ビンクバンク・ツアー第5ステージでまたしても逃げ切りが発生。序盤からのエスケープが絶妙なペースアップでゴールまで到達し、マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)が勝利を飾った。



総合リーダーのマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)総合リーダーのマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos前日に勝利しているジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)前日に勝利しているジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:CorVos

スタート前にバルーンアーチが倒壊スタート前にバルーンアーチが倒壊 photo:CorVos
ビンクバンク・ツアーは5日目。ブラバント州のルウ=サン=ピエールから要塞で有名なナミュールの街をかすめ、マーストリヒトに近いランアーケンにフィニッシュする204.4km。最後は市街地に敷かれた10.3kmコースを3周回するが、基本的には一つの山岳ポイントもないスプリンター向けコースだ。

前日にジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)の抜け出しを、2日前にも逃げ切りを許しているスプリンターたちは、開幕日以来の集団ゴールに向けてスタートしていく。

この日逃げたのはマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)とアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼル)、ヨナス・リカールト(ベルギー、スポーツフラーンデレン・バロワーズ)、そして7月1日付でSEGレーシングチームからEFエデュケーションファースト・ドラパックに移籍した21歳のジュリウス・ヴァンデンデルフ(オランダ)という4名。

総合首位マテイ・モホリッチ(スロベニア)擁するバーレーン・メリダと、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)の勝利を目論むロットNLユンボの合同チームがタイム差を2分台前半で押さえ込みつつ距離を消化していった。

オランダらしい景色の中を進むメイン集団オランダらしい景色の中を進むメイン集団 photo:CorVosメイン集団をコントロールするロットNLユンボとバーレーン・メリダメイン集団をコントロールするロットNLユンボとバーレーン・メリダ photo:CorVos

アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼル)やヨナス・リカールト(ベルギー、スポーツフラーンデレン・バロワーズ)ら4名アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼル)やヨナス・リカールト(ベルギー、スポーツフラーンデレン・バロワーズ)ら4名 photo:CorVos
レースが残り40kmに差し掛かったところで、集団内では大きな落車が発生した。50km/hものスピードで路面に投げ出されたオウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)は一度再スタートを切ったものの、そのままリタイア。幸い病院での検査では骨折などは見当たらず、一晩を過ごしてから帰宅する予定だという。

強調して逃げる先頭4名は、周回サーキットに入る頃にはトップギアに入れ替え最大スピードで集団を引き離しにかかった。しかしメイン集団を牽くメンバーは代わり映えせず、徐々にタイム差は2分台後半まで拡大していく。集団内でユアンのアシストをこなしたルーク・ダーブリッジ(オーストラリア)は以下のように振り返っている。

「今日も逃げグループは賢く力強い走りだった。タイム差の詰まりが極めて遅く、僕らが予想していたよりも1分の余裕を持って走っていたんだ。これはマズいと僕らのスヴェン・タフトに先頭に立って相当なペースで走ったけれど、その時点で2分半差。もうパニックだった。一列になってしまう市街地コースでは追走を組むのも難しかったことも原因だった」。

集団内で走るポイント賞リーダーのカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)集団内で走るポイント賞リーダーのカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
終盤に入ってペースアップした4名。協調は最後まで崩れなかった終盤に入ってペースアップした4名。協調は最後まで崩れなかった photo:CorVos
メイン集団の計算を狂わせたまま、逃げ切りに青信号を灯して市街地コースを突き進んだ4名。しかし残り5kmというタイミングでリカールトはパンクに見舞われ、更に急停止したチームカーに対応できず前転という憂き目に。勝負は残り1.5kmから牽制を始めたヴァンデンデルフ、グジャール、そしてコルトニールセンに絞られた。

トラックレースのような牽制状態から、まず仕掛けたのはヴァンデンデルフだった。しかし流し先行していたコルトニールセンが反応し、そのまま追い上げを許さずフィニッシュ。今年のツール・ド・フランスでも逃げ切りを達成していたレース巧者がプロ通算13勝目を飾ることとなった。

力強いスプリントで勝負を制したマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)力強いスプリントで勝負を制したマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos
ツール・ド・フランスに続く逃げ切り勝利を収めたマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)ツール・ド・フランスに続く逃げ切り勝利を収めたマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos33秒遅れのメイン集団先頭はカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)33秒遅れのメイン集団先頭はカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos


「逃げ切りを成功させられたなんて信じられないよ。特に今回のビンクバンクでは逃げ切りが決まりやすい分、スプリンターチームが警戒している中での勝利だったから。僕ら4名は100%協調できていたし、走りはとてもスムーズだった。序盤はマイペースでこなして最後逃げ切るための脚を貯め、最後はみんなで全開だった。こんな勝利は初めてだしすごく特別な気分だよ」とコルトニールセン。フィニッシュ後はパンクで29秒遅れたリカールトも含め、逃げメンバー全員と健闘を称えあった。

3日連続で逃げ切りを許したメイン集団は、ポイント賞首位のカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)を先頭にフィニッシュ。来年ロット・スーダル入りを発表しているユアンはポイント賞2位のストゥイヴェンに対してその差を20pts以上にまで広げている。

また、モホリッチら総合上位陣は揃って集団ゴールしているため、トップ10に順位変動は無かった。

ビールを獲得して喜ぶマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)ビールを獲得して喜ぶマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) photo:CorVos
危なげなく総合首位を守ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)	危なげなく総合首位を守ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos
ビンクバンク・ツアー2018第5ステージ結果
1位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) 4h39'50"
2位 ジュリウス・ヴァンデンデルフ(オランダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
3位 アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼル)
4位 ヨナス・リカールト(ベルギー、スポーツフラーンデレン・バロワーズ) +29"
5位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) +33"
6位 マッテーオ・ペルッキ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 フロリアン・セネシャル(フランス、クイックステップフロアーズ)
8位 トム・デフレンド(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
9位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・スーダル)
10位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)
個人総合成績
1位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 16h28'51"
2位 ショーン・デビー(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス) +03"
3位 シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング) +22"
4位 マキシム・ヴァントム(ベルギー、WBアクアプロテクト) +28"
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) +30"
6位 タコ・ファンデルホールン(オランダ、ルームポット) +32"
7位 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル) +36"
8位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) +37"
9位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ) +41"
10位 アレックス・ドーセット(イギリス、カチューシャ・アルペシン)
ポイント賞
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 64pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 41pts
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 40pts
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 49h28'37"
2位 EFエデュケーションファースト・ドラパック +05"
3位 サンウェブ +12"
text:So.Isobe
photo:CorVos

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