2019/12/23(月) - 15:22
12月21日(土)、東京・赤坂にて年末恒例となったエキップアサダのイヤーエンドパーティーが開催された。会場にはチームOBである新城幸也と宮澤崇史の姿も見られ、現所属選手達とともに来場者との交流を楽しみ、例年以上の盛り上がりを見せた。
この日のMCはサイクルフォトグラファーとしても活躍し、エキップアサダとも縁が深いイイミワこと飯島美和さん。乾杯の発声は昨年に続き渡辺クリニックの渡辺院長が行い、かつてエカーズにも所属した岡篤志との思い出などを語った後、歓談へと繋げた。そしてサプライズ参加の宮澤崇史が登壇し、欧州プロへの道の厳しさを語るとともに、それを目指す選手達へのエールを贈った。
欧州プロ契約を目指し、結果を残した2019年エカーズ
歓談の時間が終わると、浅田顕監督による2019年のチーム活動報告が行われた。今季最大のトピックはもちろん石上優大のNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス入りだが、彼以外の選手たちも欧州を拠点に躍動を見せている。
まずは2月、U23ネイションズカップのカメルーン大会『ツール・ド・レスポワール』に、渡邉歩、蠣崎優仁、松田祥位が日本代表として参加。この中で松田は2ステージで3位、総合7位の成績を残した。ゴールスプリントでは「あと10メートルあれば勝てていた」と言われるほどの追い込みを見せたと言う。一方AVC AIX PROVENCE所属選手として戦う石上優大は、同月の『トロフェ・ド・レソール』でグルパマFDJの育成チーム2人とのスプリントに絡み、劣勢ながら2位となった。
3月になると、プロ予備軍の目標レースの1つと言われる『GPモンタストリュック』で松田が7位に入り、最優秀U23賞を獲得。ジュニアの津田悠義も『ヴァル・ド・ガロンヌ・クラシック』でヨーロッパ初勝利を遂げた。
5月の『ロンド・ド・リザール(UCI2.2U)』では石上が第3ステージのスプリントで9位に食い込む。多くの名選手がプロへのステップアップを遂げたレースで、平坦主体の高速コースも上位で走り切る力を見せた。GPコロミエでは蠣崎が自身の不調から抜け出す2位入賞を果たした。
6月は全日本ロード男子ジュニアで、津田が圧巻の独走V。続く7月の『GPカバネス』では石上が優勝。石上はUCI1.1クラスであるスペインレース『プルエバ・ビリャフランカ・デ・オルディシア』で7位入賞を果たし、最優秀U23賞を獲得。この結果、欧州プロチーム入りへの距離をさら縮めた。
鎖骨骨折から復帰した平井光介も7月のJBCF石川ロードのE1で勝利すると、8月にはGPドゥズィヤックで小笠原匠海とのワンツーフィニッシュを決める。この大会2位となった平井は9月、遂に『GPヴィルミュール』で自身初の勝利を独走で手にする。同時期、松田は仏伝統の個人TT大会『クロノ・シャテルロデ』を制覇。こちらもフランスのレース関係者を驚かせるポディウムとなった。
こうした中、日本代表としてのレースも同時にこなすエカーズの選手も多い。そのため浅田監督は、周囲から「日本代表にはエカーズの選手の選出が多いですね」と揶揄される事もあると言う。
それに対して浅田監督は「自分のチームなんだから当たり前ですよね!」と冗談めかして笑いを誘うも、「元々走れない選手はエカーズには入れませんし、入ってもそこから伸びなければ長くは続けられません。より厳しいヨーロッパレースでプロ契約を目指して走る選手は、力のつき方もメンタルも違います。結果としてエカーズの選手が選ばれるのは、そういったレースを走り抜いた実績と実力が備わっているからです。」と、真剣にその実際を語ってくれた。
2020年追加メンバーに小出、川崎、藤本 複数選手の海外クラブ派遣も
この日、小出樹、川崎三織、藤本怜の3名が、来季の新規加入選手として発表された。ただし、この後にも2名ほどが準所属選手としての参加に向け調整中とのことで、フルメンバーの発表には至らず。この日は、その中から藤本と川崎が来場し、紹介を受けた(小出は所属自転車部の行事のため欠席)。現在決定しているこの3名について、年齢の若い順に各選手のプロフィールを紹介しよう。
