2020/03/09(月) - 09:19
強い風と冷たい雨、落車と集団分裂。出場チームが減少しながらも開幕した第78回パリ〜ニースの第1ステージで、終盤に飛び出したジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)らを下したマキシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)が白星スタートした。
ステージ中盤から横風による集団分断が発生する photo:CorVos
9年ぶりのパリ〜ニース出場となったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
急遽タッグを組むこととなったリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
パリ西部のプレジールで第78回パリ〜ニースが開幕した。大小2種類の周回コースを組み合わせた第1ステージは全長154km。山岳賞ジャージ着用者を決める3級山岳が2つと、ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が設定されたスプリントポイントが2つ登場する。獲得標高差は1,500mに満たないが、南西から吹く強風が初日からナーバスな展開を生み出した。
3月8日(日)第1ステージ プレジール〜プレジール 154km photo:A.S.O.曇りのち雨、気温8度という冬らしい北フランスをスタートしたのは136名。先陣を切ってアタックしたジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)とロマン・コンボー(フランス、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)がすぐさま6分のリードを築いたが、横風を利用してペースを上げるメイン集団によってステージ中盤で吸収されてしまう。2つの3級山岳を先頭通過したイヴェールは山岳賞ジャージを射止めている。
ステージ中盤にかけて発生した横風集団分裂によって2013年と2015年の総合優勝者リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)が脱落するシーンも見られたが、一旦はメイン集団に復帰する。しかし残り70kmを切ってから再びペースが上がると、ポートを含む多くの選手が脱落。さらに残り61km地点のラウンドアバウトで発生した落車にロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)が巻き込まれた。
ティレーノ〜アドリアティコ延期に伴いパリ〜ニース出場を決めたバルデはメイン集団に復帰することができず、ポートやギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)とともに初日から2分42秒のタイムロスを被っている。また、集団復帰の際にチームカーを風除けに使ったとしてバルギルには失格処分が与えられた。
序盤から逃げたロマン・コンボー(フランス、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)とジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) photo:CorVos
残り70kmからのペースアップを経て先頭グループを形成するジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら photo:CorVos
風に苦しむオールラウンダーやクライマーを尻目に、先頭で形成された16名のグループに複数名を送り込んだのはドゥクーニンク・クイックステップ(アラフィリップ、アスグリーン、スティバル)やサンウェブ(クラーウアナスン、アルント、ベノート、ボル)、ボーラ・ハンスグローエ(グロスチャートナー、コンラッド)、アルケア・サムシック(キンタナ、スウィフト)、グルパマFDJ(ルガック、モラール)。
追走グループから30秒程度のリードで先行を続けるこの16名から、過去2年のストラーデビアンケ覇者、つまりジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)とティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ)がボーナスタイムハンティングに打って出た。
残り30km地点の第1スプリントポイントに向けて飛び出したアラフィリップとベノートがそのまま先行。「横風が集団を破壊する恐れがあるので集団前方をキープする作戦だったけど、アタックは予定していなかった。でも集団が爆発(分裂)した際にカスパー(アスグリーン)とゼネク(スティバル)と一緒に先行する形になり、ボーナスタイムを狙って飛び出すと距離が開いたので、そのまま踏んだんだ」とアラフィリップは振り返る。降り始めた強い雨の中、アラフィリップは残り16km地点の第2スプリントポイントも先頭で通過して見せた。
強力なアラフィリップとベノートの逃げ切りが濃厚と見られたものの、濡れた石畳に覆われた3級山岳で協調体制が崩れてしまう。逆に追走グループからはマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・マクラーレン)がカウンターアタックを仕掛け、残り2.5km地点で先頭2名に追いついた。
こうして勝負は4名によるスプリントに。フラムルージュ通過後のベノートのロングスパートは決まらず、登り基調の最終ストレートでトゥーンスが先に腰を上げる。アラフィリップはスプリントに加わることができず、タイミングを見計らってから粘り強く加速したシャフマンが先着した。
終盤にかけて逃げるティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
4名によるスプリントを制したマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
初出場のパリ〜ニースの初日に勝利したシャフマン。ドイツチャンピオンジャージの上にイエロージャージを重ね着したシャフマンは平均スピード43.52km/hの厳しいステージをこう振り返る。「終盤にかけてペテル(ペテル)が風から守ってくれて、今シーズン最も厳しいレースを制することができた。絶好調とは言えない状態で最後は痛みを伴ったけど、先頭2人に追いつくことに成功。すべてが上手く行った。前戦のアルガルヴェで僅差で勝利を逃していたので、このメンバーの中で勝利できたことを嬉しく思う。イエロージャージを着るのは初めてだけど、リードを守るための準備は整っている」。
ベルリン生まれの26歳は2019年のアムステルゴールドレースで5位、ラ・フレーシュ・ワロンヌ5位、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで3位。1週間前後のステージレースでは安定して総合トップ10の成績を残しており、クイックステップ時代の2018年にジロ・デ・イタリアの山岳ステージで逃げ切り優勝を飾っている。
「ティシュ(ベノート)とは上手く協調体制を築けていたけど、最後の登りで彼が前を引くのを止めてしまったので追走が追いついてくる展開になってしまった」と語るのは、スプリントの途中で踏み止めたために3秒遅れとなったアラフィリップ。15秒遅れでフィニッシュした25名のメイン集団からリードを得たアラフィリップは「寒さの影響で本当にタフだったのでフィニッシュまで踏み抜けなかった。結果には失望していないし、調子の良さを確認することができたので満足している」と語っている。
アラフィリップとともに果敢に勝負に出たベノートは「16名の先頭グループにメンバー5名を送り込む理想的な展開。ボーナスタイムを狙って飛び出し、追走グループとの間に20秒のタイム差が生まれたのでそのままアラフィリップと先行を継続した。残り800mでスパートを仕掛けたけどコーナリングをミスしてスピードを失ってしまった。初日としては上出来で、1週間この調子を持続できればと思う」とコメント。2018年ティレーノ〜アドリアティコ総合4位、パリ〜ニース初出場の25歳は最終的な総合争いに絡んでくるだろう。
初出場のマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がイエロージャージ獲得 photo:CorVos
パリ近郊を走る第1ステージを終え、パリ〜ニースは地中海に向かって徐々に南下して行く。翌日南フランスに向かって下っていくことは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が止まらない北イタリアに近づくことを意味する。3月8日の時点でフランス国内における新型コロナウイルス感染者数は1126名で、死者は19名。現在も感染者数は増え続けており、フランス保険省は同日「1000人を超える集会を禁止する」措置を発表したばかり。状況が悪化した場合は2日前倒しで閉幕したUAEツアーと同様に中断する可能性も。アラフィリップやベノートが初日から果敢にボーナスタイムを狙うなど、レース内容にも影響を与えることも考えられる。
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パリ西部のプレジールで第78回パリ〜ニースが開幕した。大小2種類の周回コースを組み合わせた第1ステージは全長154km。山岳賞ジャージ着用者を決める3級山岳が2つと、ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が設定されたスプリントポイントが2つ登場する。獲得標高差は1,500mに満たないが、南西から吹く強風が初日からナーバスな展開を生み出した。
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ステージ中盤にかけて発生した横風集団分裂によって2013年と2015年の総合優勝者リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)が脱落するシーンも見られたが、一旦はメイン集団に復帰する。しかし残り70kmを切ってから再びペースが上がると、ポートを含む多くの選手が脱落。さらに残り61km地点のラウンドアバウトで発生した落車にロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)が巻き込まれた。
ティレーノ〜アドリアティコ延期に伴いパリ〜ニース出場を決めたバルデはメイン集団に復帰することができず、ポートやギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)とともに初日から2分42秒のタイムロスを被っている。また、集団復帰の際にチームカーを風除けに使ったとしてバルギルには失格処分が与えられた。
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追走グループから30秒程度のリードで先行を続けるこの16名から、過去2年のストラーデビアンケ覇者、つまりジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)とティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ)がボーナスタイムハンティングに打って出た。
残り30km地点の第1スプリントポイントに向けて飛び出したアラフィリップとベノートがそのまま先行。「横風が集団を破壊する恐れがあるので集団前方をキープする作戦だったけど、アタックは予定していなかった。でも集団が爆発(分裂)した際にカスパー(アスグリーン)とゼネク(スティバル)と一緒に先行する形になり、ボーナスタイムを狙って飛び出すと距離が開いたので、そのまま踏んだんだ」とアラフィリップは振り返る。降り始めた強い雨の中、アラフィリップは残り16km地点の第2スプリントポイントも先頭で通過して見せた。
強力なアラフィリップとベノートの逃げ切りが濃厚と見られたものの、濡れた石畳に覆われた3級山岳で協調体制が崩れてしまう。逆に追走グループからはマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・マクラーレン)がカウンターアタックを仕掛け、残り2.5km地点で先頭2名に追いついた。
こうして勝負は4名によるスプリントに。フラムルージュ通過後のベノートのロングスパートは決まらず、登り基調の最終ストレートでトゥーンスが先に腰を上げる。アラフィリップはスプリントに加わることができず、タイミングを見計らってから粘り強く加速したシャフマンが先着した。
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初出場のパリ〜ニースの初日に勝利したシャフマン。ドイツチャンピオンジャージの上にイエロージャージを重ね着したシャフマンは平均スピード43.52km/hの厳しいステージをこう振り返る。「終盤にかけてペテル(ペテル)が風から守ってくれて、今シーズン最も厳しいレースを制することができた。絶好調とは言えない状態で最後は痛みを伴ったけど、先頭2人に追いつくことに成功。すべてが上手く行った。前戦のアルガルヴェで僅差で勝利を逃していたので、このメンバーの中で勝利できたことを嬉しく思う。イエロージャージを着るのは初めてだけど、リードを守るための準備は整っている」。
