2019/08/31(土) - 19:05
2019-20年のトラックシーズン開幕を控えた8月23日から25日までの3日間、ジャパントラックカップが日本競輪選手養成所内に新設されたJKA250で開催され、世界チャンピオンや国内トップ選手達が出場した。直前に行われた中距離ナショナルチームの合宿の模様とあわせてレポートする。
5本の柱が天井を支えるJKA250 photo:Satoru Kato
3日間で開催されるジャパントラックカップは、UCI-1クラスの国際レース。初日が「ジャパントラックカップⅠ(以下、JTC1)」、2日目と3日目が「ジャパントラックカップⅡ(以下、JTC2)」として、連続した2つの大会として開催される。種目はスプリント・ケイリン・マディソン・オムニアムの4つ。JTC1ではこの4種目を1日で行い、JTC2では4種目を2日間に分けて行われた。
ジャパントラックカップの初開催は2014年。世界選手権に出場した国は次シーズンに自国での国際大会を開催しなければならず、本大会もそれに則りスタートした。以来、自国開催の国際大会でUCIポイントを獲得できるメリットと、世界トップの選手と国内選手との戦いを生で見ることができる数少ない大会の一つとして定着した。今年は伊豆ベロドロームが東京オリンピックに向けて改装中のため、日本競輪選手養成所内に今年完成した「JKA250」を使用しての開催。一般公開されない施設のため、異例の無観客試合となった。
新設されたJKA250の外観 photo:Kensaku Sakai
コーナーのバンク角は、ベロドロームに比べてやや緩やかに見える photo:Satoru Kato
完成したばかりの板張りバンクは、うっすらと木の香りが漂う photo:Satoru KatoJKA250の内部は、ベロドロームと違い天井が低く、インフィールドに立つ5本の柱が支える。トラックの外側に観客席が無く、大人2人が並んで歩ける程度の通路しかない。そもそも競輪学校の授業に使用する施設だから、学校の体育館のようなもの。多くの観客が入る余裕はほぼない。
国内2つ目となる板張り250mバンクは、表面を削った木粉がうっすらと路面を覆う新品状態。舞い上がる粉塵に「喉がイガイガする」という選手も。走った印象は「コーナーにクセがある」と語る選手が多く、日本ナショナルチームとして出場した窪木一茂は「先行有利な印象」と話す。
スプリントとケイリンの世界チャンピオン リー・ワイジー(香港) photo:Kensaku Sakai
日本でもおなじみのテオ・ボス(ビートサイクリングクラブ)も登場 photo:Kensaku Sakai出場選手は今年も世界のトップが集まった。男子オムニアムの現世界チャンピオンであるキャンベル・スチュワート(ニュージーランド)、女子のケイリンとスプリントの現世界チャンピオンであるリー・ワイジー(香港)を筆頭に、日本でもおなじみのテオ・ボス(オランダ)やマシュー・グレーツァー(オーストラリア)が参戦。
迎え撃つ日本勢は、男子オムニアムのオリンピック代表選考を争う窪木一茂と橋本英也、今年のアジア選手権ケイリン優勝の脇本雄太、女子マディソンでアジア大会2連覇中の梶原悠未と古山稀絵のペアなど、国内トップの選手が出場した。
マディソン 強豪海外勢を相手に梶原・古山組が2位に食い込む
2人1組で交代しながら走り、獲得したポイントの合計を競うマディソン。交代時にチームメイトの手を掴んで前方に投げる「ハンドスリング」が見どころだ。
JTC2 男子エリート・マディソンを制したのは強豪オーストラリアのキャメロン・スコット/レイ・ハワード組 photo:Kensaku Sakai
JTC1 男子マディソン 日本ナショナルチームの窪木、橋本組 photo:Satoru Kato
JTC1 男子マディソン チームブリヂストンサイクリングの近谷涼、今村駿介組 photo:Satoru Kato
CSスリンガーの新村穣と小林泰正のハンドスリング photo:Kensaku Sakai
JTC1の男子エリートは25km。レース前半にポイントを重ねたオーストラリアと、後半にポイントを加算したLXサイクリングチームがフィニッシュを前に同ポイントに並び、先着したLXサイクリングチームが優勝した。
