2019/06/12(水) - 16:52
アメリカのウィスコンシン州に拠点を置くトレックよりリリースされているグラベルロードの「Checkpoint ALR5」をインプレッション。スライダー式エンドを採用し、ジオメトリー調整が行えるマルチパーパスバイクに仕上がっている。
欧米、特に北米で熱が高まる一方のグラベルというジャンルにトレックが参入するのは必然と言えよう。広大なグラベル環境、シクロクロスレースを本社で開催した事によるオフロード熱への高まりの実感、そして何よりもトレックがグラベルライドが魅力的であると知っていることは、今回紹介するCheckpointシリーズの誕生を後押ししている。
技術的な面でも、トレックは快適性を追求する手を緩めること無く、Isospeedの開発とアップデートを年々繰り返していき、荒れた路面でもコンフォータブルに走るバイクを作り続けてきた。特に、エンデュランスロードDomeneはパヴェで性能を磨き上げ、シクロクロスバイクBooneは絶対王者であったスヴェン・ネイスとともに闘い続けた結果、グラベルというジャンルをカバーできる知見とノウハウは既に手にしていたのだ。それらが結実し、生み出されたのがCheckpointである。
トレックはグラベルバイクについて「舗装路から砂利道までと、多用途でさまざまな路面を走れるバイク。さながらマルチタレントと言ったところ」と説明する。グラベルバイクはドロップバーとエンデュランスロードのジオメトリーを備え、マウンテンバイク並みの太いタイヤを履いていることが特徴ともトレックは言う。
CheckpointのジオメトリーはエンデュランスロードDomane、シクロクロスBooneのどちらとも似ている。CheckpointとBooneは非常に似通っており、リーチとスタック、ホイールベース、チェーンステー長が共通する。一方で、シートチューブアングルはBooneの方が立てられており、BB下がりはChackpointの方が低く作られている。Checkpointはフォークオフセットは多く、トレイル値も小さい。この部分がレースバイクとグラベルロードとの違いなのだろう。
低BBによる低重心化が安定性を生み出しているが、反応性やハンドリングに影響を与える部分はほぼ共通しているため、レースバイクに近いクイックな乗り心地を感じられるのではないだろうか。グラベルバイクだからと言って安定性をジオメトリーで過剰に求めていないのがCheckpointだ。
トレックの説明の通り、Checkpointがグラベルバイクたる部分はタイヤにもありそうだ。45Cという圧倒的なタイヤクリアランスを設けており、現在スタンダードとなっている40Cをいとも簡単に飲み込んでしまう。40Cのブロックタイヤを装着すれば引き締まったグラベルだけではなく、簡単なトレイルライドも楽しめるはず。
「ギアや飲み物などを運びやすくするよう、数多くのマウントを備えている」こともトレックの言うグラベルバイクだ。Checkpointにはシートチューブとダウンチューブの両面にボトルケージ台座が備えられているため、長距離ライドでもツールケースとダブルボトルで臨むことが可能。ラックやフェンダー用のアイレットももちろん設けられているため、パニアスタイルのツーリングもカバー範囲内だ。
今回インプレッションを行ったのはシリーズの中からCheckpoint ALR5というアルミフレーム完成車だ。このモデルのフレームには300Alpha Alminiumという、軽量アルミロードEmonda ALRに使用される素材を採用。ハイドロフォーミングによって複雑なチューブシェイプに成形することで、グラベルライドに適した走行感を実現している。
また、フレームのリアエンドにはStranglehold ドロップアウトを用いている。これはエンドを15mmスライドさせられる機構であり、シングルスピード化を容易に行えるようにする。また、チェーンステー長やホイールベースを若干変更し、走行感の味付けを変えることが可能だ。フォークはカーボンブレードのモデルを使用している。対応アクスルはスタンダードとなった12mmスルーアクスル。
コンポーネントはシマノ105がメイン。ブレーキシステムにはシマノのBR-R7070という105グレードの油圧システムを導入している。クランクセットは50/34Tのフロントダブルで、リアは11-34Tの11速仕様。フロントダブルを採用したことで、グラベルまでのアプローチや、舗装路メインのツーリングなどでロードバイクのように走らせることが可能となっている。
