IRCより登場したオールマウンテン~エンデューロカテゴリーのマウンテンバイクタイヤ、TANKENをインプレ。エンデューロレースやゲレンデ、常設コースでのダウンヒルに、あるいは里山ライドに最適なチューブレスレディタイヤだ。



IRC TANKEN TUBELESS READY  サイドウォールには耐パンクの補強が入るIRC TANKEN TUBELESS READY  サイドウォールには耐パンクの補強が入る photo:Makoto.AYANO
昨年のシーオッタークラシックでプロトタイプが使用され、北米で話題を呼んだIRCのMTBタイヤ「TANKENチューブレスレディ」。クロスカントリーMTBタイヤが充実した同社のラインナップには欠けていた「下り系」タイヤだ。

ディテールをみていこう。グリップ重視のトレッドには2列で大きめのノブが配置される。サイドには補強を施した耐パンク性に優れた仕様で、サイズラインナップは 27.5×2.3/27.5×2.6/27.5×2.8/29×2.3/29×2.6の5サイズをラインナップ。つまり27.5インチと29インチにおいて2.3と2.6の太さが揃うほか、27.5プラス規格(2.8)のタイヤも揃う豊富なバリエーション。トレッドパターンは全サイズに渡って共通だが、27.5プラスにおいては太くなったぶん、センターとサイドの部の間に小さなノブを追加している。

IRC TANKEN TUBELESS READYIRC TANKEN TUBELESS READY photo:Makoto.AYANO
低反発性のハイグリップコンパウンドが採用され、サイドのノブは大きく張り出し、コーナリング時のグリップを稼ぎ出すデザイン。ケーシングは60TPIで、サイドウォールには補強のプロテクションメッシュが入りパンクに強い仕様。チューブレス技術で他社を一歩リードするIRCのチューブレスレディタイヤであり、トレッド内側に備わるマイクロゲージインナーは極薄かつ軽量のエアシール層で、シーラントと併用することで空気保持レベルを大幅に高める。

中央部は2列、サイドは立ったノブのデザイン中央部は2列、サイドは立ったノブのデザイン photo:Makoto.AYANO
IRCの開発担当者は開発の意図を次のように話す。「里山などのトレイルライドから下り系レースであるエンデューロまでをカバーするタイヤをターゲットに開発。27.5と29インチ両方で豊富なサイズを用意し、幅広いユーザーに、様々な用途に楽しく使ってもらえるタイヤを目指しました。グリップを担うブロックパターンによりかかりを良くしながらも、純レースタイヤではないので、太くても軽さを犠牲にしたくないという考えから、重量面では軽く仕上げて、ある程度長持ちするように耐久性のあるコンパウンドを採用しています。北米やヨーロッパなど海外からの要望が多く、その声に応えて作り込みました」。

価格は1本5,500円(税抜)という手軽なプライスがつくが、国内のエンデューロレースシリーズであるENS岩岳大会では内嶋亮選手が使用し、優勝。すでにその性能が人気となり国内でもヒットの兆しを見せている。



インプレッション

グラベルタイヤのBOKEN(冒険)に続き、今回はTANKEN(探検)と、日本語由来ながら欧米でウケそうなネーミングがユニークなMTBタイヤ。今回は29インチ・2.3サイズを里山ライドで長期使用してのインプレをお届けしよう。

下りを楽しむ里山ライドでグリッピーな走りが愉しめるライトダウンヒルタイヤ下りを楽しむ里山ライドでグリッピーな走りが愉しめるライトダウンヒルタイヤ photo:Gakuto.Fujiwara
今までのIRCはクロスカントリー用のタイヤを主に取り揃えていたが、TANKENはそんな同社のラインアップに無かった系統の下り系MTBタイヤで、27.5で2.8、29erで2.6サイズという太めのモデルも揃えるところが現代のニーズにマッチしている。すでに同社で定評のあるTLR=チューブレスレディタイプで、シーラントを併用する。

今までのIRCのMTBタイヤとは異なる印象のコンパウンドで、低反発性のゴム感のあるノブの手触りが特徴的だ。リバウンド(反発)はスローな印象。トレッドパターンは超定番下り系タイヤのマキシス・ミニオンDH等と良く似ているノブのデザインだが、舗装路を走るとTANKENのノイズはそれらに比べて明らかに静かだ。そのことでもコンパウンドのソフトさが分かる。

コンパウンドはソフトでハードパック路面のノイズの少なさが際立つコンパウンドはソフトでハードパック路面のノイズの少なさが際立つ photo:Makoto.AYANO
重量は27.5×2.3サイズでちょうど1,000g。29×2.3では1,065gと、エンデューロタイヤとしては標準的な重量。他社ダウンヒル系タイヤのようなノブの硬さはないが、里山ライドではよくグリップが効き、自然のトレイルの下りを存分に攻めて走ることができるハイグリップタイヤだ。平坦の漕ぎの軽さを追求するレースであればリアタイヤの重さが少々ネックにはなるだろうが、上りもノブが効くためシングルトラックなどでは有効。こうした性質は、転がり抵抗を軽くすることを重視してきた今までのIRCのXCタイヤの延長線上にはないMTBタイヤだ。

ウェット路面でもハイグリップが助けてくれるタイヤだウェット路面でもハイグリップが助けてくれるタイヤだ photo:Makoto.AYANO
29×2.3タイヤを内幅30mmのワイドリム採用ホイール(シマノXT WH-M8120)に組み合わせて使ってみると、サイドのノブがより有効に使えてさらにダウンヒルに余裕が出せた。トレイルやジープロードをペダルアップ(自力で登る)して、下りを楽しむような走りなら2.3を。ゲレンデダウンヒルや、ピックアップトラックなどで頂上まで連れて行ってくれるガイド付きトレイルなら(重い)2.6でもいいだろう。E-MTBでも使えるはずだ。

落ち葉などで滑りやすい上りもしっかりしたノブがグリップを助けてくれる落ち葉などで滑りやすい上りもしっかりしたノブがグリップを助けてくれる photo:Gakuto.Fujiwara
IRCの開発者によれば、オフロードのオートバイタイヤのテクノロジーを流用して設計されたMTBタイヤだということだ。ちなみにモトクロスの世界ではIRCのタイヤでなければ勝てないといったハードなコースを使うレースもあるぐらい、同社の製品とブランド力は強いものがある。同社にとって初カテゴリーのタイヤながらうまくまとまっているのはそうした理由のようだ。とくに里山ライドビギナーにはテクニック不足を補ってくれるありがたいタイヤだろう。
(インプレッション:綾野 真/CW編集部)

IRC TANKEN TUBELESS READYIRC TANKEN TUBELESS READY photo:Makoto.AYANO
IRC TANKEN TUBELESS READY
タンケン チューブレスレディ
価格:5,500円(税抜)
アラミドビード

サイズと重量
650 × 58B(27.5 × 2.3) 1,000g
650 × 66B(27.5 × 2.6) 1,045g
650 × 71B(27.5 × 2.8) 1,165g
700 × 58C(29 × 2.3) 1,065g
700 × 66C(29 × 2.6) 1,110g

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