2010/03/28(日) - 16:20
「北のクラシック」初戦、第72回ヘント〜ウェベルヘム(UCIプロツアー)がベルギー・フランドル地方で開催される。急勾配&石畳のケンメルベルグを2度クリアし、ゴールで繰り広げられるのは集団スプリントか、それとも逃げきりか。別府史之(レディオシャック)も出場予定だ。
日曜日に開催日を移した平坦クラシック
例年「北のクラシック」3連戦の2戦目、つまりロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催されていたヘント〜ウェベルヘムだが、今年からロンド前週の日曜日に開催日が移された。開催は72回目で、ロンドやパリ〜ルーベよりも歴史は浅い。
スタート地点はヘントの南15kmに位置する内陸部のデインセ。一路北海沿いのデパンヌに向かって西進し、再び内陸部へと進路を変えてウェベルヘムにゴールする。
ピュアスプリンターにも勝機が有るクラシックレースとして知られるが、今年は短い急坂の数が合計16カ所に増やされた。これはつまり、アタッカーのチャンスが増えることを意味する。間違いなく前年度よりもコースの難易度は増しており、スプリンターは苦戦を強いられるだろう。
全長219kmのコースの大部分は平坦だが、レース後半にはモンテベルグやケンメルベルグなど、7つの急坂を含む周回コースを2周する。勾配のキツいケンメルベルグ距離は短いものの、路面の大部分が石畳。この難所がスプリンターたちの脚を弱め、アタッカーたちにチャンスを与えるのだ。
2回目のケンメルベルグ通過からゴールまでは35km。急勾配の上りやテクニカルな下りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも戦線に復帰したスプリンターたちによるスプリント勝負に持ち込まれるのか。北海から吹き付ける強風が集団を破壊し、思わぬ展開をもたらす可能性もある。気の変わりやすいベルギーの天候もレース展開に影響を及ぼすだろう。
スカイ、クイックステップ、サクソバンクの覇権争い
雨に見舞われた2009年大会は、2回目のケンメルベルグで集団から抜け出したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、当時チームコロンビア)が2人でのゴールスプリントを制して優勝した。
昨年はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のアシストとして出場したボアッソンだが、今年は新生チームスカイに移籍し、チームリーダーとして連覇を狙う。しかしスプリントの力勝負ではライバルたちに一歩及ばない。今年も少人数グループでのスプリント勝負に持ち込みたいところだ。
チームスカイには前日のE3プライス・フラーンデレン3位のフアンアントニオ・フレチャ(スペイン)を始め、クルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー)やマイケル・バリー(カナダ)と言ったベテランのスピードマンが揃う。新生チームの初メジャークラシック制覇に向けて体制は整っている。
前日のE3プライス・フラーンデレンで優勝したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)は要チェック。チームからはドワーズ・ドア・フラーンデレン優勝のマッティ・ブレシェル(デンマーク)も出場。このカンチェラーラ=ブレシェルの強力タッグは他チームにとって大きな脅威だ。
フランドルに君臨するクイックステップ勢は、E3プライス2位のトム・ボーネン(ベルギー)をエースに立てる。ボーネンは2004年大会の優勝者であり、「北のクラシック」の初戦をどう闘うかに注目が集まる。
ミラノ〜サンレモで3度目の優勝を果たしたばかりのオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は2008年大会の優勝者。上りにも強いフレイレは、タフな展開に持ち込まれた場合にその強さを発揮する。チームメイトのグレーム・ブラウン(オーストラリア)も高いスプリント力の持ち主だ。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで念願のシーズン初勝利を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)は、風邪によって同大会をリタイア。このヘント〜ウェベルヘム欠場を決めた。チームHTC・コロンビアは昨年大会で集団スプリントを制して3位に入ったマシュー・ゴス(オーストラリア)にエースの座を託す。
スプリンターとしては他にもダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)らが顔を揃える。いずれも如何にケンメルベルグで体力を温存し、アタックを封じ込めてスプリント勝負に持ち込めるかに懸かっている。
逆にフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)らは上りで果敢にアタックを繰り返すだろう。今年は上りが追加されただけに、アタッカーのモチヴェーションは高いはずだ。
今年もプロコンチネンタルチームの選手たちは侮れない存在。得にBMCレーシングチームとサーヴェロ・テストチームはプロツアーチームをも凌駕するほどの布陣で「北のクラシック」に挑む。
BMCレーシングチームには、2001年大会優勝者のジョージ・ヒンカピー(アメリカ)と2007年大会優勝者のマークス・ブルグハート(ドイツ)が揃う。更にロンド・ファン・フラーンデレン覇者のアレッサンドロ・バッラン(イタリア)の出場も決まっている。強力なスプリンターを欠くため、ケンメルベルグなどで積極的に攻撃を仕掛けてくるはずだ。
サーヴェロ・テストチームは膝の故障から復調しつつあるハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ)を軸に、テオ・ボス(オランダ)やロジャー・ハモンド(イギリス)が後ろを固める。チーム2年目の今年こそメジャークラシックのタイトルが欲しい。
日本からは別府史之(レディオシャック)が参戦。フミはヘント〜ウェベルヘム、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベの「北のクラシック」3連戦にフル出場する予定だ。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka
日曜日に開催日を移した平坦クラシック
例年「北のクラシック」3連戦の2戦目、つまりロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催されていたヘント〜ウェベルヘムだが、今年からロンド前週の日曜日に開催日が移された。開催は72回目で、ロンドやパリ〜ルーベよりも歴史は浅い。
スタート地点はヘントの南15kmに位置する内陸部のデインセ。一路北海沿いのデパンヌに向かって西進し、再び内陸部へと進路を変えてウェベルヘムにゴールする。
ピュアスプリンターにも勝機が有るクラシックレースとして知られるが、今年は短い急坂の数が合計16カ所に増やされた。これはつまり、アタッカーのチャンスが増えることを意味する。間違いなく前年度よりもコースの難易度は増しており、スプリンターは苦戦を強いられるだろう。
全長219kmのコースの大部分は平坦だが、レース後半にはモンテベルグやケンメルベルグなど、7つの急坂を含む周回コースを2周する。勾配のキツいケンメルベルグ距離は短いものの、路面の大部分が石畳。この難所がスプリンターたちの脚を弱め、アタッカーたちにチャンスを与えるのだ。
2回目のケンメルベルグ通過からゴールまでは35km。急勾配の上りやテクニカルな下りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも戦線に復帰したスプリンターたちによるスプリント勝負に持ち込まれるのか。北海から吹き付ける強風が集団を破壊し、思わぬ展開をもたらす可能性もある。気の変わりやすいベルギーの天候もレース展開に影響を及ぼすだろう。
スカイ、クイックステップ、サクソバンクの覇権争い
雨に見舞われた2009年大会は、2回目のケンメルベルグで集団から抜け出したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、当時チームコロンビア)が2人でのゴールスプリントを制して優勝した。
昨年はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のアシストとして出場したボアッソンだが、今年は新生チームスカイに移籍し、チームリーダーとして連覇を狙う。しかしスプリントの力勝負ではライバルたちに一歩及ばない。今年も少人数グループでのスプリント勝負に持ち込みたいところだ。
チームスカイには前日のE3プライス・フラーンデレン3位のフアンアントニオ・フレチャ(スペイン)を始め、クルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー)やマイケル・バリー(カナダ)と言ったベテランのスピードマンが揃う。新生チームの初メジャークラシック制覇に向けて体制は整っている。
前日のE3プライス・フラーンデレンで優勝したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)は要チェック。チームからはドワーズ・ドア・フラーンデレン優勝のマッティ・ブレシェル(デンマーク)も出場。このカンチェラーラ=ブレシェルの強力タッグは他チームにとって大きな脅威だ。
フランドルに君臨するクイックステップ勢は、E3プライス2位のトム・ボーネン(ベルギー)をエースに立てる。ボーネンは2004年大会の優勝者であり、「北のクラシック」の初戦をどう闘うかに注目が集まる。
ミラノ〜サンレモで3度目の優勝を果たしたばかりのオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は2008年大会の優勝者。上りにも強いフレイレは、タフな展開に持ち込まれた場合にその強さを発揮する。チームメイトのグレーム・ブラウン(オーストラリア)も高いスプリント力の持ち主だ。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで念願のシーズン初勝利を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)は、風邪によって同大会をリタイア。このヘント〜ウェベルヘム欠場を決めた。チームHTC・コロンビアは昨年大会で集団スプリントを制して3位に入ったマシュー・ゴス(オーストラリア)にエースの座を託す。
スプリンターとしては他にもダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)らが顔を揃える。いずれも如何にケンメルベルグで体力を温存し、アタックを封じ込めてスプリント勝負に持ち込めるかに懸かっている。
逆にフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)らは上りで果敢にアタックを繰り返すだろう。今年は上りが追加されただけに、アタッカーのモチヴェーションは高いはずだ。
今年もプロコンチネンタルチームの選手たちは侮れない存在。得にBMCレーシングチームとサーヴェロ・テストチームはプロツアーチームをも凌駕するほどの布陣で「北のクラシック」に挑む。
BMCレーシングチームには、2001年大会優勝者のジョージ・ヒンカピー(アメリカ)と2007年大会優勝者のマークス・ブルグハート(ドイツ)が揃う。更にロンド・ファン・フラーンデレン覇者のアレッサンドロ・バッラン(イタリア)の出場も決まっている。強力なスプリンターを欠くため、ケンメルベルグなどで積極的に攻撃を仕掛けてくるはずだ。
サーヴェロ・テストチームは膝の故障から復調しつつあるハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ)を軸に、テオ・ボス(オランダ)やロジャー・ハモンド(イギリス)が後ろを固める。チーム2年目の今年こそメジャークラシックのタイトルが欲しい。
日本からは別府史之(レディオシャック)が参戦。フミはヘント〜ウェベルヘム、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベの「北のクラシック」3連戦にフル出場する予定だ。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka