2010/05/17(月) - 19:21
5月17日に開幕したツアー・オブ・カリフォルニア2010、第1ステージはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)がゴールスプリントを制した。最終コーナーで落車が起こり、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)ら多くの選手が巻き込まれ、波乱の開幕となった。
2月から5月開催となり、明るい太陽のもと開催される今年のツアー・オブ・カリフォルニア。欧州からトッププロチームがこぞってやってきて、ネバダシティに集結した。大会の顔アームストロングに加え、カンチェラーラやボーネン、アンディ・シュレク、カヴェンディッシュ、ヒンカピーらスター選手が顔を揃えた。まずはスタート前の大会の雰囲気を写真でお届けしよう。
カリフォルニア州旗と星条旗が舞うネバダシティ (c)CorVos
カンチェラーラがやってきた! (c)CorVos
アンディ・シュレクも人気者だ (c)CorVos
ボーネンがカリフォルニアに再び登場 (c)CorVos
星条旗を身にまとうヒンカピーはいつも人気者 (c)CorVos
スラムのメカニカルアシスタントカー (c)CorVos
8日間、1272.8kmの闘いがスタート!
アームストロングは新色のアイウェアとUNITYキャンペーンのヘルメットで登場 (c)CorVos毎年タイムトライアルで開幕していたツアー・オブ・カリフォルニアだが、今年はマスドスタートのロングステージで始まる。
その第1ステージはネバダシティ~サクラメント間の167.8kmで争われた。
シェラネバダ山脈の麓、標高762mの街ネバダをスタートし、無数の細かな丘を越えて走る167.8kmのステージは、逃げを打つにも適したコースプロフィール。
しかしコース全体が下り基調のうえ、ラスト63kmが長い下りと平坦になるため、スプリンターチームの組織的な追撃ができれば集団スプリントになる可能性が高い。
ネバダシティをスタートして行くプロトン (c)CorVosスプリンターを抱えるチームたちの、最後に集団スプリントに持ち込みたいという思惑は火を見るより明らか。それに抵抗しようとするアタッカーたちが序盤から動き出した。
24km地点から逃げだしたのはマーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)、チャド・ベイヤー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、マーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)、ポール・マッハ(チームビッセル)の4人。集団に約4分の差を持って走る。
アームストロング、アンディ・シュレク、カンチェラーラ、ポポヴィッチらが揃ってスタートしていく (c)CorVosカリフォルニア州独特の美しい原野の景観が続くなか、逃げる4人も追う集団も、淡々と一定のペースを刻み続ける。4分差はやがて3分に縮まるが、集団が意識して差を詰めだしたのはゴールまで残り45kmを切ってから。
その差は残り40kmで2分、残り25kmで1分とみるみる縮まり、残り16kmを切った時点で吸収され、レースは振り出しに戻る。そこからはスプリントを狙うチームによる集団コントロールが行なわれ、もはやそれを上回って抜け出すスピードをもつ選手はいなくなる。
逃げるチャリンギ(ラボバンク)、ベイヤー(BMCレーシングチーム)、デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)、マッハ(チームビッセル)の4人 (c)CorVosゴールの設定されたサクラメント市街に入り、ステージ勝利への意欲を見せたのはアメリカンチームのジェリーベリー、チームタイプワン、ケリー・ベネフィットらコンチネンタルチーム勢だ。普段一緒に闘う機会のないトッププロたちに対し闘いを挑むが、そこはプロツアーチーム勢がプライドにかけて許しはしなかった。
まずカヴェンディッシュの勝利を狙うチームHTCコロンビアが集団の前を占拠し、ハイスピードへと引き上げる。サクラメントの周回コースへと入り、ラスト10kmを切ったところでケリー・ベネフィットが割って入るが、HTCを脅かすには至らない。
しかし、もうひとつ強力なチームが現れた。白と濃紺のジャージ、そしていつもと違う赤いバイクに跨ったチームサクソバンクだ。
ゴールに向けて集団をコントロールするHTCコロンビア (c)CorVos
イェンス・フォイクトやファビアン・カンチェラーラといったムスタングばりの大型エンジンを積んだライダーたちがHTCの前に割って入り、集団先頭を固める。サクソバンクはカリフォルニアでステージ優勝を量産した経験を持つアルゼンチン産のスプリンター、フアンホセ・アエドのためのアシストの動きだ。
しかし、それもHTCが許してくれない。ラスト2.8kmでHTCが割り込み返すと、ゴールスプリントへ向けてスピードを高めるばかり。そして、最終局面のコーナーの立ち上がりでクラッシュは起こってしまった。
ケリー・ベネフィットの選手たちが集団前方に割り込む (c)CorVosHTC勢の後方の好位置につけていたトム・ボーネンが落車。激しく路面に叩きつけられ、全身を擦りむくケガを負った。巻き込まれて路面に打ち付けられたのはスチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)、ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)ら4人ほど。
この先頭付近で起きた落車の影響で集団は大きく割れ、難を逃れた2,30人ほどの小集団でスプリントが争われることに。飛び出したカヴェンディッシュに、アエドが迫るが、ゴールラインまでに肩を並べるスピードはなかった。
カヴェンディッシュは余裕を持ってゴールでガッツポーズ。そのゼスチャーはどこか控えめだが、自身の存在をアピールするものだった。ラインを越えてからアエドも祝福の握手を求める。
アエドを3車身差で下したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア) (c)CorVos
