2018/09/17(月) - 04:34
首都マドリードでグランドフィナーレを迎えた第73回ブエルタ・ア・エスパーニャ。エリア・ヴィヴィアーニが圧巻のスプリントで3勝目を飾り、サイモン・イェーツが初の総合優勝を射止めた。イギリス人選手のグランツール制覇は5大会連続。
グランツール最終日は(個人TTを除いて)パレードランからの最終スプリントバトルだと相場が決まっている。第73回ブエルタ・ア・エスパーニャも例外ではなく、実質的な総合優勝者であるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)を先頭に、158名の完走者たちが首都マドリードに凱旋。最後はマドリード中心部のシベレス広場を中心にした5.9kmの平坦周回コースを11周した。
イェーツら4賞ジャージ着用者や総合トップ3の選手を先頭にマドリード郊外のアルコルコンをスタートした一行は、ニュートラル区間を含めると30km/hを下回るスローペースで幹線道路を進む。チーム毎や国毎に隊列を組んで記念写真を撮るなど、グランツール最終日らしいまったりとした雰囲気でレースは進んだ。
アタックが生まれないままマドリードの周回コースが近づくと、このブエルタ最終ステージに現役を引退することを発表したイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)が飛び出す。メイン集団に容認される形でしばらく独走したアントンが吸収されると、いよいよ本格的なアタック合戦が始まった。
まずはイェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)、ホセ・エラダ(スペイン、コフィディス)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、ロイック・シェトゥ(フランス、コフィディス)、ステファヌ・ロゼット(フランス、コフィディス)、ミケル・イトゥリア(スペイン、エウスカディ・ムリアス)の6名が2周目に抜け出したが、人数の多さを嫌ったクイックステップフロアーズ、トレック・セガフレード、ボーラ・ハンスグローエの3チームの集団牽引によって引き戻される。
続いて4周目にディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴスBH)、ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシング)、ニキータ・スタルノフ(カザフスタン、アスタナ)、ガリコイツ・ブラボ(スペイン、エウスカディ・ムリアス)の4名がアタック。フィニッシュまで40kmを残して生まれたこの動きが少しずつタイム差を広げ始めた。
パンクで脱落したスタルノフを置き去りにして逃げ続けたルビオ、ロスコフ、ブラボの3名。しかし、クイックステップフロアーズ、トレック・セガフレード、ボーラ・ハンスグローエに加えてロットNLユンボもメイン集団の牽引に加わり、スピードを上げて逃げグループを追い詰める。先頭3名は最終周回を前に捕らえられた。
ジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)のカウンターアタックはすぐさま吸収され、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)がメイン集団を率いて最終周回に突入。20km/h以下に減速するUターンが2ヶ所あるにもかかわらず、最終周回の平均スピードは56.2km/hに達している。
完璧に主導権を握るスプリンターチームが現れないまま残り1kmアーチを抜けて最終コーナーへ。クイックステップフロアーズが上手くヴィヴィアーニを引き上げることができない中、ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ)やジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)らが先頭でスプリントを開始する。ロード世界選手権を前にアルカンシェルでの最後の勝利を飾りたいサガンが抜け出したものの、別ラインからイタリアチャンピオンが勢いよく追い上げた。
後方からのスプリントにもかかわらず、先行するスプリンターたちを全員抜き去ったヴィヴィアーニ。伸びやかな加速でステージ3勝目を飾ったヴィヴィアーニが今大会最速スプリンターの称号をほしいままにした。
世界最多のシーズン18勝目を飾り、クイックステップフロアーズにシーズン67勝目をもたらしたヴィヴィアーニは「今日は残り2km地点でリードアウトから離れてしまい、トレインを組むことができないままスプリントが始まった。それでも自信を持っていたし、仮にトレインが崩れた場合は最終コーナーでチームメイトたちが前でペースを落とす手筈になっていた。どんなミスでも改善して次につなげることができる。チームとしてこのブエルタで残した成績を誇りに思うよ」とコメント。クイックステップフロアーズはステージ2連勝、ステージ4勝目で、今大会ステージトップ10を19回記録している。
そして総合優勝の栄冠はステージ32位で安全にフィニッシュしたイェーツの手に。「まだブエルタで勝ったなんて信じられない。ジロで総合優勝を逃して失望したけど、このブエルタで帳消しにすることができた。とても特別な勝利だ」とイェーツは語る。イギリス中部、イングランドのベリー(マンチェスター郊外)出身の26歳がグランツール初制覇を果たした。
イェーツは2016年ブエルタでステージ優勝を飾るとともに総合6位に入り、2017年ツール・ド・フランスで総合7位に入ってマイヨブランを獲得。2018年ジロでステージ3勝を飾って13日間マリアローザを着ている。今大会を振り返ると、第9ステージでマイヨロホを着用し、4日後にヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)に首位を明け渡したが、第14ステージのレス・プラエレス山頂フィニッシュで勝利してマイヨロホを奪回。個人タイムトライアルもそつなくこなし、モビスターやアスタナ、ロットNLユンボの総攻撃を防ぎきった。
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が総合優勝した2017年のツールから始まったイギリス人選手によるグランツール快進撃。フルームが同年のブエルタと2018年ジロ・デ・イタリアを制し、さらにツールでゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合優勝。そして迎えたブエルタでイェーツが総合優勝。2018年のグランツールタイトルはすべてイギリス人選手の手に渡ったことになる。
