2018/04/14(土) - 19:50
4月15日(日)にオランダ南部で開催される第53回アムステルゴールドレースにペテル・サガンが5年ぶりに出場する。日本から小林海、與那嶺恵理、萩原麻由子が出場するオランダ最大レースの見どころをチェックしておこう。
終盤のレイアウトに若干の変更 逃げ切りか?集団スプリントか?
観客が詰めかけたカウベルグを上る photo: TDWsport
アムステルゴールドレース2018 photo:Amstel Gold Race石畳系のクラシックが終了したのも束の間、アルデンヌ・クラシック3連戦が開催される。日曜日のアムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
オランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景。確かに国土の大半は標高0メートルもしくはそれ以下で、実際に国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味しているように、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールドレースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は35カ所。263kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3,600mを超える。
コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続して登場する。アップダウンとワインディングを繰り返すため、コースは時に「ジェットコースター」に形容される。ナーバスな下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。
グルペルベルグを上るプロトン photo: TDWsport
アムステルの名物として伝統的に数々の勝負の舞台となったのがカウベルグだ。登坂距離1200m/高低差68m/平均勾配5.8%/最大勾配12%の上りを2018年は合計3回通過する。長年このカウベルグの頂上にフィニッシュラインが引かれたが、単純な登坂勝負で勝敗が決着することを嫌った主催者は2013年にフィニッシュラインをカウベルグ頂上の1.8km先に移動(2012年ロード世界選手権と共通)。そして2017年、主催者はコース終盤のレイアウトを変更し、カウベルグがフィニッシュ手前から姿を消した。
2018年も同様にカウベルグがフィニッシュ手前に登場しないレイアウトが採用された。しかし15.7kmの最終周回には再び変更が加えられている。
合計32カ所の登りをこなした後、選手たちがカウベルグを起点にした最後の周回コースに突入する。登場する坂はカウベルグ(33番目)、グールヘンメルベルグ(34番目)、ベメレルベルグ(35番目)の3つ。この組み合わせは2017年と同じだが、その3つの坂を結ぶルートは細くてコーナーが多いものになった。
この最終周回のレイアウト変更について、コースディレクターのレオ・ファンフリート氏は「集団がレースをコントロールしにくい展開を作るため、今までより細い道を最終周回に組み込んでいる。昨年まではグールヘンメルベルグを通過後に幅広い幹線道路を下って次のベメレルベルグに向かっていたが、今年は細い下りを通る。そして最後の登りであるベメレルベルグの後も、真っ直ぐ幅広い道を進むのではなく、ハストハイスからテルブレイトの集落を抜けて、(農道のような道を通って)フィニッシュに至る。今回のコース変更により、優勝を狙う選手は今までよりも早い段階から良いポジションで走らなければならない。もしくは、優勝者は最終周回に入る時点で集団から抜け出しているかもしれない」と語っている。
最後のベメレルベルグは登坂距離800m/高低差39m/平均勾配4.7%で、カウベルグほどの破壊力はなく、しかもフィニッシュまでの平坦区間が長い(6.9km)ため先行が決まりにくい。そのためアタックでチャンスをつかみたい選手はベメレルベルグま仕掛けて動いてくるだろう。集団追い上げに不向きな細いコースに変更されたことで、勝負のタイミングは例年よりも早まりそうだ。
同じ4月15日に開催されるUCIウィメンズワールドツアーのアムステルゴールドレース・レディースエディションは男子レースと同様にマーストリヒトを出発後、7つの坂を越えてカウベルグの周回コースへ。最後はカウベルグ、グールヘンメルベルグ、ベメレルベルグを含む周回を3周し、4回目のカウベルグを越えた先のフィニッシュラインを目指す。登りの数は17カ所。コース全長は116.9kmだ。
春色のオランダ・リンブルフ州を走る photo: TDWsport
ルーベ覇者サガンが5年ぶりの出場 受けて立つジルベールやクウィアト
1週間前にルーベのベロドロームで石のトロフィーを初めて獲得したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が5年ぶりにアムステルゴールドレースに出場する。サガンは2012年大会で3位(追走グループの先頭)に入っているが、2013年を最後に4年間出場せず。サガンは「北のクラシック」にフォーカスして成績を残してきた。サガンはこのアムステルでクラシックシーズンを締めくくる予定であり、厳しい登坂勝負になれば好調なジェイ・マッカーシー(オーストラリア)で勝負する可能性も。
