2019/12/09(月) - 02:48
愛媛県内子町で開催されたCX日本王者決定戦、2日間の闘いの大トリはエリート男子。世界に通じるハイレベルなコースで争われた熱いバトル。4人の先頭パックを終始リードし、最後はスプリントに持ち込み竹之内悠を下した前田公平が2連覇を達成。弱虫ペダルサイクリングチームにこの日2枚めのチャンピオンジャージをもたらした。
CX史上初めて四国は愛媛県で開催されたシクロクロス全日本選手権。しまなみ海道や四国一周サイクリングで自転車人気の高まる四国。行政はサイクルツーリズム誘致や自転車による地域活性化に余念がない。そんな自転車熱の高い県がシクロクロス全日本選手権大会を誘致。愛媛県の南予地方に位置する内子町は、ハゼの流通で財をなした商家が建ち並ぶ町並みで知られる観光地。白壁と木蝋の町並みが美しい古都で開催されるCX日本選手権だ。
小田川の河川敷の特設コースは三船雅彦氏がコース監修を務め、世界基準のコースとなって日本中のCXerたちを迎えた。なかでも三船氏が重視したのは高速で展開する「踏んでいくコース」。今、世界ではロードレースでも活躍できる脚力をもつスターたちが活躍しているのはご存知のとおり。ちまちまとテクニックだけを競うようなコースでは世界から取り残されるという危機感さえもち、基本的なCXの走行技術をすべて動員して、かつ脚で踏んでいかなければならない難コースが内子町に誕生した。
12月と思えない陽気に恵まれた14時、燦々と降り注ぐ太陽を浴びて69人の選手たちが県道56号線を交通規制して用意された300m直線のホームストレートに飛び出していく。行政の協力無しではできないコースだ。
ホールショットは横山航太(シマノレーシング)がとる。全日本選手権では2年連続で2位に終わっている横山が先頭を引き、長く伸びた集団が途切れずに続く。コースは全長2.5km。折り返して橋のたもとでの激坂の急登・急降下ポイントへ。
勢いをつければ登れるその激坂を、エリートクラスは全員が乗車でクリア。さすがのテクニックを披露する。観戦にやってきた地元内子町の町民の皆さんもそのスピード感溢れるアクロバティックな模様に驚きの声を上げる。
この難ポイントで先頭に出たのは竹之内悠(東洋フレーム)。本場ベルギーのレースを走り帰国しての野辺山クロスなどでは不振が続いたが、しっかり休養して体調を整えてこの全日本に臨んできた。
序盤から牽制のないパワーライドが続き、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)、沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、そして竹之内、少し遅れて 横山航太(シマノレーシング)らによる先頭グループが形成される。MTB-XCの10勝の日本チャンピオンである山本と、ほかの4人がすべてCX全日本チャンピオン経験者という超特急列車だ。
そのパックに続くのは丸山 厚(チームアレ・リドレー)、 中里 仁(Speedvagen Family Racing)、 兼子 博昭(スワコレーシング)、門田基志(ジャイアント)、斎藤朋寛 (RIDELIFE GIANT)、竹内遼 (FUKAYA RACING)、 小森亮平(ToyoFrame)ら。長く伸びる後続も断続的にバラけだす。
1周目のラップは6分33秒。「ロードレース並みに踏んでいく力が要求される」と言われるとおり、脚力に秀でた選手がペースを作り、集団をかたちづくる。ディフェンディングチャンピオンの前田公平はとくに積極的に先頭を牽引し、風を受ける。
激坂区間は竹之内がトップで通過。続くほとんどの選手が乗ったまま越えていく。レースは9周で争われることに。
沢田時がパンクで順位を落とし、先頭グループから少し遅れて横山が続く。
60分レースのうち24分が経過した時、前田公平、山本幸平、小坂光の3人が抜け出し、竹之内悠が追いつく。残り5周。
4人パックがホームストレートへ。風が出てきて、長い舗装の直線は向かい風となる。舗装の平坦路ではお互いの動きを確認しながら進むが、前田が先頭を引く時間が長い。4人パックは6分20秒ほどのラップを刻む。
4人のパックは細かなペースアップやアタックでゆさぶりをかけあうが、舗装の長い直線では協調せざるを得ない。残り3周、沢田と横山は1分以上の差をつけられ、前には届かない。勝負は4人に絞られる。
残り2周、激坂急登セクションで山本幸平が足を着いてしまい、遅れる。大型のエンジンを積み、パワーに余裕があるように見え「今日の優勝はあり得る」とささやかれていた山本だが、このワンミスが致命的となってしまう。ホームストレートで風の当たらないバリアギリギリを攻めて前との差を詰めようとする山本。そして小坂もここで苦しみはじめ、2人から離れ気味に。
