2019/11/23(土) - 11:17
ロット・スーダルをサポートするベルギーのバイクブランド、リドレーよりメタリックオレンジカラーが特徴的な2020モデルの「HELIUM X」をインプレッション。プロ選手が愛用する軽量オールラウンドモデルの系譜を継ぐミドルグレードの実力は如何に。
ロット・スーダルと長年協力関係にあるベルギーのバイクブランド、リドレー。2019年シーズンはカレブ・ユアンによるジロのステージ2勝、ツールのステージ3勝や、トーマス・デヘントによるツールでの劇的逃げ切り勝利により、選手とともに強い存在感を放ったリドレーのバイク。
現在ロードバイクラインアップは主に3種類。ユアンらスプリンターが使用するのはエアロロードのNOAH。お膝元ベルギーで開催されるロンド・ファン・フラーンデレンのような春のクラシックではFENIXが活躍する。そして、グランツールの山岳ステージを狙う選手や逃げ屋デヘントらが愛用しているオールラウンドモデルのHELIUMだ。
今回はHELIUMシリーズからミドルグレードのHELIUM Xをピックアップする。2020年モデルとしてHELIUM SLXにはディスクブレーキモデルが登場しているが、HELIUM Xのラインアップはこれまで通りリムブレーキのみ。このモデルが踏襲するのはロット・スーダルの選手の多くが使用しているリムブレーキのHELIUM SLXだ。
フレーム形状はフラッグシップと同一としながら、使用する素材を30トン、24トンのハイモジュラスカーボンへと変更。弾性率の異なるカーボン素材を適材適所で使い分けることで、重量比剛性とコストパフォーマンスを追求している。また、フロントトライアングルはHELIUMよりもボリュームアップを図り剛性を強化。
HELIUMシリーズの伝統である超極細のシートステーは健在。軽量性に貢献することに加え、路面からの衝撃を和らげる振動吸収性を向上させられることが特徴だ。極限までシェイプを研ぎ澄まされているシートステーだが、リドレーお馴染みの石畳でのテストを経ているため、振動吸収性と堅牢性には期待できるだろう。「TESTED ON PAVE」というステッカーがベルギー生まれの自転車であることを示している。
チェーンステーのダイレクトドライブ側にボリュームを持たせ、BBはプレスフィット30を採用しパワー伝達性を高めている。フロントフォーク、ヘッドチューブは上側1-1/8、下側1-1/4とした上下異径とすることでフロント周りの剛性を確保する。ストレートフォークによる高い反応性も相まって、優れたコーナリング性能を発揮してくれるはずだ。
また。HELIUMシリーズ最大のポイントは軽量クライミングバイクであること。先述したように2種類のカーボンを使い分け、リアエンドまでカーボンモノコック成形とすることで軽量化を図っている。結果としてフレームはMサイズで900g、軽量化を進めたフォークも310g。合計で1,210gとミドルグレードとしては軽量なバイクに仕上げられている。
ケーブル類のワイヤリングが従来モデルより改善されていることもHELIUM Xの特徴だ。ハンドリングに影響の無いようルーティングが見直されるとともに、ブレーキケーブルも内装に変更され、すっきりとしたルックスに進化した。
軽量クライミングバイクシリーズの一角を担うミドルグレード「HELIUM X」。2020年モデルではマットレッドとメタリックオレンジの2色が展開される。フレームセットの販売となり、価格は243,000円(税抜)だ。コストパフォーマンスに優れるこの一台をインプレライダーはどのように評価するのだろうか。インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「初中級者にオススメできる軽量オールラウンドバイク」小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
僕はこの先代にあたるHELIUMも所有しているのですが、今回テストしたHELIUM Xと共通するのは剛性バランスの良さです。そのうえでHELIUM Xは低重心化が図られたのか、ダンシングをした時の振りの軽さが際立つ方向に進化を遂げています。リムブレーキのバイクならではの軽さがありヒルクライムにマッチしているバイクですね。
剛性はフラッグシップのSLXよりは抑え気味に調整されていて、硬すぎないフレームに仕上げられています。パワーを掛けて踏んでいくような上級者やパワー系ライダーはフレームのウィップ感が気になるかと思いますが、そこまでのパワー領域ではない中級者や高ケイデンスで回していくような方は、バイクをスルスルっと前に進ませられて気持ちよく加速してくれるでしょう。僕自身ハイエンドフレームの剛性は高いと感じるので、このバイクは本当に違和感なく乗れます。
一言で剛性感を表すならばニュートラル。リズム感をつかみやすく、ペダリングのスキルアップにも貢献してくれるでしょう。本格的にレースに取り組む方ではなく、初心者やこれからステップアップしていきたいライダーに適した剛性感ですね。そのような方は、フラッグシップではなくこういったミドルグレードのほうが扱いやすいと思います。
