやすさを身に着けていると思います。最近のバイクは剛性が過剰であったり、不足していたりすることが少なく優等生的な物が多いんですけど、その中でもSKはペダルを高回転での回しやすさ、ハイパワーで踏んだ時の気持ちよさは高いレベルにあると思います。あえてチェーンステーをストレートにしないという設計から来ているんでしょうね。
もしチェーンステーがしなり過ぎてしまったら、前後輪の挙動が一致せずに推進力が無くなってしまうし、その影響を受けて車輪自体がしなってしまうとスプリントの時に前荷重気味になってしまうんですよ。そうすると後輪が遊んでしまい、トラクションがかかりません。SKの場合は前後輪共に地面に吸い付くような感じで加速していくため、プロが選ぶバイクかなと感じられます。
エアロな見た目をしていますが、登坂性能も想像以上の物を持っています。高ケイデンスでも良いですし、トルクフルな走り方でも気持ちよく進んでくれます。例えば、頂上付近で斜度が緩んだところでダンシングに切り替えてギュッと踏んであげると敏感に反応してくれます。レースではそのような場面が必ずあると思うので、SKはレースにこそマッチしていると思います。
ハンドリングに関してもコーナーではシャープに切れ込んでいけるレーシーな味付けです。一方で車体が安定しており狙った通りにバイクを進ませられるので、路面状況が良く無い場所、道幅が狭い場所でもナーバスになることは少ないと思います。
また。昔のバイクのように横風を受けたら、ハンドルの落ち着きがなくなることはありませんね。視線を進行方向を向き、風を体で受けていれば、バイクは自然とまっすぐ進んでいきます。シビアなハンドリングだと、路肩ギリギリを走るシチュエーションでは疲れてしまいますが、このバイクの場合は問題ありません。
リムハイトが高いホイールの場合は、ライダーのコントロールが必要なこともあるので、ロングライドでゆっくりと走りたい、快適に走りたいという方は、40mmハイト以下のホイールを使用した方が扱いやすさを感じられると思います。
ただレーススペックとはいえ、振動が体に伝わりすぎるバイクだとプロも嫌だと思うんですよね。SKの場合はそれを意識してか、衝撃を受けてもストレスになりにくいように作られているように感じます。具体的にはコンフォートバイクのように衝撃を吸収するタイプではありませんが、振動の収束が速いという印象です。次々と振動がきてもすぐに収まるので、路面がよく無い状況でも安心して乗れますね。
競技者が乗ることで活かされるバイクかなと思うんですけど、このデザインが好みだからという理由で選んでも満足できると思います。一昔前であればエアロ系のロードバイクは性能が特化していましたが、今はあらゆる性能が高い次元で実現されています。だから、ロングライドを快適に走りたい人にとっても良い選択肢となる1台でしょう。
「圧倒的な剛性感のピュアレーサー」川原建太郎(ワイズロード東大和)
完全にピュアレーサーですね。最近はあらゆる性能に優れていて、扱いやすいバイクが多い中、SKはキャラクターがはっきりしているバイクです。パワーをかければかけるほどスピードが乗っていき、車体の限界は遥か彼方にあるようなイメージを受けました。自分では引き出しきれないほどのポテンシャルを持っています。
前作に乗った時は剛性感に物足りなさがあったのですが、新型では剛性感がブラッシュアップされています。特にボトムブラケット付近、ヘッド周りどちらも剛性が非常に高く、ハイパワーを出せるライダーにもってこいな硬さです。とは言え硬すぎるということはなく、しなりは感じる部分もあるので、剛性感が洗練されたという感じでしょうか。
真価を発揮するのはレースの最終局面でペースが上がった時、FTPよりも高いパワー領域、L5くらいで踏んだ時です。頑張らないといけない場面でスピードを見せてくれるので、ライダーとしては言い訳ができませんよね。バイクが狙っている巡航スピードも高いレベルに設定されている感覚があるので、タラタラと走るのではなく、ある程度のスピードは維持したいです。このバイクを乗りこなすために鍛えるというのもありでしょう。
振動に関してはある程度伝えてくるのですが、乗りにくさを感じるほどではありません。レーシングバイクとして必要な情報をライダーに伝達する程度です。振動についてはホイールなどの性能にも左右されますよね。それを加味すると今回試乗用に用意されていたスコープのホイールは硬すぎない剛性感だったので、フレーム自体が硬いSKとの相性がよかったのだと思います。
総じてレーサー向きの走行性能ではありますが、バイクの作りもレーサー向けであると読み解けると思います。例えば、短めのヘッドは深い前傾姿勢のエアロポジションを取る人に向いていますし、ジオメトリーもレース向けといっていいでしょう。専用シートポストはセットバックが設けられているため、ステージレースや長距離のレースに向けた仕様かと思います。
トップチューブやリアバックの造形は現代のエアロロードという印象を持ちますが、ダウンチューブに関しては空力性能にフォーカスしすぎていないと感じます。テスト中は横風が強く車体が煽りを受けるかと想像していましたが、実際の影響は少なかったですよ。
エアロダイナミクスの点ではハンドル周りのケーブル類が完全に内装されていることが良いと思います。メンテナンス性については様々な意見がありますが、ポジションが決まっているレーサーでエアロを求めるのであれば、ケーブルフル内装はアドバンテージとなるはずです。
ステムとハンドル一体型の専用システムではない点も素晴らしいですよね。スプリンターはハンドルには剛性、形状、サイズなどのこだわりがあるので、カスタマイズの余地があるのは嬉しいです。試乗車には一般的な形状のハンドルがアセンブルされていましたが、エアロ形状で剛性感のあるハンドルに交換したら、さらにレーシーな乗り味にできると思いますよ。
ダウンチューブの形状を考えても40mmハイトくらいのホイールでも似合うでしょう。エアロすぎない方向性でカスタマイズするのも楽しいでしょうし、バイクの見た目が好みというところから入っても良いと思いますね。
デローザ SK Pininfarina
フレーム素材:60T、40T、30T
コンポーネント:シマノ ULTEGRA R8000
ホイール:シマノ WH-RS170
ハンドル/ステム:FSA ACR STEM
サイズ:46、48、50、52、54、56
カラー:White Glossy、Blue Glossy、Stealth Matt、Champagne(フレーム販売のみ)
価 格:585,000円(税別)、フレームセット450,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップページ
川原建太郎(ワイズロード東大和)
ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。
ワイズロード東大和
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ウェア協力:カステリ
text:Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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