さらに2人のペースが上がり小坂が遅れると、前田と竹之内の2人がテールトゥーノーズで残り半周へ。前田がなおも積極的に前に出る。しかし竹之内が前に被せて出ると、最後の激坂急登も竹之内が先行してクリア。この最終周回のラップは最速の6分03秒をマーク。トップと同一周回に入れたのは30人だった。
最終盤に前田の前に出た竹之内が先に仕掛けたスプリント。しかし前田はホームストレートに出て横に並ぶと、更に加速して竹之内を引き離し、大きく両手を上げてフィニッシュ。連覇達成、弱虫ペダルとしてはU23と合わせて2枚めのジャージ獲得だ。
常に前へ、前へと積極的に展開し、ライバルたちよりも多く風圧を受けながらも脚は消耗していなかった前田。スプリントに持ち込んでも危なげのない勝利。ロード、マウンテンバイクのレースも走ることで地足のレベルの底上げがされている。前田は、この日好調さを見せた2011−2015年に5年連続CX王者になった竹之内を、フィジカルでもメンタルでも上回ったようだ。
「また1年、このジャージを着ることができることを誇りに思う」と前田。「今年もこの一番高いところに立つことができてホッとしている。ゴールするまで気の抜けない展開でした。でも積極的に前へ、前へと行ったのが良かったと思う。僕は変に駆け引きすると、たいてい上手く行かないんです。今日は観客の皆さんもレースを見ていても面白かったんじゃないでしょうか。また来年の全日本選手権の勝利も目指そうと思います」。
「プレッシャーに弱い」と自ら言う前田。しかし「昨年一度優勝を経験できていたので、以前よりはリラックスして走れましたね。いい緊張状態で臨めた。そしてU23で織田選手が優勝していたので、僕も行くしかないという気持ちで走れました」。
世界選手権出場については決めかねるというのも、世界との実力差を知る前田の持論だ。次のレースは翌週の宇都宮シクロクロスの予定。引き続き真っ白に赤のジャージとバイクで海外招待選手たちとの熱いレースが期待できそうだ。
CX史上初めて四国は愛媛県で開催されたシクロクロス全日本選手権。しまなみ海道や四国一周サイクリングで自転車人気の高まる四国。行政はサイクルツーリズム誘致や自転車による地域活性化に余念がない。そんな自転車熱の高い県がシクロクロス全日本選手権大会を誘致。愛媛県の南予地方に位置する内子町は、ハゼの流通で財をなした商家が建ち並ぶ町並みで知られる観光地。白壁と木蝋の町並みが美しい古都で開催されるCX日本選手権だ。
小田川の河川敷の特設コースは三船雅彦氏がコース監修を務め、世界基準のコースとなって日本中のCXerたちを迎えた。なかでも三船氏が重視したのは高速で展開する「踏んでいくコース」。今、世界ではロードレースでも活躍できる脚力をもつスターたちが活躍しているのはご存知のとおり。ちまちまとテクニックだけを競うようなコースでは世界から取り残されるという危機感さえもち、基本的なCXの走行技術をすべて動員して、かつ脚で踏んでいかなければならない難コースが内子町に誕生した。
12月と思えない陽気に恵まれた14時、燦々と降り注ぐ太陽を浴びて69人の選手たちが県道56号線を交通規制して用意された300m直線のホームストレートに飛び出していく。行政の協力無しではできないコースだ。
ホールショットは横山航太(シマノレーシング)がとる。全日本選手権では2年連続で2位に終わっている横山が先頭を引き、長く伸びた集団が途切れずに続く。コースは全長2.5km。折り返して橋のたもとでの激坂の急登・急降下ポイントへ。
勢いをつければ登れるその激坂を、エリートクラスは全員が乗車でクリア。さすがのテクニックを披露する。観戦にやってきた地元内子町の町民の皆さんもそのスピード感溢れるアクロバティックな模様に驚きの声を上げる。
この難ポイントで先頭に出たのは竹之内悠(東洋フレーム)。本場ベルギーのレースを走り帰国しての野辺山クロスなどでは不振が続いたが、しっかり休養して体調を整えてこの全日本に臨んできた。
序盤から牽制のないパワーライドが続き、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team)、沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、そして竹之内、少し遅れて 横山航太(シマノレーシング)らによる先頭グループが形成される。MTB-XCの10勝の日本チャンピオンである山本と、ほかの4人がすべてCX全日本チャンピオン経験者という超特急列車だ。
そのパックに続くのは丸山 厚(チームアレ・リドレー)、 中里 仁(Speedvagen Family Racing)、 兼子 博昭(スワコレーシング)、門田基志(ジャイアント)、斎藤朋寛 (RIDELIFE GIANT)、竹内遼 (FUKAYA RACING)、 小森亮平(ToyoFrame)ら。長く伸びる後続も断続的にバラけだす。
