2019/07/17(水) - 11:11
総合2位と総合3位という理想的なポジションにつけ、チームとして7度目の総合優勝に向けて順調にコマを進めるチームイネオス。ツール・ド・フランスが1回目の休息日を迎えた7月16日に行われた記者会見で、前年度覇者ゲラント・トーマス(イギリス)は「目標はチームの総合優勝」であると改めて強調した。
ベルギー・ブリュッセルでの開幕から休みなく10日間走り続け、フランス南部のオクシタニー地域圏アルビで最初の休息日を迎えた第106回ツール。アルビから南に車で45分ほどのカストルのホテルで、5年連続7度目の総合優勝に向けて好調ぶりを示しているチームイネオスが定例の記者会見を開いた。
会見には選手8名全員とデイブ・ブレイルスフォードGMが出席。トレーニングライドを前に設けられた15分間という短い時間(+個別インタビューが15分間)のため、ゲラント・トーマス(イギリス)とエガン・ベルナル(コロンビア)、ブレイルスフォードGMの3名に質問が集中した。
「すべての要素がうまく噛み合って、良い位置で最初の休息日を迎えることができた。素晴らしい10日間だった。とても良いスタートを切ったけど、まだ難関ステージが多く残っているので全く油断はできない」。イギリス、フランス、コロンビアの報道陣が多く詰め掛けた会見で、ディフェンディングチャンピオンのトーマスはいつもと変わらないウェールズ訛りの英語で答えた。
1年前の記者会見ではクリストファー・フルーム(イギリス)に質問が偏ったが、今回はトーマスの質疑応答に時間が割かれた。しかしトーマス自身は「今日のようなメディア対応の際に、フルームではなく自分に多くの質問が集まることを除いて、他のことはいたって何も変わらない。ソーシャルメディアや外野の意見は見ないようにしているし、自分のやり方でツールを走っている。質問の数が増えているだけで、状況を楽しむこともできている」とリラックスしている。
第10ステージを終えてトーマスはマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)と1分12秒差の総合2位。さらにベルナルが1分16秒差の総合3位につけている。チームイネオスが順調にレースを進めている秘訣について聞かれたトーマスは「ツールで総合優勝を飾るというただ一つの目標に向かって走っているから」と答える。
「例えばジョージ・ベネットは総合4位だったにもかかわらず、(第10ステージの)重要な局面でボトルを取るためにチームカーに下がっていた。彼らにはステージ優勝狙いのスプリンターがいて、他のチームは逃げに選手を送り込んでいた。その一方でチームイネオスは総合優勝という一つの目標に的を絞って走っている。その違いは大きな差を生むと思う」。その言葉通り、チームイネオスは2013年のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を最後にスプリンター系選手をメンバー入りさせていない。
トーマスは第1ステージのフィニッシュ手前で落車に巻き込まれながらも無傷で切り抜け、第2ステージのチームタイムトライアルではユンボ・ヴィズマ以外のチームから総合リードを奪うことに成功。第3ステージのエペルネーの登りフィニッシュではベルナルから5秒遅れたが、第6ステージの1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでは抜群の登坂力でライバルを突き放した。
第8ステージでトーマスはピノとアラフィリップに先行を許したものの、今大会2度目の落車から無事に復帰して大きくタイムを失わず。そして、第10ステージの横風集団分裂によって多くのライバルたちから1分40秒のタイムを奪うことに成功している。
「昨日(第10ステージ)はチームにとって素晴らしい1日だった。レースでは何が起こるか分からないので、常に警戒心を解いてはならないということを示していたと思う。確かに10回に9回は何も起こらない。ただのストレスフルな1日と片付けられることも多いけど、昨日のようなこと(集団分裂)も起こるんだ。チームにはグランツールでの経験豊かな選手が大勢いて、まさに勝つためのチームを形成している」と、総合2位で折り返し地点を曲がったトーマス。
現在マイヨブランを着用するベルナルは「白色のジャージよりも黄色ジャージを優先する。それがチームの目標だから」と、現在着用するジャージには固執せずにチームの勝利を狙うと答える。開幕時よりも幾分リラックスした印象のベルナルは基本的に英語で受け答えるが、内容が濃くなると自然とスペイン語に切り替わる。
マイヨジョーヌに袖を通すことなく、つまり総合リーダーチームとしての責務を負うことなくチーム力を温存しながら、アラフィリップ以外のライバルたちからリードを奪っているトーマスとベルナル。具体的には、トーマスはクライスヴァイクから15秒、ブッフマンから33秒、マスから34秒、イェーツから35秒、キンタナから52秒、マーティンから57秒、そして横風集団分裂脱落組のピノから1分21秒、ウランから2分06秒、フルサングから2分10秒、そしてポートから2分47秒のリードを得ている。
当然フランスメディアからはアラフィリップについての質問が飛ぶ。「アルプスやピレネーの山岳ステージを前にライバルたちからリードを得ているのは本当にボーナスのようなもの。もちろんアラフィリップとのタイム差が1分差ではなく数秒差の方がいいけど、開幕の時点で総合ライバルの名前にアラフィリップの名前は挙がっていなかった。未だかつて総合成績を狙って走ったことのない彼が数秒ずつリードを広げても今は気にしていない」とトーマスは語る。
アラフィリップは2016年ツール総合41位、そして2018年ツール総合33位。「でもこの先のステージでもリードを広げるようであれば十分に警戒する存在になる。タイムトライアルや本格的な山岳ステージを終えて、次の休息日を迎える頃には状況がもっと明確になっているはず。彼自身も能力の限界を知らないと思うので、楽しみな2週目になりそうだ」と語り、トーマスはベルナルとともにTTバイク(他のメンバーはロードバイク)で数時間の軽いトレーニングライドに出かけていった。