藤本怜は八千代市立高津中学の3年生。今年の全日本選手権ロードレース男子U17+U15では6位に入賞している。6月から練習生としてユーストレーニングに参加し、取り組みの真剣さからEQADS所属が内定していたが、浅田監督が藤本の志望校を見学のうえ、より良い競技環境が整っているその高校への入学を提案したと言う。そのため、高校入学後もジュニアの準所属選手としての活動が予定されている。
川崎三織は、埼玉県の栄北高校の選手。2018年のインターハイ個人ロードレースで優勝。今季はサイクルフォトグラファー・故高木秀彰氏のご遺族が中心となり立ち上げた「高木秀彰サポートプログラム」を勝ち取り、引受先のチームユーラシア・IRCタイヤを通して欧州での経験を積んだ。来季のU23正規所属選手となり、国内外でエカーズのジャージを纏いレースを走る。
もう1名は、京都産業大学2回生の小出樹。今年はインカレロードで武山晃輔(日本大学)に次ぐ2位。UCIレースのツール・ド・北海道で個人総合7位、日本代表初招集となったジャパンカップでも25位と、若干19歳の選手とは思えぬ健闘を見せた。複数のレースで勝利まであと一歩の悔しい結果も続いたが、飛躍の一年を送った選手の一人だ。今後も並行して学連での活動を続けるため、エカーズにはU23準所属となる。
この3名にU23の渡邉歩、松田祥位、蠣崎優仁、小笠原匠海、平井光介、湯浅博貴、ジュニアの津田悠義を加えた10名が、現在発表されている2020年エカーズのメンバーとなる。また、そのうちの渡邉、松田、蠣崎、湯浅が海外クラブ派遣の形を取る。津田も欧州参戦時は仏クラブチームに所属し、活動を行う予定だ。
バーチャル優勝インタビュー『ポディウムへの道』
活動報告が終わった後には、再び和やかな雰囲気に戻り、余興あり、抽選会あり。そんな今年の余興は『ポディウムへの道』。レースで優勝したと言う前提で、ポディウムに立った選手達にバーチャルインタビューを行うと言うものだ。多少真面目な要素も含んでおり、実際のポディウムでの受け答えの練習にもなる、とのこと(ホント?)。浅田監督がフォトグラファーの大前仁さんとのインタビュー形式で見本を見せた後、湯浅博貴、蠣崎優仁、川崎三織、渡邉歩、津田悠義が指名され、それぞれポディウムの上がり方から喋り方まで、監督からダメ出しを受けつつ参加者に笑いを巻き起こした。
ジャパンマテリアルトロフィーの授与
昨年も行われた選手の活躍に応じた強化支援金の授与が、今年は「ジャパンマテリアルトロフィー」と名を冠して行われた。これは、エキップアサダ創立当初よりチームスポンサーとして活動を支援している株式会社ジャパンマテリアルが、その協賛金の一部を選手個人の成績に応じた強化支援金に充当することで、より高いレベルを目指す選手への強化活動資金サポートを試みる、と言った主旨となっている。実際の評価は、参戦レースのグレードと成績によりポイントを加算していく形式。ポイント順位に応じた強化支援金が選手に与えられる。
栄えある2019年最多得点者は、48点と圧倒的成績を残した松田祥位。2位に18点の石上優大、3位津田悠義、4位小笠原匠海、平井光介(同点)と続き、特別賞として渡邉歩、蠣崎優仁、湯浅博貴にも支援金が授与された。
エカーズはアマチュアチームであるがゆえ、年俸や給料といったものは発生しない。そのため、選手がこうして自身の活動を形として評価されることは、新たなモチベーションの一つとなるのは間違いない。ジャパンマテリアル社からは、チームへも支援金が贈られた。
大抽選会で大盛りあがり
抽選会では、エカーズの選手達が自らレースで使用したキャップやボトルなどを用意。スポンサーのウエイブワンからは、バックパックやサイクルジャージが、パイオニアからは4万円相当のサイクルコンピューターと豪華な商品が振る舞われた。さらにはイイミワさんから自身が撮影したコンタドールや新城幸也のサイン入り写真パネルが、新城本人からもジャージやボトルなど、大量のバーレーン・メリダグッズが来場者にプレゼントされた。
