2018/10/24(水) - 12:46
ジャパンカップに来日したマヌエーレ・モーリとおま"モーリ"を授かりに行き、ディナー交流会を楽しんだファン交流イベントの1日をレポート。キャリア終盤に差し掛かり、セカンドキャリアのために勉強中という彼へのインタビューも併せて紹介します。
宇都宮が湧いたジャパンカップ翌日、稲城市のクロスコーヒーに詰めかけたのは、UAEチームエミレーツやランプレ・メリダ、はたまた昔懐かしいサウニエルデュバルジャージを着たファンたち。そこにリラックスした様子のマヌエーレ・モーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)と、通訳兼盛り上げ担当のマルコ・ファヴァロさんが登場し、ゆるりとこの日のスケジュールが幕明けた。
このイベントは、UAEとしてのジャパンカップ参戦はならなかった代わりに、本人の熱望でクリテリウムスペシャルチーム入りを叶えたモーリを迎え、昼間はライドで、夜はクロスコーヒーで食事を楽しみながら交流してもらいたいとチャンピオンシステム・ジャパンが企画したもの。2007年のジャパンカップで優勝し、合計8回も宇都宮を走った親日家の彼に一目会おうと熱心なファンが(平日にも関わらず)詰めかけた。
なお、ライドのタイトルは「モーリ選手と走る!阿蘇神社でオマモーリをゲットせよ!」。最初はジョークだと思っていたら、どうも本気らしい。ちなみに都民のモーリに走りに行く案は、クロスコーヒーから遠すぎてムーリだったそう。
モーリ本人の挨拶と参加者の自己紹介を済ませて、いざライドがスタート。この日のメニューはクロスコーヒーからすぐの多摩川河川敷に入り、サイクリストお馴染みの羽村取水堰にある諏訪神社まで往復する50kmだ。モーリファンクラブの方々はもちろん、遠く岐阜県からいらした方も(!)いて、本人も「いつもレースばかりでファンと交流する機会は少なかったから嬉しいよ」と終始ニコニコ顔。
西東京のサイクリストお馴染みの多摩川サイクリングロードを進みながら、スプリントごっこをしたり、フルームのモノマネで大爆笑したり、「正しいトイレストップの作法ワンツー」を教えてくれたり、イタリア人っぽい陽気さでみんなを笑わせてくれるモーリ。草むらをショートカットして「アームストロング〜!」と言ってるあたりは、ちょっとネタが古いかも(笑)。
無事に阿蘇神社でオマモーリをゲットし(記帳の住所はUAEチームエミレーツだった)、クロスコーヒーの美味しいサンドイッチとコーヒーを楽しみながら、参加者の人生相談に乗るモーリ。観光地とは違う「日本の普通の風景」は、もうすっかり日本通の彼にも新鮮に映ったようだ。
クロスコーヒーに到着した後は、第2部の食事会へ。モーリに質問を投げかけてみたり、秀光スペシャルメイドのコラムスペーサー(非売品)のプレゼントがあったり、サインをもらったりと、少人数制ゆえたっぷりと交流できる素晴らしい会だったと思う。「実は彼のことを知らなかったのですが、今日1日ですっかりファンになってしまいました」と言う方も。もう大ベテランの域に達しているモーリだが、来年は再び選手として走りつつ、今後目指している監督業のための勉強も進めていくそう。「監督になってもチームを率いてジャパンカップに帰ってきたいよ」と強く話していたことが印象的だった。
和やかな雰囲気で進んだ交流会は、予定時間を大幅に過ぎてお開きに。この翌日には秀光プレゼンツのファン交流会があったのだが、モーリの人柄の良さゆえに素晴らしい会となったことは想像に難くない。
モーリ独占インタビュー:「もう一年選手を継続。その後は監督としてジャパンカップに戻ってきたい」
ここからは、ライド終了から交流会スタートまでの時間を利用して聞いたインタビューの模様を紹介。ジャパンカップやこの日のイベント、キャリア終盤に差し掛かった今とこれから、そして彼のロードレース哲学について聞きました。
―クリテリウムチームの一員として臨んだ今回のジャパンカップはいかがでしたか?