日本勢は日本ナショナルチームの橋本英也・窪木一茂組、チームブリヂストンサイクリング(以下ブリヂストン)の今村駿介・近谷涼組、CSスリンガーの新村穣・小林泰正組の3チームが出場。日本ナショナルチームは序盤はオーストラリアとトップ争いをしたが、橋本の落車が響いて6位に終わった。ブリヂストンは集団を周回遅れにしてラップポイントを得るものの、5ポイント足りず4位。CSスリンガーは11位完走となった。
40kmで行われたJTC2はオーストラリアが優勝。日本勢は、日本ナショナルチームが窪木、近谷組、ブリヂストンが橋本・今村組と選手を入れ替え。CSスリンガーは新村、小林組がJTC1に続き出場。後半にポイントを重ねたブリヂストンが5位、日本ナショナルチームが6位、CSスリンガーは11位でレースを終えた。
アジア選手権2連覇中の女子マディソン梶原悠未と古山稀絵のペア photo:Kensaku Sakai
女子エリート・マディソン JTC1、2共に優勝したワン・シャオフェイ/リュウ・ジャリー組(中国ナショナルトラッククラブ) photo:Kensaku Sakai
スペイン人選手のマルガリータ・ロペス・ルルはライブガーデン・ビチステンレから出場 photo:Kensaku Sakai
女子エリートには、アジア選手権2連覇中の梶原悠未、古山稀絵組が日本ナショナルチームとして出場。中村妃智、鈴木奈央組のJPCチーム、吉川美穂とスペインのマルガリータ・ロペス・ルル組んでライブガーデン・ビチステンレとして出場した。
JTC1のレースは、序盤からトップ通過を繰り返した中国ナショナルトラッククラブが圧勝。日本ナショナルチームが5位、JPCチームが7位、ライブガーデン・ビチステンレが8位となった。
JTC2 女子エリート・マディソン表彰式 photo:Kensaku SakaiJTC2では、日本ナショナルチームの梶原、古山組が中国ナショナルトッラッククラブとの優勝争いを展開するも、終盤に引き離されて2位。JPCチームの中村、鈴木組は4位、吉川、ルル組は9位完走となった。
優勝を逃した梶原は「単純に優勝チームよりも技術、走力、戦術、全ての面で劣っていたことが敗因です。中国チームは個々の能力が昨年以上に強化されてきたと感じました。このままではアジア選手権での3連覇は厳しいと思うので、いろいろ考え直して挑みます」とコメントした。
オムニアム 五輪代表を争う窪木と橋本が対戦するも窪木に不運
スクラッチ・テンポレース・エリミネーション・ポイントレースの4つの種目の総合得点を争うオムニアム。男女共にJTC1とJTC2で各1回ずつレースが行われた。
JTC1 男子エリート・オムニアムで優勝した窪木 一茂(日本ナショナルチーム) photo:Kensaku Sakai
JTC1 男子エリート・オムニアム表彰式 photo:Kensaku Sakai男子エリートのJCT1では、窪木がスクラッチで1位、テンポレースとエリミネイションは3位に入って112ポイントとして総合首位に立ち、ケニー・デ・ケテル(ベルギー)が8ポイント差で2位につけた。
最終種目のポイントレースでは、窪木と総合2位のケテルを含む4人が集団をラップ。さらに窪木は得点が倍になるフィニッシュで1着を獲り、優勝を決めた。
「久しぶりに優勝することが出来て気持ちいいものだなと思いました」と喜びを語る窪木。今年のトラックシーズンに向けては「ロードからトラックへの移行が難しいところもあります。ハードスケジュールなので体調を整えることが大事。今シーズンから機材を新しくしたので、まずはそれに慣れる事から始めます。今回は試しながらだったが、慣れれば良い走りができると思います」とコメント。「オムニアムのオリンピック代表は橋本英也選手との戦いになる。2人は良い関係だと思うし、互いに刺激しあってオリンピックに向けて進んでいきたい」と意気込みを見せた。
JTC2 男子エリート・オムニアムで優勝した橋本英也(日本ナショナルチーム) photo:Kensaku Sakai
JTC2 男子エリート・オムニアム表彰式 photo:Kensaku Sakaiその橋本英也はJTC2のオムニアムに出場。オリンピック代表選考を争う2人の対決に注目が集まった。
