2019/04/01(月) - 18:06
與那嶺恵理(アレ・チポッリーニ)も参加したヘント〜ウェヴェルヘム女子レースで、トラックオムニアム世界王者のキルステン・ウィルト(オランダ、WNTロータープロサイクリング)がスプリント勝利。日本代表チームが出場した男子U23レースの模様も紹介する。
女子:オムニアム世界王者ウィルトがスプリント勝利 後半に動いた與那嶺は集団内フィニッシュ
ワールドツアー第5戦として開催されたヘント〜ウェヴェルヘム女子レースは、2016年からワールドツアーカレンダーに組み込まれている大会。
モニュメント以外で最長距離を誇る男子レースとは異なり、距離は136.8kmと女子ワールドツアーレースの平均レベルだが、バーネベルグと最大勾配22%を誇るケンメルベルグの急登坂コンビが2回登場するほか、未舗装路「プラグストリート」など難易度は決して低くない。後半35kmはほぼ平坦基調でスプリンターにチャンスがある点は男子レース同様だ。
この日は連続して現れる登坂と石畳、そして男子レースにエシュロンを発生させた風によって、逃げという逃げが決まらないまま距離を消化する展開に。中盤に入って未舗装路区間を抜けるとアレ・チポッリーニが積極的に逃げを打ち、まずはアンナ・トレヴィジ(イタリア)が、2回目のバーネベルグではロミィ・カスパー(ドイツ)がそれぞれ先行した。
カスパーのアタックはミッチェルトン・スコット率いる集団に吸収され、勢いそのままに2度目のケンメルベルグに到達。UCIワールドツアーランキング首位の欧州王者マルタ・バスティアネッリ(イタリア、チームヴィルトゥサイクリング)がアタックするも決まらず、集団はひとかたまりのまま後半の平坦区間に入った。
アタックの波に與那嶺恵理(アレ・チポッリーニ)が乗ったが決まらず、代わってU23ランキング首位のソフィア・ベルティッツォーロ(イタリア、チームヴィルトゥサイクリング)とダニエラ・リース(ポルトガル、ドルチーニ・ファンアイクスポーツ)が先行したものの、スプリンターチームの追走によって吸収される。90名弱の集団がウェヴェルヘム市街地でゴールスプリントを繰り広げた。
トレック・セガフレードが人数を揃えてリードアウトしたが、圧倒的なスプリントを披露したのはキルステン・ウィルト(オランダ、WNTロータープロサイクリング)だった。ロレーナ・ウィーベス(オランダ、パークホテル・ファルケンブルグ)やレティツィア・パテルノステル(イタリア、トレック・セガフレード)も追従できずトラック競技のオムニアム世界王者が2013年に続く2度目の優勝を飾った。
「チームメイトが不調に苦しみリードアウト無しスプリント。長くキツいスプリントだったけれど粘り切れた。最後のケンメルベルグを越えた時には15名ほどしかいなかったけれど、結果的に大集団スプリントになったのは驚いた」と語るウィルト。3日前のワールドツアー第4戦ドリダース・ブルージュ〜デパンヌでも集団スプリントを制しており、わずか4日間でワールドツアー2勝を収めることとなった。
途中積極的に動いた與那嶺は先頭集団内でフィニッシュ。今週末開催のワールドツアー第6戦ロンド・ファン・フラーンデレン女子レースにも出場予定だという。以下は本人からのレポート。
「歴史あるクラシックレース。きつい石畳の登りが中盤に続くのですが、終盤40kmがほぼ平坦なので集団スプリントになりやすいコース。チームとしては結果が出ず、悔しいです。
前回のBindaでの不調の原因を探りながら丁寧に調整をし、コンディションはしっかり合わせられました。チームはエースのクロイが不調で、攻撃の決め手が足りない状況。作戦はソラヤと先頭集団へ残り、あとは自分たちで狙えとのこと。
天気は快晴。風が少し強い感じ。今回はフランスのMariさん、ワタナベご夫妻の応援もありやる気満々。
スタート後から落車が続きます。ニュートラル時にも大きな落車があり、リアルスタート直後にも再び大きな落車。レースは珍しく赤旗が振られ、一時停止。そして再びスタートが切られました。
道幅が広く、風もあり、ギクシャクしながらプロトンは進みます。チームはロミーとアンナでの攻撃をしながら、登りのセクションへ。コース視察をしっかり行ったので程よいポジションでソラヤと登りに入ります。ここで武井コーチとワタナベご夫妻の熱烈な応援。一番のTシャツ!!!頑張らねば。