text:Kei Tsuji
ベルギー・ブリュッセルでの開幕から休みなく10日間走り続け、フランス南部のオクシタニー地域圏アルビで最初の休息日を迎えた第106回ツール。アルビから南に車で45分ほどのカストルのホテルで、5年連続7度目の総合優勝に向けて好調ぶりを示しているチームイネオスが定例の記者会見を開いた。
会見には選手8名全員とデイブ・ブレイルスフォードGMが出席。トレーニングライドを前に設けられた15分間という短い時間(+個別インタビューが15分間)のため、ゲラント・トーマス(イギリス)とエガン・ベルナル(コロンビア)、ブレイルスフォードGMの3名に質問が集中した。
「すべての要素がうまく噛み合って、良い位置で最初の休息日を迎えることができた。素晴らしい10日間だった。とても良いスタートを切ったけど、まだ難関ステージが多く残っているので全く油断はできない」。イギリス、フランス、コロンビアの報道陣が多く詰め掛けた会見で、ディフェンディングチャンピオンのトーマスはいつもと変わらないウェールズ訛りの英語で答えた。
1年前の記者会見ではクリストファー・フルーム(イギリス)に質問が偏ったが、今回はトーマスの質疑応答に時間が割かれた。しかしトーマス自身は「今日のようなメディア対応の際に、フルームではなく自分に多くの質問が集まることを除いて、他のことはいたって何も変わらない。ソーシャルメディアや外野の意見は見ないようにしているし、自分のやり方でツールを走っている。質問の数が増えているだけで、状況を楽しむこともできている」とリラックスしている。
第10ステージを終えてトーマスはマイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)と1分12秒差の総合2位。さらにベルナルが1分16秒差の総合3位につけている。チームイネオスが順調にレースを進めている秘訣について聞かれたトーマスは「ツールで総合優勝を飾るというただ一つの目標に向かって走っているから」と答える。
「例えばジョージ・ベネットは総合4位だったにもかかわらず、(第10ステージの)重要な局面でボトルを取るためにチームカーに下がっていた。彼らにはステージ優勝狙いのスプリンターがいて、他のチームは逃げに選手を送り込んでいた。その一方でチームイネオスは総合優勝という一つの目標に的を絞って走っている。その違いは大きな差を生むと思う」。その言葉通り、チームイネオスは2013年のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を最後にスプリンター系選手をメンバー入りさせていない。
トーマスは第1ステージのフィニッシュ手前で落車に巻き込まれながらも無傷で切り抜け、第2ステージのチームタイムトライアルではユンボ・ヴィズマ以外のチームから総合リードを奪うことに成功。第3ステージのエペルネーの登りフィニッシュではベルナルから5秒遅れたが、第6ステージの1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでは抜群の登坂力でライバルを突き放した。
第8ステージでトーマスはピノとアラフィリップに先行を許したものの、今大会2度目の落車から無事に復帰して大きくタイムを失わず。そして、第10ステージの横風集団分裂によって多くのライバルたちから1分40秒のタイムを奪うことに成功している。
「昨日(第10ステージ)はチームにとって素晴らしい1日だった。レースでは何が起こるか分からないので、常に警戒心を解いてはならないということを示していたと思う。確かに10回に9回は何も起こらない。ただのストレスフルな1日と片付けられることも多いけど、昨日のようなこと(集団分裂)も起こるんだ。チームにはグランツールでの経験豊かな選手が大勢いて、まさに勝つためのチームを形成している」と、総合2位で折り返し地点を曲がったトーマス。
現在マイヨブランを着用するベルナルは「白色のジャージよりも黄色ジャージを優先する。それがチームの目標だから」と、現在着用するジャージには固執せずにチームの勝利を狙うと答える。開幕時よりも幾分リラックスした印象のベルナルは基本的に英語で受け答えるが、内容が濃くなると自然とスペイン語に切り替わる。
マイヨジョーヌに袖を通すことなく、つまり総合リーダーチームとしての責務を負うことなくチーム力を温存しながら、アラフィリップ以外のライバルたちからリードを奪っているトーマスとベルナル。具体的には、トーマスはクライスヴァイクから15秒、ブッフマンから33秒、マスから34秒、イェーツから35秒、キンタナから52秒、マーティンから57秒、そして横風集団分裂脱落組のピノから1分21秒、ウランから2分06秒、フルサングから2分10秒、そしてポートから2分47秒のリードを得ている。
当然フランスメディアからはアラフィリップについての質問が飛ぶ。「アルプスやピレネーの山岳ステージを前にライバルたちからリードを得ているのは本当にボーナスのようなもの。もちろんアラフィリップとのタイム差が1分差ではなく数秒差の方がいいけど、開幕の時点で総合ライバルの名前にアラフィリップの名前は挙がっていなかった。未だかつて総合成績を狙って走ったことのない彼が数秒ずつリードを広げても今は気にしていない」とトーマスは語る。
アラフィリップは2016年ツール総合41位、そして2018年ツール総合33位。「でもこの先のステージでもリードを広げるようであれば十分に警戒する存在になる。タイムトライアルや本格的な山岳ステージを終えて、次の休息日を迎える頃には状況がもっと明確になっているはず。彼自身も能力の限界を知らないと思うので、楽しみな2週目になりそうだ」と語り、トーマスはベルナルとともにTTバイク(他のメンバーはロードバイク)で数時間の軽いトレーニングライドに出かけていった。
text:Kei Tsuji