ベルリン生まれの26歳は2019年のアムステルゴールドレースで5位、ラ・フレーシュ・ワロンヌ5位、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで3位。1週間前後のステージレースでは安定して総合トップ10の成績を残しており、クイックステップ時代の2018年にジロ・デ・イタリアの山岳ステージで逃げ切り優勝を飾っている。
「ティシュ(ベノート)とは上手く協調体制を築けていたけど、最後の登りで彼が前を引くのを止めてしまったので追走が追いついてくる展開になってしまった」と語るのは、スプリントの途中で踏み止めたために3秒遅れとなったアラフィリップ。15秒遅れでフィニッシュした25名のメイン集団からリードを得たアラフィリップは「寒さの影響で本当にタフだったのでフィニッシュまで踏み抜けなかった。結果には失望していないし、調子の良さを確認することができたので満足している」と語っている。
アラフィリップとともに果敢に勝負に出たベノートは「16名の先頭グループにメンバー5名を送り込む理想的な展開。ボーナスタイムを狙って飛び出し、追走グループとの間に20秒のタイム差が生まれたのでそのままアラフィリップと先行を継続した。残り800mでスパートを仕掛けたけどコーナリングをミスしてスピードを失ってしまった。初日としては上出来で、1週間この調子を持続できればと思う」とコメント。2018年ティレーノ〜アドリアティコ総合4位、パリ〜ニース初出場の25歳は最終的な総合争いに絡んでくるだろう。
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パリ近郊を走る第1ステージを終え、パリ〜ニースは地中海に向かって徐々に南下して行く。翌日南フランスに向かって下っていくことは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が止まらない北イタリアに近づくことを意味する。3月8日の時点でフランス国内における新型コロナウイルス感染者数は1126名で、死者は19名。現在も感染者数は増え続けており、フランス保険省は同日「1000人を超える集会を禁止する」措置を発表したばかり。状況が悪化した場合は2日前倒しで閉幕したUAEツアーと同様に中断する可能性も。アラフィリップやベノートが初日から果敢にボーナスタイムを狙うなど、レース内容にも影響を与えることも考えられる。
パリ〜ニース2020第1ステージ結果
1位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:32:19 |
2位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・マクラーレン) | |
3位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ) | |
4位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:03 |
5位 | ケース・ボル(オランダ、サンウェブ) | 0:00:15 |
6位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
7位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング) | |
8位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
9位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
10位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
38位 | ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:02:00 |
41位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:02:42 |
44位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | |
50位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | |
DSQ | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) |
個人総合成績
1位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:32:09 |
2位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ) | 0:00:02 |
3位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:04 |
4位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:07 |
5位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:24 |
6位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ケース・ボル(オランダ、サンウェブ) | 0:00:25 |
8位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
9位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング) | |
10位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) |
その他の特別賞
ポイント賞 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) |
山岳賞 | ジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) |
ヤングライダー賞 | ケース・ボル(オランダ、サンウェブ) |
チーム総合成績 | サンウェブ |
text:Kei Tsuji
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