2019/04/22(月) - 07:09
追走グループを率いたままスプリントに持ち込み、先行する選手たちを全員パスするセンセーショナルな走り。オランダ最大のワンデーレースであるアムステルゴールドレースで、オランダチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が劇的な勝利をつかんだ。
4月21日に開催された第54回アムステルゴールドレースはいわゆる「アルデンヌ・クラシック」の幕開けを告げるオランダ最大のワンデーレース。この日曜日のアムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
真っ平らな国土のイメージが強いオランダだが、アムステルゴールドレースの開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る周回コースが設定されている。「1000のカーブ」と呼ばれるほど複雑なコースが特徴で、登場する短い登りの数は35カ所。「ジェットコースター」に例えられる265kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3,600mを超える。
気温が20度を超える暑さのマーストリヒト(リンブルフ州都)をスタートするとすぐ、ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)を含む11名が先行開始。8分差を得た逃げグループを追ったのは、前年度8位のヤコブ・フルサング(デンマーク)を擁するアスタナだった。
タイム差が1分まで縮まった残り45km地点の「No.28 グルペルベルグ」で、地元オランダの期待を一身に背負うマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が動く。1時間で行われるシクロクロスの世界王者ファンデルプールが、フィニッシュまでおよそ1時間を残したタイミングでアタックを仕掛けた。
クラシックシーズンを通して鮮烈な走りを見せているファンデルプールのアタックにはゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)が反応。しかしチェック役のイサギレが協力しなかったため、ファンデルプールの先行は5kmほどで終了する。すると、残り38km、逃げグループ吸収を目前にしたタイミングの「No.29 クルイスベルグ」でドゥクーニンク・クイックステップが攻撃に出た。
ドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)にリードアウトされた形で集団から抜け出したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、続く「No.30 アイゼルボスウェグ」で段階的に加速。唯一食らいついたフルサングとタンデム走行を開始したアラフィリップがレース先頭に躍り出る。直前まで逃げていたファンデルプールはこのドゥクーニンク・クイックステップの攻撃に反応できなかった。
ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が追走グループを形成した一方、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はメイン集団から脱落。この時点でメイン集団は50名ほどに絞られる。
ストラーデビアンケの再現となったアラフィリップとフルサングの先行。追走3名(トレンティン、クウィアト、ウッズ)に20秒前後、メイン集団から1分前後のリードで、淡々と、複雑に入り組んだコースを逃げる。やがて追走グループからウッズが脱落したため、EFエデュケーションファーストがメイン集団を率いて逃げを追い始めた。
かつてフィニッシュラインが引かれていた「No.33 カウベルグ」でマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)らがメイン集団から抜け出して、残り16km地点のフィニッシュラインを通過していく。
協力する先頭2名(アラフィリップとフルサング)と、協力する追走2名(クウィアトとトレンティン)の差は変わらず20秒。1分後方の不安定なメイン集団からは断続的にアタックがかかり、ファンデルプールやロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)、ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)が新たに追走グループを作り出した。
残り6kmの「No.35 ベメレルベルグ」でフルサングがアタックすると先頭2名の協調体制は崩壊。アラフィリップとのスプリント一騎打ちに持ち込みたくないフルサングが数度のアタックを繰り出したが決まらない。その35秒後方に第1追走(クウィアトとトレンティン)、1分後方に第2追走(ファンデルプール、バルデ、クラーク、モレマ、シャフマン)が続いて残り3km。
誰もが先頭2名(アラフィリップとフルサング)の逃げ切りを予想した。しかしスプリントに向けた牽制によって2名は致命的にペースダウンしてしまう。この時点で最もハイペースで走っていたのは、ファンデルプールが猛烈なペースで引く第2追走だった。
残り1kmアーチを通過すると、牽制する先頭2名(アラフィリップとフルサング)にクウィアトコウスキーが単独で合流。そのまま先頭3名の三つ巴スプリントに持ち込まれると思われたが、後方からファンデルプール率いる追走グループが追い上げる。
残り400mで先頭を射程圏内に捉えたファンデルプールがスプリントを開始。オランダチャンピオンが、先頭のクウィアトコウスキー、アラフィリップ、フルサングを残り100mを切ってから全員抜き去った。ファンデルプールが頭を抱えて先頭フィニッシュした。
全開走行からの全力でスプリントで出し切り、地面に倒れこんだファンデルプール。「信じられない。優勝できるとは思っていなかった。何が起こったのか理解できない。手を上げる力も残っていなかった」。初出場したオランダチャンピオンがオランダ最大のワンデーレースで勝利した。しかも劇的な展開で。
「とにかく混沌としたフィナーレで、残り3kmの時点で自分がどの位置で走っているのか誰も教えてくれなかった。でも最終ストレートに入って、前を走る選手が全員見えたんだ。幸い追い風が吹いていた。オールオアナッシングでスプリントに挑み、全てを手に入れたんだ。アムステルゴールドレース初出場で初勝利。もう言葉が出てこないよ」。オランダ人選手によるアムステル制覇は2001年のエリック・デッケル以来となる。
GPドゥナン優勝、ヘント〜ウェヴェルヘム4位、ドワーズ・ドール・フラーンデレン優勝、ロンド・ファン・フラーンデレン4位、ブラバンツペイル優勝、そしてアムステルゴールドレース優勝。所属するコレンドン・サーカスが招待されていないため、続くフレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュは欠場する。誰もが認める24歳が強烈なインパクトとともにクラシックシーズンを締めくくった。
4月21日に開催された第54回アムステルゴールドレースはいわゆる「アルデンヌ・クラシック」の幕開けを告げるオランダ最大のワンデーレース。この日曜日のアムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
真っ平らな国土のイメージが強いオランダだが、アムステルゴールドレースの開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る周回コースが設定されている。「1000のカーブ」と呼ばれるほど複雑なコースが特徴で、登場する短い登りの数は35カ所。「ジェットコースター」に例えられる265kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3,600mを超える。
気温が20度を超える暑さのマーストリヒト(リンブルフ州都)をスタートするとすぐ、ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)を含む11名が先行開始。8分差を得た逃げグループを追ったのは、前年度8位のヤコブ・フルサング(デンマーク)を擁するアスタナだった。