石畳のトロフィーを受け取ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Makoto Ayano
ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とのスプリント一騎打ちに勝利したフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo: TDWsport
大会連覇がかかったフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は、再び「ウルフパック(狼の群れ)」を率いる。2010年、2011年、2014年、2017年の優勝者であるジルベールは「アルデンヌ生まれのアルデンヌのスペシャリスト」であり、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)、ニキ・テルプストラ(オランダ)、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)というチームメイトに支えられて過去に1人しか達成していないアムステル5勝目を目指す。
1年前にジルベールとの一騎打ちに敗れて2位に甘んじたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)は、パリ〜ニースでの鎖骨骨折から復活したワウト・プールス(オランダ)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア)を率いての出場だ。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari / Alpozzi
意外にも、これまでの52回のアムステルでスペイン人選手による優勝はゼロ。10日後に38歳の誕生日を迎えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はミケル・ランダ(スペイン)とともにそのジンクスを破れるか。同じくグランツールレーサーとしてヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)にも注目したい。バーレーン・メリダには過去に2回アムステルで優勝しているエンリーコ・ガスパロット(イタリア)やイサギレ兄弟(スペイン)も控えている。
直前のブラバンツペイルで優勝したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)は、要注目の若手ティシュ・ベノート(ベルギー)とタッグを組む。もちろんベルギー勢としてはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)も忘れてはいけない。開催国オランダはバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)やロベルト・ヘーシンク(ロットNLユンボ)らが表彰台に最も近い存在だ。
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
小林海(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Sonoko.Tanaka
ダニエル・マーティン(アイルランド)とディエゴ・ウリッシ(イタリア)、ルイ・コスタ(ポルトガル)を揃えるUAEチームエミレーツ、リゴベルト・ウラン(コロンビア)とマイケル・ウッズ(カナダ)を揃えるEFエデュケーションファースト・ドラパックの他、今季クラシックレーサーとして開花したミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)、ネイサン・ハース(オーストラリア、カチューシャ・アルペシン)、ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)らも有力選手に挙げられる。
今季限りでの引退を表明している2008年の優勝者ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は、ジャパンカップ二冠のマルコ・カノラ(イタリア)や初出場の小林海と揃っての出場となる。
同日開催のUCIウィメンズワールドツアーレースには、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)と萩原麻由子(アレ・チポッリーニ)が出場する。それぞれエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)とヤネク・エンシング(オランダ、アレ・チポッリーニ)らをアシストすることになると思われる。2018年すでに10レース(18日間)を消化している與那嶺はシーズンのレース走行距離が1,906kmで世界7位(チーム内1位)。フィニッシュラインのすぐ近くに住む與那嶺にとってアムステルはローカルレースだ。
與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:velofocus
萩原麻由子(アレ・チポッリーニ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
終盤のレイアウトに若干の変更 逃げ切りか?集団スプリントか?
