2020/01/01(水) - 16:29
12月中旬に、スペインはバレンシア地方で行われたUAEチームエミレーツのトレーニングキャンプを訪ねた。これから4編に渡り、チームの概要や選手、チーム代表へのインタビューを紹介していきたい。まずは2020シーズンの陣容やチーム目標について触れる。
新しいチームウェアを纏った2020年所属全選手 (c)UAE Team Emirates
マドリード空港からクルマでおよそ4時間強、アリカンテ空港からであればおよそ1時間。ベルギーやイギリスからの観光客を多く迎える地中海に面したリゾート地、ベニドルムにUAEチームエミレーツが冬季合宿拠点を置くリゾートホテルはあった。
緯度だけで言えば福島と同じくらい。しかし地中海で暖められた暖かい風がオフシーズンの乗り込みに適した気候を作り上げる。内陸に向かえばルタ・デル・シクリスタ、つまりサイクリストの道、と名付けられた峠道が続くこの地域では、伝統的に多くのチームや選手がウインターキャンプの拠点を置いてきた。
今回チャンピオンシステム・ジャパンの手配により、シクロワイアード編集部はUAEチームエミレーツのウインターキャンプを取材する機会を得た。ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)やミッケル・ビョーグ(デンマーク)ら新規加入選手を含め、2020年の全選手、監督陣、スタッフやサプライヤーが揃うこのチャンスで、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)やタデイ・ポガチャル(スロベニア)ら各エース級選手や、マウロ・ジャネッティCEOにインタビューすることができた。
トレーニング前にクリストフのバイクを仕上げるメカニック photo:So.Isobe
出発前、雑談に花を咲かせる。シーズンイン前だけにどの選手もリラックスした表情だ photo:So.Isobe
シーズンインに向けて足慣らしを続ける選手たち photo:So.Isobe
1999年のランプレ・ダイキン・コルナゴに始まり、2017年にはUAEチームエミレーツとして再始動した老舗チームは、創設当初から一度もトップカテゴリーの座を崩すことなく2020年で22年目を迎えた。UAE(アラブ首長国連邦)がタイトルスポンサーに就くものの、チーム内部はイタリアカラーが強め。それでも年を追うごとに国際化を辿っており、今年は13カ国から選手が集うこととなる。
昨年はダニエル・マーティン(アイルランド)とファビオ・アル(イタリア)とフェルナンド・ガビリア(コロンビア)というエース級選手が怪我や不調に苦しんだが、クリストフやポガチャルが勝利を量産したこと、そして各選手が上位入賞を繰り返したことでワールドチームランキングは全18チーム中4位に入るなど成功を収めた。中でもジロ・デ・イタリアでヴァレリオ・コンティ(イタリア)とヤン・ポランツ(スロベニア)による合計9日間のマリアローザ着用は、イタリア色濃いチームにおいて白眉と言える。
TTバイクでトレーニングを行う選手たち。ガビリアとクリストフが集団を率いていた photo:So.Isobe
笑顔を見せるタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:So.Isobe
監督陣の中にパオロ・ティラロンゴ(イタリア)の姿も photo:So.Isobe
これまでチームを率いてきたマーティンとマヌエーレ・モーリ(イタリア)がそれぞれ移籍と引退した代わりに、フォルモロやビョーグ、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)、マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)ら8名の新加入選手がジョイン。昨年から1名増の29名で2020年を戦うこととなる。
チームの方針は、1人の強力なエースを軸にするのではなく、若手を育てることで誰もがチャンスを狙える環境を作り上げること。それだけにチームの大半は20代の選手達で、それも25歳以下の選手が全体の半数を占める。
「その理由は我々のフィロソフィーでもある、若手を育ててチームを築き上げることにあります。中東スポンサーなので誤解されがちですが、超強力なリーダーを金で買い、リーダーに据えるようなチーム作りは我々のスタイルではありません」と言うのは、かつてポルティ時代に今中大介氏と共に走り、現在チームCEOを務めるマウロ・ジャネッティ氏。20歳のアンドレス・アルディラ(コロンビア)を筆頭に、21歳のブランドン・マクナルティ(アメリカ、新加入)、ポガチャル、アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、新加入)、ビョーグ、ジャスパー・フィリプセン(デンマーク)と、既に好成績を残しているメンバーも少なくない。
山岳地帯で乗り込みを重ねるUAEチームエミレーツ photo:So.Isobe
