2019/12/08(日) - 12:36
自転車大国ベルギーの総合自転車ブランド・リドレーから、グラベルロード「Kanzo Speed」がリリースされた。ロードのみならずオフロード系にも造詣の深いリドレーが用意したグラベルロードをインプレッション。
日本にも押し寄せるグラベルロードというジャンル。アメリカを中心に盛り上がるこのムーブメントは当然ヨーロッパにも進出しており、数々のバイクブランドがグラベルライドのためのバイクをリリースし始めている。リドレーはグラベルが流行の兆しを見せ始めた2016年にオールロードというカテゴライズで「X-TRAIL」というバイクを投入していた。
X-TRAILは、2016年当時からディスクブレーキ、タイヤクリアランスは最大40Cまでという最新グラベルロードと言っても良いほど今のツボを抑えたバイクであった。デビューより4年経過する2020年にリドレーは新しいグラベルロード「Kanzo」シリーズをローンチ。各部をブラッシュアップすることで、今のグラベル、アドベンチャーライドに適したバイクへと進化している。
今回インプレッションを行ったKanzo Speedは、日々のサイクリング、アドベンチャー、キャンプライドなど様々な遊び方ができるグラベルというジャンルの中でもレース志向が強めのモデルだ。そのためタイヤクリアランスは36mmまでとされている。日本では展開されないKanzo Adventureの最大クリアランス47Cと住み分けとして、Kanzo Speedはグラベルレースフィットのバイクへと仕立てられている。
ラインアップを横並びで見てみるとモデルごとにキャラクターづけされているものの、Kanzo Speedがグラベルライドの遊び方を制限されるわけではない。36mm幅のタイヤを装着した状態でもマッドガードを装着するスペースが用意されているため、Kanzo Speedは使用するシチュエーションにあわせてカスタマイズすることができる。また、舗装路が多い日本の道路事情を考慮しても36mmというのは丁度よい塩梅なのではないだろうか。
トレイルの長い直線で楽に走ることのできる直進安定性を実現するジオメトリーに設計されている。ダーティカンザのような長時間サドルの上で過ごすグラベルレースに適したバイク、とリドレーが説明する理由の1つだろう。もちろんトレイルでも扱いやすいハンドリングにも調整されているという。
Kanzo Speedのフレームは、FENIXのようなエッセンスを加えた形状のヘッド周りなど前作のX-TRAILを踏襲したような造形とされている。若干スローピングするトップチューブと扁平形状のシートステーは、一本のチューブのように接続しており、高い衝撃吸収性やトラクション性能を期待させる。
ダウンチューブもヘッドからBB付近になるにつれて扁平形状に変化しており、快適性に繋がる縦方向の柔軟性を追求。同時にBBシェル幅を可能な限り拡幅しており、ペダリング入力などに対する横剛性は確保されている。30トン、24トンのハイモジュラスカーボンを適材適所に配置することによる剛性調整も行われている。
衝撃吸収性を確保するフレームに対し、フォークには非常にマッシブなストレート形状を採用。12mmスルーアクスルのエンドと相まって非常に高い剛性を期待できるフォークに仕上がっている。グラベルやオフロードなど荒れたシチュエーションでもフロントに不安を感じにくくなるだろう。
ディスクブレーキ規格はフラットマウント。フロントディレイラー用の台座も設けられているため、フロントダブルでの使用も可能となっている。フェンダーマウントはリアとフォークともに隠された位置に備え付けられており、フェンダー等を使用しない際はスマートなルックスを維持させられる。
日本での展開はフレームセットのみ。カラーリングには昨年までのマーラックス・ビンゴール(現パウェルス・ビンゴール)のバイクにあしらわれていたグラフィックを採用している。価格は243,000円(税抜)だ。
エンデュランスロードFENIX、シクロクロスX-NIGHTで実績を持つリドレーが用意するグラベルロード「Kanzo Speed」。インプレッションライダーはどのように評価するのだろうか。インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「想像以上に軽い走り心地。オフもオンもいける万能な一台」小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
MTBは多少嗜むのですが、グラベルロード自体は乗ったことがなく、今回のテストがほぼ初めてでした。その中でも際立って感じた性能は安定感の強さでしたね。ヒラヒラと軽快なロードバイクとマウンテンバイクの中間に位置する乗り味に仕上げられており、ドロップハンドルのバイクで未舗装路を走ったことが無い方でも安心して楽しめるバイクというイメージが第一印象でした。
試乗する前はワイドタイヤを装着している自転車というイメージから、走りが重めなのかなと思っていましたが、重さをネガティブに捉えさせない走りの良さを感じましたね。剛性感は初中級者にピッタリな程々の味付け。ロードで言えば「X」グレードあたりでしょうか。ちょっとした登りでは軽快に、ダートでスピードを上げた時も安定して走ってくれるので、シクロクロスやグラベルエンデューロレースにはもってこいです。