そうでした、登り口の突入する時のセレクションの熾烈さ。これは各チームがトレインを組んでエースを送り出します。毎回登り口ごとにゴールスプリントに近い負荷が出ます。
一回目のケンメルベルグの登り。25%を超える石畳。バイクが進まない感覚がありますが耐えて、下りはとても危険。車がギリギリ一台通過できる幅、先が見えな生け垣。全力で突っ込みますが怖くて千切れます。集団は40名ほど。つなぐ区間で遅れた選手たちが戻り60名ほど。
ロミーが攻撃をして逃げに成功、集団は安定したペースで追走します。クロイにコンディションを確認。「どう? 今日行けそう?」「Not good」
二回目ケンメルベルグの登り。脚の感触もよく、ソラヤと共に前方で登り集団は25名ほど。
応援がすごく、とても嬉しいです。これで決まればよかったのですが。
残り40kmで25名ほど。各チームのエースが入る先頭集団。向かい風が強烈で中々協調が取れず、私もソラヤと話しをしながら「どうする?クロイを待つ?」「とりあえず前方に行こう」
残り30km。キャニオンスラムのカシアの攻撃に合わせて5名ほどで抜け出しますが、これは当然周りが許さず、吸収され、集団が止まってしまいました。遅れた選手たちが戻り始め、集団は更にストップ。私が後ろに戻ったとき、モビスタートレインが落車。私も巻き込まれましたが、ペダルを外してオットット。かなり危なかったです。。。ほんと転びたくない。
幸いクロイが戻り、ここで私のチームはクロイのために準備を始めます。終盤に入りポジションを上げながらクロイのフォローを続けます。70名ほどに膨らんだ集団。残り40kmからは平坦下り基調なのでどうしても遅れた選手たちが戻ってきます。アタックのフォローをしながら残り1km、お仕事終わり。あとは落車しないようにゴール。
クロイは掛からず21位。うーん。とても悔しいです。私は自分のコンディションが前回より良く、普通の状態に。が、チームの結果が出せず、本当に悔しい。
次の日曜日はフランドルです。160kmと厳しい石畳、そして20%を超える登りが続くクラシックの王様。ソラヤと共に上位を狙っていきます」
男子U23レース:日本勢は完走ならず
ネイションズカップの1戦として開催された男子U23レース(173.8km)には日本ナショナルチームの6名(松田祥位、渡邊歩、大町健斗、蠣崎優仁、福田圭晃、大前翔)が参戦した。
落車をきっかけに生まれた50名の先行グループには日本から唯一福田が乗ったものの、度重なって発生する落車によって足止めを食らい脱落。ヨナス・ルッチ(ドイツ)がアンドレアス・レクネッスンド(ノルウェー)を下して勝利し、日本勢全員が入った集団は審判判断によってレースから降ろされることとなった。この日の完走人数はわずか36名だった。以下は以下はJCFに掲載されたレポート。
「松田の残った集団は先頭集団から遅れてくる選手たちを吸収しながら、35位以降の30名ほどの大きな集団となった。先頭から7分遅れのポジションでラスト20kmを通過し、「18分以内がタイムリミット」と想定していたので「完走は間違いない」と思われたが(UCIの競技規則では完走の基準として8%が提案されているし、今大会の競技規則にも8%ルールが適用されている旨が記載されている)、ラスト15km地点で「最終のコミッセールカーより5分遅れ」であることを理由にリタイヤ扱いとなった。釈然としない思いはあるが現実問題として30名以上が先行し、そこに加われなかったのは間違いなく我々の力不足でもある。次のネイションズカップは2週間後のツールドフランドルとなるが、そこで選手たちと共に奮起し、リベンジしたい」
女子:オムニアム世界王者ウィルトがスプリント勝利 後半に動いた與那嶺は集団内フィニッシュ
ワールドツアー第5戦として開催されたヘント〜ウェヴェルヘム女子レースは、2016年からワールドツアーカレンダーに組み込まれている大会。
モニュメント以外で最長距離を誇る男子レースとは異なり、距離は136.8kmと女子ワールドツアーレースの平均レベルだが、バーネベルグと最大勾配22%を誇るケンメルベルグの急登坂コンビが2回登場するほか、未舗装路「プラグストリート」など難易度は決して低くない。後半35kmはほぼ平坦基調でスプリンターにチャンスがある点は男子レース同様だ。