今回は得意と言えないクリテリウムだったから、正直あまり見せ場も作れなかった。一度3位に入ったこともあるけど、やっぱり本職のスプリンターに対しては分が悪いよ(笑)。でも大歓声の中を走れるのは毎年すごく楽しみにしているし、日本も好きだから大満足だった。
―今回クリテリウムチーム入りした理由は?
僕がジャパンカップを走りたかったから!でも残念なことにUAEチームエミレーツとしては中国のレースもあるし、ジャパンカップへの出場はなかった。でもクリテリウムチームなら毎年海外選手を入れているし可能性はあるかもと思って、長い付き合いのある秀光の佐久間社長にオファーを出して話を繋げてもらったんだ。大会としてもウェルカムだったし、UAEも僕のスケジュールを調整してくれた。だからオーガナイザーと佐久間社長、そしてファンの皆には感謝しかない。この場を借りてお礼を伝えたいよ。ありがとう。
2007年のジャパンカップは自分のプロキャリア唯一の勝利だし、もう一生忘れることのできない思い出。ヨーロッパの選手たちは日曜日のレースを「周回コースだしそんな難しくもないでしょ」と思ってるんだけど、全然そんなことない。イタリアのワンデーレースに全く引けを取らないレベルだと思っているし、他の選手たちには観客やオーガナイズも含めて素晴らしいレースだと伝えている。
―今回の交流会はいかがでしたか?
これで8度目のジャパンカップだけど、いつもレースばかりでファンと交流する時間がないのですごく楽しかった。走るだけじゃなくて食事しながら交流できたしすごく良い機会だったよ。古いサイン入りジャージを着てくれる人もいたし嬉しかったね。
―お昼を食べつつ、人生相談にも乗っていましたね。どんなことを話していたんでしょう?
今日の参加者に自転車競技に取り組む子供を持つお父さんがいたんだけれど、彼からの質問に対して長くプロ生活を続けてきた自転車選手としてアドバイスをさせてもらったよ。
自転車競技は人生の哲学を教えてくれるもの。イタリアでは盛んなだけに、自転車ファンが自分の子供達に競技に取り組ませる場合が多いんだ。どんなスポーツもそうだけど、両親は子供達の支えになることが大切なのであって、そこに自分のエゴを押し付けてはダメなんだ。
それと、選手を目指す人も「プロ選手になること」を最終目標にしている人が多い。でもそうじゃなくて、プロ入りはあくまで一つの通過点でしかなくて、大切なのはそこからどう成長していくか。これはスポーツだけじゃなくてどんな仕事や勉強にも言えると思うけど、僕が父から言われたことに「若い時は先輩から学び、自分が先輩になったら若い人から学ぶ」ということがある。なかなか若い人から学ぶのは難しいけど、彼らから学ぶことは実際多いし、スポーツ選手になるくらいの人であれば素晴らしい才能の持ち主だったりするから。生涯学び続けることは本当に大切だし、人生を豊かにしてくれることさ。
―深いですね。
自転車競技が深いものだからね。本当だよ。毎年チームに多くの若手選手が入ってくるけど、聞く耳を持つ選手は成功するし、聞く耳持たずならだいたい3〜4年でフェードアウト。自転車が好きだからこそ「プロになりたい!」と思うのは当然だし、叶えたことで目標がなくなってしまう人も多いけど、大事なのはその先であって、もって言えばセカンドキャリアに繋がる積み重ねをしていくことだね。だからこそ学び続けることはキャリアにおいて大事なのさ。
―来年のスケジュールを教えてもらえますか?
