2018/07/27(金) - 17:22
昨第17ステージでのクリストファー・フルームの脱落でチームスカイの戦略は明確なものになった。ダブルエースからシングルエースへ。ゲラント・トーマスをフルームが支えるという体制が明確に築かれた。第18ステージでの取材からお伝えする。
激闘の第17ステージが明けた翌朝、チームスカイのバスは何人もの警官、憲兵隊が警備に着く厳戒態勢が敷かれていた。いつになく物々しい雰囲気。
昨日の超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠でゲラント・トーマスが路肩の観客に腕を掴みかかられる事件が起きた。また、レースを終えバイクで下山していたクリストファー・フルームがジャンダルマリー(憲兵)に一般ファンと間違えられて制止させられ落車するという事件が起きた。フルームの脱落と、マイヨジョーヌのトーマスへの取材殺到。そしていまだに続いているチームスカイへのブーイング。それらへの対応で、警備は厳重なものになったようだった。
2014年の落車リタイアを除き、2013年からツール・ド・フランスの総合リーダーであり続けたフルームがついにタイムを落とした。総合2位から3位へ、そして長年のチームメイトであるトーマスのとのタイム差も2分31秒に広がり、現実的にはトーマスで最終的なマイヨジョーヌを狙うことがチームとしての戦略になることは間違いなかった。チームスカイのダブルエース体制への疑問に対する答えが出た。
物々しい雰囲気のなか、昨日のステージで起こったことを説明する時間がもたれた。ステージに向かうゲラント・トーマス、クリストファー・フルーム、デイブ・ブレイルスフォードGMらを記者たちが囲む。
マイヨジョーヌのリードをさらに広げたトーマスは言う。「僕らはいい位置につけている。でもだからといって僕らの今までの考え方が変わるわけじゃない。逃げ出しも、満足もしない。今までどおりチームとして闘う。それが僕らの強み。クリス(フルーム)とブラッド(ウィギンズ)の間に起こったことを前に信じられないかもしれないけれど、僕とクリスは正直でオープンな関係だ。それがチームの成功にもつながっている」。
フルームはサングラスをカジュアルなものにして、アフターにかぶるチームキャップを深くかぶり、控えめな装いにしてバスから降りてきた。目立たないように、エースがトーマスに変わったことを示唆するかのように。
「昨日のステージのサンラリ=スラン・ポルテ峠ではただ足がなかった。ゲラントは今までのところミスの無い走りをしている。彼はまったくマイヨジョーヌにふさわしい。彼はきっとパリまで仕事をやり遂げる、そう約束するよ」とフルームは言う。
「ゲラントはデュムランに約2分の差をつけている。それは安心できるタイム差だ。これからの数日、僕らはトーマスを護るだけでいいと思っている」。
もはや自身の総合優勝を狙わない。チームメイトに徹し、トーマス総合優勝のために働く。それがその言葉の意味するものだ。
「それがプロフェッショナル・サイクリングだ。それがチームというもの。僕は今つけている位置にハッピーだ。そしてポディウムに登るために闘う。そして絶対にG(トーマス)がマイヨジョーヌを着てそこに登るところを見たい」。
遅れを喫するまでのフルームの動きは、マイヨ・ジョーヌを着たトーマスを護る忠実なチームメイトの動きそのものだった。ログリッチェがアタックしたとき、すぐさまそれに反応して追ったフルーム。その動きが封じられるまでトーマスはデュムランの後ろにつくことができた。グループが再びまとまとると、フルームはデュムランのマークについた。チームとして完璧に機能していた。その後、フルームはトーマスに調子が良くないことを告げる。
多くを語らないフルームの代わりに、ニコラ・ポルタル助監督が状況を説明して代弁する。ジロ、ツールのダブルツールへの挑戦への疲労が昨ステージの大事な場面で出てしまったのだろうか?