タイム差が1分まで縮まった残り45km地点の「No.28 グルペルベルグ」で、地元オランダの期待を一身に背負うマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が動く。1時間で行われるシクロクロスの世界王者ファンデルプールが、フィニッシュまでおよそ1時間を残したタイミングでアタックを仕掛けた。
クラシックシーズンを通して鮮烈な走りを見せているファンデルプールのアタックにはゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)が反応。しかしチェック役のイサギレが協力しなかったため、ファンデルプールの先行は5kmほどで終了する。すると、残り38km、逃げグループ吸収を目前にしたタイミングの「No.29 クルイスベルグ」でドゥクーニンク・クイックステップが攻撃に出た。
ドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)にリードアウトされた形で集団から抜け出したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、続く「No.30 アイゼルボスウェグ」で段階的に加速。唯一食らいついたフルサングとタンデム走行を開始したアラフィリップがレース先頭に躍り出る。直前まで逃げていたファンデルプールはこのドゥクーニンク・クイックステップの攻撃に反応できなかった。
ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が追走グループを形成した一方、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はメイン集団から脱落。この時点でメイン集団は50名ほどに絞られる。
ストラーデビアンケの再現となったアラフィリップとフルサングの先行。追走3名(トレンティン、クウィアト、ウッズ)に20秒前後、メイン集団から1分前後のリードで、淡々と、複雑に入り組んだコースを逃げる。やがて追走グループからウッズが脱落したため、EFエデュケーションファーストがメイン集団を率いて逃げを追い始めた。
かつてフィニッシュラインが引かれていた「No.33 カウベルグ」でマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)らがメイン集団から抜け出して、残り16km地点のフィニッシュラインを通過していく。
協力する先頭2名(アラフィリップとフルサング)と、協力する追走2名(クウィアトとトレンティン)の差は変わらず20秒。1分後方の不安定なメイン集団からは断続的にアタックがかかり、ファンデルプールやロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)、ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)が新たに追走グループを作り出した。
残り6kmの「No.35 ベメレルベルグ」でフルサングがアタックすると先頭2名の協調体制は崩壊。アラフィリップとのスプリント一騎打ちに持ち込みたくないフルサングが数度のアタックを繰り出したが決まらない。その35秒後方に第1追走(クウィアトとトレンティン)、1分後方に第2追走(ファンデルプール、バルデ、クラーク、モレマ、シャフマン)が続いて残り3km。
誰もが先頭2名(アラフィリップとフルサング)の逃げ切りを予想した。しかしスプリントに向けた牽制によって2名は致命的にペースダウンしてしまう。この時点で最もハイペースで走っていたのは、ファンデルプールが猛烈なペースで引く第2追走だった。
残り1kmアーチを通過すると、牽制する先頭2名(アラフィリップとフルサング)にクウィアトコウスキーが単独で合流。そのまま先頭3名の三つ巴スプリントに持ち込まれると思われたが、後方からファンデルプール率いる追走グループが追い上げる。
残り400mで先頭を射程圏内に捉えたファンデルプールがスプリントを開始。オランダチャンピオンが、先頭のクウィアトコウスキー、アラフィリップ、フルサングを残り100mを切ってから全員抜き去った。ファンデルプールが頭を抱えて先頭フィニッシュした。
全開走行からの全力でスプリントで出し切り、地面に倒れこんだファンデルプール。「信じられない。優勝できるとは思っていなかった。何が起こったのか理解できない。手を上げる力も残っていなかった」。初出場したオランダチャンピオンがオランダ最大のワンデーレースで勝利した。しかも劇的な展開で。
「とにかく混沌としたフィナーレで、残り3kmの時点で自分がどの位置で走っているのか誰も教えてくれなかった。でも最終ストレートに入って、前を走る選手が全員見えたんだ。幸い追い風が吹いていた。オールオアナッシングでスプリントに挑み、全てを手に入れたんだ。アムステルゴールドレース初出場で初勝利。もう言葉が出てこないよ」。オランダ人選手によるアムステル制覇は2001年のエリック・デッケル以来となる。
GPドゥナン優勝、ヘント〜ウェヴェルヘム4位、ドワーズ・ドール・フラーンデレン優勝、ロンド・ファン・フラーンデレン4位、ブラバンツペイル優勝、そしてアムステルゴールドレース優勝。所属するコレンドン・サーカスが招待されていないため、続くフレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュは欠場する。誰もが認める24歳が強烈なインパクトとともにクラシックシーズンを締めくくった。
アムステルゴールドレース2019結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス) | 6:28:18 |
2位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) | |
3位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | |
4位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
5位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) | |
7位 | アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム) | |
8位 | ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) | |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
10位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
11位 | ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) | 0:00:02 |
12位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | |
13位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 0:00:46 |
14位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | |
15位 | ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:54 |
16位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
17位 | ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
18位 | ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ディメンションデータ) | |
19位 | ディオン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット) | |
20位 | クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、イスラエルサイクリングアカデミー) |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos
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