2010/05/18(火) - 08:37
5月17日、ジロ第9ステージがフロジノーネ〜カーヴァ・デ・ティレーニ間の187kmで行われ、総合上位の選手も参加した集団スプリントを、マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)が制した。総合上位に変動はなし。
ようやくやってきたジロ・デ・イタリア2010の「平坦ステージ」。ここまでの連日のタフなステージを経て、ようやくスプリンターのための舞台が整った。しかし今年のジロはどこまでも総合上位の選手に厳しい。素直な集団スプリントではなく、総合狙いの選手も巻き込んでの混戦スプリントが繰り広げられることになった。
レースは序盤、9km地点で逃げが形成。このジロには珍しく、この早い段階での逃げが決定的な逃げとなった。メンバーはジャンパオロ・ケウラ(イタリア、フットオン・セルヴェット)、トム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク)、マイケル・バリー(カナダ、チームスカイ)、ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)の4名。
この逃げが形成されたことにより、メイン集団の牽引を始めたのはチームHTCコロンビア。大会最有力スプリンターと言われながらも、ここまでまだ1勝も挙げていないアンドレ・グライペル(ドイツ)のために序盤から集団のコントロールを開始。
かなりナーバスに差をコントロールするチームHTCコロンビアの走りに、逃げる4名は思うように差を広げられない。雨が断続的に降り続く中、115km地点でその差は1分25秒。121km地点では40秒にまでその差が縮まるが、残り距離の長さを鑑みてコロンビア、アスタナらは逃げを泳がせる判断をとる。
メイン集団の最前列では道幅いっぱいにアスタナ、リクイガス・ドイモ、アックア・エ・サポーネの選手たちが広がって、ペースダウン。このあたりの道路は水はけが悪く、ところどころ大きな水たまりになっており、カメラバイクや前走者の上げる水しぶきを選手たちは体全体で浴びるはめに。
この130km地点でのペースダウンにより差は再び2分となると、突如として集団前方にチームHTCコロンビアの選手たちが現れ、ペースアップを図る。降りしきる雨の中コロンビアのアシスト選手が懸命の引きを見せる。
この集団の動きを察知した逃げの4人もペースを上げる。イグナチエフとバリーを中心にコロンビア勢と拮抗する走りを見せるものの、やはり少しづつ差が縮まり、残り25kmでその差は1分を切った。
差が減少するのを嫌って、イグナチエフがアタックしてさらにペースアップ。後方ではコロンビアの選手たちが必死の追走を見せるものの、50秒差からなかなか詰まっていかない。このコロンビアの全開の追いが、結果として集団の中切れを引き起こす。
15人ほどしか残らなかった集団の中にはグライペル、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)らが入る。
ここに入りそびれたのは総合2位のカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、総合4位のイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、8位のステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)ら。
思わぬ総合上位陣の分断をチャンスと見たのはヴィノ率いるアスタナ。人数を揃えるアスタナはなおも先頭を追うコロンビアの動きに同調。先頭交代に加わって後方集団との差をつけようと力を使う。
後方集団に残された有力選手たちは利害関係無く必死で前を追う。人数の多さで勝った後方集団は残り11km地点でなんとかマリアローザグループをキャッチ。この展開は逃げる4人には不運。その差は一気に30秒を切るところまで縮まってしまう。
残り10kmで再度イグナチエフがアタックし、独走態勢に入る。これを追う力があったのは唯一バリーのみ。バリーは残り8kmでイグナチエフを捕え、先頭は2人に。集団はこのわずか15秒後方に迫る。懸命の走りをした2人だったが、残り5kmでなおも決死の追いを見せるチームHTCコロンビアに吸収されてしまう。
ひとつになった集団前方から、態勢を整えるためにチームHTCコロンビアが一旦下がると、クイックステップが人数を揃えて登場。しかし残り1.5kmでチームスカイが隊列を組むと、そのまま黒いジャージの選手たちを先頭に残り1kmのアーチを通過する。
直後この集団から単独でアタックを見せたのはルーベンス・ベルトリアーティ(スイス、アンドローニ・ジョカトーリ)。かつてツール・ド・フランスで区間優勝を遂げた時を彷彿とさせる集団スプリント前の早がけを見せ、ゴールラインを目指す。
これを追って飛び出したのはなんとマリアローザを着るヴィノクロフ。後方にはマリアロッサパッショーネを着るエヴァンスが続き、総合上位の2人がスプリントで争う展開。しかし早い段階での彼らのスプリントが勢いを失う頃、残り200mで逆サイドからスプリンターたちが一気に飛び出す。
まず伸びてきたのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)。だがさらに後方から加速したマシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)がするりと抜け出し、力強いガッツポーズでゴールラインを先頭で切った。2位にはスプリントのタイミングを逸したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が入った。
ゴスは不調のエーススプリンター、グライペルの代役を見事に務め、ステージ優勝という最高の結果で今ジロ1勝目をチームにプレゼントした。第2ステージでもスプリントで2位に入っているゴスは間違いなくこのジロの有力スプリンターの一人。今後のチームHTCコロンビアはゴスにエースをスイッチする可能性が高い。
新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は1分49秒遅れの97位でゴール。総合は1時間9分47秒遅れの152位となっている。休息日の段階で第10ステージに逃げへの意欲を見せているだけに、翌日のステージに期待したい。