実は新城は当日夕方に欧州から帰国したばかり。空港から会場へ直接駆けつけると言うハードスケジュールにも関わらず、笑顔を絶やさずファンとの交流を続けていたのが印象的だった。挨拶の最後では「みんな頑張って!待ってます!」と力強いメッセージを選手達に贈った。新城はまた、『激励金』と言う名で毎年チームへの恩返しの気持ちを込めた支援金を寄付している。今年は本人の来場が叶ったため、浅田監督への直接手渡しが実現。2人のツーショットをカメラに収めることが出来た。
エカーズ初の欧州プロ契約選手、石上優大からのビデオレター
今季は長年チームの支援を続ける協賛各社や後援会員、ファンにとっても最大の吉報が届いた。既報の通り、中学生時代よりエカーズに所属していた石上優大が欧州プロ契約を勝ち取ったのだ。その石上は一足早く来季所属チームのNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスへ合流したため欠席となったが、ビデオレターで登場し、浅田監督をはじめとしたチームや支援者、ファンへの感謝を述べた。
ビデオレターの中で石上は、入団当時の思い出から自身の苦しかった時期についても合わせて語っている。「僕がエカーズに入ったのは13歳の4月。2月にトライアウトを受け、その帰り道に浅田さんから合格通知をもらったことを今でも覚えています。右も左もわからないただただプロになりたいと言う意識で所属したエカーズでしたが、所属してからいろいろな方々に迷惑をかけながら活動していました。その中でも浅田監督はじめ、選手の方々、お世話になったファンの皆様と知り合うことができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
チームにいる間は同じ志を持った選手たちが、ヨーロッパのプロと言う高い壁に阻まれてやめていく姿を近くで見ていて、本当に心苦しいものがありました。
そして自分もU23になってから、そんな現実と向き合う時間になり、エカーズとしてもナショナルチームとしても、この4年間は厳しい時間でした。特に2018年8月以降、3回の鎖骨骨折に見舞われた時は本当にキツかったです。選手をやめようとも思いました。
それでもお世話になった方々のおかげで、今このようにして来季もプロとして選手を続けることが出来るようになりました。この先もエカーズは熱い男達の集まりなので、永久不滅だと思います。来年は今までと違う世界に飛び込みますが、今後とも応援していただけたらと思います。本当に長い間ありがとうございました。(ビデオレターより一部抜粋、編集)」
続いて石上から浅田監督への手紙も代読され、その中でなぜか監督のサングラスのセンスを心配した彼より、レイバンのサングラスが贈られた。パーティー後、浅田監督にこの事を聞くと「来季だって給料もまだ安いんだろうから、まず自分の心配をしないと」と言いながら、教え子からのプレゼントにまんざらでもない様子だった。
こうして今年のエキップアサダイヤーエンドパーティーも盛況のうちに幕を閉じた。
かつて新城幸也や宮澤崇史らトッププロを輩出したエキップアサダも、強化・育成を謳うチームへと変貌を遂げ、10年目を迎えた。新城らの残した数々の実績はここで語るべくもないが、今のU23以下の世代とは世代や戦うステージが大きく離れていることもあり、なかなか現実味を伴って伝わりにくい部分もあった。しかし、エカーズ発足2年目から所属する石上が、来季の欧州プロ入りを現実のものとしたことで、後に続く所属選手達の道筋や為すべき事が、改めて明確になったようにも思える。
2019年初頭、エキップアサダ後援会の田之頭宏明会長の元には、浅田監督から「諦めることを諦めました!」と書かれた年賀状が届いたと言う。一見笑い話だが、重い覚悟がその言葉の裏にあることも確かだ。現実として全ての選手が欧州でプロ契約を勝ち取るのは非常に厳しい。だが、それと同じ志を持ち、海外レースで切磋琢磨することで、今後1人でも多くの選手がその高みに到達することを願って止まない。
text&photo: Yuichiro Hosoda
この日のMCはサイクルフォトグラファーとしても活躍し、エキップアサダとも縁が深いイイミワこと飯島美和さん。乾杯の発声は昨年に続き渡辺クリニックの渡辺院長が行い、かつてエカーズにも所属した岡篤志との思い出などを語った後、歓談へと繋げた。そしてサプライズ参加の宮澤崇史が登壇し、欧州プロへの道の厳しさを語るとともに、それを目指す選手達へのエールを贈った。