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オランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景。確かに国土の大半は標高0メートルもしくはそれ以下で、実際に国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味しているように、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールドレースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は35カ所。263kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3,600mを超える。
コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続して登場する。アップダウンとワインディングを繰り返すため、コースは時に「ジェットコースター」に形容される。ナーバスな下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。
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アムステルの名物として伝統的に数々の勝負の舞台となったのがカウベルグだ。登坂距離1200m/高低差68m/平均勾配5.8%/最大勾配12%の上りを2018年は合計3回通過する。長年このカウベルグの頂上にフィニッシュラインが引かれたが、単純な登坂勝負で勝敗が決着することを嫌った主催者は2013年にフィニッシュラインをカウベルグ頂上の1.8km先に移動(2012年ロード世界選手権と共通)。そして2017年、主催者はコース終盤のレイアウトを変更し、カウベルグがフィニッシュ手前から姿を消した。
2018年も同様にカウベルグがフィニッシュ手前に登場しないレイアウトが採用された。しかし15.7kmの最終周回には再び変更が加えられている。
合計32カ所の登りをこなした後、選手たちがカウベルグを起点にした最後の周回コースに突入する。登場する坂はカウベルグ(33番目)、グールヘンメルベルグ(34番目)、ベメレルベルグ(35番目)の3つ。この組み合わせは2017年と同じだが、その3つの坂を結ぶルートは細くてコーナーが多いものになった。
この最終周回のレイアウト変更について、コースディレクターのレオ・ファンフリート氏は「集団がレースをコントロールしにくい展開を作るため、今までより細い道を最終周回に組み込んでいる。昨年まではグールヘンメルベルグを通過後に幅広い幹線道路を下って次のベメレルベルグに向かっていたが、今年は細い下りを通る。そして最後の登りであるベメレルベルグの後も、真っ直ぐ幅広い道を進むのではなく、ハストハイスからテルブレイトの集落を抜けて、(農道のような道を通って)フィニッシュに至る。今回のコース変更により、優勝を狙う選手は今までよりも早い段階から良いポジションで走らなければならない。もしくは、優勝者は最終周回に入る時点で集団から抜け出しているかもしれない」と語っている。
最後のベメレルベルグは登坂距離800m/高低差39m/平均勾配4.7%で、カウベルグほどの破壊力はなく、しかもフィニッシュまでの平坦区間が長い(6.9km)ため先行が決まりにくい。そのためアタックでチャンスをつかみたい選手はベメレルベルグま仕掛けて動いてくるだろう。集団追い上げに不向きな細いコースに変更されたことで、勝負のタイミングは例年よりも早まりそうだ。
同じ4月15日に開催されるUCIウィメンズワールドツアーのアムステルゴールドレース・レディースエディションは男子レースと同様にマーストリヒトを出発後、7つの坂を越えてカウベルグの周回コースへ。最後はカウベルグ、グールヘンメルベルグ、ベメレルベルグを含む周回を3周し、4回目のカウベルグを越えた先のフィニッシュラインを目指す。登りの数は17カ所。コース全長は116.9kmだ。
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ルーベ覇者サガンが5年ぶりの出場 受けて立つジルベールやクウィアト
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1年前にジルベールとの一騎打ちに敗れて2位に甘んじたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)は、パリ〜ニースでの鎖骨骨折から復活したワウト・プールス(オランダ)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア)を率いての出場だ。
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意外にも、これまでの52回のアムステルでスペイン人選手による優勝はゼロ。10日後に38歳の誕生日を迎えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はミケル・ランダ(スペイン)とともにそのジンクスを破れるか。同じくグランツールレーサーとしてヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)にも注目したい。バーレーン・メリダには過去に2回アムステルで優勝しているエンリーコ・ガスパロット(イタリア)やイサギレ兄弟(スペイン)も控えている。
直前のブラバンツペイルで優勝したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)は、要注目の若手ティシュ・ベノート(ベルギー)とタッグを組む。もちろんベルギー勢としてはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)も忘れてはいけない。開催国オランダはバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)やロベルト・ヘーシンク(ロットNLユンボ)らが表彰台に最も近い存在だ。
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ダニエル・マーティン(アイルランド)とディエゴ・ウリッシ(イタリア)、ルイ・コスタ(ポルトガル)を揃えるUAEチームエミレーツ、リゴベルト・ウラン(コロンビア)とマイケル・ウッズ(カナダ)を揃えるEFエデュケーションファースト・ドラパックの他、今季クラシックレーサーとして開花したミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)、ネイサン・ハース(オーストラリア、カチューシャ・アルペシン)、ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)らも有力選手に挙げられる。
今季限りでの引退を表明している2008年の優勝者ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は、ジャパンカップ二冠のマルコ・カノラ(イタリア)や初出場の小林海と揃っての出場となる。
同日開催のUCIウィメンズワールドツアーレースには、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)と萩原麻由子(アレ・チポッリーニ)が出場する。それぞれエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)とヤネク・エンシング(オランダ、アレ・チポッリーニ)らをアシストすることになると思われる。2018年すでに10レース(18日間)を消化している與那嶺はシーズンのレース走行距離が1,906kmで世界7位(チーム内1位)。フィニッシュラインのすぐ近くに住む與那嶺にとってアムステルはローカルレースだ。
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