2018/09/09(日) - 02:59
初登場の1級山岳レス・プラエレスで繰り広げられたトップレーサーたちによるマイヨロホ争い。スペイン&コロンビア勢による攻撃をかわし、残り700mで加速したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がステージ優勝を飾るとともに総合首位に返り咲いた。
第73回ブエルタ・ア・エスパーニャ最大の山場であるアストゥリアス山岳3連戦の2日目、第14ステージはカテゴリー1級から3級の山岳が5つ設定された171kmの難関山岳コース。後半にかけて急勾配の1級山岳コリャドナ峠(全長5.3km/平均8.1%)、1級山岳モスケタ峠(全長6.5km/平均8.7%)、3級山岳ファリャ・デ・ロス・ロボス峠(全長5.3km/平均6.4%)を越え、ブエルタ初登場となる1級山岳レス・プラエレス(全長4km/平均12.5%)に挑む。
ブエルタに合わせて舗装されたばかりの1級山岳レス・プラエレスは前半から15%オーバーの勾配が断続的に続く激坂。誰にとっても未知の、最大勾配17%の『壁』で総合争いが激しく動いた。
この日の主役は、序盤ステージで3日間マイヨロホを着たミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)。総合19位/5分02秒遅れのポーランドチャンピオンのアタックをきっかけに6名の逃げグループが形成される。イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、クウィアトコウスキーという強者揃いの逃げグループが最大4分のリードを得た。
クウィアトコウスキーが先頭で活発な走りを見せた一方で、序盤の登りで遅れたパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームスカイ)がリタイア。また、2日前のフィニッシュ後の落車で怪我を負ったディラン・ファンバーレ(オランダ、チームスカイ)がスタートしなかったため、この日だけでチームスカイは重要なアシストを2人失っている。
アストゥリアス州らしい灰色の岩山を横目に進む逃げグループを、マイヨロホを守りたいコフィディスが追走した。ここにモビスターも加わってメイン集団のペースを作り、タイム差を2分〜4分に抑え込む。そのためクウィアトコウスキーに暫定総合リーダーの座が移ることはなかった。
前半から山岳賞狙いの動きを見せたのはスタートの時点で同賞4位につけていたデヘント。3つのカテゴリー山岳を先頭通過したデヘントは25ポイントを荒稼ぎすることに成功する。ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)は山岳賞ジャージを守ったものの、同賞2位に浮上したデヘントとの差は10ポイントに縮まった。
フィニッシュまで50kmを切り、1級山岳モスケタ峠の登りに入ったところで、ゼッケン1をつける2010年大会の総合優勝者ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がメイン集団のペースメイクを開始。先頭ではクウィアトコウスキー、ブックウォルター、ロッシュの3名が逃げ続けたものの、ニバリの献身的な引きによってタイム差は1分台に突入した。
1級山岳モスケタ峠のテクニカルな下り区間でニバリが引き続き先頭を引くと、メイン集団が真っ二つに分断。ほとんどの総合上位陣が第1集団に残った一方で、マイヨロホのヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)や総合12位ダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)が後方に取り残される展開に。
先頭ではクウィアトコウスキーが独走で3級山岳ファリャ・デ・ロス・ロボス峠をクリアしたものの、ニバリの継続的な集団牽引がそのリードを削り取る。残り8kmまでメイン集団を引き続けたニバリが下がるとゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)が集団先頭へ。ステージ敢闘賞に輝いたクウィアトコウスキーは1級山岳レス・プラエレスの登りを前に吸収された。
アングリル(平均10.2%)、モンテゾンコラン(平均11.9%)、あざみライン(平均10.5%)を上回る、平均勾配12.5%の1級山岳レス・プラエレスでアタックの口火を切ったのは総合9位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)で、モビスターが追いかけて封じ込めにかかる。
まずはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が先頭のクライスヴァイクに追いつき、少し時間をおいてミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)も合流する。するとフィニッシュまで2kmを切ると今度はキンタナが攻撃に出た。
キンタナの加速に対応できたのはロペスのみ。急勾配の登りを軽々に進む2人のコロンビアンクライマーをクライスヴァイク、バルベルデ、イェーツらが追いかける。キンタナとロペスの先行は決まらずに先頭は再び8名にまとまった。
揃って残り1kmアーチを通過した総合2位イェーツ、総合3位キンタナ、総合4位バルベルデ、総合5位ロペス、総合6位ウラン、総合9位クライスヴァイク、総合11位マス、総合16位ピノという精鋭グループの中から、残り700mでイェーツが腰を上げた。
それまでライバルたちの動きを監視していたイェーツの加速が決まり、追いすがるロペス、キンタナ、バルベルデの3名を引き離していく。ダンシングで急勾配のコンクリート路を駆け上がったイェーツが、終盤に少し差を詰められながらも単独でフィニッシュした。
ロペスとバルベルデが2秒差、ピノが5秒差、キンタナが7秒差、クライスヴァイクが11秒差でフィニッシュに辿り着いている。ステージ6位に入ったクライスヴァイクは平均勾配12.5%の1級山岳レス・プラエレスを平均スピード14.7km/hで登坂。VAM(平均登坂スピード)は1,891に達している。
ステージ優勝を飾りとともに、この日9分以上遅れたエラダからマイヨロホを奪い返したイェーツは「最後の登りは試走していなかったので、ビデオの映像と写真で研究していた。でも実際の勾配や道の細さがわからなかったので、登りの前半はコンサバティブに走ったよ。モビスターが数を揃えて攻撃したので少し焦ったけど、落ち着いて登りをこなして、ここだというタイミングでアタックした」と語る。
「再び総合首位に立ったけど、自分が独裁的な強さを見せているとは言えない。ここまで長い登りは第9ステージの1回だけで、タイム差はまだ小さい。常にリミットぎりぎりで走るような今日のような短い登りではなく、明日の(ラゴス・デ・コバドンガのような)長い登りが自分は得意なんだ」と総合首位イェーツはコメント。ボーナスタイムによって総合2位バルベルデとのタイム差は20秒、総合3位キンタナとのタイム差は25秒に広がっている。
第73回ブエルタ・ア・エスパーニャ最大の山場であるアストゥリアス山岳3連戦の2日目、第14ステージはカテゴリー1級から3級の山岳が5つ設定された171kmの難関山岳コース。後半にかけて急勾配の1級山岳コリャドナ峠(全長5.3km/平均8.1%)、1級山岳モスケタ峠(全長6.5km/平均8.7%)、3級山岳ファリャ・デ・ロス・ロボス峠(全長5.3km/平均6.4%)を越え、ブエルタ初登場となる1級山岳レス・プラエレス(全長4km/平均12.5%)に挑む。
ブエルタに合わせて舗装されたばかりの1級山岳レス・プラエレスは前半から15%オーバーの勾配が断続的に続く激坂。誰にとっても未知の、最大勾配17%の『壁』で総合争いが激しく動いた。
この日の主役は、序盤ステージで3日間マイヨロホを着たミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)。総合19位/5分02秒遅れのポーランドチャンピオンのアタックをきっかけに6名の逃げグループが形成される。イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、クウィアトコウスキーという強者揃いの逃げグループが最大4分のリードを得た。
クウィアトコウスキーが先頭で活発な走りを見せた一方で、序盤の登りで遅れたパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームスカイ)がリタイア。また、2日前のフィニッシュ後の落車で怪我を負ったディラン・ファンバーレ(オランダ、チームスカイ)がスタートしなかったため、この日だけでチームスカイは重要なアシストを2人失っている。
アストゥリアス州らしい灰色の岩山を横目に進む逃げグループを、マイヨロホを守りたいコフィディスが追走した。ここにモビスターも加わってメイン集団のペースを作り、タイム差を2分〜4分に抑え込む。そのためクウィアトコウスキーに暫定総合リーダーの座が移ることはなかった。
前半から山岳賞狙いの動きを見せたのはスタートの時点で同賞4位につけていたデヘント。3つのカテゴリー山岳を先頭通過したデヘントは25ポイントを荒稼ぎすることに成功する。ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)は山岳賞ジャージを守ったものの、同賞2位に浮上したデヘントとの差は10ポイントに縮まった。
フィニッシュまで50kmを切り、1級山岳モスケタ峠の登りに入ったところで、ゼッケン1をつける2010年大会の総合優勝者ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がメイン集団のペースメイクを開始。先頭ではクウィアトコウスキー、ブックウォルター、ロッシュの3名が逃げ続けたものの、ニバリの献身的な引きによってタイム差は1分台に突入した。
1級山岳モスケタ峠のテクニカルな下り区間でニバリが引き続き先頭を引くと、メイン集団が真っ二つに分断。ほとんどの総合上位陣が第1集団に残った一方で、マイヨロホのヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)や総合12位ダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)が後方に取り残される展開に。
先頭ではクウィアトコウスキーが独走で3級山岳ファリャ・デ・ロス・ロボス峠をクリアしたものの、ニバリの継続的な集団牽引がそのリードを削り取る。残り8kmまでメイン集団を引き続けたニバリが下がるとゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)が集団先頭へ。ステージ敢闘賞に輝いたクウィアトコウスキーは1級山岳レス・プラエレスの登りを前に吸収された。
アングリル(平均10.2%)、モンテゾンコラン(平均11.9%)、あざみライン(平均10.5%)を上回る、平均勾配12.5%の1級山岳レス・プラエレスでアタックの口火を切ったのは総合9位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)で、モビスターが追いかけて封じ込めにかかる。
まずはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が先頭のクライスヴァイクに追いつき、少し時間をおいてミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)も合流する。するとフィニッシュまで2kmを切ると今度はキンタナが攻撃に出た。
キンタナの加速に対応できたのはロペスのみ。急勾配の登りを軽々に進む2人のコロンビアンクライマーをクライスヴァイク、バルベルデ、イェーツらが追いかける。キンタナとロペスの先行は決まらずに先頭は再び8名にまとまった。
揃って残り1kmアーチを通過した総合2位イェーツ、総合3位キンタナ、総合4位バルベルデ、総合5位ロペス、総合6位ウラン、総合9位クライスヴァイク、総合11位マス、総合16位ピノという精鋭グループの中から、残り700mでイェーツが腰を上げた。
それまでライバルたちの動きを監視していたイェーツの加速が決まり、追いすがるロペス、キンタナ、バルベルデの3名を引き離していく。ダンシングで急勾配のコンクリート路を駆け上がったイェーツが、終盤に少し差を詰められながらも単独でフィニッシュした。
ロペスとバルベルデが2秒差、ピノが5秒差、キンタナが7秒差、クライスヴァイクが11秒差でフィニッシュに辿り着いている。ステージ6位に入ったクライスヴァイクは平均勾配12.5%の1級山岳レス・プラエレスを平均スピード14.7km/hで登坂。VAM(平均登坂スピード)は1,891に達している。