チームとの契約は今年までだったけれど、また来年も一年契約延長することになったよ。来週にはアブダビでチーム合宿があるんだけど、そこで正式にサインする。もう自分は来年39歳で、プロになって15シーズンを走ってきたからセカンドキャリアについても考えているよ。現役引退した後は監督として現場に残りたいんだ。
でも、そのためには監督になるための資格を取らないといけないんだ。専門的な知識が必要だし、その前には英語スキルが大前提だね。UAEは実質イタリアチームだけど、来年はより国際色豊かになるから。正直英語はちんぷんかんぷんだったけれど、ここ最近勉強に取り組むうちに少し慣れてきたよ(笑)。まだ考えを伝えられるレベルにはないから頑張らないといけない。さっき言ったように、結局人生は勉強、勉強、そしてまた勉強だよ(笑)。僕が監督になった暁には選手たちを率いてジャパンカップに帰ってくるよ。
text:So.Isobe
Special Thanks:Marco Favaro(通訳)
宇都宮が湧いたジャパンカップ翌日、稲城市のクロスコーヒーに詰めかけたのは、UAEチームエミレーツやランプレ・メリダ、はたまた昔懐かしいサウニエルデュバルジャージを着たファンたち。そこにリラックスした様子のマヌエーレ・モーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)と、通訳兼盛り上げ担当のマルコ・ファヴァロさんが登場し、ゆるりとこの日のスケジュールが幕明けた。
このイベントは、UAEとしてのジャパンカップ参戦はならなかった代わりに、本人の熱望でクリテリウムスペシャルチーム入りを叶えたモーリを迎え、昼間はライドで、夜はクロスコーヒーで食事を楽しみながら交流してもらいたいとチャンピオンシステム・ジャパンが企画したもの。2007年のジャパンカップで優勝し、合計8回も宇都宮を走った親日家の彼に一目会おうと熱心なファンが(平日にも関わらず)詰めかけた。
なお、ライドのタイトルは「モーリ選手と走る!阿蘇神社でオマモーリをゲットせよ!」。最初はジョークだと思っていたら、どうも本気らしい。ちなみに都民のモーリに走りに行く案は、クロスコーヒーから遠すぎてムーリだったそう。
モーリ本人の挨拶と参加者の自己紹介を済ませて、いざライドがスタート。この日のメニューはクロスコーヒーからすぐの多摩川河川敷に入り、サイクリストお馴染みの羽村取水堰にある諏訪神社まで往復する50kmだ。モーリファンクラブの方々はもちろん、遠く岐阜県からいらした方も(!)いて、本人も「いつもレースばかりでファンと交流する機会は少なかったから嬉しいよ」と終始ニコニコ顔。
西東京のサイクリストお馴染みの多摩川サイクリングロードを進みながら、スプリントごっこをしたり、フルームのモノマネで大爆笑したり、「正しいトイレストップの作法ワンツー」を教えてくれたり、イタリア人っぽい陽気さでみんなを笑わせてくれるモーリ。草むらをショートカットして「アームストロング〜!」と言ってるあたりは、ちょっとネタが古いかも(笑)。
無事に阿蘇神社でオマモーリをゲットし(記帳の住所はUAEチームエミレーツだった)、クロスコーヒーの美味しいサンドイッチとコーヒーを楽しみながら、参加者の人生相談に乗るモーリ。観光地とは違う「日本の普通の風景」は、もうすっかり日本通の彼にも新鮮に映ったようだ。
クロスコーヒーに到着した後は、第2部の食事会へ。モーリに質問を投げかけてみたり、秀光スペシャルメイドのコラムスペーサー(非売品)のプレゼントがあったり、サインをもらったりと、少人数制ゆえたっぷりと交流できる素晴らしい会だったと思う。「実は彼のことを知らなかったのですが、今日1日ですっかりファンになってしまいました」と言う方も。もう大ベテランの域に達しているモーリだが、来年は再び選手として走りつつ、今後目指している監督業のための勉強も進めていくそう。「監督になってもチームを率いてジャパンカップに帰ってきたいよ」と強く話していたことが印象的だった。
和やかな雰囲気で進んだ交流会は、予定時間を大幅に過ぎてお開きに。この翌日には秀光プレゼンツのファン交流会があったのだが、モーリの人柄の良さゆえに素晴らしい会となったことは想像に難くない。
モーリ独占インタビュー:「もう一年選手を継続。その後は監督としてジャパンカップに戻ってきたい」
ここからは、ライド終了から交流会スタートまでの時間を利用して聞いたインタビューの模様を紹介。ジャパンカップやこの日のイベント、キャリア終盤に差し掛かった今とこれから、そして彼のロードレース哲学について聞きました。
―クリテリウムチームの一員として臨んだ今回のジャパンカップはいかがでしたか?
今回は得意と言えないクリテリウムだったから、正直あまり見せ場も作れなかった。一度3位に入ったこともあるけど、やっぱり本職のスプリンターに対しては分が悪いよ(笑)。でも大歓声の中を走れるのは毎年すごく楽しみにしているし、日本も好きだから大満足だった。
―今回クリテリウムチーム入りした理由は?
