2018/11/08(木) - 20:39
サーヴェロのブランド知識を深めるディーラー向けイベント「ブレインバイク」が、サイクルモード迫る幕張にて開催された。今回の主役はフルモデルチェンジを果たしたエアロロードの新型Sシリーズ。アジアセールスマネージャーの言葉とともに最新バイクを改めて解説していこう。
サーヴェロのブランドにフォーカスしたディーラー向けイベントとして、国内代理店の東商会が定期的に開催している「ブレインバイク」。プレゼンテーションによる座学と実際の試乗を通して新モデルを深く知り、その知見をショップ経由でエンドユーザーまで届ける狙いがある。今回は、今年フルモデルチェンジを果たしたエアロロードの新型Sシリーズに焦点を当て、開発プロセスや各種改良点について解説が行われた。
この会のために2人のアジアセールスマネージャーも来日。その内の一人、ベレンド氏を中心にまずはサーヴェロの歴史から語られることに。1995年にフィル・ホワイト氏とジェラルド・ヴルーメン氏によって立ち上がったサーヴェロは、エアロダイナミクスを追求したTTバイクの開発から始まった。当時には画期的なエアロチュービングを取り入れ性能を追求したPシリーズが話題を呼ぶと、2003年にはエアロロードのソロイストを引っさげチームCSCへのサポートを開始。
サーヴェロ・テストチームやガーミン・シャープなどのチームを経て、MTNキュベカそしてご存知ディメンションデータとトッププロチームへのバイク供給を絶え間なく続けてきた。さらには公式発表もあった通り、来季はトム・デュムラン擁するサンウェブがサーヴェロバイクを駆ることに。
ハイパフォーマンスレーシングブランドとして日々開発を続けるサーヴェロが、ディスクブレーキ専用の最新モデルとしてリリースしたのがエアロロードのフラッグシップ「S5」である。ディスクブレーキに最適化させたフレームデザインと、ユニークなコックピットデザインなどによって、さらなるエアロダイナミクスの強化を実現した1台に仕上がる(詳しい製品記事はこちら)。
コンピュータによるCFD解析や風洞実験を経てフレーム形状を決定していくプロセスは他社とも同様の点だろう。その中でもサーヴェロは、実際に人間が乗車した条件でどれだけ速いバイクに仕上げられるか、という点にこだわってテストを重ねる。すべての風洞実験時にバイクにはマネキンを乗せ、さらにボトルも装着した状態でテストを行い、マシンだけでなくライダーも含めた空気の流れを測定しエアロドラッグ低減を追求していくのだという。
さらに、マシンだけの性能をひたすらに追い求めた従来とは異なり、作業性やメンテナンス性、乗りやすさや扱いやすさなどユーザビリティに配慮した開発を近年進めている点も大きなポイントだと言う。ケーブル内装のためのユニークなコックピットシステムは決して複雑すぎる機構ではなく、調整もしやすいギミックを備えていると強調する。
またサーヴェロ含め各メーカーは56サイズ前後のフレームを基準に開発を行うが、小さいサイズではどうしても乗り味が変わってしまう問題があった。これに対しサーヴェロは、すべてのフレームサイズで同じトレイル量に設計する方法で操作性の統一化を図る。多くのメーカーが1つのモデルに対し、1~2種のフォークしか用意しないが、サーヴェロはすべてのフレームサイズに対し専用のオフセットに調整したフォークを用意するほどの力の入れようだ。
バイクそのものが実現する高いエアロダイナミクスや剛性に加え、ライダー側が感じる快適性やハンドリング性能をバランスさせることこそ、サーヴェロの目指す”速さ”に繋がるという考えだ。
高性能なフレームを生み出す卓越したカーボンテクノロジーもサーヴェロの大きな特徴。今回2種類のカーボン素材サンプルが用意され、一つは単一方向に繊維を並べたもの、一つは45度の角度で織り込んだものでその性質の違いを実際に触って感じることができた。前者は上下方向、後者はねじれの方向に強くできており、フレームにかかる応力を解析し適材適所なレイアップを施していくことで、優れた剛性と軽量性を生み出している。
モデルチェンジによりさらに性能を洗練させた新型Sシリーズは、ディスクブレーキ専用のフラッグシップ「S5」と、リム/ディスクブレーキ両方のモデルが用意されたセカンドグレード「S3」がラインアップ。各種完成車とフレームセットで販売される。最後に、ベレンド氏へのインタビューを通して、サーヴェロブランドと新型Sシリーズについて掘り下げていきたい。