ジロ・デ・イタリア2010第9ステージ結果
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
2位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
4位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ミルラム)
5位 フェデリーコ・カヌーティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
6位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
9位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク)
10位 マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット)
152位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1'49"
総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) 24h09'42"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'12"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +1'33"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'51"
5位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア) +2'17"
6位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア) +2'26"
7位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ) +2'34"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +2'47"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +3'08"
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +3'09"
97位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h09'47"
ポイント賞 マリアロッサ
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)
チーム総合成績
リクイガス・ドイモ
敢闘賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
フーガ(逃げ)賞
マイケル・バリー(カナダ、チームスカイ)
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos
ようやくやってきたジロ・デ・イタリア2010の「平坦ステージ」。ここまでの連日のタフなステージを経て、ようやくスプリンターのための舞台が整った。しかし今年のジロはどこまでも総合上位の選手に厳しい。素直な集団スプリントではなく、総合狙いの選手も巻き込んでの混戦スプリントが繰り広げられることになった。
レースは序盤、9km地点で逃げが形成。このジロには珍しく、この早い段階での逃げが決定的な逃げとなった。メンバーはジャンパオロ・ケウラ(イタリア、フットオン・セルヴェット)、トム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク)、マイケル・バリー(カナダ、チームスカイ)、ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)の4名。
この逃げが形成されたことにより、メイン集団の牽引を始めたのはチームHTCコロンビア。大会最有力スプリンターと言われながらも、ここまでまだ1勝も挙げていないアンドレ・グライペル(ドイツ)のために序盤から集団のコントロールを開始。
かなりナーバスに差をコントロールするチームHTCコロンビアの走りに、逃げる4名は思うように差を広げられない。雨が断続的に降り続く中、115km地点でその差は1分25秒。121km地点では40秒にまでその差が縮まるが、残り距離の長さを鑑みてコロンビア、アスタナらは逃げを泳がせる判断をとる。
メイン集団の最前列では道幅いっぱいにアスタナ、リクイガス・ドイモ、アックア・エ・サポーネの選手たちが広がって、ペースダウン。このあたりの道路は水はけが悪く、ところどころ大きな水たまりになっており、カメラバイクや前走者の上げる水しぶきを選手たちは体全体で浴びるはめに。
この130km地点でのペースダウンにより差は再び2分となると、突如として集団前方にチームHTCコロンビアの選手たちが現れ、ペースアップを図る。降りしきる雨の中コロンビアのアシスト選手が懸命の引きを見せる。
この集団の動きを察知した逃げの4人もペースを上げる。イグナチエフとバリーを中心にコロンビア勢と拮抗する走りを見せるものの、やはり少しづつ差が縮まり、残り25kmでその差は1分を切った。
差が減少するのを嫌って、イグナチエフがアタックしてさらにペースアップ。後方ではコロンビアの選手たちが必死の追走を見せるものの、50秒差からなかなか詰まっていかない。このコロンビアの全開の追いが、結果として集団の中切れを引き起こす。
15人ほどしか残らなかった集団の中にはグライペル、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)らが入る。
ここに入りそびれたのは総合2位のカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、総合4位のイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、8位のステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)ら。
