2010/03/29(月) - 11:05
3月28日、第72回ヘント〜ウェベルヘム(UCIプロツアー)がベルギー・フランドル地方で行なわれ、連続する上りで形成された先頭グループ内でのスプリントでベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームHTC・コロンビア)が優勝。コロンビア勢が連覇を達成した。相次ぐ落車に見舞われた別府史之(レディオシャック)が途中リタイア。
今年から日曜日開催に移行した「北のクラシック」第1戦ヘント〜ウェベルヘムは、急坂の数が合計16カ所に増やされるとともに距離が伸び、難易度がアップして新登場。名物ケンメルベルグの周回コースを含む全長210kmで開催された。
吹き付ける横風、石畳の急坂、そしてスプリント
前日のE3プライス・フラーンデレン優勝者で、この日の優勝候補でもあったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がスタート時間に遅れるというトラブルが発生しながらも、レースはヘントの南15kmに位置するデインセをスタート。ウェベルヘムに至る5時間オーバーの闘いが始まった。
レースは序盤からヘールト・ステウルス(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)ら3名が逃げ、最大4分のリードを得てレース後半へ。
ケンメルベルグを含む周回コースに入ると、ラルスイティング・バク(デンマーク、チームHTC・コロンビア)が単独で集団から飛び出し、先頭3名に追いついた。
横風も影響して集団内では落車が多発し、落車に伴う集団分裂によって後方に取り残されたトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とカンチェラーラの二強は早々にレースを去った。
レースが動き始めたのは、1回目のケンメルベルグ通過後の平坦区間。リクイガスが集団のペースアップを図ると、横風の影響で集団は「エシュロン」を形成しながら分裂。リクイガスが5名を送り込むことに成功した第1集団は、それまで逃げていたステウルスらをゴール60km手前で飲み込んだ。
約20名の第1集団に入った主要選手はマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)ら。
しかし第2集団とのタイム差は大きく広がらず、多くの選手が続々と集団に復帰。続いて、ゴール46km手前の急坂モン・ノワールでマキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)が攻撃を仕掛けた。
集団から飛び出したイグリンスキーにはダニエル・オス(イタリア、リクイガス)が反応。続いてオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やブレシェル、ヒンカピーが合流。
更にアイゼル、フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、セップ・ファンマルケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)が合流し、先頭グループは総勢10名に。ブレシェルを先頭に、最後のケンメルベルグを越えた。
先頭グループはこのケンメルベルグで一旦ばらけたが、ゴールまで35kmを残していたため再び10名がリグループ。後方ではファラーやルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)らが追走グループを形成したが、先頭10名とのタイム差は縮まらず。
10名による逃げ切りが濃厚と思われた矢先、ラスト17km地点で好調のブレシェルがパンクでストップしてしまう。ブレシェルはシマノのニュートラスサポートを受けて再スタートを切ったが、追走グループに合流するのがやっと。サクソバンクはパンクで勝機を失った。
フレイレとのスプリント直接勝負に持ち込みたくないのがリクイガスの2人だ。昨年大会2位のクチンスキーは、自らを犠牲にしてフレイレとともに徐々に減速し、フレイレを先頭グループから脱落させることに成功。同時にイグリンスキーも先頭グループから脱落した。
こうして先頭はジルベール、ルーランズ、アイゼル、ファンマルケ、オスの6名に。後続とのタイム差は50秒まで広がり、6名による闘いが始まった。
ラスト3kmでファンマルケが先陣を切ったアタックを仕掛けたが失速。ルーランズがジルベールのためにグループを牽き続けてラスト1km。2001年大会覇者のヒンカピーがラスト300mでスプリントを仕掛けたが伸びず、後方から追い上げたアイゼルが先行。ジルベールらの追撃は届かず、アイゼルが余裕のスプリントで両手を挙げた。
コロンビアに大会連覇をもたらしたアイゼル
「正直に言うと、今日勝てるとは予想していなかった。この勝利に驚いている人は大勢いると思う。今日は全ての展開が上手くハマったんだ」。2回目のヘント〜ウェベルヘム出場でメジャークラシック初制覇を達成したアイゼルはゴール後のインタビューでそう語る。
チームHTC・コロンビアは昨年のエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)に続いて大会2連覇。チームは変更があったコースを入念にチェックしたと言う。