チームスカイによる優勝記録は途絶えたが、5連続グランツール制覇という結果を残したイギリス自転車界。フルームより7歳、トーマスより6歳若いイェーツは「どんな未来が待っているのかまだわからないけど、グランツールで再び勝てるようにこれからも成長していきたい」と語っている。
一躍地元スペインの希望の星となった23歳エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が総合2位フィニッシュ。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)はジロに続いて総合3位の成績を残している。
イェーツはイギリス代表チームのメンバーとして2週間後のロード世界選手権に出場予定。ブエルタ後半にかけて調子を上げるなど、クライマー向きとされる世界一決定戦にイェーツは照準を合わせている。もちろん総合2位マスや総合3位ロペスの他、ブエルタの山岳で活躍した選手はいずれもアルカンシェル候補だ。
グランツール最終日は(個人TTを除いて)パレードランからの最終スプリントバトルだと相場が決まっている。第73回ブエルタ・ア・エスパーニャも例外ではなく、実質的な総合優勝者であるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)を先頭に、158名の完走者たちが首都マドリードに凱旋。最後はマドリード中心部のシベレス広場を中心にした5.9kmの平坦周回コースを11周した。
イェーツら4賞ジャージ着用者や総合トップ3の選手を先頭にマドリード郊外のアルコルコンをスタートした一行は、ニュートラル区間を含めると30km/hを下回るスローペースで幹線道路を進む。チーム毎や国毎に隊列を組んで記念写真を撮るなど、グランツール最終日らしいまったりとした雰囲気でレースは進んだ。
アタックが生まれないままマドリードの周回コースが近づくと、このブエルタ最終ステージに現役を引退することを発表したイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)が飛び出す。メイン集団に容認される形でしばらく独走したアントンが吸収されると、いよいよ本格的なアタック合戦が始まった。
まずはイェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)、ホセ・エラダ(スペイン、コフィディス)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、ロイック・シェトゥ(フランス、コフィディス)、ステファヌ・ロゼット(フランス、コフィディス)、ミケル・イトゥリア(スペイン、エウスカディ・ムリアス)の6名が2周目に抜け出したが、人数の多さを嫌ったクイックステップフロアーズ、トレック・セガフレード、ボーラ・ハンスグローエの3チームの集団牽引によって引き戻される。
続いて4周目にディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴスBH)、ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシング)、ニキータ・スタルノフ(カザフスタン、アスタナ)、ガリコイツ・ブラボ(スペイン、エウスカディ・ムリアス)の4名がアタック。フィニッシュまで40kmを残して生まれたこの動きが少しずつタイム差を広げ始めた。
パンクで脱落したスタルノフを置き去りにして逃げ続けたルビオ、ロスコフ、ブラボの3名。しかし、クイックステップフロアーズ、トレック・セガフレード、ボーラ・ハンスグローエに加えてロットNLユンボもメイン集団の牽引に加わり、スピードを上げて逃げグループを追い詰める。先頭3名は最終周回を前に捕らえられた。
ジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)のカウンターアタックはすぐさま吸収され、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)がメイン集団を率いて最終周回に突入。20km/h以下に減速するUターンが2ヶ所あるにもかかわらず、最終周回の平均スピードは56.2km/hに達している。
完璧に主導権を握るスプリンターチームが現れないまま残り1kmアーチを抜けて最終コーナーへ。クイックステップフロアーズが上手くヴィヴィアーニを引き上げることができない中、ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ)やジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)らが先頭でスプリントを開始する。ロード世界選手権を前にアルカンシェルでの最後の勝利を飾りたいサガンが抜け出したものの、別ラインからイタリアチャンピオンが勢いよく追い上げた。
後方からのスプリントにもかかわらず、先行するスプリンターたちを全員抜き去ったヴィヴィアーニ。伸びやかな加速でステージ3勝目を飾ったヴィヴィアーニが今大会最速スプリンターの称号をほしいままにした。
世界最多のシーズン18勝目を飾り、クイックステップフロアーズにシーズン67勝目をもたらしたヴィヴィアーニは「今日は残り2km地点でリードアウトから離れてしまい、トレインを組むことができないままスプリントが始まった。それでも自信を持っていたし、仮にトレインが崩れた場合は最終コーナーでチームメイトたちが前でペースを落とす手筈になっていた。どんなミスでも改善して次につなげることができる。チームとしてこのブエルタで残した成績を誇りに思うよ」とコメント。クイックステップフロアーズはステージ2連勝、ステージ4勝目で、今大会ステージトップ10を19回記録している。
そして総合優勝の栄冠はステージ32位で安全にフィニッシュしたイェーツの手に。「まだブエルタで勝ったなんて信じられない。ジロで総合優勝を逃して失望したけど、このブエルタで帳消しにすることができた。とても特別な勝利だ」とイェーツは語る。イギリス中部、イングランドのベリー(マンチェスター郊外)出身の26歳がグランツール初制覇を果たした。
イェーツは2016年ブエルタでステージ優勝を飾るとともに総合6位に入り、2017年ツール・ド・フランスで総合7位に入ってマイヨブランを獲得。2018年ジロでステージ3勝を飾って13日間マリアローザを着ている。今大会を振り返ると、第9ステージでマイヨロホを着用し、4日後にヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)に首位を明け渡したが、第14ステージのレス・プラエレス山頂フィニッシュで勝利してマイヨロホを奪回。個人タイムトライアルもそつなくこなし、モビスターやアスタナ、ロットNLユンボの総攻撃を防ぎきった。
