2018/06/29(金) - 09:20
ついに出荷が開始されたシマノの新型105コンポーネント。上位モデルのテクノロジーを落とし込みR7000系へとアップデートされた最新作をインプレッションした。先にリムブレーキモデルのみが入荷となり、ディスクブレーキモデルの販売時期は秋予定とされる。
DURA-ACE、ULTEGRAに次ぐ3番手の普及帯グレードコンポーネントとして、幅広いライダーに愛用されているシマノ105。1982年のデビュー以降、モデルチェンジの度に5000番台の型番を更新し続けてきた105だが、今回さらなる性能向上を以てR7000系へと進化を遂げた。2つの上位グレードに採用されたテクノロジーを踏襲しつつ、よりリーズナブルなプライスタグを下げるコストパフォーマンスに優れたモデルに仕上がる。
前作5800系からは各種パーツデザインを大きく変更しており、性能や使い勝手を改善。DURA-ACEやULTEGRAと比較して、素材の違いによる質感の差や仕上げのルックスの違い、重量増などはあるものの、上位モデルと同形状・同機構を採用することで確かなアップデートを果たして登場している。R7000系では105シリーズ初のディスクブレーキモデルの追加が大きなトピックではあるが、今回は販売が開始されたリムブレーキモデルに焦点を当てて紹介していこう。
シフティングを担うフロント/リアディレイラーは、よりスムーズな変速を実現するべく上位モデル準拠の構造を取り入れリファイン。フロントディレイラーに関しては、R8000系ULTEGRA登場時にマイナーアップデート品として追加されたFD-5801と基本構造は同じだ。従来のロングアーム機構をなくしコンパクトな形状を獲得するとともに、ワイヤーのアジャスト機能を搭載しケーブルテンションをディレイラー側で調整可能となっている。
フレームからの張り出しを抑え、エアロかつ接触による破損防止にも一役買うシャドーデザインを採用したリアディレイラーは、機械的でスマートな見た目とより安定した変速性能を提供。ケーブルが外側に飛び出ないルーティング、アジャスター動作の改良、ダイレクトマウントへの対応なども挙げられ、ガイドプーリーとテンションプーリーでそれぞれ歯先の形状を変えるなど細部まで妥協はない。従来よりもギアレンジを広げた11-25Tから11-30Tへと対応するショートケージと、11-28Tから11-34Tまで対応するロングケージの2種類が用意される。
カセットスプロケットもワイドレシオ化が進み、従来ラインアップの12-25T、11-28T、11-32Tに11-30Tと11-34T(CS-HG700-11)を追加し計5種類で展開。登りで活用できるローギアの選択肢を増やし、特にロングライド等を楽しむホビーライダーには喜ばしいアップデートとなるだろう。
リムブレーキキャリパーはリリースレバーを内側に畳むエアロに配慮したデザインは上位モデルから引き継ぎつつも、アームのたわみを抑えるブースター機構の搭載は見送られている。ケーブルアジャスター部分も105特有のデザインが採用される。ダイレクトマウントタイプも用意され、タイヤクリアランスは最大28cまで対応。
シフト/ブレーキを操作するデュアルコントロールレバーは、より握りやすい形状を追求するとともに、モデルロゴをレバー前面へ移動。従来にも増してレバーの凹凸を大きくすることで指をかけやすくした他、シフトスイッチも大型化し操作性を向上させている。またブラケットフードには新たに溝のパターンが刻まれ、グリップを強化している。
バイクの顔とも言えるクランクも4アームデザインはそのままに、高いパワー伝達性を発揮する幅広なアーム形状によって剛性を高めた。歯数展開は50-34T、52-36T、53-39Tの3種類と前作と変わらず。新たにクランク長160mmというショートモデルが追加されており、小柄なライダーにとっては朗報となる。
加えてSPD-SLペダルも刷新。細かな肉抜き加工が施されたカーボンコンポジットボディと、配置を改良された踏み面のステンレスプレートによって、ペアで25gの軽量化を果たしている。擦れによるダメージを受けやすいペダルサイドへのロゴ配置がなくなっている。
今回はこれらR7000系シマノ105を組み付けたフォーカスのIZALCO MAX試乗車にて、新型コンポーネントをテスト。それではインプレッションへ移ろう。
― インプレッション
「変速性能の向上が一番のポイント、全体的に使い勝手が増している」小西裕介(なるしまフレンド)
まずレバー形状の変更はブラケットを握った時にすぐに体感できますね。現行の上位モデルと同一のものが採用され、指がレバーにかけやすくなり操作のタッチが良くなりましたし、なにより変速時のショートストローク化が進みより軽い力と少ないモーションでシフトが可能になりました。今回シフトワイヤーはオプティスリックでしたが、上位グレードのポリマーコーティングでなくとも十分に引きは軽いですね。グループセット全体が刷新された中で、この変速性能の向上が一番感じられる部分です。
