2019/05/28(火) - 06:17
ジロ・デ・イタリア最後の休息日を迎え、最終週を前にしたタイミングで初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)にインタビュー。「この2週間でイタリアに僕が残した影響は、ステージ優勝した他の海外選手よりも大きいと自覚しています。そういう意味では満足している」と語る初山に現在の状態や最終週についての思いを聞いた。
第15ステージ終了後、フィニッシュ地点コモからチームバスで1時間半ほど移動し、ベルガモ近郊の山間のホテルで休息日を過ごしたNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネの選手たち。休息日前夜はいつもの大盛りパスタではなく、ピッツァなど好きなものを食べ、飲み、気分的にリフレッシュしたという。
休息日はあいにくの雨に見舞われたため、選手たちはローラー台で1時間ほど汗を流した。第3ステージに続いて第10ステージでも逃げを試みた初山は、厳しい山岳ステージをいずれもグルペット内で終え、3週目に駒を進めている。ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア)のリタイアによってフアンホセ・ロバト(スペイン)とルームメイトとなった初山に話を聞いた。
ここまで2週間走ってきて、まだ身体は動いていますか?
毎日ステージの前半は身体が動かなくて、中盤になってようやく動いてくるんです。昨日もローラーでアップして固まった筋肉をほぐしたつもりだったんですが、身体が動かなかった。身体が温まってしまえば問題ないんですが、スロースターターの身体になってしまっています。こんなことは今までなかったので、未知の領域を走っているので自分でも分からない状態です。
体調や胃腸の具合は?
幸運なことにここまで問題ないですね。転んでもないし体調も崩してない。これまで走った一番長いステージレースが9日間のツール・ド・スイスだったので、未知の領域に入っています。大会4日目の時点で「無理だろ」と思いましたが、一日一日走り続けて今に至ります。睡眠時間が足りないということもない。
日によってパワーが出る時もあれば出ない時もある。体感的にも、数字的にも、後半に入ってからみんなパワーが出ていないです。でもトップの選手は変わらない数字を出していると思います。ニバリはきっとこんなに疲れていないとチームメイトたちと話しています。
ここまで疲れるなんてそうそうないこと。3週間走った後、どのぐらいの休息が必要なのかさっぱり分からないですね。誰にでもできる経験じゃないことは分かっていますが、ワクワクはしていないです。今はとにかく毎日こなしていくしかない。
第13ステージのフィニッシュ後の疲労具合が印象的でしたが
「こんなにきついのに明日もきついのか」という気持ちは2週間前の大会初日から毎日ずっとあります(笑)でも一番きつかったのは第13ステージですね。距離が200km近くあって、登りばかりだったのできつかった。しかもスタートから最初の2時間ずっときつくて食べる余裕がなくて、補給が足りなかったのもきつい要因でした。ジェルは摂りましたけど、アルミホイルを開いてジャムパンもぐもぐするようなことは物理的に出来なかった。
山岳ステージでのグルペット形成のタイミングは?
一番わかりやすい目安になっているのはデマール(グルパマFDJ)とチモライ(イスラエルサイクリングアカデミー)です。チモライはフランス語も喋るし、グルパマFDJにはグアルニエーリもいるし、彼らが中心になっている。でもできることなら彼らよりも前の集団に入って、後で合流する形でグルペットに入りたい。できるだけ大きなグルペットに入るようにしています。
「タイムがやばい、ペースを上げないとやばい」と思っても、自分でどうこうできるわけではないので、ペースは他のチームに任せています。グルペットに入っていれば楽なように見えるかもしれませんが、決してそうではなく、下りはめちゃくちゃ攻めるし、平坦路がとにかく速い。スプリンターの大柄なリードアウトマンたちが前を引くので、僕もアウタートップをぶんぶん回す。実際に第14ステージ後半の平坦区間はメイン集団よりグルペットの方が速かったらしいです。登りのペースに関しては、決定的に身体が止まってしまうような状況にならない限り大丈夫ですね。もちろん楽なペースではないですが。
カンペナールツ(ロット・スーダル)は元気です。僕が序盤に脱落した第14ステージで集団に追いついてから1級山岳の登りが始まり、彼のペーシングで他の選手たちを追い抜きながら前の集団に入ることができたんです。すると、彼はそのまま頂上まで踏んで行った。彼はほぼ最後尾にいたのにステージ60位ぐらい(56位)でフィニッシュしている。デヘント(ロット・スーダル)もそんな走りをしていますね。わざとなのか分からないけど、前半に遅れて、トレーニングのために決めた時間を踏んでいるような。
3週間の完走が見えてきた?