この日は連続して現れる登坂と石畳、そして男子レースにエシュロンを発生させた風によって、逃げという逃げが決まらないまま距離を消化する展開に。中盤に入って未舗装路区間を抜けるとアレ・チポッリーニが積極的に逃げを打ち、まずはアンナ・トレヴィジ(イタリア)が、2回目のバーネベルグではロミィ・カスパー(ドイツ)がそれぞれ先行した。
カスパーのアタックはミッチェルトン・スコット率いる集団に吸収され、勢いそのままに2度目のケンメルベルグに到達。UCIワールドツアーランキング首位の欧州王者マルタ・バスティアネッリ(イタリア、チームヴィルトゥサイクリング)がアタックするも決まらず、集団はひとかたまりのまま後半の平坦区間に入った。
アタックの波に與那嶺恵理(アレ・チポッリーニ)が乗ったが決まらず、代わってU23ランキング首位のソフィア・ベルティッツォーロ(イタリア、チームヴィルトゥサイクリング)とダニエラ・リース(ポルトガル、ドルチーニ・ファンアイクスポーツ)が先行したものの、スプリンターチームの追走によって吸収される。90名弱の集団がウェヴェルヘム市街地でゴールスプリントを繰り広げた。
トレック・セガフレードが人数を揃えてリードアウトしたが、圧倒的なスプリントを披露したのはキルステン・ウィルト(オランダ、WNTロータープロサイクリング)だった。ロレーナ・ウィーベス(オランダ、パークホテル・ファルケンブルグ)やレティツィア・パテルノステル(イタリア、トレック・セガフレード)も追従できずトラック競技のオムニアム世界王者が2013年に続く2度目の優勝を飾った。
「チームメイトが不調に苦しみリードアウト無しスプリント。長くキツいスプリントだったけれど粘り切れた。最後のケンメルベルグを越えた時には15名ほどしかいなかったけれど、結果的に大集団スプリントになったのは驚いた」と語るウィルト。3日前のワールドツアー第4戦ドリダース・ブルージュ〜デパンヌでも集団スプリントを制しており、わずか4日間でワールドツアー2勝を収めることとなった。
途中積極的に動いた與那嶺は先頭集団内でフィニッシュ。今週末開催のワールドツアー第6戦ロンド・ファン・フラーンデレン女子レースにも出場予定だという。以下は本人からのレポート。
「歴史あるクラシックレース。きつい石畳の登りが中盤に続くのですが、終盤40kmがほぼ平坦なので集団スプリントになりやすいコース。チームとしては結果が出ず、悔しいです。
前回のBindaでの不調の原因を探りながら丁寧に調整をし、コンディションはしっかり合わせられました。チームはエースのクロイが不調で、攻撃の決め手が足りない状況。作戦はソラヤと先頭集団へ残り、あとは自分たちで狙えとのこと。
天気は快晴。風が少し強い感じ。今回はフランスのMariさん、ワタナベご夫妻の応援もありやる気満々。
スタート後から落車が続きます。ニュートラル時にも大きな落車があり、リアルスタート直後にも再び大きな落車。レースは珍しく赤旗が振られ、一時停止。そして再びスタートが切られました。
道幅が広く、風もあり、ギクシャクしながらプロトンは進みます。チームはロミーとアンナでの攻撃をしながら、登りのセクションへ。コース視察をしっかり行ったので程よいポジションでソラヤと登りに入ります。ここで武井コーチとワタナベご夫妻の熱烈な応援。一番のTシャツ!!!頑張らねば。
そうでした、登り口の突入する時のセレクションの熾烈さ。これは各チームがトレインを組んでエースを送り出します。毎回登り口ごとにゴールスプリントに近い負荷が出ます。
一回目のケンメルベルグの登り。25%を超える石畳。バイクが進まない感覚がありますが耐えて、下りはとても危険。車がギリギリ一台通過できる幅、先が見えな生け垣。全力で突っ込みますが怖くて千切れます。集団は40名ほど。つなぐ区間で遅れた選手たちが戻り60名ほど。
ロミーが攻撃をして逃げに成功、集団は安定したペースで追走します。クロイにコンディションを確認。「どう? 今日行けそう?」「Not good」
二回目ケンメルベルグの登り。脚の感触もよく、ソラヤと共に前方で登り集団は25名ほど。
応援がすごく、とても嬉しいです。これで決まればよかったのですが。
残り40kmで25名ほど。各チームのエースが入る先頭集団。向かい風が強烈で中々協調が取れず、私もソラヤと話しをしながら「どうする?クロイを待つ?」「とりあえず前方に行こう」