昔のSTIレバーってタッチが柔らかくてやや頼りないものもありましたが、今は105でも明確なクリック感があり使いやすくなっていますよね。トルクを掛けている最中でも確実に変速してくれますし、個人的にはレバーのエルゴノミックな形状が手にしっくりきて好感触です。レバーフードに滑り止めのパターンが入った点も使い心地をアップさせていると思います。
またシャドー化したリアディレイラーは、チェーンが暴れづらいメリットがあると思います。シングルテンション構造になってディレイラーの動作が小さくなったので、チェーンが弾んだりテンションが抜けたりといったことも少なく変速が安定します。形状的にバイクによってはホイールの着脱がしにくいものもありますが、そこは慣れてもらうしかありませんね。
フロントディレイラーはロングアームから比べると見た目がスッキリして良いですよね。ワイヤーのテンションが調整できるので、メカニックとしても作業しやすい部分があります。前作は調整がシビアで変速の時に1回引っかかるような挙動もあったのですが、その辺も解消されています。
ブレーキの効きという面では大きな変化はないでしょう。ブースターがないので上位モデルと比較すると握り込んでいった時のカッチリ感は劣っていますが、下位グレードと比べれば格段に効きますよね。同じくクランクも見た目は大きく変わりましたが、特に踏み心地が硬くなった等のフィーリングの変化はなさそうです。
シマノ105と言うと完成車に多く採用されるコンポーネントで、エントリー層の多くがここからロードバイクを始めることと思います。そんな中、シャドー化したリアディレイラーなどはパーツの接触を防ぐデザインで、バイクの扱いが慣れていない初心者でも破損の心配が少ないなどメリットは大きいでしょう。ミドルグレードの価格に抑えながら上手く設計してきたなと関心する出来栄えで、全体的に確実な性能アップを体感できました。
シマノ R7000系105
・ST-R7000 23,450円(税抜)
・FD-R7000(直付け) 3,942円(税抜)
・RD-R7000-SS(ショートケージ) 5,222円(税抜)
・BR-R7000(前後セット) 9,296円(税抜)
・FC-R7000 15,563円(税抜)
・CS-R7000(11-30T) 5,082円(税抜)
・PD-R7000 11,613円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。
CWレコメンドショップページ
なるしまフレンドHP
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
DURA-ACE、ULTEGRAに次ぐ3番手の普及帯グレードコンポーネントとして、幅広いライダーに愛用されているシマノ105。1982年のデビュー以降、モデルチェンジの度に5000番台の型番を更新し続けてきた105だが、今回さらなる性能向上を以てR7000系へと進化を遂げた。2つの上位グレードに採用されたテクノロジーを踏襲しつつ、よりリーズナブルなプライスタグを下げるコストパフォーマンスに優れたモデルに仕上がる。
前作5800系からは各種パーツデザインを大きく変更しており、性能や使い勝手を改善。DURA-ACEやULTEGRAと比較して、素材の違いによる質感の差や仕上げのルックスの違い、重量増などはあるものの、上位モデルと同形状・同機構を採用することで確かなアップデートを果たして登場している。R7000系では105シリーズ初のディスクブレーキモデルの追加が大きなトピックではあるが、今回は販売が開始されたリムブレーキモデルに焦点を当てて紹介していこう。
シフティングを担うフロント/リアディレイラーは、よりスムーズな変速を実現するべく上位モデル準拠の構造を取り入れリファイン。フロントディレイラーに関しては、R8000系ULTEGRA登場時にマイナーアップデート品として追加されたFD-5801と基本構造は同じだ。従来のロングアーム機構をなくしコンパクトな形状を獲得するとともに、ワイヤーのアジャスト機能を搭載しケーブルテンションをディレイラー側で調整可能となっている。
フレームからの張り出しを抑え、エアロかつ接触による破損防止にも一役買うシャドーデザインを採用したリアディレイラーは、機械的でスマートな見た目とより安定した変速性能を提供。ケーブルが外側に飛び出ないルーティング、アジャスター動作の改良、ダイレクトマウントへの対応なども挙げられ、ガイドプーリーとテンションプーリーでそれぞれ歯先の形状を変えるなど細部まで妥協はない。従来よりもギアレンジを広げた11-25Tから11-30Tへと対応するショートケージと、11-28Tから11-34Tまで対応するロングケージの2種類が用意される。
カセットスプロケットもワイドレシオ化が進み、従来ラインアップの12-25T、11-28T、11-32Tに11-30Tと11-34T(CS-HG700-11)を追加し計5種類で展開。登りで活用できるローギアの選択肢を増やし、特にロングライド等を楽しむホビーライダーには喜ばしいアップデートとなるだろう。