スクラッチでは窪木と橋本を含む3名が集団をラップし、窪木1位、橋本2位。テンポレースではラップを成功させて1位の橋本に対し、ラップできなかった窪木は9位。続くエリミネイションでは、残り7名の段階でペダルが外れるアクシデントに見舞われた窪木が除外。一方橋本は最後まで残って1位となる。
橋本が118ポイントで総合首位、窪木は92ポイントの6位で最終種目のポイントレース がスタート。ここでも両者の明暗が別れた。窪木はレース序盤に他の選手と接触して落車。直後は自分で動けず、担架で運び出されたが、幸いにも大事には至らなかった。対して橋本は首位を守りきって優勝。途中、総合3位のケニー・デ・ケテル(ベルギー)がラップするなどして3ポイント差まで詰め寄られるが、倍得点となるフィニッシュで1位を獲って逃げ切った。
優勝した橋本は、「ワールドカップを走る強豪と日本で走れるチャンスはめったにないので、自分らしい走りをして優勝できたら良いと思っていました。フィニッシュ前にケニー(・デ・ケテル)と同点になりましたが、スタッフからボードや声掛けで状況を把握できたおかげで最後まで冷静に走れたのが大きな勝因でした。今回の勝利はチームスタッフの勝利です」と笑顔を見せた。そして、「ワールドカップで金メダルを獲って、世界選手権でメダルを獲って、その勢いでオリンピックに向かいたい」と、コメントした。
JTC1 女子エリート・オムニアムを制した梶原悠未(日本ナショナルチーム) photo:Kensaku Sakai
JTC1 女子エリート・オムニアム表彰式 photo:Kensaku Sakai女子エリートは梶原悠未が強さを見せた。JTC1では、スクラッチ2位、テンポレースではラップに成功して2位、エリミネイションで1位となり、計116ポイントで総合首位に立つ。2位と8ポイント差で臨んだポイントレースは、ラップの奪い合いとなる混戦となったものの、下位との差を上手くコントロールした梶原が逃げ切って優勝を決めた。
JTC2では、スクラッチ10位、テンポレース6位と出遅れ、エリミネイションで1位となるものの、総合3位で最後のポイントレースへ。序盤から2回連続でポイント周回を1位通過すると、
JTC2 女子エリート・オムニアム ラシュリー・ブキャナン(ニュージーランド)がエリミネーションの集団先頭に立つ photo:Kensaku Sakai総合2位のブキャナンと共に集団をラップ。終盤にも1位通過2回でポイントを重ね、2位ブキャナンと4ポイント差にまで詰めた。しかし3名の選手を先行させてしまい、フィニッシュは4着2ポイント獲得にとどまり、総合2位でレースを終えた。
梶原は「ワールドカップで一緒に戦っている選手達なので、脚質も分かっている上で戦略を立てました。ニュージーランドや中国の選手は持久力があるので、逃がすよりは自分が前々で展開するように先手を打ちました。世界選手権で悔しい思いをして、この6ヶ月強化した点がしっかり力になっていると自信持つことが出来ました。世界にはもっと強い選手がいるので、勝ち方にもこだわって、自分自身を追い込むレースを心がけました」と振り返った。
ケイリン 河端と新田が制した男子、女子は小林が2着も無念の降格
JTC1 男子エリート・ケイリンを制したのは河端朋之(JPC) photo:Kensaku Sakai
JTC2 男子エリート・ケイリンを制したのは新田祐大(ドリームシーカーレーシング) photo:Kensaku Sakai
JTC1の男子エリート決勝には河端朋之(JPC)、脇本雄太(JPC)、新田祐大(ドリームシーカーレーシング)、松井宏佑(日本ナショナルチーム)の4人の日本勢が勝ち上がった。 決勝は先行した脇本を差し切って河端が優勝した。女子決勝はイ・ヘジン(韓国)が優勝し、小林優香(ドリームシーカーレーシング)が6位に入った。
JTC2の男子エリート決勝には新田、脇本、河端が勝ち上がり。最後は新田と脇本の戦いになり、僅差の争いを新田が制した。女子は世界チャンピオンのリー・ワイジー(香港)が優勝。小林が2着に入るも進路妨害の判定で6位降格となってしまった。
スプリント 男子はグレッツアー、女子は世界チャンピオン、リー・ワイジーが圧倒