そんなトレックのグラベルバイクCheckpoint ALR5をサイクルハウスMIKAMIの店主・三上和志さんがインプレッションする。シクロクロスやMTBなどオフロードの造詣が深い三上さんはどのように評価するのだろうか。
― インプレッション
「ウィークデーは通勤、週末はツーリングを楽しめる相棒的なバイク」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
ブレーキに油圧システムを導入していたり、蛍光イエローのカラーでペイントしていたりするので、通勤ライダーの安全性を考えたバイクとして非常におすすめできる一台ですね。リアセンターの長さを調節することができるので、都内など信号の多い所に住んでいる方がウィークデーの通勤で使いたい場合はリアセンターを短くしてキビキビ走るセッティングとしておくと良いでしょう。
週末になって長時間をかけて遠くまでサイクリングしてみたい時はリアセンターを長くする使い方もできます。5分もあればエンドの調整作業は終わるので、バイクの性能を活かすためにも、調整式ドロップエンドは使わないと勿体無いので、ぜひ使ってもらいたいと感じましたね。
ランドナーのようにラックやパニアを組み合わせる使い方を想定し、フレームにはネジで固定するキャリアを装着できるようになっていて、今どきのバイクパッキングに対応したようなダボ穴も数多く用意されています。先程言ったようにウィークデーは通勤、ウィークエンドはツーリングを楽しめるバイクになっています。そのようなライフスタイルの相棒としてうってつけのバイクです。
走りの面ではハンドリングの安定感が光る部分ですね。このバイクはクイックなハンドリングを楽しもうというものではなく、高速でのコーナリング時の安定感にステータスを振り分けているので、グラベルの高速コーナーなどは安心して曲がっていくことができます。特にリアセンターを伸ばした状態では、前輪と後輪どちらも地面を掴んでいる感覚はありますね。
バイクの安定感は通勤などで暗い中を走る時にも安心感をもたらしてくれるでしょう。というのも、ピーキーなハンドリングのバイクで何かを回避するためにハンドルを切る怖さを考えると、Checkpointのような安定感のあるバイクの方が危険回避も行いやすいんじゃないかと思います。
また、低速から高速までどのスピード域でもブレーキでのコントロール下にあるので、安心してダートをくだることができます。105の油圧システムを使用すると価格が高くなってしまいますが、それをあえて採用しているのは安全性に気を使っているのではないかと思います。グレードとしても105で十分ですし、もし長いダウンヒルを視野に入れるならば、フィン付きのローターに変えるなど後々のアップグレードで対応できます。
ただ、フレーム全体としてはアルミならではの硬さが目立つようです。レスポンスが良いのでハンドル周りの硬さは個人的には気にならないのですが、Checkpointに乗るシチュエーションを考えると剛性感が高いかなと思います。Domaneで使用しているフロントのIso Speedという技術を持っているのにあえて採用しない潔さを考えると、このバイクにはガンガン使える耐久性を求めていたのでしょう。多少転んでしまっても壊れないという安心感はあるので、気兼ねなく乗っても良いでしょう。
アルミフレームに油圧ディスクブレーキが搭載されて22万円、通勤からツーリングまで使えるオールマイティなバイクという事を考えても、Checkpointはおすすめできるバイクだと思いましたね。
トレック Checkpoint ALR5
フレーム:300 Series Alpha Aluminum, BB86.5, Stranglehold dropouts, 12mm thru axle
フォーク:Checkpoint carbon disc
コンポーネント:Shimano 105
ブレーキ:Shimano BR-R7070 flat mount hydraulic disc
タイヤ:Bontrager GR1 Comp, 60tpi, wire bead, 700x40c
サイズ:49、52、54、56、58
価格:213,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI HP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANAO
欧米、特に北米で熱が高まる一方のグラベルというジャンルにトレックが参入するのは必然と言えよう。広大なグラベル環境、シクロクロスレースを本社で開催した事によるオフロード熱への高まりの実感、そして何よりもトレックがグラベルライドが魅力的であると知っていることは、今回紹介するCheckpointシリーズの誕生を後押ししている。
技術的な面でも、トレックは快適性を追求する手を緩めること無く、Isospeedの開発とアップデートを年々繰り返していき、荒れた路面でもコンフォータブルに走るバイクを作り続けてきた。特に、エンデュランスロードDomeneはパヴェで性能を磨き上げ、シクロクロスバイクBooneは絶対王者であったスヴェン・ネイスとともに闘い続けた結果、グラベルというジャンルをカバーできる知見とノウハウは既に手にしていたのだ。それらが結実し、生み出されたのがCheckpointである。
トレックはグラベルバイクについて「舗装路から砂利道までと、多用途でさまざまな路面を走れるバイク。さながらマルチタレントと言ったところ」と説明する。グラベルバイクはドロップバーとエンデュランスロードのジオメトリーを備え、マウンテンバイク並みの太いタイヤを履いていることが特徴ともトレックは言う。
CheckpointのジオメトリーはエンデュランスロードDomane、シクロクロスBooneのどちらとも似ている。CheckpointとBooneは非常に似通っており、リーチとスタック、ホイールベース、チェーンステー長が共通する。一方で、シートチューブアングルはBooneの方が立てられており、BB下がりはChackpointの方が低く作られている。Checkpointはフォークオフセットは多く、トレイル値も小さい。この部分がレースバイクとグラベルロードとの違いなのだろう。
低BBによる低重心化が安定性を生み出しているが、反応性やハンドリングに影響を与える部分はほぼ共通しているため、レースバイクに近いクイックな乗り心地を感じられるのではないだろうか。グラベルバイクだからと言って安定性をジオメトリーで過剰に求めていないのがCheckpointだ。
トレックの説明の通り、Checkpointがグラベルバイクたる部分はタイヤにもありそうだ。45Cという圧倒的なタイヤクリアランスを設けており、現在スタンダードとなっている40Cをいとも簡単に飲み込んでしまう。40Cのブロックタイヤを装着すれば引き締まったグラベルだけではなく、簡単なトレイルライドも楽しめるはず。
「ギアや飲み物などを運びやすくするよう、数多くのマウントを備えている」こともトレックの言うグラベルバイクだ。Checkpointにはシートチューブとダウンチューブの両面にボトルケージ台座が備えられているため、長距離ライドでもツールケースとダブルボトルで臨むことが可能。ラックやフェンダー用のアイレットももちろん設けられているため、パニアスタイルのツーリングもカバー範囲内だ。
今回インプレッションを行ったのはシリーズの中からCheckpoint ALR5というアルミフレーム完成車だ。このモデルのフレームには300Alpha Alminiumという、軽量アルミロードEmonda ALRに使用される素材を採用。ハイドロフォーミングによって複雑なチューブシェイプに成形することで、グラベルライドに適した走行感を実現している。
また、フレームのリアエンドにはStranglehold ドロップアウトを用いている。これはエンドを15mmスライドさせられる機構であり、シングルスピード化を容易に行えるようにする。また、チェーンステー長やホイールベースを若干変更し、走行感の味付けを変えることが可能だ。フォークはカーボンブレードのモデルを使用している。対応アクスルはスタンダードとなった12mmスルーアクスル。
コンポーネントはシマノ105がメイン。ブレーキシステムにはシマノのBR-R7070という105グレードの油圧システムを導入している。クランクセットは50/34Tのフロントダブルで、リアは11-34Tの11速仕様。フロントダブルを採用したことで、グラベルまでのアプローチや、舗装路メインのツーリングなどでロードバイクのように走らせることが可能となっている。
