トレックがMt.富士ヒルクライムで開催した「#ジブン超えチャレンジ」でシクロワイアード編集部員の高木と共に戦った「Madone SLR 9 Gen 8」。富士ヒルやトレーニングを通して感じたインプレッションをお届けしていく。



トレックがMt.富士ヒルクライムで開催した「#ジブン超えチャレンジ」に挑んだシクロワイアード編集部員の高木 photo:Naoki Yasuoka


トレックが開催した日本最高峰の富士山へと挑むサイクリストたちを応援するキャンペーンの「#ジブン超えチャレンジ」。今回は私、シクロワイアード編集部員の高木と共にMt.富士ヒルクライムに初挑戦してくれたトレック Madone SLR 9 Gen 8をインプレッションしていく。

まず、改めてMadone SLR 9 Gen 8の概要をおさらいしていこう。トレックの最新エアロオールラウンドバイクであり、ハイエンドモデルである。今年のジロ・デ・イタリアでポイント賞のマリアチクラミーノを獲得したマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)を支えていたバイクでもある。一言で言えば、軽量化と空力、快適性を最高レベルでバランスさせた一台だ。

共にチャレンジしてくれたトレック Madone SLR 9 Gen 8 photo:Naoki Yasuoka


その特徴はシートチューブとシートステー、トップチューブの集合部に設けられた大きな空間。IsoFlowと名付けられたこの設計によって、ペダリングによって大きくかき回される脚の間の気流を制御しつつ、快適性も向上させると、トレックは胸を張る。

フレームデザイン上も重要な役割を果たしており、独創的で一目でMadoneだとわかるアイコンに。空力を追求した結果のデザインとして、F1にも通ずる洗練されたルックスをもたらした。

さて、今回富士ヒルで使用したMadone SLR 9 Gen 8のバイクの仕様について。身長175cmでSサイズとMサイズの2サイズに適正があったが、今回はアップライトなヒルクライムポジションで乗るため、大きめのMサイズをチョイス。

トレックの最新エアロオールラウンドバイク「Madone SLR 9 Gen 8」 photo:Naoki Yasuoka

IsoFlowを採用し、デザインも美しくF1のような洗練されたルックスに photo:Naoki Yasuoka

コックピットはトレック Aero RSL RSLロード一体型ハンドルバー。ハンドル幅を狭くして前面投影面積を小さくしたいため、ブラケット部分は350mm、フレアしたバーエンド部は380mm、ステム長は90mmの仕様を選択している。サドルは座骨幅が広いため、Aeolus RSLの155mm幅に。

ゴールドを狙うレベルとなると、平均時速が20km/hを超える必要がある。そうなると、軽量であることに加え、空力性能の比重もかなり大きくなる。そのため、ホイールはいわゆるディープリムにカテゴライズされるリムハイト 51mmのボントレガー AEOLUS RSL 51をチョイス。タイヤは同社のAEOLUS RSL TLRの700×28Cの組み合わせだ。

トレック Aero RSL RSLロード一体型ハンドルバー photo:Naoki Yasuoka

ホイールはボントレガー AEOLUS RSL 51、タイヤはAEOLUS RSL TLRの組み合わせ photo:Naoki Yasuoka

コンポーネントはシマノ DURA-ACE DI2 R9270シリーズで、クランク長は長年愛用している170mmを選択。昨年の上位入賞者のバイクを参考に、アウターで踏み切る前提でチェーンリングは52×36T、スプロケットは11-30T。ボトルとメーターを除いた実測重量は7.49kg。

今回用意されたのは、発表されたばかりの新たなProject Oneカラー「ICON Shimano Dura-Ace x Trek」だ。その名の通り、シマノ DURA-ACEとのコラボレーションカラーで、クランクやディスクブレーキ、前後ディレイラー付近が、充電時の青LEDをイメージしたメタリックカラーとなっている。

Project Oneカラー「ICON Shimano Dura-Ace x Trek」 photo:Naoki Yasuoka

ヘッドチューブには3Dプリントによる凹凸グラフィックがデザインされている photo:Naoki Yasuoka

チェーンステーにはシマノのロゴをプリント。さらに、3Dプリントによる凹凸グラフィックがヘッドチューブとシートチューブに施された特別なデザインになっている。

エアロで軽量。ヒルクライムでもロードレースでもなんでもござれ。最新オールラウンダーの最前線に位置する一台

さて、それでは肝心のインプレッションをお届けしていこう。ジブン越えチャレンジのため、2週間という準備期間の中でその特性をしっかり把握するべく多くの距離を乗り込んだ。