― 今年は各社から新型エアロロードがリリースされましたが、その中でSシリーズのアドバンテージは何になるでしょう
ケーブルを内装する関係で電動コンポーネントのみに対応というエアロディスクロードが多い中で、新型Sシリーズはワイヤーシフトにも対応している点は大きな強みだと思っています。機械式/電動式に関わらず全く同じルーティング、そしてルックスに仕上がるためエアロ性能にも差はありません。V字型ステムを開発したエンジニア陣は本当にグッジョブだと言えるでしょう。
またライバルの多いエアロロードの中でも高い空力性能で評価されていたS5を、さらに5.5W低減を叶え性能を進化させた点は驚きでしょう。2割も3割も他社から抜きん出ているとは言えませんが、今回のアップデートでここまでエアロ性能を改善できたのはサーヴェロだけではないでしょうか。まさに次世代のスーパーエアロマシンと言えると思います。フロント周りの造形もとてもユニークで独創性がありますし、きっと気に入ってもらえるはずです。
― エアロだけでなく重量や剛性も改善されましたが、その要因はどこにありますか
形状の変更はもちろんですが、カーボン素材とレイアップの見直し、そのどちらのアップデートも加えること性能を改善していくんです。ファクトリーのテクノロジーは日々進化しています。またサーヴェロはカーボンに関して豊富な知識と経験を持ち合わせています。昨年モデルチェンジしたRシリーズの開発を通して得たフィードバックも今回活かされていますよ。
「重量は軽く、剛性は高く」これらを限界まで突き詰めていくのですが、重要なのはそのバランス。軽量化を優先しすぎた軽すぎるバイクは残念ながら良いパフォーマンスを発揮することはできないのです。
― ディスクブレーキはローター付近の空気抵抗が増すとも考えられますがいかがでしょう
新型Sシリーズはディスクブレーキに最適化させた全体のデザインでエアロダイナミクスを追求しています。確かにディスクローターに風が当たるというクリティカルな部分だけ切り取れば空気抵抗になっているかもしれませんが、それ以上にリムブレーキキャリパーが排除されたことによるエアロのデザインや、ケーブル内装による空気抵抗低減が大きく働いているのです。またそもそもホイールの回転によって気流が乱される部分なので、ローターによる影響は少ないという結果も出ています。
― 新型S5を始めサーヴェロバイクはすでにサンウェブでテストされているのですか
もちろん。すでに選手たちの元にはバイクが渡っていて来季に向けて調整を行っています。サンウェブは女子チームも持っているので、サーヴェロ・ビグラへのサポートは今季まで。ワールドツアー開幕戦となるサントス・ツアー・ダウンアンダーに向けて乗り込んでもらっている最中です。
その中でもスプリンターであるマイケル・マシューズはS5を、軽く硬いクライミングバイクを好むトム・デュムランはR5を中心に使用していきます。S5とS3、R5とR3から選手の好みによって選べるようにしており、何人かの選手はSとRをステージによって乗り分けることと思います。中にはポジションのフィッティングを優先してセカンドモデルのR3を選んだ選手もいますね。
新しくサーヴェロへとバイクが切り替わっても選手たちは良い感触を掴んでいるようです。特に新型S5を駆るマシューズは”とにかく素晴らしくアメイジングなバイクだ”と評価してくれました。タイムトライアルを重視するデュムランは、今からTTバイクP5のセッティングやカスタムを煮詰めているところです。
またV字型のステムを始めコックピットパーツはフィッティング性にも大いに配慮されているため、プロ選手もそのままレースで使用する予定です。より深いポジションを希望するライダーにはカスタム品のステムを作るかもしれませんが、調整幅は十分に取れていると思います。
― 近年グラベルやE-BIKEも盛り上がりを見せていますがサーヴェロの方向性はいかがでしょう
確かにグラベルバイクは重要なマーケットでアメリカを中心に盛り上がりを見せていますが、アジアやヨーロッパではまだまだトラディショナルなロードバイクが主流です。それに対しE-BIKEは、姉妹ブランドであるフォーカスもE-ロードバイクをリリースしたように各社開発が盛んになっていると感じますね。
その中でもサーヴェロはご存知の通りエアロダイナミクスに強みを持つレーシングブランドです。コアとなる製品は、SシリーズとRシリーズ、そしてTTバイクやトライアスロンバイクになります。サーヴェロが求められるコンペティションな性能を今後も追求して開発を進めていきますし、このコアラインは絶対であり揺らぐことはありません。
