2018/06/14(木) - 09:58
1級山岳と超級山岳を越え、最後は1級山岳ロイカーバードを駆け上がってフィニッシュを迎えるツール・ド・スイス第5ステージ。誰もが苦しむ高速な展開の末に、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が20名によるスプリントを制した。
イエロージャージ争いが本格化する後半の山岳3連戦がスタート。第5ステージはスタート直後に1級山岳ピヨン峠(全長6.7km/平均5%)を越え、後半にかけて超級山岳モンタナヴィラージュ(全長13.5km/平均5.4%)と1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)に挑む。獲得標高差2,580mの難関ステージは、逃げたい選手がアタックを連発するハイスピードな幕開けとなった。
スタートから1級山岳ピヨン峠の頂上まで、高低差473mの行程を平均スピード36.1km/hで駆け抜けた集団から抜け出す選手は現れなかった。1級山岳ピヨン峠のハイスピードダウンヒルをこなし、UCI(国際自転車競技連盟)の本部が置かれているエーグルの街まで下りきったところでようやく6名の逃げグループが形成される。
氷河が削り出したV字の渓谷を常時50km/h前後のハイペースを刻んで逃げたのは、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)、ウィリー・スミット(南アフリカ、カチューシャ・アルペシン)、ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート)、ポール・オウスラン(フランス、ディレクトエネルジー)という強力なメンバー。メイン集団から3分のリードを保ちながら、逃げグループは超級山岳モンタナヴィラージュ(全長13.5km/平均5.4%)の登りへと入っていく。
アメリカチャンピオンのワーバスが先頭で独走に持ち込んだ一方で、BMCレーシングがコントロールしたメイン集団から抜け出したリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)やロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)、オマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が追走グループに合流。先頭ワーバス、第1追走スミット、第2追走カルメジャーヌやディリエ、その後ろにメイン集団という位置関係で超級山岳モンタナヴィラージュをクリアした。
1年前の超級山岳フィニッシュで独走逃げ切り勝利を飾っているワーバス。2分以上のリードを得て超級山岳を越えたワーバスだったが、下り区間とその後の平坦区間でタイム差を失っていく。ワーバスのリードは残り18km地点で1分を下回り、最後の1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)に差し掛かる頃には30秒に。スキーリゾート地に向けたこの日最後の登りが始まると、単独で追走していたカルメジャーヌがワーバスを抜いて先頭に立った。
超級山岳モンタナヴィラージュでメイン集団を長時間牽引したのはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。昨年のパリ〜ルーベ覇者によるペーシングで集団の人数が絞られるとともに、先頭カルメジャーヌとのタイム差は縮まっていく。ヴァンアーヴェルマートの牽引によって残り6km地点でカルメジャーヌが吸収されると、集団からは次なる動きが生まれた。
先に飛び出した2014年ツアー・オブ・ジャパンのヤングライダー賞ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)とフランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)に続いて、総合で36秒遅れのミケル・ランダ(スペイン、モビスター)がアタック。追走する集団の先頭はヴァンガーデレンからグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)にスイッチ。イエロージャージを着るシュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)はここで脱落してしまう。
ランダはカーシーだけを連れて6〜8%ほどの勾配を突き進み、やがてカーシーが脱落してランダの独走状態に。残り4km地点でヴァンガーデレンが役目を終えるとステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)やシモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)といった総合優勝候補も集団先頭に姿を見せる。
ランダはタイム差15秒で残り2kmアーチを通過。ジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)とマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)の集団牽引によってランダのリードは縮まり、10秒差で残り1kmを通過した精鋭集団の中からマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)が鋭いアタックを見せた。
勾配が増したところでスピードを失ったランダは残り200mで吸収。それと同時にディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)がスプリント体制に入る。エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)やトムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)の追い上げも届かず、先に仕掛けたウリッシが先頭を守り切った。
ウリッシはラスト650mを1分21秒間590Wを出力し、平均スピード28.7km/hで駆け抜けている。最大出力は870W。スプリント中の出力は18秒間800Wだった。なお、集団は1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)登坂タイムは29分02秒。平均スピードは28.9km/hに達している。