そんなトレックのグラベルバイクCheckpoint ALR5をサイクルハウスMIKAMIの店主・三上和志さんがインプレッションする。シクロクロスやMTBなどオフロードの造詣が深い三上さんはどのように評価するのだろうか。
― インプレッション
「ウィークデーは通勤、週末はツーリングを楽しめる相棒的なバイク」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
ブレーキに油圧システムを導入していたり、蛍光イエローのカラーでペイントしていたりするので、通勤ライダーの安全性を考えたバイクとして非常におすすめできる一台ですね。リアセンターの長さを調節することができるので、都内など信号の多い所に住んでいる方がウィークデーの通勤で使いたい場合はリアセンターを短くしてキビキビ走るセッティングとしておくと良いでしょう。
週末になって長時間をかけて遠くまでサイクリングしてみたい時はリアセンターを長くする使い方もできます。5分もあればエンドの調整作業は終わるので、バイクの性能を活かすためにも、調整式ドロップエンドは使わないと勿体無いので、ぜひ使ってもらいたいと感じましたね。
ランドナーのようにラックやパニアを組み合わせる使い方を想定し、フレームにはネジで固定するキャリアを装着できるようになっていて、今どきのバイクパッキングに対応したようなダボ穴も数多く用意されています。先程言ったようにウィークデーは通勤、ウィークエンドはツーリングを楽しめるバイクになっています。そのようなライフスタイルの相棒としてうってつけのバイクです。
走りの面ではハンドリングの安定感が光る部分ですね。このバイクはクイックなハンドリングを楽しもうというものではなく、高速でのコーナリング時の安定感にステータスを振り分けているので、グラベルの高速コーナーなどは安心して曲がっていくことができます。特にリアセンターを伸ばした状態では、前輪と後輪どちらも地面を掴んでいる感覚はありますね。
バイクの安定感は通勤などで暗い中を走る時にも安心感をもたらしてくれるでしょう。というのも、ピーキーなハンドリングのバイクで何かを回避するためにハンドルを切る怖さを考えると、Checkpointのような安定感のあるバイクの方が危険回避も行いやすいんじゃないかと思います。
また、低速から高速までどのスピード域でもブレーキでのコントロール下にあるので、安心してダートをくだることができます。105の油圧システムを使用すると価格が高くなってしまいますが、それをあえて採用しているのは安全性に気を使っているのではないかと思います。グレードとしても105で十分ですし、もし長いダウンヒルを視野に入れるならば、フィン付きのローターに変えるなど後々のアップグレードで対応できます。
ただ、フレーム全体としてはアルミならではの硬さが目立つようです。レスポンスが良いのでハンドル周りの硬さは個人的には気にならないのですが、Checkpointに乗るシチュエーションを考えると剛性感が高いかなと思います。Domaneで使用しているフロントのIso Speedという技術を持っているのにあえて採用しない潔さを考えると、このバイクにはガンガン使える耐久性を求めていたのでしょう。多少転んでしまっても壊れないという安心感はあるので、気兼ねなく乗っても良いでしょう。
アルミフレームに油圧ディスクブレーキが搭載されて22万円、通勤からツーリングまで使えるオールマイティなバイクという事を考えても、Checkpointはおすすめできるバイクだと思いましたね。
トレック Checkpoint ALR5
フレーム:300 Series Alpha Aluminum, BB86.5, Stranglehold dropouts, 12mm thru axle
フォーク:Checkpoint carbon disc
コンポーネント:Shimano 105
ブレーキ:Shimano BR-R7070 flat mount hydraulic disc
タイヤ:Bontrager GR1 Comp, 60tpi, wire bead, 700x40c
サイズ:49、52、54、56、58
価格:213,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI HP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANAO
リンク
Amazon.co.jp