リーダージャージを獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア) (c)CorVos春から不調にあえいでいたカヴェンディッシュは、先のツール・ド・ロマンディ第2ステージにおいて復調をアピールする今期2勝目を挙げたが、そのゴールの時にとったポーズが問題に。
指を2本立てて「今期2勝目を勝ち取った」ともとれるそのポーズだが、人を不快にさせるあのポーズにも見えた。これが大会関係者の目には「後者」と判断され、スポーツマンとして取ってはならない行動としてUCIから6000スイスフランの罰金が課されていた。
今度こそクリーンな勝利で自身の復調をアピールしたカヴェンディッシュ。チームメイトのグライペルとの確執にもこれでひとつの答えを出したようだ。
カヴは言う
「僕らは一日中レースをコントロールした。経験不足のチームがいくつか見受けられたね。僕らは集団をコントロールするだけの経験があった。何度か邪魔されたけど、僕らのミッションはひとつ、"(マーク)レンショーの後輪に続け、フィニッシュラインを一番で越えろ"だった。
僕はもしいい位置に運んでもらえたら、フィニッシュラインは一番で越える。勝利することでもっとも満足なことは、僕のために働いてくれたチームメイトに報いることができることだ。
シーズン3勝目を<スペシャルゼスチャーで>祝おうと思っていたけど、やめた。ごく普通のポーズでゴールした。正直言って僕のゴールのポーズがやり過ぎだと思わない。レース中は感情のスウィッチをオフにして走った。それがゴールを越えてから出てきたよ。いつものゼスチャーが演出だと思うかもしれないけど、アドリブなんだよ。
これでプレッシャーはなくなった。ロジャースが今まで彼のキャリアの中でも一番いいぐらいに調子がいいいから、彼の総合を狙うよ。まだいくつかステージ優勝もできると思う。
コースはそれ自体危険じゃなかったけど、コーナーに落とし穴のようなバンプが多くて、多くの選手が危険を顧みなかったから落車が起こったんだ。何年か前なら僕もそうしていたけれど」。
ボーネンは鎖骨骨折?
落車によってベルギーチャンピオンジャージをずたずたにしてゴールラインにたどり着いたボーネン。病院に搬送されたが、「鎖骨骨折」と一部メディアは伝えている。※一部メディアで報道されていたボーネンの鎖骨骨折はクイックステップのtwitterによる発表により誤報であることが確認されました。
診断の結果骨折等がなかったヒンカピーは、「ボーネンが転けて、僕はバイクで彼を轢いてしまった。今日はいい脚だったから残念だ」と話している。
落車して擦り傷だらけで帰ってきたボーネン (c)CorVos
ボーネンと一緒に落車したジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム) (c)CorVos
落車の影響を受けたカンチェラーラ 大きな負傷はなさそうだ (c)CorVos
ポール・マッハ(チームビッセル)が山岳賞を獲得 (c)CorVos第1ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア) 4h04'46"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
4位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)
5位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、フライV)
6位 マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)
7位 ギヨーム・ボワバン(カナダ、スパイダーテック)
8位 アンドレアス・スタウフ(ドイツ、クイックステップ)
9位 ニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)
ブレーカウェイ(逃げ)賞を獲得したマーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク) (c)CorVos10位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)
個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク) +4"
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、BMCレーシングチーム)+6"
4位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)
5位 マーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)+7"
6位 チャド・ベイヤー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
7位 ポール・マッハ(チームビッセル)+8"
新人賞を獲得したチャド・ベイヤー(アメリカ、BMCレーシングチーム) (c)CorVos8位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)+10"
9位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、フライV)
10位 マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)
ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)
山岳賞
ポール・マッハ(チームビッセル)
チーム総合成績
チームHTCコロンビア
text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos
2月から5月開催となり、明るい太陽のもと開催される今年のツアー・オブ・カリフォルニア。欧州からトッププロチームがこぞってやってきて、ネバダシティに集結した。大会の顔アームストロングに加え、カンチェラーラやボーネン、アンディ・シュレク、カヴェンディッシュ、ヒンカピーらスター選手が顔を揃えた。まずはスタート前の大会の雰囲気を写真でお届けしよう。
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8日間、1272.8kmの闘いがスタート!
