2019/09/26(木) - 02:20
世界最速を決めるロード世界選手権男子エリート個人タイムトライアルでローハン・デニス(オーストラリア)が快走。2位に入った19歳のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)に1分以上のタイム差をつける圧倒的な走りでデニスが大会連覇を果たした。
イギリス・ヨークシャー地方のハロゲートで開催されているロード世界選手権の4日目、男子エリートの最速を決める個人タイムトライアルがノーザラートンをスタートする54kmで行われた。
ハロゲートを目指して田園地帯を南下するコースは後半にかけて平坦と呼べる区間がないほど起伏に富んだもの。登坂距離が1kmに達するような登りは稀で、細かい登りと下りがコースプロフィールにノコギリの歯を描き出す。しかもイギリス特有の石垣や生垣に囲まれた圧迫感のある田舎道が大半。地形的には「山」ではなく「丘」だが、地形に合わせて張り巡らされた道は曲がりくねり、勾配も常に変化する。実際に、6位に入ったローソン・クラドック(アメリカ)の最高スピードは83.9km/hに達しており、その下り区間直後の登り返しでは20km/h程度にまでスピードが落ちている。
とにかくリズムが掴みにくく、とにかく変速する機会が多い獲得標高差684mの難コース。今シーズン開催された個人タイムトライアルの中で最も長い54kmというロングコースに、38カ国57名のエリート選手たちが挑んだ。
地の利を生かして多くのコーナーをDHバーを持ったまま駆け抜けたアレックス・ドーセット(イギリス)が中盤に最速タイムを記録したものの、すぐにトラック個人追い抜きで4分07秒456の世界記録を持つフィリッポ・ガンナ(イタリア)が首位を奪う。しかしガンナの暫定トップも長続きしなかった。
第1計測(16.7km地点)でガンナのタイムを更新したのは19歳のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。1年前のジュニアカテゴリーで圧勝したエヴェネプールは第2計測(37.7km地点)でさらにそのリードを広げ、ガンナに47秒差を付けてフィニッシュする。好走しながらも落車&メカトラに見舞われたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)と落車に見舞われたイヴ・ランパールト(ベルギー)がタイムを失う中、U23カテゴリーを飛ばしてエリートで走る19歳の世界タイトル獲得が現実味を帯びた。
ツール・ド・フランス第12ステージでリタイアし、事実上バーレーン・メリダと決別する形となったローハン・デニス(オーストラリア)は1年前に世界タイトルを獲った時と同じBMC社の黒塗りTTバイクでスタートを切った。コンディションに懐疑的な目が向けられながらも、デニスの走りは前半から際立っていた。
「自分のリズムを刻んで、最初の計測地点で20秒リードしていることを確認。そこから登りで出しきらないことを心がけながらペースをさらに上げた」というデニスは第1計測(16.7km地点)でエヴェネプールから19秒リードし、第2計測(37.7km地点)でさらにそのリードを1分06秒にまで広げた。
1分30秒先にスタートした前走者カンペナールツをパスし、さらに3分先にスタートしたブエルタ・ア・エスパーニャ覇者プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)を追い抜いたデニス。全ての計測ポイントでトップタイムを連発したデニスがエヴェネプールに1分08秒差を付けてフィニッシュした。最終走者の特権として、デニスはフィニッシュラインで拳を突き上げた。
「昨年(インスブルック大会)と同じペースで走ることに徹した。常にブラッド・マクギー(ナショナルコーチ)から情報が入ってきていたし、パーフェクトな走りだった」と、大会連覇を達成したデニスは語る。緩い向かい風、距離54km、獲得標高差684mのコースをデニスは平均スピード49.778km/hで駆け抜けている。
2ヶ月ぶりの表舞台となったが、アルカンシェルに袖を通したその顔の絞れ具合からは周到な調整を感じさせた。「もちろんこの勝利に向けての準備は今日始まったことじゃない。家で長い時間を過ごし、トレーニングをこなしながら気持ちの準備を進めた。決して簡単な道ではなかったことは確かで、支えてくれた人々に感謝したい。ツール以降、色んなことを言われ続けてきたけど、こうして勝利で盛り返すことができてスペシャル。連覇に向けてこの世界選手権に最高の状態で挑みたいと思っていたし、まだレースを諦めたわけじゃないことを見せつけたかった。レースをするためにここに来て、勝つためにここに来たんだ。まだこのままこのスポーツに打ち込みたい」。デニスはツールでの『出来事』についての言及を避け、来シーズンの活動についても明らかにしていない。
イギリス・ヨークシャー地方のハロゲートで開催されているロード世界選手権の4日目、男子エリートの最速を決める個人タイムトライアルがノーザラートンをスタートする54kmで行われた。
ハロゲートを目指して田園地帯を南下するコースは後半にかけて平坦と呼べる区間がないほど起伏に富んだもの。登坂距離が1kmに達するような登りは稀で、細かい登りと下りがコースプロフィールにノコギリの歯を描き出す。しかもイギリス特有の石垣や生垣に囲まれた圧迫感のある田舎道が大半。地形的には「山」ではなく「丘」だが、地形に合わせて張り巡らされた道は曲がりくねり、勾配も常に変化する。実際に、6位に入ったローソン・クラドック(アメリカ)の最高スピードは83.9km/hに達しており、その下り区間直後の登り返しでは20km/h程度にまでスピードが落ちている。
とにかくリズムが掴みにくく、とにかく変速する機会が多い獲得標高差684mの難コース。今シーズン開催された個人タイムトライアルの中で最も長い54kmというロングコースに、38カ国57名のエリート選手たちが挑んだ。
地の利を生かして多くのコーナーをDHバーを持ったまま駆け抜けたアレックス・ドーセット(イギリス)が中盤に最速タイムを記録したものの、すぐにトラック個人追い抜きで4分07秒456の世界記録を持つフィリッポ・ガンナ(イタリア)が首位を奪う。しかしガンナの暫定トップも長続きしなかった。
