2020/04/08(水) - 08:52
世界各地のロードレースが新型コロナの脅威により続々と中止や延期を表明している現在、7月のツール・ド・フランスの示す立ち位置はどのようなものだろうか。海外の報道やツール総合ディレクターであるプリュドム氏の発言を通じて、この世界最大の自転車ロードレースの今と今後を探った。
今年のツールは6月27日〜7月19日と、従来の東京五輪の日程を受けて例年より1週間早い開幕となっている。ニースをスタートしてフランス国内の南半分を巡り、リュールからラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの個人タイムトライアルを経てパリへと達するルートだ。
しかし現在世界中で猛威を奮う新型コロナウイルスが、このレースにも大きな影を落としている。ツールをはじめとした多数のレースを手掛けるA.S.O.は、今年のツールの行く末について、まだ確固たる決定を下していない。
ラ・モンターニュやレキップなどのフランス各紙が報じたところによると、4月1日の電話インタビューで、ツール・ド・フランスの総合ディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏はこう語っている。
「現在、ツールの代替日程の検討にも取り組んでいますが、当面は当初の日程を維持します。ただしこれはパンデミックの進行状況に依存します。ツール・ド・フランスにとって最も重要なのは『フランス』。優先されるべきはフランス国内の健康状態です。」
「私が望む事はただ1つ、ツールがこの夏に開催されることです。これは決してツールを優先すると言う意味ではありませんが、もし開催されなければこの国が壊滅的な状況に陥っていることを意味するため、我々はそうならないことを願っています。」
この中で「1つ確かなことは、閉ざされた扉の向こう側で、ツールが行われることはない、と言うことです」とプリュドム氏は述べている。これは、その前週に仏スポーツ大臣のロクサナ・マラシネアヌ氏が「ツールは閉ざされた扉の向こう側で行われる可能性がある」と無観客でのレース実施を示唆したことを否定した発言と思われる。
「ツール・ド・フランスは情熱であり、熱狂であり、何よりも(人々の)笑顔です。我々はこの笑顔を再び見い出さなければなりません」と、氏はインタビューを締めくくった。
だが、開催の前提とされるツール前哨戦たるドーフィネは延期、スイスは中止となり、すでに従来のレースカレンダーからは失われている。選手のなかには昨年覇者エガン・ベルナルをはじめ、現時点でのツール開催の不確実性を受けトレーニングを停止している選手もいる。これらの前提を踏まえると、ツール・ド・フランスを取り巻く状況は非常に厳しいと言わざるを得ない。
では、その最終決断はいつになるのだろうか。ベルギーのラジオ局RTBFが報じたところによると、A.S.O.はツール開催可否や延期についての最終期限を5月15日に設定したとされている。その日付の真偽は定かでないが、プリュドム氏自身からは「我々は5月1日まで待たねばならない」との発言がされており、その時点の状況を見て決断が下されるのは間違いなさそうだ。
そしてこの記事を執筆している4月7日夜、仏紙『ル・パリジャン』やスペイン紙『EFE』により、A.S.O.は関係者や出発地と到着地全ての地方自治体に、レースを1ヶ月延期出来るかどうかの打診をした、という報道がなされた。報道で推測されている期間は7月25日〜8月16日。あくまでも検討段階の話だが、開催地や関係各所の同意が取れれば、決断が早まる可能性もある。今後の動向にも注目したい。
text: Yuichiro Hosoda
今年のツールは6月27日〜7月19日と、従来の東京五輪の日程を受けて例年より1週間早い開幕となっている。ニースをスタートしてフランス国内の南半分を巡り、リュールからラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの個人タイムトライアルを経てパリへと達するルートだ。
しかし現在世界中で猛威を奮う新型コロナウイルスが、このレースにも大きな影を落としている。ツールをはじめとした多数のレースを手掛けるA.S.O.は、今年のツールの行く末について、まだ確固たる決定を下していない。
ラ・モンターニュやレキップなどのフランス各紙が報じたところによると、4月1日の電話インタビューで、ツール・ド・フランスの総合ディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏はこう語っている。
「現在、ツールの代替日程の検討にも取り組んでいますが、当面は当初の日程を維持します。ただしこれはパンデミックの進行状況に依存します。ツール・ド・フランスにとって最も重要なのは『フランス』。優先されるべきはフランス国内の健康状態です。」
「私が望む事はただ1つ、ツールがこの夏に開催されることです。これは決してツールを優先すると言う意味ではありませんが、もし開催されなければこの国が壊滅的な状況に陥っていることを意味するため、我々はそうならないことを願っています。」
この中で「1つ確かなことは、閉ざされた扉の向こう側で、ツールが行われることはない、と言うことです」とプリュドム氏は述べている。これは、その前週に仏スポーツ大臣のロクサナ・マラシネアヌ氏が「ツールは閉ざされた扉の向こう側で行われる可能性がある」と無観客でのレース実施を示唆したことを否定した発言と思われる。
「ツール・ド・フランスは情熱であり、熱狂であり、何よりも(人々の)笑顔です。我々はこの笑顔を再び見い出さなければなりません」と、氏はインタビューを締めくくった。
従来日程でのツール開催は、すでに黄色から赤信号に変わりつつある?
プリュドム氏は、ツールを予定通り開催するためには、選手達は4月末よりトレーニングを再開する必要があるとしている。これは前哨戦のクリテリウム・ドーフィネやツール・ド・スイスといった、ツールの準備に必要な実戦を含めた話だ。だが、開催の前提とされるツール前哨戦たるドーフィネは延期、スイスは中止となり、すでに従来のレースカレンダーからは失われている。選手のなかには昨年覇者エガン・ベルナルをはじめ、現時点でのツール開催の不確実性を受けトレーニングを停止している選手もいる。これらの前提を踏まえると、ツール・ド・フランスを取り巻く状況は非常に厳しいと言わざるを得ない。
では、その最終決断はいつになるのだろうか。ベルギーのラジオ局RTBFが報じたところによると、A.S.O.はツール開催可否や延期についての最終期限を5月15日に設定したとされている。その日付の真偽は定かでないが、プリュドム氏自身からは「我々は5月1日まで待たねばならない」との発言がされており、その時点の状況を見て決断が下されるのは間違いなさそうだ。
そしてこの記事を執筆している4月7日夜、仏紙『ル・パリジャン』やスペイン紙『EFE』により、A.S.O.は関係者や出発地と到着地全ての地方自治体に、レースを1ヶ月延期出来るかどうかの打診をした、という報道がなされた。報道で推測されている期間は7月25日〜8月16日。あくまでも検討段階の話だが、開催地や関係各所の同意が取れれば、決断が早まる可能性もある。今後の動向にも注目したい。
text: Yuichiro Hosoda
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