text&photo:Yuto.Murata
サーヴェロのブランドにフォーカスしたディーラー向けイベントとして、国内代理店の東商会が定期的に開催している「ブレインバイク」。プレゼンテーションによる座学と実際の試乗を通して新モデルを深く知り、その知見をショップ経由でエンドユーザーまで届ける狙いがある。今回は、今年フルモデルチェンジを果たしたエアロロードの新型Sシリーズに焦点を当て、開発プロセスや各種改良点について解説が行われた。
この会のために2人のアジアセールスマネージャーも来日。その内の一人、ベレンド氏を中心にまずはサーヴェロの歴史から語られることに。1995年にフィル・ホワイト氏とジェラルド・ヴルーメン氏によって立ち上がったサーヴェロは、エアロダイナミクスを追求したTTバイクの開発から始まった。当時には画期的なエアロチュービングを取り入れ性能を追求したPシリーズが話題を呼ぶと、2003年にはエアロロードのソロイストを引っさげチームCSCへのサポートを開始。
サーヴェロ・テストチームやガーミン・シャープなどのチームを経て、MTNキュベカそしてご存知ディメンションデータとトッププロチームへのバイク供給を絶え間なく続けてきた。さらには公式発表もあった通り、来季はトム・デュムラン擁するサンウェブがサーヴェロバイクを駆ることに。
ハイパフォーマンスレーシングブランドとして日々開発を続けるサーヴェロが、ディスクブレーキ専用の最新モデルとしてリリースしたのがエアロロードのフラッグシップ「S5」である。ディスクブレーキに最適化させたフレームデザインと、ユニークなコックピットデザインなどによって、さらなるエアロダイナミクスの強化を実現した1台に仕上がる(詳しい製品記事はこちら)。
コンピュータによるCFD解析や風洞実験を経てフレーム形状を決定していくプロセスは他社とも同様の点だろう。その中でもサーヴェロは、実際に人間が乗車した条件でどれだけ速いバイクに仕上げられるか、という点にこだわってテストを重ねる。すべての風洞実験時にバイクにはマネキンを乗せ、さらにボトルも装着した状態でテストを行い、マシンだけでなくライダーも含めた空気の流れを測定しエアロドラッグ低減を追求していくのだという。
さらに、マシンだけの性能をひたすらに追い求めた従来とは異なり、作業性やメンテナンス性、乗りやすさや扱いやすさなどユーザビリティに配慮した開発を近年進めている点も大きなポイントだと言う。ケーブル内装のためのユニークなコックピットシステムは決して複雑すぎる機構ではなく、調整もしやすいギミックを備えていると強調する。
またサーヴェロ含め各メーカーは56サイズ前後のフレームを基準に開発を行うが、小さいサイズではどうしても乗り味が変わってしまう問題があった。これに対しサーヴェロは、すべてのフレームサイズで同じトレイル量に設計する方法で操作性の統一化を図る。多くのメーカーが1つのモデルに対し、1~2種のフォークしか用意しないが、サーヴェロはすべてのフレームサイズに対し専用のオフセットに調整したフォークを用意するほどの力の入れようだ。
バイクそのものが実現する高いエアロダイナミクスや剛性に加え、ライダー側が感じる快適性やハンドリング性能をバランスさせることこそ、サーヴェロの目指す”速さ”に繋がるという考えだ。
高性能なフレームを生み出す卓越したカーボンテクノロジーもサーヴェロの大きな特徴。今回2種類のカーボン素材サンプルが用意され、一つは単一方向に繊維を並べたもの、一つは45度の角度で織り込んだものでその性質の違いを実際に触って感じることができた。前者は上下方向、後者はねじれの方向に強くできており、フレームにかかる応力を解析し適材適所なレイアップを施していくことで、優れた剛性と軽量性を生み出している。
モデルチェンジによりさらに性能を洗練させた新型Sシリーズは、ディスクブレーキ専用のフラッグシップ「S5」と、リム/ディスクブレーキ両方のモデルが用意されたセカンドグレード「S3」がラインアップ。各種完成車とフレームセットで販売される。最後に、ベレンド氏へのインタビューを通して、サーヴェロブランドと新型Sシリーズについて掘り下げていきたい。
― 今年は各社から新型エアロロードがリリースされましたが、その中でSシリーズのアドバンテージは何になるでしょう