ステージ優勝を飾りとともに、この日9分以上遅れたエラダからマイヨロホを奪い返したイェーツは「最後の登りは試走していなかったので、ビデオの映像と写真で研究していた。でも実際の勾配や道の細さがわからなかったので、登りの前半はコンサバティブに走ったよ。モビスターが数を揃えて攻撃したので少し焦ったけど、落ち着いて登りをこなして、ここだというタイミングでアタックした」と語る。
「再び総合首位に立ったけど、自分が独裁的な強さを見せているとは言えない。ここまで長い登りは第9ステージの1回だけで、タイム差はまだ小さい。常にリミットぎりぎりで走るような今日のような短い登りではなく、明日の(ラゴス・デ・コバドンガのような)長い登りが自分は得意なんだ」と総合首位イェーツはコメント。ボーナスタイムによって総合2位バルベルデとのタイム差は20秒、総合3位キンタナとのタイム差は25秒に広がっている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第14ステージ結果
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 4:19:27 |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:02 |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
4位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:05 |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:00:07 |
6位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:00:11 |
7位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:00:19 |
8位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | :00:27 |
9位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:00:37 |
10位 | ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:39 |
11位 | トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) | 0:00:47 |
12位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:53 |
45位 | ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) | 0:09:16 |
敢闘賞 | ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) |
個人総合成績
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 59:11:18 |
2位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:20 |
3位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:00:25 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:47 |
5位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:01:23 |
6位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:01:28 |
7位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:01:40 |
8位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:01:47 |
9位 | トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:01:55 |
10位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:08 |
ポイント賞
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 101pts |
2位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 83pts |
3位 | ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) | 68pts |
山岳賞
1位 | ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) | 64pts |
2位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) | 54pts |
3位 | ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ) | 40pts |
複合賞
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 12pts |
2位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 19pts |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 24pts |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・メリダ | 177:31:32 |
2位 | モビスター | 0:06:42 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:20:43 |
text:Kei Tsuji
photo:Luca Bettini, Unipublic
photo:Luca Bettini, Unipublic
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