「格式の高いツール・ド・スイスでの大きな勝利を誇りに思う。ジロを調子の良い状態で終えていたので、気を抜かず、このスイスではステージ優勝のチャンスがあると思っていた。最後はミケル・ランダの先行が続いたけど、幸い彼に追いつくことができて、そのままスプリントに持ち込めた。この先もまだ自分向きのステージが残されている」と、昨年10月のツアー・オブ・ターキー総合優勝者は語る。ウリッシにとってはこれが今シーズン初勝利で、UAEチームエミレーツはシーズン7勝目。
遅れたキュングからイエロージャージはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)の手に渡った。「予想外の序盤からの高速な展開に誰もが苦しんでいたと思う。最後の登りはそこまで難易度が高くなかったものの、ペースが速くてかなりハードだった。調子はとても良いので、もっと標高のある自分向きの山岳ステージでは力を出せるはず。このイエロージャージを手に、今日が50歳の誕生日のファビオ・バルダート監督を祝福したい」とポートは語る。総合2位に浮上したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)からポートは20秒のリードを得ている。
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とのエース闘争が繰り広げられる中、攻撃的な走りを見せたランダは「ラスト数キロは強い向かい風が吹いていて、残り200mで吸収されるという後味の悪い結果になってしまった。でも7月に向けて仕上がってきていることを確認できたし、長いトレーニング期間明けのレース5日目に勝負に絡めたのは良い兆し。ツールを狙う選手にとって、明日と明後日のステージは大きな意味をもつだろう」と語っている。
イエロージャージ争いが本格化する後半の山岳3連戦がスタート。第5ステージはスタート直後に1級山岳ピヨン峠(全長6.7km/平均5%)を越え、後半にかけて超級山岳モンタナヴィラージュ(全長13.5km/平均5.4%)と1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)に挑む。獲得標高差2,580mの難関ステージは、逃げたい選手がアタックを連発するハイスピードな幕開けとなった。
スタートから1級山岳ピヨン峠の頂上まで、高低差473mの行程を平均スピード36.1km/hで駆け抜けた集団から抜け出す選手は現れなかった。1級山岳ピヨン峠のハイスピードダウンヒルをこなし、UCI(国際自転車競技連盟)の本部が置かれているエーグルの街まで下りきったところでようやく6名の逃げグループが形成される。
氷河が削り出したV字の渓谷を常時50km/h前後のハイペースを刻んで逃げたのは、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)、ウィリー・スミット(南アフリカ、カチューシャ・アルペシン)、ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート)、ポール・オウスラン(フランス、ディレクトエネルジー)という強力なメンバー。メイン集団から3分のリードを保ちながら、逃げグループは超級山岳モンタナヴィラージュ(全長13.5km/平均5.4%)の登りへと入っていく。
アメリカチャンピオンのワーバスが先頭で独走に持ち込んだ一方で、BMCレーシングがコントロールしたメイン集団から抜け出したリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)やロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)、オマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が追走グループに合流。先頭ワーバス、第1追走スミット、第2追走カルメジャーヌやディリエ、その後ろにメイン集団という位置関係で超級山岳モンタナヴィラージュをクリアした。
1年前の超級山岳フィニッシュで独走逃げ切り勝利を飾っているワーバス。2分以上のリードを得て超級山岳を越えたワーバスだったが、下り区間とその後の平坦区間でタイム差を失っていく。ワーバスのリードは残り18km地点で1分を下回り、最後の1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)に差し掛かる頃には30秒に。スキーリゾート地に向けたこの日最後の登りが始まると、単独で追走していたカルメジャーヌがワーバスを抜いて先頭に立った。
超級山岳モンタナヴィラージュでメイン集団を長時間牽引したのはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。昨年のパリ〜ルーベ覇者によるペーシングで集団の人数が絞られるとともに、先頭カルメジャーヌとのタイム差は縮まっていく。ヴァンアーヴェルマートの牽引によって残り6km地点でカルメジャーヌが吸収されると、集団からは次なる動きが生まれた。
先に飛び出した2014年ツアー・オブ・ジャパンのヤングライダー賞ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)とフランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)に続いて、総合で36秒遅れのミケル・ランダ(スペイン、モビスター)がアタック。追走する集団の先頭はヴァンガーデレンからグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)にスイッチ。イエロージャージを着るシュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)はここで脱落してしまう。
ランダはカーシーだけを連れて6〜8%ほどの勾配を突き進み、やがてカーシーが脱落してランダの独走状態に。残り4km地点でヴァンガーデレンが役目を終えるとステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)やシモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)といった総合優勝候補も集団先頭に姿を見せる。