欧州プロ契約を目指し、結果を残した2019年エカーズ
歓談の時間が終わると、浅田顕監督による2019年のチーム活動報告が行われた。今季最大のトピックはもちろん石上優大のNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス入りだが、彼以外の選手たちも欧州を拠点に躍動を見せている。
まずは2月、U23ネイションズカップのカメルーン大会『ツール・ド・レスポワール』に、渡邉歩、蠣崎優仁、松田祥位が日本代表として参加。この中で松田は2ステージで3位、総合7位の成績を残した。ゴールスプリントでは「あと10メートルあれば勝てていた」と言われるほどの追い込みを見せたと言う。一方AVC AIX PROVENCE所属選手として戦う石上優大は、同月の『トロフェ・ド・レソール』でグルパマFDJの育成チーム2人とのスプリントに絡み、劣勢ながら2位となった。
3月になると、プロ予備軍の目標レースの1つと言われる『GPモンタストリュック』で松田が7位に入り、最優秀U23賞を獲得。ジュニアの津田悠義も『ヴァル・ド・ガロンヌ・クラシック』でヨーロッパ初勝利を遂げた。
5月の『ロンド・ド・リザール(UCI2.2U)』では石上が第3ステージのスプリントで9位に食い込む。多くの名選手がプロへのステップアップを遂げたレースで、平坦主体の高速コースも上位で走り切る力を見せた。GPコロミエでは蠣崎が自身の不調から抜け出す2位入賞を果たした。
6月は全日本ロード男子ジュニアで、津田が圧巻の独走V。続く7月の『GPカバネス』では石上が優勝。石上はUCI1.1クラスであるスペインレース『プルエバ・ビリャフランカ・デ・オルディシア』で7位入賞を果たし、最優秀U23賞を獲得。この結果、欧州プロチーム入りへの距離をさら縮めた。
鎖骨骨折から復帰した平井光介も7月のJBCF石川ロードのE1で勝利すると、8月にはGPドゥズィヤックで小笠原匠海とのワンツーフィニッシュを決める。この大会2位となった平井は9月、遂に『GPヴィルミュール』で自身初の勝利を独走で手にする。同時期、松田は仏伝統の個人TT大会『クロノ・シャテルロデ』を制覇。こちらもフランスのレース関係者を驚かせるポディウムとなった。
こうした中、日本代表としてのレースも同時にこなすエカーズの選手も多い。そのため浅田監督は、周囲から「日本代表にはエカーズの選手の選出が多いですね」と揶揄される事もあると言う。
それに対して浅田監督は「自分のチームなんだから当たり前ですよね!」と冗談めかして笑いを誘うも、「元々走れない選手はエカーズには入れませんし、入ってもそこから伸びなければ長くは続けられません。より厳しいヨーロッパレースでプロ契約を目指して走る選手は、力のつき方もメンタルも違います。結果としてエカーズの選手が選ばれるのは、そういったレースを走り抜いた実績と実力が備わっているからです。」と、真剣にその実際を語ってくれた。
2020年追加メンバーに小出、川崎、藤本 複数選手の海外クラブ派遣も
この日、小出樹、川崎三織、藤本怜の3名が、来季の新規加入選手として発表された。ただし、この後にも2名ほどが準所属選手としての参加に向け調整中とのことで、フルメンバーの発表には至らず。この日は、その中から藤本と川崎が来場し、紹介を受けた(小出は所属自転車部の行事のため欠席)。現在決定しているこの3名について、年齢の若い順に各選手のプロフィールを紹介しよう。
藤本怜は八千代市立高津中学の3年生。今年の全日本選手権ロードレース男子U17+U15では6位に入賞している。6月から練習生としてユーストレーニングに参加し、取り組みの真剣さからEQADS所属が内定していたが、浅田監督が藤本の志望校を見学のうえ、より良い競技環境が整っているその高校への入学を提案したと言う。そのため、高校入学後もジュニアの準所属選手としての活動が予定されている。
川崎三織は、埼玉県の栄北高校の選手。2018年のインターハイ個人ロードレースで優勝。今季はサイクルフォトグラファー・故高木秀彰氏のご遺族が中心となり立ち上げた「高木秀彰サポートプログラム」を勝ち取り、引受先のチームユーラシア・IRCタイヤを通して欧州での経験を積んだ。来季のU23正規所属選手となり、国内外でエカーズのジャージを纏いレースを走る。
もう1名は、京都産業大学2回生の小出樹。今年はインカレロードで武山晃輔(日本大学)に次ぐ2位。UCIレースのツール・ド・北海道で個人総合7位、日本代表初招集となったジャパンカップでも25位と、若干19歳の選手とは思えぬ健闘を見せた。複数のレースで勝利まであと一歩の悔しい結果も続いたが、飛躍の一年を送った選手の一人だ。今後も並行して学連での活動を続けるため、エカーズにはU23準所属となる。
この3名にU23の渡邉歩、松田祥位、蠣崎優仁、小笠原匠海、平井光介、湯浅博貴、ジュニアの津田悠義を加えた10名が、現在発表されている2020年エカーズのメンバーとなる。また、そのうちの渡邉、松田、蠣崎、湯浅が海外クラブ派遣の形を取る。津田も欧州参戦時は仏クラブチームに所属し、活動を行う予定だ。
バーチャル優勝インタビュー『ポディウムへの道』
活動報告が終わった後には、再び和やかな雰囲気に戻り、余興あり、抽選会あり。そんな今年の余興は『ポディウムへの道』。レースで優勝したと言う前提で、ポディウムに立った選手達にバーチャルインタビューを行うと言うものだ。多少真面目な要素も含んでおり、実際のポディウムでの受け答えの練習にもなる、とのこと(ホント?)。浅田監督がフォトグラファーの大前仁さんとのインタビュー形式で見本を見せた後、湯浅博貴、蠣崎優仁、川崎三織、渡邉歩、津田悠義が指名され、それぞれポディウムの上がり方から喋り方まで、監督からダメ出しを受けつつ参加者に笑いを巻き起こした。
ジャパンマテリアルトロフィーの授与
昨年も行われた選手の活躍に応じた強化支援金の授与が、今年は「ジャパンマテリアルトロフィー」と名を冠して行われた。これは、エキップアサダ創立当初よりチームスポンサーとして活動を支援している株式会社ジャパンマテリアルが、その協賛金の一部を選手個人の成績に応じた強化支援金に充当することで、より高いレベルを目指す選手への強化活動資金サポートを試みる、と言った主旨となっている。実際の評価は、参戦レースのグレードと成績によりポイントを加算していく形式。ポイント順位に応じた強化支援金が選手に与えられる。
栄えある2019年最多得点者は、48点と圧倒的成績を残した松田祥位。2位に18点の石上優大、3位津田悠義、4位小笠原匠海、平井光介(同点)と続き、特別賞として渡邉歩、蠣崎優仁、湯浅博貴にも支援金が授与された。
エカーズはアマチュアチームであるがゆえ、年俸や給料といったものは発生しない。そのため、選手がこうして自身の活動を形として評価されることは、新たなモチベーションの一つとなるのは間違いない。ジャパンマテリアル社からは、チームへも支援金が贈られた。
大抽選会で大盛りあがり
抽選会では、エカーズの選手達が自らレースで使用したキャップやボトルなどを用意。スポンサーのウエイブワンからは、バックパックやサイクルジャージが、パイオニアからは4万円相当のサイクルコンピューターと豪華な商品が振る舞われた。さらにはイイミワさんから自身が撮影したコンタドールや新城幸也のサイン入り写真パネルが、新城本人からもジャージやボトルなど、大量のバーレーン・メリダグッズが来場者にプレゼントされた。
実は新城は当日夕方に欧州から帰国したばかり。空港から会場へ直接駆けつけると言うハードスケジュールにも関わらず、笑顔を絶やさずファンとの交流を続けていたのが印象的だった。挨拶の最後では「みんな頑張って!待ってます!」と力強いメッセージを選手達に贈った。新城はまた、『激励金』と言う名で毎年チームへの恩返しの気持ちを込めた支援金を寄付している。今年は本人の来場が叶ったため、浅田監督への直接手渡しが実現。2人のツーショットをカメラに収めることが出来た。
エカーズ初の欧州プロ契約選手、石上優大からのビデオレター