ケーブルを内装する関係で電動コンポーネントのみに対応というエアロディスクロードが多い中で、新型Sシリーズはワイヤーシフトにも対応している点は大きな強みだと思っています。機械式/電動式に関わらず全く同じルーティング、そしてルックスに仕上がるためエアロ性能にも差はありません。V字型ステムを開発したエンジニア陣は本当にグッジョブだと言えるでしょう。
またライバルの多いエアロロードの中でも高い空力性能で評価されていたS5を、さらに5.5W低減を叶え性能を進化させた点は驚きでしょう。2割も3割も他社から抜きん出ているとは言えませんが、今回のアップデートでここまでエアロ性能を改善できたのはサーヴェロだけではないでしょうか。まさに次世代のスーパーエアロマシンと言えると思います。フロント周りの造形もとてもユニークで独創性がありますし、きっと気に入ってもらえるはずです。
― エアロだけでなく重量や剛性も改善されましたが、その要因はどこにありますか
形状の変更はもちろんですが、カーボン素材とレイアップの見直し、そのどちらのアップデートも加えること性能を改善していくんです。ファクトリーのテクノロジーは日々進化しています。またサーヴェロはカーボンに関して豊富な知識と経験を持ち合わせています。昨年モデルチェンジしたRシリーズの開発を通して得たフィードバックも今回活かされていますよ。
「重量は軽く、剛性は高く」これらを限界まで突き詰めていくのですが、重要なのはそのバランス。軽量化を優先しすぎた軽すぎるバイクは残念ながら良いパフォーマンスを発揮することはできないのです。
― ディスクブレーキはローター付近の空気抵抗が増すとも考えられますがいかがでしょう
新型Sシリーズはディスクブレーキに最適化させた全体のデザインでエアロダイナミクスを追求しています。確かにディスクローターに風が当たるというクリティカルな部分だけ切り取れば空気抵抗になっているかもしれませんが、それ以上にリムブレーキキャリパーが排除されたことによるエアロのデザインや、ケーブル内装による空気抵抗低減が大きく働いているのです。またそもそもホイールの回転によって気流が乱される部分なので、ローターによる影響は少ないという結果も出ています。
― 新型S5を始めサーヴェロバイクはすでにサンウェブでテストされているのですか
もちろん。すでに選手たちの元にはバイクが渡っていて来季に向けて調整を行っています。サンウェブは女子チームも持っているので、サーヴェロ・ビグラへのサポートは今季まで。ワールドツアー開幕戦となるサントス・ツアー・ダウンアンダーに向けて乗り込んでもらっている最中です。
その中でもスプリンターであるマイケル・マシューズはS5を、軽く硬いクライミングバイクを好むトム・デュムランはR5を中心に使用していきます。S5とS3、R5とR3から選手の好みによって選べるようにしており、何人かの選手はSとRをステージによって乗り分けることと思います。中にはポジションのフィッティングを優先してセカンドモデルのR3を選んだ選手もいますね。
新しくサーヴェロへとバイクが切り替わっても選手たちは良い感触を掴んでいるようです。特に新型S5を駆るマシューズは”とにかく素晴らしくアメイジングなバイクだ”と評価してくれました。タイムトライアルを重視するデュムランは、今からTTバイクP5のセッティングやカスタムを煮詰めているところです。
またV字型のステムを始めコックピットパーツはフィッティング性にも大いに配慮されているため、プロ選手もそのままレースで使用する予定です。より深いポジションを希望するライダーにはカスタム品のステムを作るかもしれませんが、調整幅は十分に取れていると思います。
― 近年グラベルやE-BIKEも盛り上がりを見せていますがサーヴェロの方向性はいかがでしょう
確かにグラベルバイクは重要なマーケットでアメリカを中心に盛り上がりを見せていますが、アジアやヨーロッパではまだまだトラディショナルなロードバイクが主流です。それに対しE-BIKEは、姉妹ブランドであるフォーカスもE-ロードバイクをリリースしたように各社開発が盛んになっていると感じますね。
その中でもサーヴェロはご存知の通りエアロダイナミクスに強みを持つレーシングブランドです。コアとなる製品は、SシリーズとRシリーズ、そしてTTバイクやトライアスロンバイクになります。サーヴェロが求められるコンペティションな性能を今後も追求して開発を進めていきますし、このコアラインは絶対であり揺らぐことはありません。
text&photo:Yuto.Murata
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