開幕から2週間走った今でも、個人的にはやはり完走はあまり意識していません。3週間走りきって満足感や達成感を果たして本当に得られるのかどうかまだ分からないです。ただ、本気で僕の完走を願って応援してくれているファンやスポンサーがいて、彼らのことを思うとリタイアするわけにはいかないという気持ちもある。
第14ステージ序盤の山岳で遅れた時も「リタイアしたら楽になるんだよな、でも後味悪いよな」と思いながら追走していたら前で逃げが決まって、集団のペースが落ちたので復帰できた。その日はどうやってたどり着いたのか分からないような山の中に日本人の観客の方が沢山いて驚きました。いきなり日本語が飛んできて励みになりました。
ただ、この2週間でイタリアに僕が残した影響は、ステージ優勝した他の海外選手よりも大きいと自覚しています。そういう意味では満足している。前半ステージでグルペットの中で走っていると、沿道から聞こえてくるのは「ヴィヴィアーニ」か「初山」でしたから。やはり第3ステージの単独逃げのインパクトが大きかった。
その満足感の次にあるステップは?
一回家に帰って、Amazonで注文した椎名林檎のCDを聴きながら考えさせてください(笑)「完走にこだわらないのでもう一回逃げてやろう」というような身体の状態ではない。開幕前にも聞かれたんですが、ジロは「このステージを狙いたい」と自分から言えるような次元のレースではないです。
第16ステージのガヴィア峠がなくなったことはチームの中で話題になりましたが、ステージが厳しいことには変わりないので、あまり気にしていません。それよりもルームメイトのなったロバトから「モルティローロ峠はめちゃくちゃきついぞ」と言われています。僕の場合はモルティローロ峠にたどり着けるかどうかが問題です。
text&photo:Kei Tsuji in Bergamo, Italy
第15ステージ終了後、フィニッシュ地点コモからチームバスで1時間半ほど移動し、ベルガモ近郊の山間のホテルで休息日を過ごしたNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネの選手たち。休息日前夜はいつもの大盛りパスタではなく、ピッツァなど好きなものを食べ、飲み、気分的にリフレッシュしたという。
休息日はあいにくの雨に見舞われたため、選手たちはローラー台で1時間ほど汗を流した。第3ステージに続いて第10ステージでも逃げを試みた初山は、厳しい山岳ステージをいずれもグルペット内で終え、3週目に駒を進めている。ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア)のリタイアによってフアンホセ・ロバト(スペイン)とルームメイトとなった初山に話を聞いた。
ここまで2週間走ってきて、まだ身体は動いていますか?
毎日ステージの前半は身体が動かなくて、中盤になってようやく動いてくるんです。昨日もローラーでアップして固まった筋肉をほぐしたつもりだったんですが、身体が動かなかった。身体が温まってしまえば問題ないんですが、スロースターターの身体になってしまっています。こんなことは今までなかったので、未知の領域を走っているので自分でも分からない状態です。
体調や胃腸の具合は?
幸運なことにここまで問題ないですね。転んでもないし体調も崩してない。これまで走った一番長いステージレースが9日間のツール・ド・スイスだったので、未知の領域に入っています。大会4日目の時点で「無理だろ」と思いましたが、一日一日走り続けて今に至ります。睡眠時間が足りないということもない。
日によってパワーが出る時もあれば出ない時もある。体感的にも、数字的にも、後半に入ってからみんなパワーが出ていないです。でもトップの選手は変わらない数字を出していると思います。ニバリはきっとこんなに疲れていないとチームメイトたちと話しています。
ここまで疲れるなんてそうそうないこと。3週間走った後、どのぐらいの休息が必要なのかさっぱり分からないですね。誰にでもできる経験じゃないことは分かっていますが、ワクワクはしていないです。今はとにかく毎日こなしていくしかない。
第13ステージのフィニッシュ後の疲労具合が印象的でしたが
「こんなにきついのに明日もきついのか」という気持ちは2週間前の大会初日から毎日ずっとあります(笑)でも一番きつかったのは第13ステージですね。距離が200km近くあって、登りばかりだったのできつかった。しかもスタートから最初の2時間ずっときつくて食べる余裕がなくて、補給が足りなかったのもきつい要因でした。ジェルは摂りましたけど、アルミホイルを開いてジャムパンもぐもぐするようなことは物理的に出来なかった。
山岳ステージでのグルペット形成のタイミングは?