レーシングフレームではありますが乗り心地も良さも際立つので、ロングライドを含めサイクリング全般をカバーできるはずです。扁平形状のシートステーや、場所によって弾性率の異なるカーボンを配置する作り方、石畳でのテストを行うことでその快適性を生み出しているのでしょう。ベルギーならではと言いますか、快適性と走行性能を追求した末に生まれたスタンダードなバイクに仕上げられています。自転車を複数台所有せずとも、HELIUM X一台で全てを賄うことも可能だと思います。
25万円という価格帯で考えると、このバイクの登りの軽さは光るものがあります。一般的にミドルグレードというと重量が気になりがちですが、このHELIUM Xは素晴らしい出来栄えだと思いますよ。フラッグシップと同じ金型を使用していることもその性能に寄与しているでしょうし、ぜひとも登りでその性能を引き出してほしいですね。
今回のテストではFFWDのF3Rを装着していたのですが、HELIUM Xとの相性もバッチリでした。走りの性格を考えると、ディープリムよりもリムハイト低めのホイールの方が軽さを際立たせてくれそうでいいですね。また、レーシングバイクらしくハンドリングはややクイックめな味付け。軽いハンドリングが好みの方は違和感なく乗れるかと思いますが、慣れていない方が乗ると最初はふらつくかもしれません。
HELIUM Xの難点を挙げるとすれば普通すぎること。裏を返せば非常によくまとまったバイクなんです。いきなりハイエンドバイクにいくよりも、ビギナーから中級者あたりの人はこういった扱いやすいモデルを選ぶと足にもマッチして良いと思います。予算が40~50万円前後という人がフレームから組み上げるのに最適な1台だと思いますよ。
リドレー HELIUM X フレームセット
素材:30T/24Tハイモデュラスカーボン
BB規格:PF30
サイズ:XXS、XS、S、M
フレーム重量:850g(XSサイズ)
カラー:JP20-08As、HELX-03Bm
価格:243,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
ワイズロードに務めて20年弱にもなるベテランスタッフで、現在は池袋チャーリー店の店長として店舗の管理や接客を担当する。サイクリングやMTB遊びを嗜むホビーライダーとして、初心者にも安心の一般ユーザー目線をポリシーとしたアドバイスを心がける。店内にはカスタム用のパーツが所狭しと並べられ、完成車も約100台と豊富な在庫を揃える他、希少な限定品や特化品も要注目だ。
ワイズロード池袋チャーリー店
CWレコメンドショップページ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
ロット・スーダルと長年協力関係にあるベルギーのバイクブランド、リドレー。2019年シーズンはカレブ・ユアンによるジロのステージ2勝、ツールのステージ3勝や、トーマス・デヘントによるツールでの劇的逃げ切り勝利により、選手とともに強い存在感を放ったリドレーのバイク。
現在ロードバイクラインアップは主に3種類。ユアンらスプリンターが使用するのはエアロロードのNOAH。お膝元ベルギーで開催されるロンド・ファン・フラーンデレンのような春のクラシックではFENIXが活躍する。そして、グランツールの山岳ステージを狙う選手や逃げ屋デヘントらが愛用しているオールラウンドモデルのHELIUMだ。
今回はHELIUMシリーズからミドルグレードのHELIUM Xをピックアップする。2020年モデルとしてHELIUM SLXにはディスクブレーキモデルが登場しているが、HELIUM Xのラインアップはこれまで通りリムブレーキのみ。このモデルが踏襲するのはロット・スーダルの選手の多くが使用しているリムブレーキのHELIUM SLXだ。
フレーム形状はフラッグシップと同一としながら、使用する素材を30トン、24トンのハイモジュラスカーボンへと変更。弾性率の異なるカーボン素材を適材適所で使い分けることで、重量比剛性とコストパフォーマンスを追求している。また、フロントトライアングルはHELIUMよりもボリュームアップを図り剛性を強化。
HELIUMシリーズの伝統である超極細のシートステーは健在。軽量性に貢献することに加え、路面からの衝撃を和らげる振動吸収性を向上させられることが特徴だ。極限までシェイプを研ぎ澄まされているシートステーだが、リドレーお馴染みの石畳でのテストを経ているため、振動吸収性と堅牢性には期待できるだろう。「TESTED ON PAVE」というステッカーがベルギー生まれの自転車であることを示している。
チェーンステーのダイレクトドライブ側にボリュームを持たせ、BBはプレスフィット30を採用しパワー伝達性を高めている。フロントフォーク、ヘッドチューブは上側1-1/8、下側1-1/4とした上下異径とすることでフロント周りの剛性を確保する。ストレートフォークによる高い反応性も相まって、優れたコーナリング性能を発揮してくれるはずだ。
また。HELIUMシリーズ最大のポイントは軽量クライミングバイクであること。先述したように2種類のカーボンを使い分け、リアエンドまでカーボンモノコック成形とすることで軽量化を図っている。結果としてフレームはMサイズで900g、軽量化を進めたフォークも310g。合計で1,210gとミドルグレードとしては軽量なバイクに仕上げられている。