この一帯では昔から多くのチームが冬季キャンプを行ってきた。取材中にも10以上のチームを目撃した photo:So.Isobe
チーム合宿中の與那嶺恵理(アレ・BTC・リュブリャナ)にも遭遇できた photo:So.Isobe
今年はポガチャルが自身初のツール参戦を予定しているほか、膝の故障に悩まされたガビリアの復調と、主にガビリアの発射台役としてアルゼンチン王者のリケーゼが加わったことが好材料だ。3人のスプリンターの中ではクリストフがジロ、ガビリアがツール、そして(ジャスパー)フィリプセンがブエルタと分担するという。
バイクサプライヤーは継続してコルナゴ。軽量オールラウンドモデルのV3-RSが中心となる模様 photo:So.Isobe
コンポーネントはカンパニョーロ。パワーメーターはステージスに変更となる photo:So.Isobe
ハンドル周りはデダ。新型のVINCI(ヴィンチ)シリーズが搭載されたバイクもあった photo:So.Isobe
カスタムハンドルの具合をデダの開発チームに伝えるミッケル・ビョーグ(デンマーク) photo:So.Isobe
今年からアイウェアはシーコンに統一される。スタッフが視力検査で得た個人データを基にカスタマイズしていた photo:So.Isobe
今年、チャンピオンシステム製のチームジャージに大きな変更はなく、UAEのナショナルフラッグを前面に押し出したデザインを継続。バイクはカンパニョーロのSUPER RECORD EPSで組まれたコルナゴのC64、V3-RS、CONCEPTを使い分ける。
主要メンバーのインタビューは次編でお伝えする。
各ページへのリンクはこちら(Vol.2、Vol.3、Vol.4)
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マドリード空港からクルマでおよそ4時間強、アリカンテ空港からであればおよそ1時間。ベルギーやイギリスからの観光客を多く迎える地中海に面したリゾート地、ベニドルムにUAEチームエミレーツが冬季合宿拠点を置くリゾートホテルはあった。
緯度だけで言えば福島と同じくらい。しかし地中海で暖められた暖かい風がオフシーズンの乗り込みに適した気候を作り上げる。内陸に向かえばルタ・デル・シクリスタ、つまりサイクリストの道、と名付けられた峠道が続くこの地域では、伝統的に多くのチームや選手がウインターキャンプの拠点を置いてきた。
今回チャンピオンシステム・ジャパンの手配により、シクロワイアード編集部はUAEチームエミレーツのウインターキャンプを取材する機会を得た。ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)やミッケル・ビョーグ(デンマーク)ら新規加入選手を含め、2020年の全選手、監督陣、スタッフやサプライヤーが揃うこのチャンスで、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)やタデイ・ポガチャル(スロベニア)ら各エース級選手や、マウロ・ジャネッティCEOにインタビューすることができた。
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昨年はダニエル・マーティン(アイルランド)とファビオ・アル(イタリア)とフェルナンド・ガビリア(コロンビア)というエース級選手が怪我や不調に苦しんだが、クリストフやポガチャルが勝利を量産したこと、そして各選手が上位入賞を繰り返したことでワールドチームランキングは全18チーム中4位に入るなど成功を収めた。中でもジロ・デ・イタリアでヴァレリオ・コンティ(イタリア)とヤン・ポランツ(スロベニア)による合計9日間のマリアローザ着用は、イタリア色濃いチームにおいて白眉と言える。
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チームの方針は、1人の強力なエースを軸にするのではなく、若手を育てることで誰もがチャンスを狙える環境を作り上げること。それだけにチームの大半は20代の選手達で、それも25歳以下の選手が全体の半数を占める。
「その理由は我々のフィロソフィーでもある、若手を育ててチームを築き上げることにあります。中東スポンサーなので誤解されがちですが、超強力なリーダーを金で買い、リーダーに据えるようなチーム作りは我々のスタイルではありません」と言うのは、かつてポルティ時代に今中大介氏と共に走り、現在チームCEOを務めるマウロ・ジャネッティ氏。20歳のアンドレス・アルディラ(コロンビア)を筆頭に、21歳のブランドン・マクナルティ(アメリカ、新加入)、ポガチャル、アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、新加入)、ビョーグ、ジャスパー・フィリプセン(デンマーク)と、既に好成績を残しているメンバーも少なくない。
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