ホイールベースが長いジオメトリーなので、ロードバイクと比較してしまうとどうしても直進安定感の強い性格に気が向いてしまいます。今回テストを行ったバイクはブロックタイヤが装着されていましたが、スリックタイヤやリムハイトの低いホイールを組み合わせると、ツーリング向けロードバイクのような乗り方を楽しめるでしょう。
オフロードでハンドルを取られることもなく安定して走ることができるので、ロードバイクに初めて乗るという人でも恐怖感無く乗ることができそうです。競技志向が強いバイクの場合はライダーにスキルを要求してきますが、Kanzo Speedはラフに未舗装路へ突入しても、自転車自体がそのような走り方を許容してくれます。
グラベルロードというとオフロードを走らなければいけないというイメージを持たれる方はいらっしゃると思いますが、意外にもそうではないです。太いタイヤによって街中の段差を気にならなくなったり、ディスクブレーキによってコントローラブルになったり、普段乗りでもプラスとなる要素もあります。舗装路をメインで走りつつ、未舗装の脇道にチャレンジしてみる使い方にもピッタリでしょう。バイクパッキングのバッグを装備して小旅行に出たくなるような自転車です。
Kanzo Speedを簡単にまとめると、エンデュランスロード「FENIX」のオフロードバージョンと言ったところ。リドレーのロードバイクは乗り心地が良いことが各モデル共通する特徴で、このバイクにも引き継がれていました。さらにオフロードでのトラクションの掛かりの良さを加えたことで、FENIXからオフロード寄りに万能に進化したバイクと感じました。
リドレー Kanzo Speed
素 材:30,24 ton HM Carbon
重 量:フレーム980g(XSサイズ)、フォーク490g
BB規格: Pressfit BB86
シートポスト径 : 27.2mm
サイズ:XXS、XS、S、M
価 格:243,000円(税抜、フレームセット)
インプレッションライダーのプロフィール
小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
ワイズロードに務めて20年弱にもなるベテランスタッフで、現在は池袋チャーリー店の店長として店舗の管理や接客を担当する。サイクリングやMTB遊びを嗜むホビーライダーとして、初心者にも安心の一般ユーザー目線をポリシーとしたアドバイスを心がける。店内にはカスタム用のパーツが所狭しと並べられ、完成車も約100台と豊富な在庫を揃える他、希少な限定品や特化品も要注目だ。
ワイズロード池袋チャーリー店
CWレコメンドショップページ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
日本にも押し寄せるグラベルロードというジャンル。アメリカを中心に盛り上がるこのムーブメントは当然ヨーロッパにも進出しており、数々のバイクブランドがグラベルライドのためのバイクをリリースし始めている。リドレーはグラベルが流行の兆しを見せ始めた2016年にオールロードというカテゴライズで「X-TRAIL」というバイクを投入していた。
X-TRAILは、2016年当時からディスクブレーキ、タイヤクリアランスは最大40Cまでという最新グラベルロードと言っても良いほど今のツボを抑えたバイクであった。デビューより4年経過する2020年にリドレーは新しいグラベルロード「Kanzo」シリーズをローンチ。各部をブラッシュアップすることで、今のグラベル、アドベンチャーライドに適したバイクへと進化している。
今回インプレッションを行ったKanzo Speedは、日々のサイクリング、アドベンチャー、キャンプライドなど様々な遊び方ができるグラベルというジャンルの中でもレース志向が強めのモデルだ。そのためタイヤクリアランスは36mmまでとされている。日本では展開されないKanzo Adventureの最大クリアランス47Cと住み分けとして、Kanzo Speedはグラベルレースフィットのバイクへと仕立てられている。
ラインアップを横並びで見てみるとモデルごとにキャラクターづけされているものの、Kanzo Speedがグラベルライドの遊び方を制限されるわけではない。36mm幅のタイヤを装着した状態でもマッドガードを装着するスペースが用意されているため、Kanzo Speedは使用するシチュエーションにあわせてカスタマイズすることができる。また、舗装路が多い日本の道路事情を考慮しても36mmというのは丁度よい塩梅なのではないだろうか。
トレイルの長い直線で楽に走ることのできる直進安定性を実現するジオメトリーに設計されている。ダーティカンザのような長時間サドルの上で過ごすグラベルレースに適したバイク、とリドレーが説明する理由の1つだろう。もちろんトレイルでも扱いやすいハンドリングにも調整されているという。
Kanzo Speedのフレームは、FENIXのようなエッセンスを加えた形状のヘッド周りなど前作のX-TRAILを踏襲したような造形とされている。若干スローピングするトップチューブと扁平形状のシートステーは、一本のチューブのように接続しており、高い衝撃吸収性やトラクション性能を期待させる。
ダウンチューブもヘッドからBB付近になるにつれて扁平形状に変化しており、快適性に繋がる縦方向の柔軟性を追求。同時にBBシェル幅を可能な限り拡幅しており、ペダリング入力などに対する横剛性は確保されている。30トン、24トンのハイモジュラスカーボンを適材適所に配置することによる剛性調整も行われている。