思わぬ総合上位陣の分断をチャンスと見たのはヴィノ率いるアスタナ。人数を揃えるアスタナはなおも先頭を追うコロンビアの動きに同調。先頭交代に加わって後方集団との差をつけようと力を使う。
後方集団に残された有力選手たちは利害関係無く必死で前を追う。人数の多さで勝った後方集団は残り11km地点でなんとかマリアローザグループをキャッチ。この展開は逃げる4人には不運。その差は一気に30秒を切るところまで縮まってしまう。
残り10kmで再度イグナチエフがアタックし、独走態勢に入る。これを追う力があったのは唯一バリーのみ。バリーは残り8kmでイグナチエフを捕え、先頭は2人に。集団はこのわずか15秒後方に迫る。懸命の走りをした2人だったが、残り5kmでなおも決死の追いを見せるチームHTCコロンビアに吸収されてしまう。
ひとつになった集団前方から、態勢を整えるためにチームHTCコロンビアが一旦下がると、クイックステップが人数を揃えて登場。しかし残り1.5kmでチームスカイが隊列を組むと、そのまま黒いジャージの選手たちを先頭に残り1kmのアーチを通過する。
直後この集団から単独でアタックを見せたのはルーベンス・ベルトリアーティ(スイス、アンドローニ・ジョカトーリ)。かつてツール・ド・フランスで区間優勝を遂げた時を彷彿とさせる集団スプリント前の早がけを見せ、ゴールラインを目指す。
これを追って飛び出したのはなんとマリアローザを着るヴィノクロフ。後方にはマリアロッサパッショーネを着るエヴァンスが続き、総合上位の2人がスプリントで争う展開。しかし早い段階での彼らのスプリントが勢いを失う頃、残り200mで逆サイドからスプリンターたちが一気に飛び出す。
まず伸びてきたのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)。だがさらに後方から加速したマシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)がするりと抜け出し、力強いガッツポーズでゴールラインを先頭で切った。2位にはスプリントのタイミングを逸したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が入った。
ゴスは不調のエーススプリンター、グライペルの代役を見事に務め、ステージ優勝という最高の結果で今ジロ1勝目をチームにプレゼントした。第2ステージでもスプリントで2位に入っているゴスは間違いなくこのジロの有力スプリンターの一人。今後のチームHTCコロンビアはゴスにエースをスイッチする可能性が高い。
新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は1分49秒遅れの97位でゴール。総合は1時間9分47秒遅れの152位となっている。休息日の段階で第10ステージに逃げへの意欲を見せているだけに、翌日のステージに期待したい。
ジロ・デ・イタリア2010第9ステージ結果
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
2位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
4位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ミルラム)
5位 フェデリーコ・カヌーティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
6位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
9位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ラボバンク)
10位 マルクス・アイベッガー(オーストリア、フットオン・セルヴェット)
152位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1'49"
総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) 24h09'42"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'12"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +1'33"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'51"
5位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア) +2'17"
6位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア) +2'26"
7位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ) +2'34"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +2'47"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +3'08"
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +3'09"
97位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h09'47"
ポイント賞 マリアロッサ
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)
チーム総合成績
リクイガス・ドイモ
敢闘賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
フーガ(逃げ)賞
マイケル・バリー(カナダ、チームスカイ)
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos
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