残り30km。キャニオンスラムのカシアの攻撃に合わせて5名ほどで抜け出しますが、これは当然周りが許さず、吸収され、集団が止まってしまいました。遅れた選手たちが戻り始め、集団は更にストップ。私が後ろに戻ったとき、モビスタートレインが落車。私も巻き込まれましたが、ペダルを外してオットット。かなり危なかったです。。。ほんと転びたくない。
幸いクロイが戻り、ここで私のチームはクロイのために準備を始めます。終盤に入りポジションを上げながらクロイのフォローを続けます。70名ほどに膨らんだ集団。残り40kmからは平坦下り基調なのでどうしても遅れた選手たちが戻ってきます。アタックのフォローをしながら残り1km、お仕事終わり。あとは落車しないようにゴール。
クロイは掛からず21位。うーん。とても悔しいです。私は自分のコンディションが前回より良く、普通の状態に。が、チームの結果が出せず、本当に悔しい。
次の日曜日はフランドルです。160kmと厳しい石畳、そして20%を超える登りが続くクラシックの王様。ソラヤと共に上位を狙っていきます」
男子U23レース:日本勢は完走ならず
ネイションズカップの1戦として開催された男子U23レース(173.8km)には日本ナショナルチームの6名(松田祥位、渡邊歩、大町健斗、蠣崎優仁、福田圭晃、大前翔)が参戦した。
落車をきっかけに生まれた50名の先行グループには日本から唯一福田が乗ったものの、度重なって発生する落車によって足止めを食らい脱落。ヨナス・ルッチ(ドイツ)がアンドレアス・レクネッスンド(ノルウェー)を下して勝利し、日本勢全員が入った集団は審判判断によってレースから降ろされることとなった。この日の完走人数はわずか36名だった。以下は以下はJCFに掲載されたレポート。
「松田の残った集団は先頭集団から遅れてくる選手たちを吸収しながら、35位以降の30名ほどの大きな集団となった。先頭から7分遅れのポジションでラスト20kmを通過し、「18分以内がタイムリミット」と想定していたので「完走は間違いない」と思われたが(UCIの競技規則では完走の基準として8%が提案されているし、今大会の競技規則にも8%ルールが適用されている旨が記載されている)、ラスト15km地点で「最終のコミッセールカーより5分遅れ」であることを理由にリタイヤ扱いとなった。釈然としない思いはあるが現実問題として30名以上が先行し、そこに加われなかったのは間違いなく我々の力不足でもある。次のネイションズカップは2週間後のツールドフランドルとなるが、そこで選手たちと共に奮起し、リベンジしたい」
ヘント〜ウェヴェルヘム2019女子レース結果
1位 | キルステン・ウィルト(オランダ、WNTロータープロサイクリング) | |
2位 | ロレーナ・ウィーベス(オランダ、パークホテル・ファルケンブルグ) | |
3位 | レティツィア・パテルノステル(イタリア、トレック・セガフレード) | |
4位 | マルタ・バスティアネッリ(イタリア、チームヴィルトゥサイクリング) | |
5位 | アミー。ピーテルス(オランダ、ブールス・ドルマンス サイクリングチーム) | |
6位 | ロッテ・コペツキー(ベルギー、ロット・スーダルレディース) | |
7位 | ミケラ・バルドゥッキ(イタリア、アロミィタリア・ヴァイアーノ) | |
8位 | エレナ・チェキーニ(イタリア、キャニオン・スラムレーシング) | |
9位 | エリザ・バルサモ(イタリア、ヴァルカー・サイランスサイクリング) | |
10位 | マルタ・カヴァッリ(イタリア、ヴァルカー・サイランスサイクリング) | |
64位 | 與那嶺恵理(日本、アレ・チポッリーニ) |
ヘント〜ウェヴェルヘム2019男子U23レース結果
1位 | ヨナス・ルッチ(ドイツ) | |
2位 | アンドレアス・レクネッスンド(ノルウェー) | |
3位 | イェンス・レインデルス(ベルギー) | |
DNF | 松田祥位(日本) | |
DNF | 渡邊歩(日本) | |
DNF | 大町健斗(日本) | |
DNF | 蠣崎優仁(日本) | |
DNF | 福田圭晃(日本) | |
DNF | 大前翔(日本) |
text:So.Isobe
photo:CorVos,JCF
photo:CorVos,JCF
Amazon.co.jp