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その第1ステージはネバダシティ~サクラメント間の167.8kmで争われた。
シェラネバダ山脈の麓、標高762mの街ネバダをスタートし、無数の細かな丘を越えて走る167.8kmのステージは、逃げを打つにも適したコースプロフィール。
しかしコース全体が下り基調のうえ、ラスト63kmが長い下りと平坦になるため、スプリンターチームの組織的な追撃ができれば集団スプリントになる可能性が高い。
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24km地点から逃げだしたのはマーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)、チャド・ベイヤー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、マーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス)、ポール・マッハ(チームビッセル)の4人。集団に約4分の差を持って走る。
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しかし、もうひとつ強力なチームが現れた。白と濃紺のジャージ、そしていつもと違う赤いバイクに跨ったチームサクソバンクだ。
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イェンス・フォイクトやファビアン・カンチェラーラといったムスタングばりの大型エンジンを積んだライダーたちがHTCの前に割って入り、集団先頭を固める。サクソバンクはカリフォルニアでステージ優勝を量産した経験を持つアルゼンチン産のスプリンター、フアンホセ・アエドのためのアシストの動きだ。
しかし、それもHTCが許してくれない。ラスト2.8kmでHTCが割り込み返すと、ゴールスプリントへ向けてスピードを高めるばかり。そして、最終局面のコーナーの立ち上がりでクラッシュは起こってしまった。
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この先頭付近で起きた落車の影響で集団は大きく割れ、難を逃れた2,30人ほどの小集団でスプリントが争われることに。飛び出したカヴェンディッシュに、アエドが迫るが、ゴールラインまでに肩を並べるスピードはなかった。
カヴェンディッシュは余裕を持ってゴールでガッツポーズ。そのゼスチャーはどこか控えめだが、自身の存在をアピールするものだった。ラインを越えてからアエドも祝福の握手を求める。
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指を2本立てて「今期2勝目を勝ち取った」ともとれるそのポーズだが、人を不快にさせるあのポーズにも見えた。これが大会関係者の目には「後者」と判断され、スポーツマンとして取ってはならない行動としてUCIから6000スイスフランの罰金が課されていた。
今度こそクリーンな勝利で自身の復調をアピールしたカヴェンディッシュ。チームメイトのグライペルとの確執にもこれでひとつの答えを出したようだ。
カヴは言う
「僕らは一日中レースをコントロールした。経験不足のチームがいくつか見受けられたね。僕らは集団をコントロールするだけの経験があった。何度か邪魔されたけど、僕らのミッションはひとつ、"(マーク)レンショーの後輪に続け、フィニッシュラインを一番で越えろ"だった。
僕はもしいい位置に運んでもらえたら、フィニッシュラインは一番で越える。勝利することでもっとも満足なことは、僕のために働いてくれたチームメイトに報いることができることだ。
シーズン3勝目を<スペシャルゼスチャーで>祝おうと思っていたけど、やめた。ごく普通のポーズでゴールした。正直言って僕のゴールのポーズがやり過ぎだと思わない。レース中は感情のスウィッチをオフにして走った。それがゴールを越えてから出てきたよ。いつものゼスチャーが演出だと思うかもしれないけど、アドリブなんだよ。
これでプレッシャーはなくなった。ロジャースが今まで彼のキャリアの中でも一番いいぐらいに調子がいいいから、彼の総合を狙うよ。まだいくつかステージ優勝もできると思う。
コースはそれ自体危険じゃなかったけど、コーナーに落とし穴のようなバンプが多くて、多くの選手が危険を顧みなかったから落車が起こったんだ。何年か前なら僕もそうしていたけれど」。
ボーネンは鎖骨骨折?
落車によってベルギーチャンピオンジャージをずたずたにしてゴールラインにたどり着いたボーネン。病院に搬送されたが、「鎖骨骨折」と一部メディアは伝えている。※一部メディアで報道されていたボーネンの鎖骨骨折はクイックステップのtwitterによる発表により誤報であることが確認されました。
診断の結果骨折等がなかったヒンカピーは、「ボーネンが転けて、僕はバイクで彼を轢いてしまった。今日はいい脚だったから残念だ」と話している。
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1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア) 4h04'46"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
4位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)
5位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、フライV)
6位 マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)
7位 ギヨーム・ボワバン(カナダ、スパイダーテック)
8位 アンドレアス・スタウフ(ドイツ、クイックステップ)
9位 ニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)
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個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク) +4"
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4位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)
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9位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、フライV)
10位 マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシング)
ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)
山岳賞
ポール・マッハ(チームビッセル)
チーム総合成績
チームHTCコロンビア
text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos