2019/05/11(土) - 11:13
サイクリングシューズ専門メーカーのLAKE(レイク)では、パターンごとに色を指定したり既存のデザインを再利用して色変更を行ってオリジナルシューズを制作するカラーセレクトプログラムを展開している。同プログラムを利用して作ったライター浅野のオリジナルシューズがついに完成! ファーストインプレッションと、熱成形・お手入れの方法などをレポートする。前編はこちら。
予想以上のできばえに大満足。フィット感も最高
デザイン決定し、オーダーしてから3カ月ほどたったころ、レイクシューズの代理店・キルシュベルクの中川悟志さんからオリジナルシューズが完成したとの一報をいただいた。完成したシューズは通常は宅配便で自宅に届けられるが、今回は取材を兼ねていたので手渡しとなった。
開梱すると、目の前に自分がオーダーしたシューズがオーダーしたとおりに出来上がっている。カンガルー革のアッパーをもつCX332は、革製のシューズが持つ独特の艶やかさがあり、他のブランドにはない上質さと上品さを備えている。想像以上のできばえだ。
シューズに足を入れ、2箇所のBOAダイヤルを締めていく。サイズ違いを含めて念入りに試着した上でサイズを決めているから当たり前なのだが、ダイヤルを軽く締めただけなのにまるで履き慣れたシューズのようにしっくりくる。アッパーのカンガルー革のしなやかさもそう感じさせる要因に違いない。CX332はかかとの部分が熱成形できるのだが、その必要すら感じないほどだ。
実際に履いて走って、良さを確信
撮影や取材を一通り終えてから、クリートを合わせて走りに行くことにした。今回はオーソドックスな3つ穴タイプをオーダーしたが、スピードプレイ対応の4つ穴もオーダーできる。
気になるクリート穴の位置だが、最近は深めに付ける選手が多いことを考えると標準的な位置と言えるが、個人的な感覚ではやや深めだと感じた。クリート基準でセンターに合わせたら自分には少し深かったので、前寄りに調整したところベストな位置にセッティングできた。もし足の指が短めでクリートが浅めが好みの人だと、クリートを一番前に付ける感じになるかもしれない。
まずは熱成形前の状態で走りに行ってみた。この時点でペダリング中にかかとが浮くなどの不満はなく、全く違和感を感じない。試しにいつもの練習コースで走ってみたが、FTP程度のパワーを維持するのが体感的に少し楽に感じた。ペダリング中にシューズの中で足が滑らず、ペダルの踏み局面でもしっかりとペダルに体重が乗せられるので、今まで以上にパワーをロスせずに伝えられているようだ。さらに今まで使っていたレーシングシューズで気になっていた「長時間走ると足の血行が悪くなってつま先が痛くなる」という症状が消えた。
この時点ですでにルックスも履き心地も大満足で100点満点と評価してもいいと思った。
熱成形を行うとさらにフィット感がアップ。自分だけの1足に
かかとが熱成形できるということだったので、熱成形をお願いした。この手順は、元々のシューズに不満がなければ必要がないとのことだ。
熱成形の手順は次の通り。
1.BOAレースが熱で傷まないよう、シューズのBOAダイヤルを締めてレースの露出を極力少なくする。
2.オーブンから取り出してすぐにシューズが履けるよう、BOAダイヤルを上げてすぐにリリースできるようにしておく
3.オーブンに温度計を入れ、5~10分程度予熱を行い90度で安定するまで待つ。針が上昇局面にある時はオーブン内が90度以上である可能性が高いので、適宜オーブンの扉を開けるなどして調整する
4.オーブンが90度で安定したら片方のシューズを入れて3~4分加熱する。オーブンの温度計を見ながら、温度が上がりすぎている場合はオーブンの扉を開けて温度調整を行う
5.取り出したらすぐに足を入れ、ダイヤルを締める。その状態でかかとの熱成形部分を手のひらで押すようにし、全体的にフィットさせる。このとき決して指先など点で押さないこと(熱成形可能なカーボンが割れる原因になる)。この作業は他の人に手伝ってもらうとやりやすい
6.熱成形が終わったら、10~15分ほど自然に冷却し、熱成形素材を硬化させる。
7.同様の手順で反対側のシューズの熱成形を行う