フレームの反応性と剛性に優れ、ペダルを踏み込んだ漕ぎ出しから軽い photo:Naoki Yasuoka

エアロ性能に優れ、30~40km/hで特に巡航しやすい photo:Naoki Yasuoka

その結果を一言で言ってしまえば、隙の無い速さを備えたレーシングバイクの最前線。反応性と剛性に優れ、ゼロ発進から既に軽い。低い速度域からの加速感も良好で、コーナーの立ち上がりでも適度なしなりと共に気持ちよく加速する。

エアロロードの本懐である巡航性は抜群。30~40km/hの中速域でもパワーも体重の3~4倍程度で省エネルギーなペダリングで速度をキープしやすいのは、エアロロードならではの感覚。この辺りのスピードではとにかく楽が出来るバイク、という印象だ。

そこから上、40km/h程度の巡航から50~60km/hへ加速していくアタックやスプリントといったシチュエーションも極めてスムーズ。頭打ち感が無く、トップスピードへスルスルとメーターの数字が増していく。マッズ・ピーダスンがスプリントステージで勝利を挙げているのにも納得の性能だ。

スプリントでは40km/h巡行から、50~60km/hへの加速もスムーズ photo:Naoki Yasuoka

ブラケット部分が350mmで前面投影面積を小さくしたコンパクトなポジションで走りやすい photo:Naoki Yasuoka

この性能を実現しているのはフレームだけでない。独自開発のパーツも大きな役割を果たしている。Aero RSL Roadハンドルはブラケット部分が350mmと前面投影面積を小さくしたコンパクトなポジションを取りやすい。バーエンドは380mmまでフレアしており、下ハンドルを握ったダンシングやスプリントでも力を込めやすい。ハンドル自体の剛性も高く、ハイギアでバイクを振るために全力でこじってもヨレ感はゼロ。レーサー好みで、使いやすいステム一体型ハンドルだ。

ボントレガー AEOLUS RSL 51のホイールもエアロダイナミクスに一役買っている。バイクとトータルで設計されたというだけあり、速度域が上がれば上がるほどその効果を体感できる。ハブの回転もスムーズで、バイクの性能を底上げしてくれる一本だ。

リズムよくバイクを振りながらダンシングができる photo:Naoki Yasuoka

さて、今回の主目的となった富士ヒルクライムは、完全フラット区間から10%を超える急斜面まで緩急織り交ぜたコースレイアウト。このMadone SLR 9 Gen 8は全ての区間でアドバンテージをもたらしてくれたが、中でも特筆すべきは20km/h以上をキープできる登り区間での省エネ性能。速度が増すにつれて空気抵抗の割合が増えるものだが、その負荷増が明らかに控えめなので、ヒルクライムで一定ペースを刻みやすい。

一方、反応性に優れたフレーム特性は、瞬間的に負荷の増す激坂区間にもしっかり対応する。ダンシングでのリズムのとりやすさも好印象で、ヒルクライムでの勾配変化も卒なくこなせる一台。

癖のないニュートラルな操作性と旋回性で直ぐに乗りこなせた photo:Naoki Yasuoka

IsoFlowのおかげでエアロ性能と振動吸収性に優れる photo:Naoki Yasuoka

登りもあれば下りもある。ハンドリングに関しては癖のないニュートラルな操作性と旋回性を備えている。シェイクダウンとなったスバルライン試走時のダウンヒルでは、初めて乗るバイクながら全く不安を感じなかった。思い通りのラインをトレースできるハンドリングと、トップレベルの空力性能が融合した結果、ダウンヒルでもピカイチの速さを誇っている。

それでいて快適性にも優れているのがMadone SLR 9 Gen 8の真価でもある。もちろん、ワイドタイヤによる快適性をベースとしつつ、IsoFlowによる振動処理能力をプラスすることで、荒れた路面でもライダーの体力をセーブし、バイクが暴れるのを抑えてくれる。総じて路面状況も良く、ゴールド狙いであれば65分の勝負となる富士ヒルクライムではあまり重要視されない性能かもしれないが、普段のトレーニングを積み重ねる上で無駄な疲労を溜めないことは、結果的に大きなゲインとなるはずだ。

ヒルクライムやロードレース、ロングライドなど走ることが好きなサイクリストにおすすめしたいオールラウンドバイク photo:Naoki Yasuoka

今回はMt.富士ヒルクライムにフォーカスを当てたが、ヒルクライムに限らずロードレース、クリテリウムなどのレースにおいて、自分の限界を超えるための相棒としてこれ以上ない存在。それがMadone SLR 9 Gen 8だ。



トレック Madone SLR 9 Gen 8
コンポーネント:シマノ DURA-ACE DI2 R9270
サイズ:XS (47cm)、S (50cm)、M (52-54cm)、ML (56cm)、L (58cm)、XL (60-62cm)
価格:1,850,000円(税込)
※Project Oneカラー「ICON Shimano Dura-Ace x Trek」はアップチャージ価格込みで2,350,000円(税込)

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