男子エリート・スプリント JTC1、2共に制したマシュー・グレッツァー(オーストラリア) photo:Kensaku Sakai
JTC2 女子エリート・スプリント表彰式 リー・ワイジー(香港)がJTC1、2と2連勝 photo:Kensaku Sakai
男子エリートはJTC1とJTC2共にに日本でもおなじみの競輪短期登録選手マシュー・グレッツアー(オーストラリア)が優勝。女子エリートには現世界チャンピオンのリー・ワイジー(香港)が登場。JTC1とJTC2の2回共に予選から決勝まで一度も負けることなく、圧巻の走りで連勝を飾った。
リーはシーズン前に負傷し、練習を再開したのは数週間前からとのこと。オリンピックに向けて「200mのタイムも計画通り出す事が出来ているので、このままのペースで臨みたい」とコメントした。
ジュニア 6種目中5種目を日本勢が制覇
ジュニア 女子ポイントレースで他を圧倒した石田唯(日本ナショナルチーム) photo:Kensaku Sakai
ジュニア 男子スクラッチを制したのは伊澤将也(日本ナショナルチーム) photo:Kensaku Sakai
ジャパントラックカップでは男女ジュニアのレースも開催された。男女ともにJTC1ではスクラッチ、JTC2ではケイリンとポイントレースが開催された。合計6種目行われたジュニアレースは日本勢の大活躍となり、女子スクラッチを除く5種目で日本人選手の優勝となった。惜しくも優勝を逃した女子スクラッチだったが、終始レースを動かし続けたのは石田唯。最後のスプリントで先行を許しての3位となった。
女子ポイントレースで優勝した石田は「スクラッチでは何回か逃げを仕掛けたが逃げ切れず、苦手なスプリントで完敗だった。ポイントレースはしっかり逃げを決め、自分の得意な形で優勝できて良かった」と話した。
オリンピック金メダリストのホアン・リャネラスが来日
2度のオリンピック金メダリスト ホアン・リャネラス氏 photo:Satoru Kato
ナショナルチームの選手と一緒に走るホアン・リャネラス氏(中央グレーのジャージ) photo:Satoru Kato
ホワイトボードを使ってポジショニングなど具体的な指示をする photo:Satoru Kato
オリンピックのポイントレースで2度の金メダルを獲得し、マディソンとポイントレースで7度の世界チャンピオンとなったスペインのホアン・リャネラス氏が来日。ジャパントラックカップ直前の8月19日から21日の3日間、日本ナショナルチームの中距離選手の合宿でマディソンの指導をした。
練習の模様が公開された合宿最終日は、マディソンの実戦形式の走行が行われた。マディソンは交代のタイミングが勝負に大きく影響することから、ポイント周回を常に意識することや、交代する場所をメートル単位で指定するなど、細かな指示がリャネラス氏から選手に伝えられた。
バイクペーサーで実際のレースと同じペースをつくり、その後ろで交代の練習 photo:Satoru Kato
橋本英也、窪木一茂、今村駿介が交代のポジショニングを確認。どれが誰の手? photo:Satoru Kato
練習終了後、インタビューに応じたリャネラス氏は、「日本のナショナルチームの選手達はすごく力のある選手だと思う。経験は足りないが、基本がしっかりしていて、やる気があって前向きな点は素晴らしいと思う。
この3日間は、交代と走る時の位置、他の選手とのコミュニケーションの取り方を見た。短期間ではあったが、これを活かせば結果に結び付けられると思う。そのためには6日間レースなど様々なレースに出場することが必要。力がついて経験を積むことが出来る」と、日本人選手への期待を語った。
この合宿に参加した窪木一茂は、「教えてくれる内容がわかりやすいし、ハッキリと物事を言ってくれて曖昧がないから信じられる。スペイン人らしい優しさとおおらかさで接してくれるので良い雰囲気で合宿が出来た。スプリントのタイミングでの交代とか、声かけとか、教えてもらったことを箇条書きにしたら10個もあった。これを今後に活かしていきたい」と、得たものの多さを語った。
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3日間で開催されるジャパントラックカップは、UCI-1クラスの国際レース。初日が「ジャパントラックカップⅠ(以下、JTC1)」、2日目と3日目が「ジャパントラックカップⅡ(以下、JTC2)」として、連続した2つの大会として開催される。種目はスプリント・ケイリン・マディソン・オムニアムの4つ。JTC1ではこの4種目を1日で行い、JTC2では4種目を2日間に分けて行われた。
ジャパントラックカップの初開催は2014年。世界選手権に出場した国は次シーズンに自国での国際大会を開催しなければならず、本大会もそれに則りスタートした。以来、自国開催の国際大会でUCIポイントを獲得できるメリットと、世界トップの選手と国内選手との戦いを生で見ることができる数少ない大会の一つとして定着した。今年は伊豆ベロドロームが東京オリンピックに向けて改装中のため、日本競輪選手養成所内に今年完成した「JKA250」を使用しての開催。一般公開されない施設のため、異例の無観客試合となった。
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マディソン 強豪海外勢を相手に梶原・古山組が2位に食い込む
2人1組で交代しながら走り、獲得したポイントの合計を競うマディソン。交代時にチームメイトの手を掴んで前方に投げる「ハンドスリング」が見どころだ。
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JTC1の男子エリートは25km。レース前半にポイントを重ねたオーストラリアと、後半にポイントを加算したLXサイクリングチームがフィニッシュを前に同ポイントに並び、先着したLXサイクリングチームが優勝した。
日本勢は日本ナショナルチームの橋本英也・窪木一茂組、チームブリヂストンサイクリング(以下ブリヂストン)の今村駿介・近谷涼組、CSスリンガーの新村穣・小林泰正組の3チームが出場。日本ナショナルチームは序盤はオーストラリアとトップ争いをしたが、橋本の落車が響いて6位に終わった。ブリヂストンは集団を周回遅れにしてラップポイントを得るものの、5ポイント足りず4位。CSスリンガーは11位完走となった。
40kmで行われたJTC2はオーストラリアが優勝。日本勢は、日本ナショナルチームが窪木、近谷組、ブリヂストンが橋本・今村組と選手を入れ替え。CSスリンガーは新村、小林組がJTC1に続き出場。後半にポイントを重ねたブリヂストンが5位、日本ナショナルチームが6位、CSスリンガーは11位でレースを終えた。
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女子エリートには、アジア選手権2連覇中の梶原悠未、古山稀絵組が日本ナショナルチームとして出場。中村妃智、鈴木奈央組のJPCチーム、吉川美穂とスペインのマルガリータ・ロペス・ルル組んでライブガーデン・ビチステンレとして出場した。
JTC1のレースは、序盤からトップ通過を繰り返した中国ナショナルトラッククラブが圧勝。日本ナショナルチームが5位、JPCチームが7位、ライブガーデン・ビチステンレが8位となった。
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優勝を逃した梶原は「単純に優勝チームよりも技術、走力、戦術、全ての面で劣っていたことが敗因です。中国チームは個々の能力が昨年以上に強化されてきたと感じました。このままではアジア選手権での3連覇は厳しいと思うので、いろいろ考え直して挑みます」とコメントした。
オムニアム 五輪代表を争う窪木と橋本が対戦するも窪木に不運
スクラッチ・テンポレース・エリミネーション・ポイントレースの4つの種目の総合得点を争うオムニアム。男女共にJTC1とJTC2で各1回ずつレースが行われた。
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最終種目のポイントレースでは、窪木と総合2位のケテルを含む4人が集団をラップ。さらに窪木は得点が倍になるフィニッシュで1着を獲り、優勝を決めた。