今季は長年チームの支援を続ける協賛各社や後援会員、ファンにとっても最大の吉報が届いた。既報の通り、中学生時代よりエカーズに所属していた石上優大が欧州プロ契約を勝ち取ったのだ。その石上は一足早く来季所属チームのNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスへ合流したため欠席となったが、ビデオレターで登場し、浅田監督をはじめとしたチームや支援者、ファンへの感謝を述べた。
ビデオレターの中で石上は、入団当時の思い出から自身の苦しかった時期についても合わせて語っている。「僕がエカーズに入ったのは13歳の4月。2月にトライアウトを受け、その帰り道に浅田さんから合格通知をもらったことを今でも覚えています。右も左もわからないただただプロになりたいと言う意識で所属したエカーズでしたが、所属してからいろいろな方々に迷惑をかけながら活動していました。その中でも浅田監督はじめ、選手の方々、お世話になったファンの皆様と知り合うことができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
チームにいる間は同じ志を持った選手たちが、ヨーロッパのプロと言う高い壁に阻まれてやめていく姿を近くで見ていて、本当に心苦しいものがありました。
そして自分もU23になってから、そんな現実と向き合う時間になり、エカーズとしてもナショナルチームとしても、この4年間は厳しい時間でした。特に2018年8月以降、3回の鎖骨骨折に見舞われた時は本当にキツかったです。選手をやめようとも思いました。
それでもお世話になった方々のおかげで、今このようにして来季もプロとして選手を続けることが出来るようになりました。この先もエカーズは熱い男達の集まりなので、永久不滅だと思います。来年は今までと違う世界に飛び込みますが、今後とも応援していただけたらと思います。本当に長い間ありがとうございました。(ビデオレターより一部抜粋、編集)」
続いて石上から浅田監督への手紙も代読され、その中でなぜか監督のサングラスのセンスを心配した彼より、レイバンのサングラスが贈られた。パーティー後、浅田監督にこの事を聞くと「来季だって給料もまだ安いんだろうから、まず自分の心配をしないと」と言いながら、教え子からのプレゼントにまんざらでもない様子だった。
こうして今年のエキップアサダイヤーエンドパーティーも盛況のうちに幕を閉じた。
かつて新城幸也や宮澤崇史らトッププロを輩出したエキップアサダも、強化・育成を謳うチームへと変貌を遂げ、10年目を迎えた。新城らの残した数々の実績はここで語るべくもないが、今のU23以下の世代とは世代や戦うステージが大きく離れていることもあり、なかなか現実味を伴って伝わりにくい部分もあった。しかし、エカーズ発足2年目から所属する石上が、来季の欧州プロ入りを現実のものとしたことで、後に続く所属選手達の道筋や為すべき事が、改めて明確になったようにも思える。
2019年初頭、エキップアサダ後援会の田之頭宏明会長の元には、浅田監督から「諦めることを諦めました!」と書かれた年賀状が届いたと言う。一見笑い話だが、重い覚悟がその言葉の裏にあることも確かだ。現実として全ての選手が欧州でプロ契約を勝ち取るのは非常に厳しい。だが、それと同じ志を持ち、海外レースで切磋琢磨することで、今後1人でも多くの選手がその高みに到達することを願って止まない。
text&photo: Yuichiro Hosoda
2020年エカーズ所属選手(暫定)
氏名 | 2020年カテゴリー | 登録形態 |
---|---|---|
渡邉 歩 | U23 | 海外クラブ派遣 |
松田 祥位 | U23 | 海外クラブ派遣 |
蠣崎 優仁 | U23 | 海外クラブ派遣 |
小出 樹 | U23 | 準所属・京都産業大学 |
小笠原 匠海 | U23 | 海外クラブ派遣 |
平井 光介 | U23 | 国内外EQADS登録 |
湯浅 博貴 | U23 | 海外クラブ派遣 |
川崎 三織 | U23 | 国内外EQADS登録 |
津田 悠義 | ジュニア | 準所属・三好高校 |
藤本 玲 | ジュニア | 準所属・高体連 |
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