シューズの熱成形の所要時間は片足で30分程度だが、片方の成形中にもう片方を加熱するなど、段取り良く作業すれば1足あたりの成形時間は40分ほどでできる。
熱成形をすると、成形前の状態と比べてかかと周辺の形が明らかに変わっている。つまり、CX332の42ワイドのシューズが、僕の足の形に最適化され、デザインもシューズの形も世界にひとつだけの僕専用のシューズになったということだ。
後日この状態で走りに行ったところ、いつものトレーニングコースで10kmTTをしてみたら、タイムも平均パワーも今シーズンのベストを記録した。シューズ以外は今までの装備で今までと同じバイクで走ったから、これは単純にシューズの恩恵だろう。
重量に関しては驚くほどの軽さはないが、それを求めるならレイクにもCX301という飛び道具クラスのシューズがある。CX332を選ぶことで得られるベネフィットは、本革製の上質で軽量なサイクリングシューズを、オリジナルデザインで作れ、さらに熱成形によってフィット感を高めて自分だけの1足を作れることだ。
本革シューズは日ごろの手入れも簡単
CX332は、僕にとって初めての本革のサイクリングシューズだが、ひとつだけ懸念していることがあった。それは「手入れが大変なのではないか」ということだ。この疑問をキルシュベルクの中川悟志さんにぶつけてみた。
「水に濡らすのは厳禁ですが、雨の中を走ったあとはソールを外してシューズに新聞紙を丸めて詰め、風通しのよい直射日光の当たらない場所で乾かしてもらえれば大丈夫。日常的なメンテナンスも、基本的には汚れたときにから拭きするぐらいで大丈夫ですよ」
思っていたよりメンテナンスも簡単だ。では、取り扱い上の注意点はどうだろうか?
「革を傷めたり、熱成形のシューズの場合は型崩れの原因になるので、靴を乾かすときに乾燥機やドライヤーは使わないでください。また、暑い時期に車中に置きっ放しにしないようにしてください」
取り扱い上の注意も他の熱成形対応シューズと変わらないので、特別にデリケートな取り扱いが求められるというわけでもなさそうだ。これならものぐさでずぼらな僕でもなんとかなりそうだ。
コンディションをより長く持続するためのケア方法
とはいえ、シューズをより良いコンディションで長く使い続けるには、それなりにケアした方がよい、と中川さん。そんなときに役に立つのがレイクのレザーケアキットだ。
同キットはアメリカのレザーケア用品専門メーカー・ペカード社のレザーローション、シューズオイル、レザードレッシング、クロス、ブラシのセット。ペカード社の製品はスミソニアン博物館で革製品のメンテナンスに使われるほか、レッドウイングやラッセルモカシンなどの革靴ブランドも同社の製品でメンテナンスすることを推奨するなど、高い信頼性を誇ることで知られる。
キットを使ったお手入れは、年3回程度でよいとのこと。その方法を下記に記す。
1.年3回程度、レザーローションをクロスで塗布。表面の汚れ落としや保湿、革のしなやかさを保つことができる。
2.レザーローションを塗布後、レザードレッシングをクロスで塗布。革の油分を閉じ込め、革表面の保湿効果も発揮し、雨や汗などの水分が染み込むのを防ぐ。レザードレッシングはアクションレザー、スエード、人工皮革や合成皮革には使用不可。
※メンテナンス不足で革が明らかに乾燥している場合は、レザーローション塗布前にシューズオイルを塗布し、革の油分を補う。シューズオイルもアクションレザー、スエード、人工皮革や合成皮革には使用不可。
とくにレザーローションは、CX332やCX402のような本革のシューズだけでなく、CX301のような人工皮革のシューズの手入れにも使える。ひとつ持っておくと重宝しそうだ。
理想のシューズが出来上がった。これからこのシューズとともにレースを戦い、今まで以上にサイクリングを楽しみたい。
photo&text:Masanori ASANO
体験ライターのプロフィール
浅野真則(あさのまさのり)
各種自転車WEBメディアや自転車専門誌で執筆活動を行いながら、実業団登録選手としても活動する業界屈指の実走派自転車ライター。強豪ロードチーム「VC VELOCE」に所属し本業の合間を縫ってJBCFレースやホビーレースにも参戦。2015年にはイタリアのグランフォンド「ラ・カンピオニッシモ」の最長コースを完走した。「青好き」を公言し、ブルーにペイントしたロードバイクを駆り、アパレルなどもブルーで揃えるなどしてサイクルライフを楽しんでいる。