1周目のラップは6分33秒。「ロードレース並みに踏んでいく力が要求される」と言われるとおり、脚力に秀でた選手がペースを作り、集団をかたちづくる。ディフェンディングチャンピオンの前田公平はとくに積極的に先頭を牽引し、風を受ける。
激坂区間は竹之内がトップで通過。続くほとんどの選手が乗ったまま越えていく。レースは9周で争われることに。
沢田時がパンクで順位を落とし、先頭グループから少し遅れて横山が続く。
60分レースのうち24分が経過した時、前田公平、山本幸平、小坂光の3人が抜け出し、竹之内悠が追いつく。残り5周。
4人パックがホームストレートへ。風が出てきて、長い舗装の直線は向かい風となる。舗装の平坦路ではお互いの動きを確認しながら進むが、前田が先頭を引く時間が長い。4人パックは6分20秒ほどのラップを刻む。
4人のパックは細かなペースアップやアタックでゆさぶりをかけあうが、舗装の長い直線では協調せざるを得ない。残り3周、沢田と横山は1分以上の差をつけられ、前には届かない。勝負は4人に絞られる。
残り2周、激坂急登セクションで山本幸平が足を着いてしまい、遅れる。大型のエンジンを積み、パワーに余裕があるように見え「今日の優勝はあり得る」とささやかれていた山本だが、このワンミスが致命的となってしまう。ホームストレートで風の当たらないバリアギリギリを攻めて前との差を詰めようとする山本。そして小坂もここで苦しみはじめ、2人から離れ気味に。
さらに2人のペースが上がり小坂が遅れると、前田と竹之内の2人がテールトゥーノーズで残り半周へ。前田がなおも積極的に前に出る。しかし竹之内が前に被せて出ると、最後の激坂急登も竹之内が先行してクリア。この最終周回のラップは最速の6分03秒をマーク。トップと同一周回に入れたのは30人だった。
最終盤に前田の前に出た竹之内が先に仕掛けたスプリント。しかし前田はホームストレートに出て横に並ぶと、更に加速して竹之内を引き離し、大きく両手を上げてフィニッシュ。連覇達成、弱虫ペダルとしてはU23と合わせて2枚めのジャージ獲得だ。
常に前へ、前へと積極的に展開し、ライバルたちよりも多く風圧を受けながらも脚は消耗していなかった前田。スプリントに持ち込んでも危なげのない勝利。ロード、マウンテンバイクのレースも走ることで地足のレベルの底上げがされている。前田は、この日好調さを見せた2011−2015年に5年連続CX王者になった竹之内を、フィジカルでもメンタルでも上回ったようだ。
「また1年、このジャージを着ることができることを誇りに思う」と前田。「今年もこの一番高いところに立つことができてホッとしている。ゴールするまで気の抜けない展開でした。でも積極的に前へ、前へと行ったのが良かったと思う。僕は変に駆け引きすると、たいてい上手く行かないんです。今日は観客の皆さんもレースを見ていても面白かったんじゃないでしょうか。また来年の全日本選手権の勝利も目指そうと思います」。
「プレッシャーに弱い」と自ら言う前田。しかし「昨年一度優勝を経験できていたので、以前よりはリラックスして走れましたね。いい緊張状態で臨めた。そしてU23で織田選手が優勝していたので、僕も行くしかないという気持ちで走れました」。
世界選手権出場については決めかねるというのも、世界との実力差を知る前田の持論だ。次のレースは翌週の宇都宮シクロクロスの予定。引き続き真っ白に赤のジャージとバイクで海外招待選手たちとの熱いレースが期待できそうだ。
シクロクロス全日本選手権2019 男子エリート リザルト
1位 | 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 56:33 |
2位 | 竹之内悠(東洋フレーム) | +00 |
3位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) | +13 |
4位 | 山本幸平(Dream Seeker MTB Racing Team) | +22 |
5位 | 沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling) | +1:44 |
6位 | 横山航太(シマノレーシング) | +2:26 |
7位 | 兼子 博昭(スワコレーシング) | +3:00 |
8位 | 丸山 厚(チームアレ・リドレー) | +3:11 |
9位 | 斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT) | +3:15 |
10位 | 小森亮平(ToyoFrame) | +3:28 |
text&photo:Makoto AYANO
フォトギャラリー
Amazon.co.jp