「久しぶりに優勝することが出来て気持ちいいものだなと思いました」と喜びを語る窪木。今年のトラックシーズンに向けては「ロードからトラックへの移行が難しいところもあります。ハードスケジュールなので体調を整えることが大事。今シーズンから機材を新しくしたので、まずはそれに慣れる事から始めます。今回は試しながらだったが、慣れれば良い走りができると思います」とコメント。「オムニアムのオリンピック代表は橋本英也選手との戦いになる。2人は良い関係だと思うし、互いに刺激しあってオリンピックに向けて進んでいきたい」と意気込みを見せた。
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スクラッチでは窪木と橋本を含む3名が集団をラップし、窪木1位、橋本2位。テンポレースではラップを成功させて1位の橋本に対し、ラップできなかった窪木は9位。続くエリミネイションでは、残り7名の段階でペダルが外れるアクシデントに見舞われた窪木が除外。一方橋本は最後まで残って1位となる。
橋本が118ポイントで総合首位、窪木は92ポイントの6位で最終種目のポイントレース がスタート。ここでも両者の明暗が別れた。窪木はレース序盤に他の選手と接触して落車。直後は自分で動けず、担架で運び出されたが、幸いにも大事には至らなかった。対して橋本は首位を守りきって優勝。途中、総合3位のケニー・デ・ケテル(ベルギー)がラップするなどして3ポイント差まで詰め寄られるが、倍得点となるフィニッシュで1位を獲って逃げ切った。
優勝した橋本は、「ワールドカップを走る強豪と日本で走れるチャンスはめったにないので、自分らしい走りをして優勝できたら良いと思っていました。フィニッシュ前にケニー(・デ・ケテル)と同点になりましたが、スタッフからボードや声掛けで状況を把握できたおかげで最後まで冷静に走れたのが大きな勝因でした。今回の勝利はチームスタッフの勝利です」と笑顔を見せた。そして、「ワールドカップで金メダルを獲って、世界選手権でメダルを獲って、その勢いでオリンピックに向かいたい」と、コメントした。
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JTC2では、スクラッチ10位、テンポレース6位と出遅れ、エリミネイションで1位となるものの、総合3位で最後のポイントレースへ。序盤から2回連続でポイント周回を1位通過すると、
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梶原は「ワールドカップで一緒に戦っている選手達なので、脚質も分かっている上で戦略を立てました。ニュージーランドや中国の選手は持久力があるので、逃がすよりは自分が前々で展開するように先手を打ちました。世界選手権で悔しい思いをして、この6ヶ月強化した点がしっかり力になっていると自信持つことが出来ました。世界にはもっと強い選手がいるので、勝ち方にもこだわって、自分自身を追い込むレースを心がけました」と振り返った。
ケイリン 河端と新田が制した男子、女子は小林が2着も無念の降格
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JTC1の男子エリート決勝には河端朋之(JPC)、脇本雄太(JPC)、新田祐大(ドリームシーカーレーシング)、松井宏佑(日本ナショナルチーム)の4人の日本勢が勝ち上がった。 決勝は先行した脇本を差し切って河端が優勝した。女子決勝はイ・ヘジン(韓国)が優勝し、小林優香(ドリームシーカーレーシング)が6位に入った。
JTC2の男子エリート決勝には新田、脇本、河端が勝ち上がり。最後は新田と脇本の戦いになり、僅差の争いを新田が制した。女子は世界チャンピオンのリー・ワイジー(香港)が優勝。小林が2着に入るも進路妨害の判定で6位降格となってしまった。
スプリント 男子はグレッツアー、女子は世界チャンピオン、リー・ワイジーが圧倒
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男子エリートはJTC1とJTC2共にに日本でもおなじみの競輪短期登録選手マシュー・グレッツアー(オーストラリア)が優勝。女子エリートには現世界チャンピオンのリー・ワイジー(香港)が登場。JTC1とJTC2の2回共に予選から決勝まで一度も負けることなく、圧巻の走りで連勝を飾った。