一番わかりやすい目安になっているのはデマール(グルパマFDJ)とチモライ(イスラエルサイクリングアカデミー)です。チモライはフランス語も喋るし、グルパマFDJにはグアルニエーリもいるし、彼らが中心になっている。でもできることなら彼らよりも前の集団に入って、後で合流する形でグルペットに入りたい。できるだけ大きなグルペットに入るようにしています。
「タイムがやばい、ペースを上げないとやばい」と思っても、自分でどうこうできるわけではないので、ペースは他のチームに任せています。グルペットに入っていれば楽なように見えるかもしれませんが、決してそうではなく、下りはめちゃくちゃ攻めるし、平坦路がとにかく速い。スプリンターの大柄なリードアウトマンたちが前を引くので、僕もアウタートップをぶんぶん回す。実際に第14ステージ後半の平坦区間はメイン集団よりグルペットの方が速かったらしいです。登りのペースに関しては、決定的に身体が止まってしまうような状況にならない限り大丈夫ですね。もちろん楽なペースではないですが。
カンペナールツ(ロット・スーダル)は元気です。僕が序盤に脱落した第14ステージで集団に追いついてから1級山岳の登りが始まり、彼のペーシングで他の選手たちを追い抜きながら前の集団に入ることができたんです。すると、彼はそのまま頂上まで踏んで行った。彼はほぼ最後尾にいたのにステージ60位ぐらい(56位)でフィニッシュしている。デヘント(ロット・スーダル)もそんな走りをしていますね。わざとなのか分からないけど、前半に遅れて、トレーニングのために決めた時間を踏んでいるような。
3週間の完走が見えてきた?
開幕から2週間走った今でも、個人的にはやはり完走はあまり意識していません。3週間走りきって満足感や達成感を果たして本当に得られるのかどうかまだ分からないです。ただ、本気で僕の完走を願って応援してくれているファンやスポンサーがいて、彼らのことを思うとリタイアするわけにはいかないという気持ちもある。
第14ステージ序盤の山岳で遅れた時も「リタイアしたら楽になるんだよな、でも後味悪いよな」と思いながら追走していたら前で逃げが決まって、集団のペースが落ちたので復帰できた。その日はどうやってたどり着いたのか分からないような山の中に日本人の観客の方が沢山いて驚きました。いきなり日本語が飛んできて励みになりました。
ただ、この2週間でイタリアに僕が残した影響は、ステージ優勝した他の海外選手よりも大きいと自覚しています。そういう意味では満足している。前半ステージでグルペットの中で走っていると、沿道から聞こえてくるのは「ヴィヴィアーニ」か「初山」でしたから。やはり第3ステージの単独逃げのインパクトが大きかった。
その満足感の次にあるステップは?
一回家に帰って、Amazonで注文した椎名林檎のCDを聴きながら考えさせてください(笑)「完走にこだわらないのでもう一回逃げてやろう」というような身体の状態ではない。開幕前にも聞かれたんですが、ジロは「このステージを狙いたい」と自分から言えるような次元のレースではないです。
第16ステージのガヴィア峠がなくなったことはチームの中で話題になりましたが、ステージが厳しいことには変わりないので、あまり気にしていません。それよりもルームメイトのなったロバトから「モルティローロ峠はめちゃくちゃきついぞ」と言われています。僕の場合はモルティローロ峠にたどり着けるかどうかが問題です。
text&photo:Kei Tsuji in Bergamo, Italy
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