第1計測(16.7km地点)でガンナのタイムを更新したのは19歳のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。1年前のジュニアカテゴリーで圧勝したエヴェネプールは第2計測(37.7km地点)でさらにそのリードを広げ、ガンナに47秒差を付けてフィニッシュする。好走しながらも落車&メカトラに見舞われたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)と落車に見舞われたイヴ・ランパールト(ベルギー)がタイムを失う中、U23カテゴリーを飛ばしてエリートで走る19歳の世界タイトル獲得が現実味を帯びた。
ツール・ド・フランス第12ステージでリタイアし、事実上バーレーン・メリダと決別する形となったローハン・デニス(オーストラリア)は1年前に世界タイトルを獲った時と同じBMC社の黒塗りTTバイクでスタートを切った。コンディションに懐疑的な目が向けられながらも、デニスの走りは前半から際立っていた。
「自分のリズムを刻んで、最初の計測地点で20秒リードしていることを確認。そこから登りで出しきらないことを心がけながらペースをさらに上げた」というデニスは第1計測(16.7km地点)でエヴェネプールから19秒リードし、第2計測(37.7km地点)でさらにそのリードを1分06秒にまで広げた。
1分30秒先にスタートした前走者カンペナールツをパスし、さらに3分先にスタートしたブエルタ・ア・エスパーニャ覇者プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)を追い抜いたデニス。全ての計測ポイントでトップタイムを連発したデニスがエヴェネプールに1分08秒差を付けてフィニッシュした。最終走者の特権として、デニスはフィニッシュラインで拳を突き上げた。
「昨年(インスブルック大会)と同じペースで走ることに徹した。常にブラッド・マクギー(ナショナルコーチ)から情報が入ってきていたし、パーフェクトな走りだった」と、大会連覇を達成したデニスは語る。緩い向かい風、距離54km、獲得標高差684mのコースをデニスは平均スピード49.778km/hで駆け抜けている。
2ヶ月ぶりの表舞台となったが、アルカンシェルに袖を通したその顔の絞れ具合からは周到な調整を感じさせた。「もちろんこの勝利に向けての準備は今日始まったことじゃない。家で長い時間を過ごし、トレーニングをこなしながら気持ちの準備を進めた。決して簡単な道ではなかったことは確かで、支えてくれた人々に感謝したい。ツール以降、色んなことを言われ続けてきたけど、こうして勝利で盛り返すことができてスペシャル。連覇に向けてこの世界選手権に最高の状態で挑みたいと思っていたし、まだレースを諦めたわけじゃないことを見せつけたかった。レースをするためにここに来て、勝つためにここに来たんだ。まだこのままこのスポーツに打ち込みたい」。デニスはツールでの『出来事』についての言及を避け、来シーズンの活動についても明らかにしていない。
ロード世界選手権2019男子エリート個人タイムトライアル結果
1位 | ローハン・デニス(オーストラリア) | 1:05:05 | 49.778 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | 0:01:08 | 48.915 |
3位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア) | 0:01:55 | 48.354 |
4位 | パトリック・ベヴィン(ニュージーランド) | 0:01:57 | 48.328 |
5位 | アレックス・ドーセット(イギリス) | 0:02:01 | 48.273 |
6位 | ローソン・クラドック(アメリカ) | 0:02:07 | 48.207 |
7位 | タネル・カンゲルト(エストニア) | 0:02:07 | 48.203 |
8位 | ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) | 0:02:09 | 48.177 |
9位 | トニー・マルティン(ドイツ) | 0:02:27 | 47.971 |
10位 | シュテファン・キュング(スイス) | 0:02:46 | 47.741 |
11位 | ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー) | 0:02:49 | 47.707 |
12位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア) | 0:03:00 | 47.583 |
13位 | ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア) | 0:03:00 | 47.576 |
14位 | ジョン・アーチボルド(イギリス) | 0:03:10 | 47.458 |
15位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ) | 0:03:36 | 47.164 |
16位 | エドアルド・アッフィニ(イタリア) | 0:03:37 | 47.155 |
17位 | カスパー・アスグリーン(デンマーク) | 0:03:37 | 47.149 |
18位 | ピエール・ラトゥール(フランス) | 0:03:44 | 47.071 |
19位 | チャド・ハガ(アメリカ) | 0:03:57 | 46.929 |
20位 | マチェイ・ボドナル(ポーランド) | 0:04:00 | 46.892 |
text&photo:Kei Tsuji in Harrogate, United Kingdom
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