ライターアサノFacebook
予想以上のできばえに大満足。フィット感も最高
デザイン決定し、オーダーしてから3カ月ほどたったころ、レイクシューズの代理店・キルシュベルクの中川悟志さんからオリジナルシューズが完成したとの一報をいただいた。完成したシューズは通常は宅配便で自宅に届けられるが、今回は取材を兼ねていたので手渡しとなった。
開梱すると、目の前に自分がオーダーしたシューズがオーダーしたとおりに出来上がっている。カンガルー革のアッパーをもつCX332は、革製のシューズが持つ独特の艶やかさがあり、他のブランドにはない上質さと上品さを備えている。想像以上のできばえだ。
シューズに足を入れ、2箇所のBOAダイヤルを締めていく。サイズ違いを含めて念入りに試着した上でサイズを決めているから当たり前なのだが、ダイヤルを軽く締めただけなのにまるで履き慣れたシューズのようにしっくりくる。アッパーのカンガルー革のしなやかさもそう感じさせる要因に違いない。CX332はかかとの部分が熱成形できるのだが、その必要すら感じないほどだ。
実際に履いて走って、良さを確信
撮影や取材を一通り終えてから、クリートを合わせて走りに行くことにした。今回はオーソドックスな3つ穴タイプをオーダーしたが、スピードプレイ対応の4つ穴もオーダーできる。
気になるクリート穴の位置だが、最近は深めに付ける選手が多いことを考えると標準的な位置と言えるが、個人的な感覚ではやや深めだと感じた。クリート基準でセンターに合わせたら自分には少し深かったので、前寄りに調整したところベストな位置にセッティングできた。もし足の指が短めでクリートが浅めが好みの人だと、クリートを一番前に付ける感じになるかもしれない。
まずは熱成形前の状態で走りに行ってみた。この時点でペダリング中にかかとが浮くなどの不満はなく、全く違和感を感じない。試しにいつもの練習コースで走ってみたが、FTP程度のパワーを維持するのが体感的に少し楽に感じた。ペダリング中にシューズの中で足が滑らず、ペダルの踏み局面でもしっかりとペダルに体重が乗せられるので、今まで以上にパワーをロスせずに伝えられているようだ。さらに今まで使っていたレーシングシューズで気になっていた「長時間走ると足の血行が悪くなってつま先が痛くなる」という症状が消えた。
この時点ですでにルックスも履き心地も大満足で100点満点と評価してもいいと思った。
熱成形を行うとさらにフィット感がアップ。自分だけの1足に
かかとが熱成形できるということだったので、熱成形をお願いした。この手順は、元々のシューズに不満がなければ必要がないとのことだ。
熱成形の手順は次の通り。
1.BOAレースが熱で傷まないよう、シューズのBOAダイヤルを締めてレースの露出を極力少なくする。
2.オーブンから取り出してすぐにシューズが履けるよう、BOAダイヤルを上げてすぐにリリースできるようにしておく
3.オーブンに温度計を入れ、5~10分程度予熱を行い90度で安定するまで待つ。針が上昇局面にある時はオーブン内が90度以上である可能性が高いので、適宜オーブンの扉を開けるなどして調整する
4.オーブンが90度で安定したら片方のシューズを入れて3~4分加熱する。オーブンの温度計を見ながら、温度が上がりすぎている場合はオーブンの扉を開けて温度調整を行う
5.取り出したらすぐに足を入れ、ダイヤルを締める。その状態でかかとの熱成形部分を手のひらで押すようにし、全体的にフィットさせる。このとき決して指先など点で押さないこと(熱成形可能なカーボンが割れる原因になる)。この作業は他の人に手伝ってもらうとやりやすい
6.熱成形が終わったら、10~15分ほど自然に冷却し、熱成形素材を硬化させる。
7.同様の手順で反対側のシューズの熱成形を行う
シューズの熱成形の所要時間は片足で30分程度だが、片方の成形中にもう片方を加熱するなど、段取り良く作業すれば1足あたりの成形時間は40分ほどでできる。