リムブレーキキャリパーはリリースレバーを内側に畳むエアロに配慮したデザインは上位モデルから引き継ぎつつも、アームのたわみを抑えるブースター機構の搭載は見送られている。ケーブルアジャスター部分も105特有のデザインが採用される。ダイレクトマウントタイプも用意され、タイヤクリアランスは最大28cまで対応。
シフト/ブレーキを操作するデュアルコントロールレバーは、より握りやすい形状を追求するとともに、モデルロゴをレバー前面へ移動。従来にも増してレバーの凹凸を大きくすることで指をかけやすくした他、シフトスイッチも大型化し操作性を向上させている。またブラケットフードには新たに溝のパターンが刻まれ、グリップを強化している。
バイクの顔とも言えるクランクも4アームデザインはそのままに、高いパワー伝達性を発揮する幅広なアーム形状によって剛性を高めた。歯数展開は50-34T、52-36T、53-39Tの3種類と前作と変わらず。新たにクランク長160mmというショートモデルが追加されており、小柄なライダーにとっては朗報となる。
加えてSPD-SLペダルも刷新。細かな肉抜き加工が施されたカーボンコンポジットボディと、配置を改良された踏み面のステンレスプレートによって、ペアで25gの軽量化を果たしている。擦れによるダメージを受けやすいペダルサイドへのロゴ配置がなくなっている。
今回はこれらR7000系シマノ105を組み付けたフォーカスのIZALCO MAX試乗車にて、新型コンポーネントをテスト。それではインプレッションへ移ろう。
― インプレッション
「変速性能の向上が一番のポイント、全体的に使い勝手が増している」小西裕介(なるしまフレンド)
まずレバー形状の変更はブラケットを握った時にすぐに体感できますね。現行の上位モデルと同一のものが採用され、指がレバーにかけやすくなり操作のタッチが良くなりましたし、なにより変速時のショートストローク化が進みより軽い力と少ないモーションでシフトが可能になりました。今回シフトワイヤーはオプティスリックでしたが、上位グレードのポリマーコーティングでなくとも十分に引きは軽いですね。グループセット全体が刷新された中で、この変速性能の向上が一番感じられる部分です。
昔のSTIレバーってタッチが柔らかくてやや頼りないものもありましたが、今は105でも明確なクリック感があり使いやすくなっていますよね。トルクを掛けている最中でも確実に変速してくれますし、個人的にはレバーのエルゴノミックな形状が手にしっくりきて好感触です。レバーフードに滑り止めのパターンが入った点も使い心地をアップさせていると思います。
またシャドー化したリアディレイラーは、チェーンが暴れづらいメリットがあると思います。シングルテンション構造になってディレイラーの動作が小さくなったので、チェーンが弾んだりテンションが抜けたりといったことも少なく変速が安定します。形状的にバイクによってはホイールの着脱がしにくいものもありますが、そこは慣れてもらうしかありませんね。
フロントディレイラーはロングアームから比べると見た目がスッキリして良いですよね。ワイヤーのテンションが調整できるので、メカニックとしても作業しやすい部分があります。前作は調整がシビアで変速の時に1回引っかかるような挙動もあったのですが、その辺も解消されています。
ブレーキの効きという面では大きな変化はないでしょう。ブースターがないので上位モデルと比較すると握り込んでいった時のカッチリ感は劣っていますが、下位グレードと比べれば格段に効きますよね。同じくクランクも見た目は大きく変わりましたが、特に踏み心地が硬くなった等のフィーリングの変化はなさそうです。
シマノ105と言うと完成車に多く採用されるコンポーネントで、エントリー層の多くがここからロードバイクを始めることと思います。そんな中、シャドー化したリアディレイラーなどはパーツの接触を防ぐデザインで、バイクの扱いが慣れていない初心者でも破損の心配が少ないなどメリットは大きいでしょう。ミドルグレードの価格に抑えながら上手く設計してきたなと関心する出来栄えで、全体的に確実な性能アップを体感できました。
シマノ R7000系105
・ST-R7000 23,450円(税抜)
・FD-R7000(直付け) 3,942円(税抜)
・RD-R7000-SS(ショートケージ) 5,222円(税抜)
・BR-R7000(前後セット) 9,296円(税抜)
・FC-R7000 15,563円(税抜)
・CS-R7000(11-30T) 5,082円(税抜)
・PD-R7000 11,613円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
なるしまフレンド神宮店メカニックチーフ。長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。
CWレコメンドショップページ
なるしまフレンドHP
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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