「un jour sans」(=空っぽの日)だったとポルタルは説明する。つまりはバッド・デイ。
「誰もが限界だった。そんな状況で、誰もいつその日を迎えるかはわからない。トーマスはそれまで、『自分が調子がいいのかわからない、でもひどくキツイ』と言っていた。クリス(フルーム)は、『デュムランに対して僕はタイムを稼ぐ必要がある、やってみよう』と言っていた。そしてクリスはツケを支払うことになった。
でもそれはそのときにならないとわからないもの。戦略なんかじゃない。ログリッチェがアタックした時、それに付いていったフルームは良かったはずだ。その動きは良かったと思うけど、すでに標高は1,500mだったから登りをもっと難しくハードなものにしたんじゃないかと思う」。
昨ステージの序盤では、トーマスはあまり調子が良くないと言っていたんだ。しかし終わってみればデュムランを突き放して5秒稼いだ。4秒のボーナスタイムも。2つめの峠のヴァル・ルーロン・アゼ峠ではトーマスは『僕が今すごくいい調子なのかはわからない』と無線で言っていた。フルーミーは『皆が同じだよ。強くいけよ!』と励ましていたんだ」。
遅れたフルームに、エガン・ベルナル(コロンビア)がアシストとしてついたことに対して、ポルタルは高く評価する。それはチームからの指示ではなく、自発的な動きだったようだ。
「エガンは自分で決めて動き、遅れたフルームについた。それは正しい動きだったと思う。フルーミーは総合でたった11秒しかデュムランをリードしていなかった。対してトーマスにはたっぷりリードがあった。チームメイトが居るのと居ないのとでは精神的な余裕が違ってくる。たぶんフルーミーは多くタイムを失わなくて済んだと思う」。
ブレイルスフォードGMは言う。「もしGがツールに勝てば、彼はレジェンドになるだろう。しかしフルーミーも、ポルテ峠でしたようにGを助け、彼のために自己犠牲を払うのなら、彼はTitan(巨人)になる。このツールに勝てなくとも、それができるのが彼だ。真のチャンピオンが、そんなことができるなんて想像もできないことだ」。
トーマスがマイヨジョーヌを着て以来言われてきた、チーム内のリーダー争いについても、次のように回答した。
「頭を悩ますことはまったく無い。このことに関して私は誠実だ。彼らは成熟した男たちだ。彼らはレースを理解し、お互いをリスペクトしている。彼らをつなぐキーとなっているのはオープンなコミュニケーションだ。直面する状況に対して正しい判断をするには信頼が必要で、お互いに対して正直である必要がある。それこそが昨日私たちが見たものです」。
フルームのエースから「スーパー・ドメスティーク(アシスト)」への転換はチームスカイのマイヨジョーヌ獲得にとって強力な材料だ。第18ステージを終えたトーマスはレース後の記者会見でこう話す。
「明日はいくつものアタックがかかるだろう。ライバルたちはすべての機会を狙ってくるから、トゥールマレー峠から攻撃が始まると思っている。僕らはできればフルームを使いたくはないけど、チームには強力な選手の”数の力”もある。フルーミーが僕を助けてくれることは、ただ恐ろしいほどに心強い。でも、彼がそんなに大きな仕事をしないようにしないと。チームにとってこれは大きなテストだ」。
text:Makoto AYANO
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji ,CorVos in Tarbes France
激闘の第17ステージが明けた翌朝、チームスカイのバスは何人もの警官、憲兵隊が警備に着く厳戒態勢が敷かれていた。いつになく物々しい雰囲気。
昨日の超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠でゲラント・トーマスが路肩の観客に腕を掴みかかられる事件が起きた。また、レースを終えバイクで下山していたクリストファー・フルームがジャンダルマリー(憲兵)に一般ファンと間違えられて制止させられ落車するという事件が起きた。フルームの脱落と、マイヨジョーヌのトーマスへの取材殺到。そしていまだに続いているチームスカイへのブーイング。それらへの対応で、警備は厳重なものになったようだった。
2014年の落車リタイアを除き、2013年からツール・ド・フランスの総合リーダーであり続けたフルームがついにタイムを落とした。総合2位から3位へ、そして長年のチームメイトであるトーマスのとのタイム差も2分31秒に広がり、現実的にはトーマスで最終的なマイヨジョーヌを狙うことがチームとしての戦略になることは間違いなかった。チームスカイのダブルエース体制への疑問に対する答えが出た。
物々しい雰囲気のなか、昨日のステージで起こったことを説明する時間がもたれた。ステージに向かうゲラント・トーマス、クリストファー・フルーム、デイブ・ブレイルスフォードGMらを記者たちが囲む。
マイヨジョーヌのリードをさらに広げたトーマスは言う。「僕らはいい位置につけている。でもだからといって僕らの今までの考え方が変わるわけじゃない。逃げ出しも、満足もしない。今までどおりチームとして闘う。それが僕らの強み。クリス(フルーム)とブラッド(ウィギンズ)の間に起こったことを前に信じられないかもしれないけれど、僕とクリスは正直でオープンな関係だ。それがチームの成功にもつながっている」。
フルームはサングラスをカジュアルなものにして、アフターにかぶるチームキャップを深くかぶり、控えめな装いにしてバスから降りてきた。目立たないように、エースがトーマスに変わったことを示唆するかのように。
「昨日のステージのサンラリ=スラン・ポルテ峠ではただ足がなかった。ゲラントは今までのところミスの無い走りをしている。彼はまったくマイヨジョーヌにふさわしい。彼はきっとパリまで仕事をやり遂げる、そう約束するよ」とフルームは言う。
「ゲラントはデュムランに約2分の差をつけている。それは安心できるタイム差だ。これからの数日、僕らはトーマスを護るだけでいいと思っている」。
もはや自身の総合優勝を狙わない。チームメイトに徹し、トーマス総合優勝のために働く。それがその言葉の意味するものだ。
「それがプロフェッショナル・サイクリングだ。それがチームというもの。僕は今つけている位置にハッピーだ。そしてポディウムに登るために闘う。そして絶対にG(トーマス)がマイヨジョーヌを着てそこに登るところを見たい」。
遅れを喫するまでのフルームの動きは、マイヨ・ジョーヌを着たトーマスを護る忠実なチームメイトの動きそのものだった。ログリッチェがアタックしたとき、すぐさまそれに反応して追ったフルーム。その動きが封じられるまでトーマスはデュムランの後ろにつくことができた。グループが再びまとまとると、フルームはデュムランのマークについた。チームとして完璧に機能していた。その後、フルームはトーマスに調子が良くないことを告げる。
多くを語らないフルームの代わりに、ニコラ・ポルタル助監督が状況を説明して代弁する。ジロ、ツールのダブルツールへの挑戦への疲労が昨ステージの大事な場面で出てしまったのだろうか?