熱成形をすると、成形前の状態と比べてかかと周辺の形が明らかに変わっている。つまり、CX332の42ワイドのシューズが、僕の足の形に最適化され、デザインもシューズの形も世界にひとつだけの僕専用のシューズになったということだ。
後日この状態で走りに行ったところ、いつものトレーニングコースで10kmTTをしてみたら、タイムも平均パワーも今シーズンのベストを記録した。シューズ以外は今までの装備で今までと同じバイクで走ったから、これは単純にシューズの恩恵だろう。
重量に関しては驚くほどの軽さはないが、それを求めるならレイクにもCX301という飛び道具クラスのシューズがある。CX332を選ぶことで得られるベネフィットは、本革製の上質で軽量なサイクリングシューズを、オリジナルデザインで作れ、さらに熱成形によってフィット感を高めて自分だけの1足を作れることだ。
本革シューズは日ごろの手入れも簡単
CX332は、僕にとって初めての本革のサイクリングシューズだが、ひとつだけ懸念していることがあった。それは「手入れが大変なのではないか」ということだ。この疑問をキルシュベルクの中川悟志さんにぶつけてみた。
「水に濡らすのは厳禁ですが、雨の中を走ったあとはソールを外してシューズに新聞紙を丸めて詰め、風通しのよい直射日光の当たらない場所で乾かしてもらえれば大丈夫。日常的なメンテナンスも、基本的には汚れたときにから拭きするぐらいで大丈夫ですよ」
思っていたよりメンテナンスも簡単だ。では、取り扱い上の注意点はどうだろうか?
「革を傷めたり、熱成形のシューズの場合は型崩れの原因になるので、靴を乾かすときに乾燥機やドライヤーは使わないでください。また、暑い時期に車中に置きっ放しにしないようにしてください」
取り扱い上の注意も他の熱成形対応シューズと変わらないので、特別にデリケートな取り扱いが求められるというわけでもなさそうだ。これならものぐさでずぼらな僕でもなんとかなりそうだ。
コンディションをより長く持続するためのケア方法
とはいえ、シューズをより良いコンディションで長く使い続けるには、それなりにケアした方がよい、と中川さん。そんなときに役に立つのがレイクのレザーケアキットだ。
同キットはアメリカのレザーケア用品専門メーカー・ペカード社のレザーローション、シューズオイル、レザードレッシング、クロス、ブラシのセット。ペカード社の製品はスミソニアン博物館で革製品のメンテナンスに使われるほか、レッドウイングやラッセルモカシンなどの革靴ブランドも同社の製品でメンテナンスすることを推奨するなど、高い信頼性を誇ることで知られる。
キットを使ったお手入れは、年3回程度でよいとのこと。その方法を下記に記す。
1.年3回程度、レザーローションをクロスで塗布。表面の汚れ落としや保湿、革のしなやかさを保つことができる。
2.レザーローションを塗布後、レザードレッシングをクロスで塗布。革の油分を閉じ込め、革表面の保湿効果も発揮し、雨や汗などの水分が染み込むのを防ぐ。レザードレッシングはアクションレザー、スエード、人工皮革や合成皮革には使用不可。
※メンテナンス不足で革が明らかに乾燥している場合は、レザーローション塗布前にシューズオイルを塗布し、革の油分を補う。シューズオイルもアクションレザー、スエード、人工皮革や合成皮革には使用不可。
とくにレザーローションは、CX332やCX402のような本革のシューズだけでなく、CX301のような人工皮革のシューズの手入れにも使える。ひとつ持っておくと重宝しそうだ。
理想のシューズが出来上がった。これからこのシューズとともにレースを戦い、今まで以上にサイクリングを楽しみたい。
photo&text:Masanori ASANO
体験ライターのプロフィール
浅野真則(あさのまさのり)
各種自転車WEBメディアや自転車専門誌で執筆活動を行いながら、実業団登録選手としても活動する業界屈指の実走派自転車ライター。強豪ロードチーム「VC VELOCE」に所属し本業の合間を縫ってJBCFレースやホビーレースにも参戦。2015年にはイタリアのグランフォンド「ラ・カンピオニッシモ」の最長コースを完走した。「青好き」を公言し、ブルーにペイントしたロードバイクを駆り、アパレルなどもブルーで揃えるなどしてサイクルライフを楽しんでいる。
ライターアサノFacebook