「チームは前日のE3プライスに出場せずに、ヘント〜ウェベルヘムの新しいコースを下見した。だから準備は整っていたし、調子が良かった。自分自身の調子も良かったけど、チームメイトのおかげで良い展開に持ち込めたんだ。特にマシュー・ゴスとヘイデン・ロールストンの2人は素晴らしかったよ」。
アイゼルは2000年にマペイでプロデビューし、2003年から4年間フランセーズデジューに所属。2007年にTモバイル(現チームHTC・コロンビア)に移籍した。これまでツール・ド・スイスでステージ通算2勝、ボルタ・アン・アルガルヴェでステージ通算4勝を飾っているスプリンターだ。
同時にクラシックレースも得意としており、2006年にはパリ〜ルーベで5位。昨年はクールネ〜ブリュッセル〜クールネで2位に。当然今後のクラシック二戦でも注目の存在となる。
「ツール・ド・スイスでのステージ優勝も素晴らしかったけど、メジャークラシックの一つであるヘント〜ウェベルヘムでの勝利は格別だ。ずっとこんなビッグレースで勝ちたいと夢見ていた。でも今後のロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベで何が起こるかは誰にも分からないよ。」
この日は出走者194名のうち、ゴールに辿り着いたのは115名。完走者扱いのタイムリミット内でゴールしたのは僅か49名。別府史之(レディオシャック)は度重なる落車に見舞われ、途中リタイアを喫している。
選手コメントはチームHTC・コロンビア公式サイトより。
ヘント〜ウェベルヘム2010結果
1位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームHTC・コロンビア) 5h17'12"
2位 セップ・ファンマルケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
4位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
5位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス) +02"
6位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +07"
7位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) +51"
8位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク) +1'01"
9位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
10位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
DNF 別府史之(日本、レディオシャック)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
今年から日曜日開催に移行した「北のクラシック」第1戦ヘント〜ウェベルヘムは、急坂の数が合計16カ所に増やされるとともに距離が伸び、難易度がアップして新登場。名物ケンメルベルグの周回コースを含む全長210kmで開催された。
吹き付ける横風、石畳の急坂、そしてスプリント
前日のE3プライス・フラーンデレン優勝者で、この日の優勝候補でもあったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がスタート時間に遅れるというトラブルが発生しながらも、レースはヘントの南15kmに位置するデインセをスタート。ウェベルヘムに至る5時間オーバーの闘いが始まった。
レースは序盤からヘールト・ステウルス(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)ら3名が逃げ、最大4分のリードを得てレース後半へ。
ケンメルベルグを含む周回コースに入ると、ラルスイティング・バク(デンマーク、チームHTC・コロンビア)が単独で集団から飛び出し、先頭3名に追いついた。
横風も影響して集団内では落車が多発し、落車に伴う集団分裂によって後方に取り残されたトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とカンチェラーラの二強は早々にレースを去った。
レースが動き始めたのは、1回目のケンメルベルグ通過後の平坦区間。リクイガスが集団のペースアップを図ると、横風の影響で集団は「エシュロン」を形成しながら分裂。リクイガスが5名を送り込むことに成功した第1集団は、それまで逃げていたステウルスらをゴール60km手前で飲み込んだ。
約20名の第1集団に入った主要選手はマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)ら。
しかし第2集団とのタイム差は大きく広がらず、多くの選手が続々と集団に復帰。続いて、ゴール46km手前の急坂モン・ノワールでマキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)が攻撃を仕掛けた。
集団から飛び出したイグリンスキーにはダニエル・オス(イタリア、リクイガス)が反応。続いてオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やブレシェル、ヒンカピーが合流。
