2018/07/05(木) - 19:31
7月5日、ツール・ド・フランスの開幕地ヴァンデ県のラ・ロッシュ=シュル=ヨンでBMCレーシングの記者会見が行われ、1ヶ月前に父親になったばかりのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)がマイヨジョーヌへの野望を語った。
メンバー全員が揃った記者会見に先立って、オーストラリアのテレビ局スタッフからポートに出産祝いが贈られた。6月上旬のツール・ド・スイス開幕前、2017年のジャパンカップにポートと一緒に来日した妻のジェマさんが第一子となる息子ルーカを出産。父親となったポートがツールに参戦中、ジェマさんと息子ルーカはモナコの自宅で過ごす。
「この3週間はキャリアの中で最大の挑戦になる。シーズンここまで良い形で走っていて、このツールに向けてのモチベーションは極めて高い」。出産祝いを手元に置いて、ポートは8回目のツールに向けての展望を語り始めた。ポートはこれまでツールに7回出場。2016年に総合5位に入り、優勝候補の一角として出場した2017年は中盤まで好走しながらも第9ステージで落車リタイアしている。
「特に最初の9日間はとてもトリッキー。シュテファン・キュングをはじめ強力な選手が揃っているので、第3ステージのチームタイムトライアルでBMCレーシングはリードを奪えると思う。まだレース序盤なので総合首位に立つことが目的ではないけど、チームメイトの誰かがマイヨジョーヌを着ることになるかもしれない。危険なステージを乗り切るためにチームはホースパワー(馬力=大きな選手)を揃えているし、良い運に頼るのではなく、悪い運を避けながら走りたい」。
軽量な選手にとって鬼門となる「パリ〜ルーベのような」第9ステージについてポートは「最も神経質なステージになることは間違いない」と警戒する。クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が落車リタイアに追い込まれた2014年の石畳ステージで、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)にアシストされたポートは好位置でフィニッシュしている。「石畳が苦手ではない(パリ〜ルーベ覇者の)グレッグ・ヴァンアーヴェルマートもいるし、危険なステージをアドバンテージにしたい。他のチームと比べると、我々は石畳ステージに準備ができている」。
マイヨジョーヌ争いにおいてポートが最も警戒するのは、2012年から2015年までチームスカイのチームメイトとして、エースとアシストという関係の中で走ったフルームだ。「ここ最近ダブルツールを達成した選手はいないけど、クリス(フルーム)の状態は良いと思う。ジロでとても強力なメンバーにサポートされた彼が、より強力なメンバーにサポートされる。現状彼がダブルツールの可能性に最も近い存在であることに疑いはないけど、もちろんヴィンチェンツォ(ニバリ)やナイロ(キンタナ)が彼に平穏な時間を過ごさせないと思う。彼が総合優勝するとしても、決して簡単な勝利にはならないだろう」。
ポートはダークホースとしてヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)の名前を挙げる。「ツール・ド・スイスでの走りを見る限り、ヤコブは危険な存在になると思う。彼は山岳も走れるし、タイムトライアルも速い。でも今年はスイスが数年前の出来事だと思ってしまうほど時間が空いているので、各選手の調子は大きく変わってるかもしれない。ドーフィネではゲラント(トーマス)やバルデも良い走りを見せていた。スイスでナイロ(キンタナ)は精彩を欠いていたものの、誰一人として侮っていい選手はいない」。
もちろん記者からの質問はフルームのサルブタモール問題にも及ぶ。意見を求められたポートは「問題については解決しているし、我々には関係のないこと」と受け流した。「でも一連の問題の進展の仕方が自転車界に悪いイメージを与えてしまったことは残念に思う」。
現在のコンディションについてポートは「仕上がっている状態」と自信を見せる。「具体的な体重は分からないけど、スイスからさらに体重を落とした。でも体重はそこまで大きな問題じゃなくて、それよりも健康的に3週間を走りきることが大切」と33歳のタスマニアンは語る。アシストを務めるサイモン・ゲランス(オーストラリア、BMCレーシング)も「今までアシストしてきたエースの中でリッチーは最も良い状態で強力だと思う」と太鼓判を押している。
スポンサーの撤退によってチームの存続が危ぶまれているBMCレーシング。ジム・オショウィッツGMは「現実的に、BMCの名前を冠したチームのGMとしてツールに帯同するのはこれが最後になる」と認める。「でもチームの体制は今も健全な状態にあり、来季以降も継続する。とにかくこのツールでの第一目標は総合優勝であって、スポンサー探しはその次の目標だ」。
メンバー全員が出席した記者会見が終わると、各メディアがお目当の選手に声をかけて個別のインタビューを開始。オーストラリアを中心に、各国のメディアに囲まれたポートは「ジャパンカップの時とは別人だろう」と、白いポロシャツの下に隠された絞れた身体を見せながら笑う。息子にルーカというイタリア風の名前をつけた理由について聞くと、隣にいたファビオ・バルダート監督を指差して「彼がイタリア人の名前が良いってごねたから」と冗談をこぼした。
text&photo:Kei Tsuji in La Roche-sur-Yon, France
メンバー全員が揃った記者会見に先立って、オーストラリアのテレビ局スタッフからポートに出産祝いが贈られた。6月上旬のツール・ド・スイス開幕前、2017年のジャパンカップにポートと一緒に来日した妻のジェマさんが第一子となる息子ルーカを出産。父親となったポートがツールに参戦中、ジェマさんと息子ルーカはモナコの自宅で過ごす。
「この3週間はキャリアの中で最大の挑戦になる。シーズンここまで良い形で走っていて、このツールに向けてのモチベーションは極めて高い」。出産祝いを手元に置いて、ポートは8回目のツールに向けての展望を語り始めた。ポートはこれまでツールに7回出場。2016年に総合5位に入り、優勝候補の一角として出場した2017年は中盤まで好走しながらも第9ステージで落車リタイアしている。
「特に最初の9日間はとてもトリッキー。シュテファン・キュングをはじめ強力な選手が揃っているので、第3ステージのチームタイムトライアルでBMCレーシングはリードを奪えると思う。まだレース序盤なので総合首位に立つことが目的ではないけど、チームメイトの誰かがマイヨジョーヌを着ることになるかもしれない。危険なステージを乗り切るためにチームはホースパワー(馬力=大きな選手)を揃えているし、良い運に頼るのではなく、悪い運を避けながら走りたい」。
軽量な選手にとって鬼門となる「パリ〜ルーベのような」第9ステージについてポートは「最も神経質なステージになることは間違いない」と警戒する。クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が落車リタイアに追い込まれた2014年の石畳ステージで、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)にアシストされたポートは好位置でフィニッシュしている。「石畳が苦手ではない(パリ〜ルーベ覇者の)グレッグ・ヴァンアーヴェルマートもいるし、危険なステージをアドバンテージにしたい。他のチームと比べると、我々は石畳ステージに準備ができている」。
マイヨジョーヌ争いにおいてポートが最も警戒するのは、2012年から2015年までチームスカイのチームメイトとして、エースとアシストという関係の中で走ったフルームだ。「ここ最近ダブルツールを達成した選手はいないけど、クリス(フルーム)の状態は良いと思う。ジロでとても強力なメンバーにサポートされた彼が、より強力なメンバーにサポートされる。現状彼がダブルツールの可能性に最も近い存在であることに疑いはないけど、もちろんヴィンチェンツォ(ニバリ)やナイロ(キンタナ)が彼に平穏な時間を過ごさせないと思う。彼が総合優勝するとしても、決して簡単な勝利にはならないだろう」。
ポートはダークホースとしてヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)の名前を挙げる。「ツール・ド・スイスでの走りを見る限り、ヤコブは危険な存在になると思う。彼は山岳も走れるし、タイムトライアルも速い。でも今年はスイスが数年前の出来事だと思ってしまうほど時間が空いているので、各選手の調子は大きく変わってるかもしれない。ドーフィネではゲラント(トーマス)やバルデも良い走りを見せていた。スイスでナイロ(キンタナ)は精彩を欠いていたものの、誰一人として侮っていい選手はいない」。
もちろん記者からの質問はフルームのサルブタモール問題にも及ぶ。意見を求められたポートは「問題については解決しているし、我々には関係のないこと」と受け流した。「でも一連の問題の進展の仕方が自転車界に悪いイメージを与えてしまったことは残念に思う」。
現在のコンディションについてポートは「仕上がっている状態」と自信を見せる。「具体的な体重は分からないけど、スイスからさらに体重を落とした。でも体重はそこまで大きな問題じゃなくて、それよりも健康的に3週間を走りきることが大切」と33歳のタスマニアンは語る。アシストを務めるサイモン・ゲランス(オーストラリア、BMCレーシング)も「今までアシストしてきたエースの中でリッチーは最も良い状態で強力だと思う」と太鼓判を押している。
スポンサーの撤退によってチームの存続が危ぶまれているBMCレーシング。ジム・オショウィッツGMは「現実的に、BMCの名前を冠したチームのGMとしてツールに帯同するのはこれが最後になる」と認める。「でもチームの体制は今も健全な状態にあり、来季以降も継続する。とにかくこのツールでの第一目標は総合優勝であって、スポンサー探しはその次の目標だ」。
メンバー全員が出席した記者会見が終わると、各メディアがお目当の選手に声をかけて個別のインタビューを開始。オーストラリアを中心に、各国のメディアに囲まれたポートは「ジャパンカップの時とは別人だろう」と、白いポロシャツの下に隠された絞れた身体を見せながら笑う。息子にルーカというイタリア風の名前をつけた理由について聞くと、隣にいたファビオ・バルダート監督を指差して「彼がイタリア人の名前が良いってごねたから」と冗談をこぼした。
text&photo:Kei Tsuji in La Roche-sur-Yon, France
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