ケーブル類のワイヤリングが従来モデルより改善されていることもHELIUM Xの特徴だ。ハンドリングに影響の無いようルーティングが見直されるとともに、ブレーキケーブルも内装に変更され、すっきりとしたルックスに進化した。
軽量クライミングバイクシリーズの一角を担うミドルグレード「HELIUM X」。2020年モデルではマットレッドとメタリックオレンジの2色が展開される。フレームセットの販売となり、価格は243,000円(税抜)だ。コストパフォーマンスに優れるこの一台をインプレライダーはどのように評価するのだろうか。インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「初中級者にオススメできる軽量オールラウンドバイク」小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
僕はこの先代にあたるHELIUMも所有しているのですが、今回テストしたHELIUM Xと共通するのは剛性バランスの良さです。そのうえでHELIUM Xは低重心化が図られたのか、ダンシングをした時の振りの軽さが際立つ方向に進化を遂げています。リムブレーキのバイクならではの軽さがありヒルクライムにマッチしているバイクですね。
剛性はフラッグシップのSLXよりは抑え気味に調整されていて、硬すぎないフレームに仕上げられています。パワーを掛けて踏んでいくような上級者やパワー系ライダーはフレームのウィップ感が気になるかと思いますが、そこまでのパワー領域ではない中級者や高ケイデンスで回していくような方は、バイクをスルスルっと前に進ませられて気持ちよく加速してくれるでしょう。僕自身ハイエンドフレームの剛性は高いと感じるので、このバイクは本当に違和感なく乗れます。
一言で剛性感を表すならばニュートラル。リズム感をつかみやすく、ペダリングのスキルアップにも貢献してくれるでしょう。本格的にレースに取り組む方ではなく、初心者やこれからステップアップしていきたいライダーに適した剛性感ですね。そのような方は、フラッグシップではなくこういったミドルグレードのほうが扱いやすいと思います。
レーシングフレームではありますが乗り心地も良さも際立つので、ロングライドを含めサイクリング全般をカバーできるはずです。扁平形状のシートステーや、場所によって弾性率の異なるカーボンを配置する作り方、石畳でのテストを行うことでその快適性を生み出しているのでしょう。ベルギーならではと言いますか、快適性と走行性能を追求した末に生まれたスタンダードなバイクに仕上げられています。自転車を複数台所有せずとも、HELIUM X一台で全てを賄うことも可能だと思います。
25万円という価格帯で考えると、このバイクの登りの軽さは光るものがあります。一般的にミドルグレードというと重量が気になりがちですが、このHELIUM Xは素晴らしい出来栄えだと思いますよ。フラッグシップと同じ金型を使用していることもその性能に寄与しているでしょうし、ぜひとも登りでその性能を引き出してほしいですね。
今回のテストではFFWDのF3Rを装着していたのですが、HELIUM Xとの相性もバッチリでした。走りの性格を考えると、ディープリムよりもリムハイト低めのホイールの方が軽さを際立たせてくれそうでいいですね。また、レーシングバイクらしくハンドリングはややクイックめな味付け。軽いハンドリングが好みの方は違和感なく乗れるかと思いますが、慣れていない方が乗ると最初はふらつくかもしれません。
HELIUM Xの難点を挙げるとすれば普通すぎること。裏を返せば非常によくまとまったバイクなんです。いきなりハイエンドバイクにいくよりも、ビギナーから中級者あたりの人はこういった扱いやすいモデルを選ぶと足にもマッチして良いと思います。予算が40~50万円前後という人がフレームから組み上げるのに最適な1台だと思いますよ。
リドレー HELIUM X フレームセット
素材:30T/24Tハイモデュラスカーボン
BB規格:PF30
サイズ:XXS、XS、S、M
フレーム重量:850g(XSサイズ)
カラー:JP20-08As、HELX-03Bm
価格:243,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
小川純(ワイズロード池袋チャーリー店)
ワイズロードに務めて20年弱にもなるベテランスタッフで、現在は池袋チャーリー店の店長として店舗の管理や接客を担当する。サイクリングやMTB遊びを嗜むホビーライダーとして、初心者にも安心の一般ユーザー目線をポリシーとしたアドバイスを心がける。店内にはカスタム用のパーツが所狭しと並べられ、完成車も約100台と豊富な在庫を揃える他、希少な限定品や特化品も要注目だ。
ワイズロード池袋チャーリー店
CWレコメンドショップページ
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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