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が総合優勝した2017年のツールから始まったイギリス人選手によるグランツール快進撃。フルームが同年のブエルタと2018年ジロ・デ・イタリアを制し、さらにツールでゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合優勝。そして迎えたブエルタでイェーツが総合優勝。2018年のグランツールタイトルはすべてイギリス人選手の手に渡ったことになる。
チームスカイによる優勝記録は途絶えたが、5連続グランツール制覇という結果を残したイギリス自転車界。フルームより7歳、トーマスより6歳若いイェーツは「どんな未来が待っているのかまだわからないけど、グランツールで再び勝てるようにこれからも成長していきたい」と語っている。
一躍地元スペインの希望の星となった23歳エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が総合2位フィニッシュ。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)はジロに続いて総合3位の成績を残している。
イェーツはイギリス代表チームのメンバーとして2週間後のロード世界選手権に出場予定。ブエルタ後半にかけて調子を上げるなど、クライマー向きとされる世界一決定戦にイェーツは照準を合わせている。もちろん総合2位マスや総合3位ロペスの他、ブエルタの山岳で活躍した選手はいずれもアルカンシェル候補だ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第21ステージ結果
1位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) | 2:21:28 |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
4位 | ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ) | |
5位 | マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ) | |
6位 | ジョン・アベラストゥリ(スペイン、エウスカディ・ムリアス) | |
7位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
8位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
9位 | トム・ヴァンアスブロック(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | |
10位 | ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ) |
個人総合成績
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 82:05:58 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:01:46 |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:02:04 |
4位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:02:54 |
5位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:04:28 |
6位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:05:57 |
7位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:06:07 |
8位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:06:51 |
9位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:11:09 |
10位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:11:11 |
総合敢闘賞 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) |
ポイント賞
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 131pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 119pts |
3位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) | 105pts |
山岳賞
1位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) | 95pts |
2位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 83pts |
3位 | ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) | 64pts |
複合賞
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 11pts |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 13pts |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 18pts |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 246:50:04 |
2位 | バーレーン・メリダ | 0:45:36 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:47:57 |
text&photo:Kei Tsuji in Madrid, Spain
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