衝撃吸収性を確保するフレームに対し、フォークには非常にマッシブなストレート形状を採用。12mmスルーアクスルのエンドと相まって非常に高い剛性を期待できるフォークに仕上がっている。グラベルやオフロードなど荒れたシチュエーションでもフロントに不安を感じにくくなるだろう。
ディスクブレーキ規格はフラットマウント。フロントディレイラー用の台座も設けられているため、フロントダブルでの使用も可能となっている。フェンダーマウントはリアとフォークともに隠された位置に備え付けられており、フェンダー等を使用しない際はスマートなルックスを維持させられる。
日本での展開はフレームセットのみ。カラーリングには昨年までのマーラックス・ビンゴール(現パウェルス・ビンゴール)のバイクにあしらわれていたグラフィックを採用している。価格は243,000円(税抜)だ。
エンデュランスロードFENIX、シクロクロスX-NIGHTで実績を持つリドレーが用意するグラベルロード「Kanzo Speed」。インプレッションライダーはどのように評価するのだろうか。インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「想像以上に軽い走り心地。オフもオンもいける万能な一台」小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
MTBは多少嗜むのですが、グラベルロード自体は乗ったことがなく、今回のテストがほぼ初めてでした。その中でも際立って感じた性能は安定感の強さでしたね。ヒラヒラと軽快なロードバイクとマウンテンバイクの中間に位置する乗り味に仕上げられており、ドロップハンドルのバイクで未舗装路を走ったことが無い方でも安心して楽しめるバイクというイメージが第一印象でした。
試乗する前はワイドタイヤを装着している自転車というイメージから、走りが重めなのかなと思っていましたが、重さをネガティブに捉えさせない走りの良さを感じましたね。剛性感は初中級者にピッタリな程々の味付け。ロードで言えば「X」グレードあたりでしょうか。ちょっとした登りでは軽快に、ダートでスピードを上げた時も安定して走ってくれるので、シクロクロスやグラベルエンデューロレースにはもってこいです。
ホイールベースが長いジオメトリーなので、ロードバイクと比較してしまうとどうしても直進安定感の強い性格に気が向いてしまいます。今回テストを行ったバイクはブロックタイヤが装着されていましたが、スリックタイヤやリムハイトの低いホイールを組み合わせると、ツーリング向けロードバイクのような乗り方を楽しめるでしょう。
オフロードでハンドルを取られることもなく安定して走ることができるので、ロードバイクに初めて乗るという人でも恐怖感無く乗ることができそうです。競技志向が強いバイクの場合はライダーにスキルを要求してきますが、Kanzo Speedはラフに未舗装路へ突入しても、自転車自体がそのような走り方を許容してくれます。
グラベルロードというとオフロードを走らなければいけないというイメージを持たれる方はいらっしゃると思いますが、意外にもそうではないです。太いタイヤによって街中の段差を気にならなくなったり、ディスクブレーキによってコントローラブルになったり、普段乗りでもプラスとなる要素もあります。舗装路をメインで走りつつ、未舗装の脇道にチャレンジしてみる使い方にもピッタリでしょう。バイクパッキングのバッグを装備して小旅行に出たくなるような自転車です。
Kanzo Speedを簡単にまとめると、エンデュランスロード「FENIX」のオフロードバージョンと言ったところ。リドレーのロードバイクは乗り心地が良いことが各モデル共通する特徴で、このバイクにも引き継がれていました。さらにオフロードでのトラクションの掛かりの良さを加えたことで、FENIXからオフロード寄りに万能に進化したバイクと感じました。
リドレー Kanzo Speed
素 材:30,24 ton HM Carbon
重 量:フレーム980g(XSサイズ)、フォーク490g
BB規格: Pressfit BB86
シートポスト径 : 27.2mm
サイズ:XXS、XS、S、M
価 格:243,000円(税抜、フレームセット)
インプレッションライダーのプロフィール
小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
ワイズロードに務めて20年弱にもなるベテランスタッフで、現在は池袋チャーリー店の店長として店舗の管理や接客を担当する。サイクリングやMTB遊びを嗜むホビーライダーとして、初心者にも安心の一般ユーザー目線をポリシーとしたアドバイスを心がける。店内にはカスタム用のパーツが所狭しと並べられ、完成車も約100台と豊富な在庫を揃える他、希少な限定品や特化品も要注目だ。
ワイズロード池袋チャーリー店
CWレコメンドショップページ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
リンク
Amazon.co.jp
ソニー SONY デジタルカメラ Cyber-shot DSC-RX100M7G
ソニー(SONY)
ソニー SONY デジタルカメラ Cyber-shot DSC-RX100M7
ソニー(SONY)