「un jour sans」(=空っぽの日)だったとポルタルは説明する。つまりはバッド・デイ。
「誰もが限界だった。そんな状況で、誰もいつその日を迎えるかはわからない。トーマスはそれまで、『自分が調子がいいのかわからない、でもひどくキツイ』と言っていた。クリス(フルーム)は、『デュムランに対して僕はタイムを稼ぐ必要がある、やってみよう』と言っていた。そしてクリスはツケを支払うことになった。
でもそれはそのときにならないとわからないもの。戦略なんかじゃない。ログリッチェがアタックした時、それに付いていったフルームは良かったはずだ。その動きは良かったと思うけど、すでに標高は1,500mだったから登りをもっと難しくハードなものにしたんじゃないかと思う」。
昨ステージの序盤では、トーマスはあまり調子が良くないと言っていたんだ。しかし終わってみればデュムランを突き放して5秒稼いだ。4秒のボーナスタイムも。2つめの峠のヴァル・ルーロン・アゼ峠ではトーマスは『僕が今すごくいい調子なのかはわからない』と無線で言っていた。フルーミーは『皆が同じだよ。強くいけよ!』と励ましていたんだ」。
遅れたフルームに、エガン・ベルナル(コロンビア)がアシストとしてついたことに対して、ポルタルは高く評価する。それはチームからの指示ではなく、自発的な動きだったようだ。
「エガンは自分で決めて動き、遅れたフルームについた。それは正しい動きだったと思う。フルーミーは総合でたった11秒しかデュムランをリードしていなかった。対してトーマスにはたっぷりリードがあった。チームメイトが居るのと居ないのとでは精神的な余裕が違ってくる。たぶんフルーミーは多くタイムを失わなくて済んだと思う」。
ブレイルスフォードGMは言う。「もしGがツールに勝てば、彼はレジェンドになるだろう。しかしフルーミーも、ポルテ峠でしたようにGを助け、彼のために自己犠牲を払うのなら、彼はTitan(巨人)になる。このツールに勝てなくとも、それができるのが彼だ。真のチャンピオンが、そんなことができるなんて想像もできないことだ」。
トーマスがマイヨジョーヌを着て以来言われてきた、チーム内のリーダー争いについても、次のように回答した。
「頭を悩ますことはまったく無い。このことに関して私は誠実だ。彼らは成熟した男たちだ。彼らはレースを理解し、お互いをリスペクトしている。彼らをつなぐキーとなっているのはオープンなコミュニケーションだ。直面する状況に対して正しい判断をするには信頼が必要で、お互いに対して正直である必要がある。それこそが昨日私たちが見たものです」。
フルームのエースから「スーパー・ドメスティーク(アシスト)」への転換はチームスカイのマイヨジョーヌ獲得にとって強力な材料だ。第18ステージを終えたトーマスはレース後の記者会見でこう話す。
「明日はいくつものアタックがかかるだろう。ライバルたちはすべての機会を狙ってくるから、トゥールマレー峠から攻撃が始まると思っている。僕らはできればフルームを使いたくはないけど、チームには強力な選手の”数の力”もある。フルーミーが僕を助けてくれることは、ただ恐ろしいほどに心強い。でも、彼がそんなに大きな仕事をしないようにしないと。チームにとってこれは大きなテストだ」。
text:Makoto AYANO
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji ,CorVos in Tarbes France
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