5月18日、降りしきる雨の中行なわれたツアー・オブ・カリフォルニア第2ステージは、山岳地帯で25人の逃げが決まり、スプリントを制したブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)がステージ勝利を挙げた。この集団には3連覇中のライプハイマーとアームストロングらレディシャック勢が5人も入る結果となった。

ケガから一夜明けて出走するトム・ボーネン(クイックステップ)ケガから一夜明けて出走するトム・ボーネン(クイックステップ) (c)CorVosデーヴィス~サンタローザの176.2kmで争われた第2ステージは、2009年のレースで使ったコースを数カ所使用した。平坦基調でスタート、ベリエッサ湖を抜けてからは山岳道路ハウウェルマウンテンロードへと上り、途中ワインで知られるナパバレーを抜けて、トリニティーロードは2009年に使用されたコースとは逆(東)から上る。コース中山岳ポイントが4箇所設定された高低差に富んだレイアウトが特徴だ。

20km地点で5人の逃げが形成される。逃げたのは、カール・メンジース(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)、ロバート・トムソン(フライVオーストラリア)、アンドリュー・レンドール(スパイダーテック)、トーマス・ラブー(チームタイプワン)、マイケル・フリードマン(ジェリーベリー)ら、プロツアー&プロコンチ所属選手を含まないコンチネンタル5チームの選手による集合体だ。
トム・ボーネン(クイックステップ)の脚は傷だらけトム・ボーネン(クイックステップ)の脚は傷だらけ (c)CorVos
悪天候に見舞われたこの日、平坦部の気温は13度。5人は冷たい雨が降り、霧の立ち込める山岳地帯をコンスタントに逃げ続ける。
3分30秒の差をもって第3山岳ポイント、カテゴリー3級のオークヴィルの上りへ。ここから残りひとつの山岳ポイントを経てゴールのサンタローザまでは約30km。差をつければ逃げ切りの可能性もある。

しかし、後方集団が急激にペースを上げた。集団の先頭に立つのは赤いジャージ、レディオシャックのアームストロング軍団だった。

逃げグループではトーマス・ラブドゥー(チームタイプワン)が山岳ポイントをトップ通過してアグレッシブ賞(敢闘賞)を確実にして、最後の山岳ポイントであるトリニティ・グレイドへ。

一方、後方集団はレディオシャックの強力なペースアップによってバラバラに分断される。そして、スリッピーな路面による転倒事故が相次いでいた。



カリフォルニアの山岳地帯を行く先頭集団カリフォルニアの山岳地帯を行く先頭集団 (c)CorVosライプハイマーグループが逃げる4人を捉え、ゴールのサンタローザへと向かう下りで形成された逃げ集団は25人に。そのなかの5人がレディオシャックの選手たち。3連覇中のリーヴァイ・ライプハイマー、ランス・アームストロング、クリストファー・ホーナー、ホセルイス・ルビエラ、ヤネス・ブライコヴィッチらだ。

他のプロツアーチームで複数のメンバーを25人の先頭集団に残したのは、ガーミン・トランジションズがデーヴィッド・ザブリスキーとトム・ダニエルソン、ライダー・ヘジダルの3人、サクソバンクがアンディ・シュレクとイェンス・フォイクトの2人、HTCコロンビアがマイケル・ロジャースとラルスイティング・バクの2人、リクイガスがペーター・サガンとフランチェ滑りやすい路面に落車が頻発した滑りやすい路面に落車が頻発した (c)CorVosスコ・ベロッティの2人。

コンチネンタルチームではユナイテッドヘルスケア・マキシスがカール・メンジース、ロリー・サザーランド、マーク・デマールの3人を送り込んだ。

ハイペースを刻むこの先頭集団は、一路ライプハイマーのホームタウンであるサンタローザへ向かいペースを保って逃げ続ける。メイン集団はもはや形ないまでに崩壊し、バラバラの展開。タイム差をつめるための動きもまとまらない。


寒さに震えながら山岳地帯を行く集団寒さに震えながら山岳地帯を行く集団 (c)CorVosそして25人は逃げ切り、ゴールスプリントへ。
冷え切った身体のままのぎこちないゴールスプリントで抜け出たのはブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)だ。ランカスターには逃げ集団内にチームメイトがいなかったが、他の選手たちの追従を許さなかった。
ランカスターは、かつてジロ・デ・イタリア2005のプロローグを制してマリアローザを着用。ミルラム時代は好調期のアレッサンドロ・ペタッキの牽引役もこなしたスピードマンだ。スプリンターのアシストに回ることが多く、逃げに乗ることは多くない。

2位は"プロツアー界最年少の怪物、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)。3位にはラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)が入った。

逃げ集団のペースを作ったレディオシャック、アームストロングも好調だ逃げ集団のペースを作ったレディオシャック、アームストロングも好調だ (c)CorVosレディオシャックのメンバー5人は集団内で争わずにフィニッシュ。第2ステージにして早くもライバルたちに差をつけることに成功した。

2月から太陽の季節の5月開催になることで晴天が期待されたツアー・オブ・カリフォルニアだが、前年大会と同じような天候に。しかし気温は当然2月ほどまでには低くない。とはいえ山岳地帯を走ったこの日、選手たちは寒さに震えたようだ。


ドイツ一周ツアー2008のプロローグ優勝に次ぐ2年ぶりの勝利となったランカスターは言う

雨の中サンタローザのゴールにたどり着いた25人の先頭集団雨の中サンタローザのゴールにたどり着いた25人の先頭集団 (c)CorVos「とにかく寒くて風も強く、冷え切ってしまった。でもジャケットを脱ぐといくぶんましになった。最後は集団の前に出てスプリント出来る位置につけた。サガンをマークしていた。彼の動きは素早かったけど、僕のスプリントのタイミングは完璧だったと思う。おかげで彼を一車身差で下すことができた。

自分の調子には自信がなかったけれど、ボウルダー(コロラド州)で高地トレーニングを行ってきたんだ。もうずいぶん長いこと勝っていなかったから」

第2ステージにおいて早くもツアー・オブ・カリフォルニアを掌握したかに見えるレディオシャック。リーダーのライプハイマーを先頭集団に送り込み、アームストロングを含む4人も同集団ゴールし、総合優勝への準備は整った。
サガンを下したブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)サガンを下したブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム) (c)CorVosジロに出ることなくベストメンバーを送り込んだ結果とはいえ、チームの強さを改めて印象づけた。
春先から体調不良やレースキャンセルの続いたアームストロングは調整不足が心配されていたが、終わってみればそのネガティブな見方を払拭する好調さを見せつけた。
それは7月のツール・ド・フランスに向けて明るい材料と言えるだろう。


選手たちのtwitterコメント集

ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシング)
「朝起きるときは身体をジャッキで起こしたよ。もう何日かで良くなってくれることを願うばかりだよ」

リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
「手を後組にして走れるほどこの一帯の道を知り尽くしていたのは良かった。レディオシャックは素晴らしいレースをしたよ。自分のことを褒めたいね」。

ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)
ウェットで寒い第2ステージだった。レディオシャックはスーパーだ。25人の先頭集団に5人が入った。この辺はいつもこんな雨が降るの?

アンディ・シュレク(ルクセンブルグ、サクソバンク)
「濡れて寒い!25人の先頭集団でフィニッシュしたのは良かった。今日はゴールエリアしか見えてないよ。でも結果は良かった。明日は太陽に戻ってきて欲しいね」

ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)
「太陽いっぱいのカリフォルニアのはずなのに、なんて日だ。光はゼロ。太陽はナシ。ただ降り注ぐ雨だけ。寒くてハードだった。ただグルペットで耐えながら走ったよ」


第2ステージ結果
1位 ブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム) 4h38'48"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)-6"
3位 カール・メンジース(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
4位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
5位 アンドレ・ステーンセン(デンマーク、サクソバンク)
6位 フランソワ・パリジャン(カナダ、スパイダーテック)
7位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
9位 ラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)
10位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)

個人総合成績
1位 ブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム) 8h43'24"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)  +4"
3位 カール・メンジース(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
4位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) +6"
5位 トーマス・ラブー(チームタイプワン)
6位 マーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)+7"
7位 ポール・マッハ(チームビッセル) +8"
8位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)+10"
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
10位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)


ポイント賞
ブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)

山岳賞
トーマス・ラブー(チームタイプワン)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

チーム総合成績
ユナイテッドヘルスケア・マキシス



text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos

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