僕がジャパンカップを走りたかったから!でも残念なことにUAEチームエミレーツとしては中国のレースもあるし、ジャパンカップへの出場はなかった。でもクリテリウムチームなら毎年海外選手を入れているし可能性はあるかもと思って、長い付き合いのある秀光の佐久間社長にオファーを出して話を繋げてもらったんだ。大会としてもウェルカムだったし、UAEも僕のスケジュールを調整してくれた。だからオーガナイザーと佐久間社長、そしてファンの皆には感謝しかない。この場を借りてお礼を伝えたいよ。ありがとう。
2007年のジャパンカップは自分のプロキャリア唯一の勝利だし、もう一生忘れることのできない思い出。ヨーロッパの選手たちは日曜日のレースを「周回コースだしそんな難しくもないでしょ」と思ってるんだけど、全然そんなことない。イタリアのワンデーレースに全く引けを取らないレベルだと思っているし、他の選手たちには観客やオーガナイズも含めて素晴らしいレースだと伝えている。
―今回の交流会はいかがでしたか?
これで8度目のジャパンカップだけど、いつもレースばかりでファンと交流する時間がないのですごく楽しかった。走るだけじゃなくて食事しながら交流できたしすごく良い機会だったよ。古いサイン入りジャージを着てくれる人もいたし嬉しかったね。
―お昼を食べつつ、人生相談にも乗っていましたね。どんなことを話していたんでしょう?
今日の参加者に自転車競技に取り組む子供を持つお父さんがいたんだけれど、彼からの質問に対して長くプロ生活を続けてきた自転車選手としてアドバイスをさせてもらったよ。
自転車競技は人生の哲学を教えてくれるもの。イタリアでは盛んなだけに、自転車ファンが自分の子供達に競技に取り組ませる場合が多いんだ。どんなスポーツもそうだけど、両親は子供達の支えになることが大切なのであって、そこに自分のエゴを押し付けてはダメなんだ。
それと、選手を目指す人も「プロ選手になること」を最終目標にしている人が多い。でもそうじゃなくて、プロ入りはあくまで一つの通過点でしかなくて、大切なのはそこからどう成長していくか。これはスポーツだけじゃなくてどんな仕事や勉強にも言えると思うけど、僕が父から言われたことに「若い時は先輩から学び、自分が先輩になったら若い人から学ぶ」ということがある。なかなか若い人から学ぶのは難しいけど、彼らから学ぶことは実際多いし、スポーツ選手になるくらいの人であれば素晴らしい才能の持ち主だったりするから。生涯学び続けることは本当に大切だし、人生を豊かにしてくれることさ。
―深いですね。
自転車競技が深いものだからね。本当だよ。毎年チームに多くの若手選手が入ってくるけど、聞く耳を持つ選手は成功するし、聞く耳持たずならだいたい3〜4年でフェードアウト。自転車が好きだからこそ「プロになりたい!」と思うのは当然だし、叶えたことで目標がなくなってしまう人も多いけど、大事なのはその先であって、もって言えばセカンドキャリアに繋がる積み重ねをしていくことだね。だからこそ学び続けることはキャリアにおいて大事なのさ。
―来年のスケジュールを教えてもらえますか?
チームとの契約は今年までだったけれど、また来年も一年契約延長することになったよ。来週にはアブダビでチーム合宿があるんだけど、そこで正式にサインする。もう自分は来年39歳で、プロになって15シーズンを走ってきたからセカンドキャリアについても考えているよ。現役引退した後は監督として現場に残りたいんだ。
でも、そのためには監督になるための資格を取らないといけないんだ。専門的な知識が必要だし、その前には英語スキルが大前提だね。UAEは実質イタリアチームだけど、来年はより国際色豊かになるから。正直英語はちんぷんかんぷんだったけれど、ここ最近勉強に取り組むうちに少し慣れてきたよ(笑)。まだ考えを伝えられるレベルにはないから頑張らないといけない。さっき言ったように、結局人生は勉強、勉強、そしてまた勉強だよ(笑)。僕が監督になった暁には選手たちを率いてジャパンカップに帰ってくるよ。
text:So.Isobe
Special Thanks:Marco Favaro(通訳)
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