リーはシーズン前に負傷し、練習を再開したのは数週間前からとのこと。オリンピックに向けて「200mのタイムも計画通り出す事が出来ているので、このままのペースで臨みたい」とコメントした。
ジュニア 6種目中5種目を日本勢が制覇


ジャパントラックカップでは男女ジュニアのレースも開催された。男女ともにJTC1ではスクラッチ、JTC2ではケイリンとポイントレースが開催された。合計6種目行われたジュニアレースは日本勢の大活躍となり、女子スクラッチを除く5種目で日本人選手の優勝となった。惜しくも優勝を逃した女子スクラッチだったが、終始レースを動かし続けたのは石田唯。最後のスプリントで先行を許しての3位となった。
女子ポイントレースで優勝した石田は「スクラッチでは何回か逃げを仕掛けたが逃げ切れず、苦手なスプリントで完敗だった。ポイントレースはしっかり逃げを決め、自分の得意な形で優勝できて良かった」と話した。
オリンピック金メダリストのホアン・リャネラスが来日



オリンピックのポイントレースで2度の金メダルを獲得し、マディソンとポイントレースで7度の世界チャンピオンとなったスペインのホアン・リャネラス氏が来日。ジャパントラックカップ直前の8月19日から21日の3日間、日本ナショナルチームの中距離選手の合宿でマディソンの指導をした。
練習の模様が公開された合宿最終日は、マディソンの実戦形式の走行が行われた。マディソンは交代のタイミングが勝負に大きく影響することから、ポイント周回を常に意識することや、交代する場所をメートル単位で指定するなど、細かな指示がリャネラス氏から選手に伝えられた。


練習終了後、インタビューに応じたリャネラス氏は、「日本のナショナルチームの選手達はすごく力のある選手だと思う。経験は足りないが、基本がしっかりしていて、やる気があって前向きな点は素晴らしいと思う。
この3日間は、交代と走る時の位置、他の選手とのコミュニケーションの取り方を見た。短期間ではあったが、これを活かせば結果に結び付けられると思う。そのためには6日間レースなど様々なレースに出場することが必要。力がついて経験を積むことが出来る」と、日本人選手への期待を語った。
この合宿に参加した窪木一茂は、「教えてくれる内容がわかりやすいし、ハッキリと物事を言ってくれて曖昧がないから信じられる。スペイン人らしい優しさとおおらかさで接してくれるので良い雰囲気で合宿が出来た。スプリントのタイミングでの交代とか、声かけとか、教えてもらったことを箇条書きにしたら10個もあった。これを今後に活かしていきたい」と、得たものの多さを語った。
マディソン 結果
男子 | JTC1 25km | JTC2 40km | ||
---|---|---|---|---|
1位 | LXサイクリングチーム(パク・サンホン/キム・ユロ) | 42p | オーストラリアナショナルチーム(キャメロン・スコット/レイ・ハワード) | 53p |
2位 | オーストラリアナショナルチーム(キャメロン・スコット/レイ・ハワード) | 38p | ベルギーナショナルチーム(ケニー・デ・ケテル/ロビー・ギス) | 44p |
3位 | ベルギーナショナルチーム(ケニー・デ・ケテル/ロビー・ギス) | 36p | 香港ナショナルチーム(チェン・キンロ/レン・チュンウィン) | 33p |
女子 | JTC1 20km | JTC2 20km | ||
1位 | 中国ナショナルトラッククラブ(ワン・シャオフェイ/リュウ・ジャリー) | 29p | 中国ナショナルトラッククラブ(ワン・シャオフェイ/リュウ・ジャリー) | 37p |
2位 | 香港ナショナルチーム(ヤン・チャンユ/パン・ヤオ) | 21p | 日本ナショナルチーム(梶原悠未/古山稀絵) | 25p |
3位 | ベルギーナショナルチーム(ロッタ・コペッキー/サリ・ボシット) | 16p | ベルギーナショナルチーム(ロッタ・コペッキー/サリ・ボシット) | 10p |
オムニアム 結果
男子 | JTC1 | JTC2 | ||
---|---|---|---|---|
1位 | 窪木 一茂(日本) | 157p | 橋本英也(日本) | 133p |
2位 | ケニー・デ・ケテル(ベルギー) | 140p | ケニー・デ・ケテル(ベルギー) | 127p |
3位 | レン・チュンウィン(香港) | 126p | 今村駿介(日本) | 126p |
女子 | JTC1 | JTC2 | ||
1位 | 梶原悠未(日本) | 177p | ラシュリー・ブキャナン(ニュージーランド) | 144p |
2位 | ワン・シャオフェイ(中国ナショナルトラッククラブ) | 166p | 梶原悠未(日本) | 142p |
3位 | ラシュリー・ブキャナン(ニュージーランド) | 135p | リー・シー・ウェン(香港) | 126p |
ケイリン 結果
男子 | JCT1 | JCT2 | ||
---|---|---|---|---|
1位 | 河端朋之(JPC) | 9秒969 | 新田祐大(ドリームシーカーレーシング) | 10秒108 |
2位 | 脇本雄太(JPC) | 脇本雄太(JPC) | ||
3位 | ジャイ・アンスタサウィット(タイ) | シェーン・パーキンス(ガスプロム-ルスヴェロ) | ||
女子 | JTC1 | JTC2 | ||
1位 | イ・ヘジン(韓国) | 11秒364 | リー・ワイ・ジー(香港) | 11秒287 |
2位 | リー・ホイ・ヤン・ジェシカ(香港) | イ・ヘジン(韓国) | ||
3位 | ケイティ・マーシャント(イギリス) | ケイティ・マーシャント(イギリス) |
スプリント 結果
男子 | JCT1 | JCT2 | ||
---|---|---|---|---|
1位 | マシュー・グレッツァー(オーストラリア) | 9秒756 | マシュー・グレッツァー(オーストラリア) | 9秒827 |
2位 | ネイサン・ハート(オーストラリア) | 9秒802 | デニス・ドミトリフ(ガスプロム-ルスヴェロ) | 9秒851 |
3位 | 脇本雄太(JPC) | 9秒849 | ジャック・カーリン(チームインスパイアード) | 9秒877 |
女子 | JTC1 | JTC2 | ||
1位 | リー・ワイ・ジー(香港) | 10秒638 | リー・ワイ・ジー(香港) | 10秒700 |
2位 | ステファニー・モートン(オーストラリア) | 10秒732 | シモーナ・クルペツカイテ(リトアニア) | 11秒111 |
3位 | シモーナ・クルペツカイテ(リトアニア) | 11秒021 | ケイティ・マーシャント(イギリス) | 10秒935 |
ジュニア スクラッチ結果
男子 10km | 女子 7.5km | |||
---|---|---|---|---|
1位 | 伊澤将也(日本) | 15分30秒492 | チン・インシャン(香港) | 12分37秒053 |
2位 | リー・カヘイ(香港) | ジャロエンサプヤノン・ファジリ(タイ) | ||
3位 | カエオノイ・タク(タイ) | 石田唯(日本) |
ジュニア ポイントレース 結果
男子 15km | 女子 7.5km | |||
---|---|---|---|---|
1位 | 安達光伸(日本) | 37p | 石田唯(日本) | 43p |
2位 | カエオノイ・タク(タイ) | 29p | アウ・ホイ・マン(マカオ) | 12p |
3位 | ケアウトン・ウィサワコン(タイ) | 16p | ジャロエンサプヤノン・ファジリ(タイ) | 9p |
ジュニア ケイリン結果
男子 | 女子 | |||
---|---|---|---|---|
1位 | 日高裕太(日本) | 10秒395 | 金田舞夏(日本) | 12秒682 |
2位 | シュン・チュンフン(台北) | アウ・ホイ・マン(マカオ) | ||
3位 | 大橋真慧(日本) | ジトマ・ヤオワレ(タイ) |
text&photo:Kensaku Sakai, Satoru Kato
edit:Satoru Kato
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