更にアイゼル、フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、セップ・ファンマルケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)が合流し、先頭グループは総勢10名に。ブレシェルを先頭に、最後のケンメルベルグを越えた。
先頭グループはこのケンメルベルグで一旦ばらけたが、ゴールまで35kmを残していたため再び10名がリグループ。後方ではファラーやルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)らが追走グループを形成したが、先頭10名とのタイム差は縮まらず。
10名による逃げ切りが濃厚と思われた矢先、ラスト17km地点で好調のブレシェルがパンクでストップしてしまう。ブレシェルはシマノのニュートラスサポートを受けて再スタートを切ったが、追走グループに合流するのがやっと。サクソバンクはパンクで勝機を失った。
フレイレとのスプリント直接勝負に持ち込みたくないのがリクイガスの2人だ。昨年大会2位のクチンスキーは、自らを犠牲にしてフレイレとともに徐々に減速し、フレイレを先頭グループから脱落させることに成功。同時にイグリンスキーも先頭グループから脱落した。
こうして先頭はジルベール、ルーランズ、アイゼル、ファンマルケ、オスの6名に。後続とのタイム差は50秒まで広がり、6名による闘いが始まった。
ラスト3kmでファンマルケが先陣を切ったアタックを仕掛けたが失速。ルーランズがジルベールのためにグループを牽き続けてラスト1km。2001年大会覇者のヒンカピーがラスト300mでスプリントを仕掛けたが伸びず、後方から追い上げたアイゼルが先行。ジルベールらの追撃は届かず、アイゼルが余裕のスプリントで両手を挙げた。
コロンビアに大会連覇をもたらしたアイゼル
「正直に言うと、今日勝てるとは予想していなかった。この勝利に驚いている人は大勢いると思う。今日は全ての展開が上手くハマったんだ」。2回目のヘント〜ウェベルヘム出場でメジャークラシック初制覇を達成したアイゼルはゴール後のインタビューでそう語る。
チームHTC・コロンビアは昨年のエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)に続いて大会2連覇。チームは変更があったコースを入念にチェックしたと言う。
「チームは前日のE3プライスに出場せずに、ヘント〜ウェベルヘムの新しいコースを下見した。だから準備は整っていたし、調子が良かった。自分自身の調子も良かったけど、チームメイトのおかげで良い展開に持ち込めたんだ。特にマシュー・ゴスとヘイデン・ロールストンの2人は素晴らしかったよ」。
アイゼルは2000年にマペイでプロデビューし、2003年から4年間フランセーズデジューに所属。2007年にTモバイル(現チームHTC・コロンビア)に移籍した。これまでツール・ド・スイスでステージ通算2勝、ボルタ・アン・アルガルヴェでステージ通算4勝を飾っているスプリンターだ。
同時にクラシックレースも得意としており、2006年にはパリ〜ルーベで5位。昨年はクールネ〜ブリュッセル〜クールネで2位に。当然今後のクラシック二戦でも注目の存在となる。
「ツール・ド・スイスでのステージ優勝も素晴らしかったけど、メジャークラシックの一つであるヘント〜ウェベルヘムでの勝利は格別だ。ずっとこんなビッグレースで勝ちたいと夢見ていた。でも今後のロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベで何が起こるかは誰にも分からないよ。」
この日は出走者194名のうち、ゴールに辿り着いたのは115名。完走者扱いのタイムリミット内でゴールしたのは僅か49名。別府史之(レディオシャック)は度重なる落車に見舞われ、途中リタイアを喫している。
選手コメントはチームHTC・コロンビア公式サイトより。
ヘント〜ウェベルヘム2010結果
1位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームHTC・コロンビア) 5h17'12"
2位 セップ・ファンマルケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
4位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
5位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス) +02"
6位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +07"
7位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) +51"
8位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク) +1'01"
9位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
10位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
DNF 別府史之(日本、レディオシャック)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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