ランダはタイム差15秒で残り2kmアーチを通過。ジェスパー・ハンセン(デンマーク、アスタナ)とマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・メリダ)の集団牽引によってランダのリードは縮まり、10秒差で残り1kmを通過した精鋭集団の中からマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)が鋭いアタックを見せた。
勾配が増したところでスピードを失ったランダは残り200mで吸収。それと同時にディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)がスプリント体制に入る。エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)やトムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)の追い上げも届かず、先に仕掛けたウリッシが先頭を守り切った。
ウリッシはラスト650mを1分21秒間590Wを出力し、平均スピード28.7km/hで駆け抜けている。最大出力は870W。スプリント中の出力は18秒間800Wだった。なお、集団は1級山岳ロイカーバード(全長14km/平均4.5%)登坂タイムは29分02秒。平均スピードは28.9km/hに達している。
「格式の高いツール・ド・スイスでの大きな勝利を誇りに思う。ジロを調子の良い状態で終えていたので、気を抜かず、このスイスではステージ優勝のチャンスがあると思っていた。最後はミケル・ランダの先行が続いたけど、幸い彼に追いつくことができて、そのままスプリントに持ち込めた。この先もまだ自分向きのステージが残されている」と、昨年10月のツアー・オブ・ターキー総合優勝者は語る。ウリッシにとってはこれが今シーズン初勝利で、UAEチームエミレーツはシーズン7勝目。
遅れたキュングからイエロージャージはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)の手に渡った。「予想外の序盤からの高速な展開に誰もが苦しんでいたと思う。最後の登りはそこまで難易度が高くなかったものの、ペースが速くてかなりハードだった。調子はとても良いので、もっと標高のある自分向きの山岳ステージでは力を出せるはず。このイエロージャージを手に、今日が50歳の誕生日のファビオ・バルダート監督を祝福したい」とポートは語る。総合2位に浮上したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)からポートは20秒のリードを得ている。
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とのエース闘争が繰り広げられる中、攻撃的な走りを見せたランダは「ラスト数キロは強い向かい風が吹いていて、残り200mで吸収されるという後味の悪い結果になってしまった。でも7月に向けて仕上がってきていることを確認できたし、長いトレーニング期間明けのレース5日目に勝負に絡めたのは良い兆し。ツールを狙う選手にとって、明日と明後日のステージは大きな意味をもつだろう」と語っている。
ツール・ド・スイス2018第5ステージ結果
1位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 3:37:31 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | |
3位 | トムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ) | |
4位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | |
5位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | |
6位 | シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン) | |
7位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | |
8位 | リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) | |
9位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | |
10位 | ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) | |
38位 | シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング) | 0:03:23 |
個人総合成績
ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 22pts |
2位 | カルヴィン・ワトソン(オーストラリア、アクアブルースポート) | 19pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) | 16pts |
山岳賞
1位 | ロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー) | 22pts |
2位 | ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポート) | 20pts |
3位 | フィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) | 17pts |
ヤングライダー賞
1位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 17:04:13 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:00:01 |
3位 | ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:38 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 50:32:04 |
2位 | バーレーン・メリダ | 0:01:46 |
3位 | アスタナ | 0:01:55 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos